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血流を良くするお薬

『アスカ選手がトドメを刺しにいったーッ!』  大きな四角形のリング、響き渡る実況の声、  取り囲む大観衆、ここは格闘施設である。  今もリング上ではコスチュームを着た男と女が対戦していた。  ここまではよくある光景で、男女入り混じっての格闘施設も  よくあると言えばよくあるのだが〝明らかに異質な点〟も  見えてくる。 『すごいすごい! ひと回り以上も大きな男を圧倒!  スピードはもちろんパワーもアスカ選手が上回っているようですッ』  160㎝程度の女性選手が180㎝を超える男性選手を  一方的にブチのめしていたのだ。  アスカという選手はスパッツとスポーツブラのような  格好をしており、二の腕や太ももは筋肉が浮き出る  ほど発達していたが、それでもせいぜいアスリート体型の範疇、  20㎝以上の身長さを覆すほどのパワーを秘めているようには  見えなかった。  〝女にボコられる男を見て愉しむ店〟であれば納得の展開だが  ここは正真正銘の格闘施設であり、やられている男性選手も  その厚い体格を駆使して全力で抵抗している。  なのにアスカには押し負けてしまう。  技術を使っているわけではなく、正面から殴り負けているのだ。  身長も体重も大きく劣る女に。 「ぐ…あッ」  殴られて蹴られて、ロープ際まで追い込まれた男性選手へと  アスカはようやく技らしい技を出した。 「なかなか楽しめたわ。じゃーね♪」  股間に露出した男性特有の臓器を蹴り上げたのちに  隙だらけになった顔面へ掌底を撃ち込む。 「ぅぶッ」  顔が一瞬歪むほどの衝撃を受けた男性選手が頭から転倒。  だが両手は股間を押さえており、もしかしたら  睾丸の方も破壊されたのかもしれない。 『そこまで! 勝者アスカ選手ー!!』  リング上へ歓声が降り注ぐとアスカも両手を上げて応える。  不自然なパワーを持っている以外では顔とスタイルの良い  女性なので人気のある選手のようだ。 「ありがとー♪ また見に来てねー」  そして選手は退場し、少し休憩を挟んでから  次の対戦者たちが入場してくる。  不思議な点はあれどよくある格闘施設。  ただし、この施設特有のルールもあった。  〝目潰しや金的の解禁〟もあったがそれだけではなく、  この格闘施設では〝ドーピング薬〟の使用が許可されていたのだ。  そもそも、アスカのような小柄の女性選手が大きな男性選手を  力で圧倒し始めたのはつい最近になってからだった。  理由は【エマ】というドーピング薬が最近開発されたから。  【エマ】を使えばアスカのようにひと回り大きな男相手に  ごり押しで勝てるほどの力が手に入る。  さらに素晴らしいのがドーピング薬には付きものの  副作用が〝ほとんど〟無く、価格も他に比べて安かった。  実際、選手は金や名声のために何回も戦う訳なので  既存のドーピング薬では副作用と価格に問題があり、  ルールで認められていても使う者はほとんど居なかったのだ。  だからこそ【エマ】の登場はこの格闘施設内の   パワーバランスを大きく変えた。  ではなぜ女性選手しか愛用していないのか。  それにも理由があった。 『只今より〝リルミ選手〟対〝トシハル選手〟の試合を開始します!』  引き続き女性と男性の試合が始まった。 「来な、チビのおっさん」 「ざけんなッ テメェがデカすぎなんだよ!」  リルミは女性選手最高の190㎝。  トシハルも175㎝はあるのだが彼女と並び立つと  どうしても小柄に見えてしまう。 「くそッ 今に見てやがれ」  体の厚みはトシハルが上だが【エマ】を使えば筋力の差すらも  逆転され、すらりとした長身から繰り出される長距離打撃で  一方的にヤラれるのは客でも予測できた。 「ふっふ~ん♪ どう料理してやろっかな~」  軽快にステップを踏み、長い手をしならせるリルミが  距離詰めようとした、その直後。 「!」  爆発的なダッシュ力を見せたトシハルが一気に距離を潰したのだ。 「くたばれッ!」  ドンッと右ストレートが炸裂。 「うっ!」  一発でリルミがロープ際まで押し込まれてしまった。 「ははッ こりゃいいわ、すげぇ力が沸いてくるぜ」  トシハルも【エマ】を使っていた。    この格闘施設に登録したばかりであり、女性選手の異様な強さを知って  ならば自分もと【エマ】に手を出してしまう新人男性選手は  たまにだが居る。 「どうだ! これなら互角、いや…筋肉量の多いこっちが有利だッ」  【エマ】の効果は男女で変わったりしない。  パワーとスピードが激増したトシハルはリーチ差をものともせず、  豪快な打撃でリルミをロープへ貼り付けた。 「へへ こうなりゃ長い手足も無意味だぜ」  超近距離戦ならばこちらが有利。  ドーピングしていようと骨の強度は変わらない。  後はガードの上から叩き続けるだけで勝てるだろう。  注意すべきは金的による一発逆転くらいか。  と、トシハルは思考を巡らせていたが、  注意すべき点は〝玉の方〟ではなかった。 「おい おっさん」 「あ?」 「汚ねぇモン おっ勃ててんじゃねーよ」 「はぁ?」 「勃起してるって言ってんだよ。この変態野郎」 「!?」  言われて見ると、確かに股間が大きく隆起していた。 「なにぃッ!」  股間が張っている感じはしていたが【エマ】の力に酔いしれていた  せいもあって気にも留めず、いい気になって攻め続けていた。  確かに相手の薄着の長身美女だが、組み技対決ならともかく  打撃戦で勃起などありえないと思っていたからだ。 「ッ!」  不可解な現象が起きたためトシハルはロープ際から飛び退いた。  あのままラッシュを続けていれば勝てていただろうが、  この格闘施設に慣れていない彼はまず勃起を隠すことを優先したようだ。 「てめぇ 何しやがった!」  不自然なほどの前傾姿勢でトシハルが問う。 「さーねー おっさんが私の体に欲情して  チンポビンビンになっちゃっただけでしょ♪」  リルミの方から何かをしたわけではないが、  リルミはトシハルが勃起した理由を知っている。  だからといって敵に教えたりなどしないが。 「アハハ♪ そんな前屈みで隠さなくても大丈夫よ。  ここは〝勃起までならセーフ〟だから♡  むしろ足が三本になったと思ってソレで攻撃してきたら~?  ま、そんな〝細い足〟が来たら折っちゃうけどね♪」 「ふざけんな このッ」  トシハルが勃起した原因は【エマ】にある。  このドーピング薬は名の通り〝血を活性化させる効果〟がある。  肉体のすみずみに巡る血の流速を加速させて  身体能力を一時的に上昇させる。というものだが  使用者が男の場合はひとつ大きな問題点が出てしまう。  それは〝海綿体に流れる血液まで活性化する〟ということだ。  陰茎(ペニス)の海綿体が血で満ちれば硬化と膨張を伴う  勃起という肉体反応が起きる。  そうなれば勃起しながら戦わなくてはならない。  だから〝この効果〟を知っている男性選手は【エマ】を使おうとしないのだ。  この格闘施設には若い女性客も多く、勃起しながら勝ったとしても  失うものの方が大きい事くらい分かるからだ。 「先に言っとくけど降参なんてつまらないマネしないでよね。  こっちは戦いたくて仕方ないんだから」  副作用が〝ほとんど〟無いと言われる【エマ】だが  興奮して性格が少し暴力的になるというマイナス面もあった。 「おっさんだってそーなんでしょ?  目ん玉も金玉も攻撃オッケーなルールで思いっきり戦いたくて  ここに来たんでしょ? なら早くヤリましょーよ ねぇ♡」  〝金玉を狙ってもいい〟といってもこの場にある金玉は  トシハルのふたつだけ。リルミは玉型臓器のぶら下がっていない  股間を見せつけるように腰をくねらせて挑発する。 「ふふふ♡」  彼女も【エマ】を使っているのだから〝勃起する部分〟は勃起していた。  だが男のソレとは違って膨張率は低く、服を着ていればまずバレる事はないし、  なにより邪魔にならない。 「ほらほら♡ 女相手に腰が引けるなんて情けない男ねぇ♪」 「ぐぬッッ」 (この女が何かしたのか? それともあの【エマ】って薬のせいか?  分からんがチンポは萎える気配すらない…  これはもう射精(だ)さないとおさまりそうにねぇ。  かといって射精するわけにもいかねぇ。  くそッ どうすりゃいいんだ)  男の勃起は生殖器が1,5倍ほど膨張するだけでなく、  〝その向き〟が下から上に変化するので客席からでもバレていまう。   「さぁッ いつまで隠してんだッ この勃起男!」  男の勃起はとくかく邪魔となる。  バレても構わないと開き直れば動けないことも無いが、  隠したままで戦おうとするとへっぴり腰のパンチくらいしか  攻撃方法が無い。 「何だそのヘナチョコパンチは? バカにしてんのか!」  【エマ】の恩恵は両者とも受けているはずなのに  肉体の構造でここまでの差が出てくる。  片や勃起しようと支障のない女性。  片や勃起すると闘うどころではない男性。  この試合、すでに勝負はついていた。 「ふぅ… ぐぅ……」  ドーピング強化された女性の連打を浴び続けたトシハルは  もうダウン寸前。 足はふらつき勃起を隠すという  意識すら薄れていた。 となれば〝気付く者〟もちらほら出てくる。  お、おいトシハルって選手、もしかして――――  あぁ、勃ってやがる――――  マジかよ、試合中に勃起って―――  そりゃリルミちゃんは美人だけど… ドМ過ぎだろ―――  同じモノを持つ男性客はもちろん、女性客にも。  ねぇアレ… おっきくなってない?―――  え、えぇ 間違いなく勃起してるわね―――  男ってボコられて勃つものなの?―――  い、いやいや、ありえないでしょ。ド変態じゃん―――  次々と恥ずかしい生理現象がバレていく。  〝ドーピング有り〟のルールは客たちも知っていたが  何と言う名前の薬なのか、どんな効果があるのか、  どんな副作用が起きるのかなどは知りようがないため、  トシハルの勃起は〝リルミ選手に欲情した〟としか  見えていなかったのだ。 「おーいおっさん、びんびんテントが見えてっけど  隠さなくていーのかい♪」 「!」  指摘を受けてから慌てて両手で隠せば… 「バーカ♪」  ――――――ドッ!  がら空きになった顔面に拳がめり込み。 「~~ッッッ」  痛みから手で顔を押さえてしまえば… 「ほい♪」  ―――――ゴキッ!!  隠されていた〝テント〟が蹴り上げられる。 「!!!!!?」  金的が有りならば当然〝竿の方〟への攻撃も有り。 「あーらら 〝折れ〟ちゃったかな」  ドーピング強化された蹴りを受けた〝テントの柱〟は  くの字に折れ曲がってしまったようだ。  「うッッ…! チ… チンポ……が…」  パンパンに充血していた海綿体が中心部から断裂。  〝男の武器〟を破壊されたトシハルは内股で崩れ落ちた。 「ハッ バカだねーおっさん♪  【エマ】さえ使わなきゃチンポは無事だったのに…  こりゃしばらく〝使いモノ〟にならないね  」  男女対決の場合、金的での決着はそれほど珍しくないのだが、  今回のような〝陰茎(ペニス)破壊〟はこの施設でも  かなり稀な決まり手である。  玉じゃなくて竿を蹴ったのか?―――  ならそんなに痛くないんじゃ…―――  いや… 勃起してたんなら折れたんじゃねーか―――  チ…チンポ折るなんて… 悪魔かよ―――  男性客は青ざめ。  こ… これが金的ってやつ?―――  いいえ、〝位置的〟には竿の方じゃないかしら―――  ってことはカタくなっていたアレを…折った?―――  くす♪ ふにゃチンのままなら折れなかったのにね~♪―――  女性客は色めき立つ。 『そ、そこまで! 勝者リルミ選手~!!』  アスカに続きこの試合も女性選手が勝利した。    【エマ】が開発されるまでは男性選手が絶対有利だったこともあり、  女性選手たちの快進撃は非常に客たちを沸かせたが、  それでも【女性選手<男性選手】の認識は崩れていない。  最強に位置する選手が男だからだ。   『さぁ メインイベントがまもなく始まります!  まずはダルシア選手入場!』  会場の照明が消えた後、スポットライトを浴びながら  重量感のある足取りでリングインする男がいた。  身長は188㎝ 体重は約100㎏  大男だが規格外というほどのサイズでもない。  そんな彼を最強たらしめているのが〝技術と経験〟だった。 『続いてメルア選手入場!』  ダルシアとは対照的に羽が舞うかの如く軽快流麗に  飛び跳ねていく美女がリング手前にて跳躍。  着地音がならないほどフワリとリング状に舞い降りた。 「よろしくお願いしますね」  艶やかな黒髪を後ろで束ねる美女が見据える先には  岩のように無骨な大男が立っている。 「くだらん。 薬物で強化しようが女は女。   その痩身、一撃で砕いてやろう」  フンと鼻を鳴らすダルシア。  侮っているのではなく事実として言っているのだ。  実際に彼は【エマ】を使う使わないにかかわらず  女性選手に負けたことが無い。というより未だ無敗なのだ。  肉体は50歳を超えて衰えている筈なのに  どんな男にも女にも勝ち続けてきた。    その恵まれた体格と練り上げた技術、積み重ねた経験によって。 『今宵もその熟達した技量で危なげなく勝利するのか。  または とうとう無敗伝説が崩れるのか。  注目の一戦 今 開始されました!』  コングが鳴り、両者が構えを取る。 「……流石 隙がありませんね  さて、どうしましょうか」  落ち着いた口調だがしっかり【エマ】は使っている。  なのでメルアはダルシアより興奮状態にあった。 「と、言ってもやることはひとつ。  〝全力でぶつかる〟それだけですわ」  メルアが駆け出し、文字通り飛び掛かった。 「やあぁッ!」  上から角度のついた蹴りが飛んでいく。   「フンッ」  が、軽々と叩き落される。 「ッ――― やりますわね」 跳躍をまじえた立体的な動きで相手を翻弄し、  鍛え抜かれた足で蹴り潰していく。  それがメルアの基本戦法なのだが、今回は相手が悪すぎた。 「どうした小娘。もう終わりか」  ダルシアは彼女の技全てを正面から捌ききったのだ。 「今度はこちらの番だが… 恐ろしくなったのなら降参してもいいぞ」 「……いいえ、まだ…恐ろしくありませんわ」 「そうか、ならば散れ」  振り下ろされる剛腕から逃げるように飛んだ。 「ッッ 間一髪、でしたわね」  その際、薄いコスチュームに包まれた巨乳がたゆん と揺れ動く。  跳躍を繰り返す彼女の戦法は〝乳揺れ〟を強調する狙いもあり、  普通の男性相手ならば視線誘導にも使えたのだが  このダルシアは精神的にも鍛え抜かれている。  50歳を超えているからかもしれないが、メルアの色気に反応せず  淡々と正確に襲い来る攻撃のみを打ち落としていた。  男性客には効果抜群でもう〝膨らませている〟者もいたが  肝心の対戦相手はまるで無反応だった。 「よけたか… 動きだけは褒めてやる」  このリング上でのコスチュームは決まっており、  男性ならばブーメラン型のパンツ一枚、  女性ならばスポーツブラとスパッツ型の上下セット、  色は共に紺色で伸縮性の高い上質な生地を使っている。  このように〝体のラインがハッキリと浮き出る〟格好ならば  男である以上どうしても〝女〟を意識してしまうものだが、  ダルシアという壮年格闘家にそれは無かった。  あるのかもしれないが、まったく表に現れていないのだ。 「……まぁ、その動きも薬物の手を借りて得たものだろうが」  重厚な体がズシリと踏み出して圧をかけてくる。 「薬物薬物とうるさいオジサマですわね。  ルールの範疇で戦って何が悪いというのですか」  リングの角、コーナーに向かって後ずさりするメルアが汗を拭う。 「悪くは無い。ただ、鍛錬以外で力を得ようとする  軟弱な精神ではワシに決して勝てんと言っているだけだ」  ダルシアが大きく一歩踏み込めばメルアが小さく二歩下がり、  ついにはコーナーポストに背中が付いてしまった。 「…くッ」  正面を向いたまま、コーナーポストを確認するように手を背に回す。 「もう逃げられんぞ。それともまた跳んでみるか?」  彼女の跳躍力なら相手を飛び越える事も出来るだろうが、  こんな角からでは〝飛ぶ方向〟が丸わかりであり、  落下地点を先読されて着地を狩られる可能性が高いので  うかつに飛ぶことは出来なかった。 「いいえ跳びません」  だからメルアはあえて正面突破を狙った。 「イチかバチか… 勝負をかけさせて頂きます!」  危険を承知で突っ込んでくる気か―――!  そう察知したダルシアが受けの構えを取る。  警戒すべきは目、喉(のど)、股間(金的)を潰されること。  それ以外の選択肢を捨てる事で万に一つもチャンスを作らせない。  ダルシアがメルアの体をすみずみまで注視した。   だが。 (ここまでは作戦通りですわ)     彼女は〝コーナーに追い詰めらて賭けに出た〟のではなく、  〝作戦のために自分からコーナーへ移動した〟のだ。  格上に勝つための秘策を実行するために。 「――――あん♡」  メルアが突っ込もうとした瞬間。  上のコスチュームがめくれ上がり、非常に発育の良い乳房が  ぷるんっ♡とこぼれ落ちた。 「ッ!!!」  まさかのラッキースケベに男性客は目をひん剥き、  ダルシアも視線が釘付けとなってしまう。  戦力で注視したのが仇となったのだ。 「くす♪」  このポロリが〝ハプニング〟であることがミソだった。  もしメルアが自分からコスチュームをめくり上げていたら  〝色仕掛け〟だと警戒されていただろうが、今回のコレは  コーナーポストの留め金にコスチュームが引っかかってのポロリなのだ。  だからこそダルシアは意識の隙間を縫って飛び込んでくる  生巨乳に目を奪われた。ではなぜこんな都合よく引っかかったのか。  答えは簡単、コーナーポストへ追い詰められた直後に  彼女は後ろを確かめるように回した手で自分から引っ掛けてたのだ。  後は正面に突っ込む動作を見せつつ上体を沈ませれば、  コスチュームが上に引っ張られて自慢の巨乳が顔を出す。 「なッ!!」  もちろん〝この程度〟で勃起して弱体化するような相手ではない。  隙は一瞬で消えるだろうが、一瞬でも隙を作れればよかった。  さらに大きな隙を作る事が出来るから。   ――――――チュッ♡  メルアがダルシアに抱き着いてキスをした。 「んん!??」 「ん…♡  む…ん…♡」  いきなりのラブシーンにおぉ!っと客席が沸き上がる。  とくに巨乳丸出し美女のキスシーンを見せられた男性客たちは  【エマ】を使わずとも海綿体の血流が活性化し始めていた。 「むぐ…!?  んんん……!!」    ただのキスではなく、メルアが一方的に舌を突き出して  固く閉じられているダルシアの唇をこじ開けている。 「は…む♡  んふ♡」  武道一筋に生きてきた彼にとっては初の接吻(キス)  口内に侵入してくる柔らかな女の舌に情欲を掻き立てられたが、  鋼の精神でどうにか抑え込み、メルアを強引に引きはがした。 「ぬおぉぉおおおおッ!!」 「―――っと、やりますわね。  たいていの男はキスで落とせるくらい自信がありましたのに」  めくれ上がったコスチュームは直さず、  桃色の先端を晒したまま構えを取った。 「はぁ… はぁ… ふざけたマネを…」  口内に残るメルアの温かさ、抱き着かれた際にむにゅ♡っと  押し当たってきた生巨乳を感触、いくら欲を断ち切っていようと  陰茎と睾丸がぶら下がっている限り〝男性機能〟は無くならない。  現に〝女〟を意識したダルシアの肉体はその下半身を  加熱し始めていたが、頭には確認せねばならない疑問が置かれていた。 「……小娘、いったい〝何を〟飲ませた?」  キスの最中、メルアは舌をいやらしく絡めながら  〝小さな固形物〟をダルシアの口内へ運び込んでいた。  普通ならば吐き出すところだが、卓越した舌技でねぶり回された  ことにより口周りの筋肉が弛緩し、飲み込んでしまったのだ。 「答えろ!」  語気を強めても〝小娘のキスで一杯食わされた〟という事実は消えず、  だからメルアは少しも臆することなく挑発で返したのだ。 「年上なのですからご自分で考えてみては♪」  くすりと笑ってぷるん♡と乳房を揺らしてやった。 「ぐぬぅッッ!」  男性客の半数以上は股間に血を集め、  ダルシアだけが頭に血を登らせていく。 「ならば後悔する暇も与えん!」  太い足でリングを蹴り出す。  恥をかかされた怒りから全力で打ち込むことを決めたのだ。 「砕け散れ!」  すると、メルアが跳んだ。 「ッ!」  乳房を丸出しのまま高く舞い上がり、ひねりを加えて  リング中央へと着地する。 「愚か者が! それで逃げたつもりか」    落下地点は予測済み。  ほんの数秒決着が長引いただけにすぎんとダルシアが反転し、  着地直後の隙を狙って再び突っ込んだ。しかし。 「―――う!?」  彼は自分でも驚くほど力がみなぎっていた。  怒りのせいとも考えたが、それだけでは説明がつかないほど  〝異常な力〟が肉体にあふれている。 「なッ …なんだコレは!」  体の変調を優先したダルシアが攻撃を中断すると、  上手くいった♪、とばかりにメルアも息をつく。 「フゥ… 効果が出るまでが心配でしたけど  どうやら〝間に合った〟ようですね」 「ぬッ どういう事だ! ……ん?」  メルアの視線が下半身に向いていることに気付くと、  確かに〝体の下の〟が特にみなぎっている〟と感じる。  まさかと相手から目を離さずに手で確かめてみると。 「ば、馬鹿な!!」  陰茎が膨張して硬く反り返っていたのだ。 (ワシが… 勃起だと?)  50を超える男が試合中に勃起。  コスチュームの中心から大きく勃ち上がるソレは  まぎれもなく〝雄が欲情した証〟だった。 (さっきの接吻で…? いや、ありえんッ)  古株のダルシアは【エマ】の噂を何回か耳にしていたが、  薬物に無関心ゆえに詳しい効果までは探らなかった。 「ふふふふ…♡  流石は最強と呼ばれる男。  ずいぶんと〝ご立派なモノ〟をお持ちで♪」  突っ張ったテントを眺めつつメルアが距離を詰め、  露出した巨乳がエロティックに波打つたびに  テント内もより熱を帯びていく。     「くっきり浮かび上がるシルエットで分かりますわ。  〝平均値〟を5㎝以上は上回っているでしょうか。  歳を重ねて〝あっちの方〟も衰えているはずなのに  そこまで〝お勃ち〟になるとは… 女として感服いたします♡」  嫌みなほどご丁寧に褒めるメルアを見て、  やはりこの女が飲ませた〝何か〟が原因だと確信したが、  聞いて答える性格では無いことも分かっていた。 「おのれぇッ」    少し腰を引いているものの勃起は隠さない。  これも長い経験をもとに選んだ策だ。  前の試合の男性選手のように【エマ】の効果を知らずに使用したり、  色気を武器とする女性選手の毒牙に掛かったりと、  このリング上ではこれまで数多の男たちが勃起してきた。  そんな彼らの取った〝悪手〟を見てきたダルシアだからこそ  勃起しても隠すべきでないと判断したのだ。 (意図的に勃起させてきたという事は  隠そうとすればするほど行動が予想されてしまう。  ここは相手の予想外の行動を……  〝勃起を気にせず速攻を仕掛ける〟のが正しいだろう)  リング上で無様に陰茎を膨張させる男を見るたびに  肉欲も抑え込めぬ軟弱者と見下してきた。  だがまさか自分が〝そう〟なろうとは。  歯噛みするダルシアがあえてスタンスの広い構えを取り、  相手を一撃で粉砕する力を溜めた。  一方、ご立派な勃起を見せつけて構えるダルシアを見た男性客たちは。  ダ、ダルシアが… 勃起?―――  嘘だろ… あの堅物のおっさんが―――  つーか… でけぇ… 何だあの特大テント―――  プロフィールじゃ50超えてるってのに…元気すぎんだろ―――  重厚な選手お重厚な生殖器に驚愕し、女性客たちも。  えぇ~~ ちょっとナニあれ~♡―――  うっわ~ に、20㎝くらいあるんじゃないの♡―――  浮き出るカリの形もえぐいし… 何より太いわ♡―――  あのマッチョオジサンってあんなにすごかったんだぁ♡―――       老いた男の〝隠れた情熱〟に当てられて目を輝かせていた。  そして、勃起テントのインパクトが大き過ぎたせいで  男性客の女性客も〝何故あの堅物ダルシアが勃起したのか〟と  頭を悩ませる者が非常に少なかったのだ。  意味は違えど男も女もその巨根に釘づけになっていた。 「はぁッ!!」  パンツ一丁の勃起男が仕掛けた。 「まぁ怖い 鬼のような形相ですこと」  対するメルアは逃げの一手。  ダルシアの猛攻は相当な速度だが彼女の身軽さも  この格闘施設内トップクラスであり、逃げに専念すれば  どうにか躱し続けることは出来た。 「ちょこまかとッ」  ただし【エマ】の効果で身体能力が上昇した彼の動きも凄まじく、  危うい場面も多かった。 「ふぅ…肝が冷えますねぇ」  なぜ彼女は相手に【エマ】を使ったのか。  勃起させることで動揺と恥を与えることはできたが、  同時にパワーアップさせてしまった。  最強の男性選手をさらに最強にしてしまったのだ。  これほどのリスクを取ってまでメルアが【エマ】を  使った理由は〝これが一番勝率が高いから〟だ。 「はぁ… はぁ… 貴様、戦う気があるのか!」 「ふぅ… ふぅ… えぇもちろん、勝つつもりで戦ってますわよ」  対戦が決まった時からダルシアの全試合を見返して  メルアは感じた。 自分の攻撃では倒せない、と。  技術と経験が合わさったダルシアの守りは固く、  さらに打たれ強さも並ではない。  そんな選手を女性の腕力で倒すとなれば急所攻撃しかないのだが、  考える事はみんな同じであり、ダルシアは対戦した女性選手から  一度も急所を打たれた事が無いのだ。  急所、特に男性最大の弱点〝睾丸〟は蹴り上げれば  女でも一発で勝つ事が出来る。  だから警戒されて当たらない。  まともな打撃は当たらず、急所の守りも硬い相手。  そこでメルアは〝反則を利用して〟勝つことにした。  ドーピングすら許容されたこのリング上でも反則行為はある。  男性が陰茎から精液を放出する行為――― 〝射精〟だ。    勃起までならセーフだが精液を出した男性選手は負けとなる。  色仕掛けも勃起もドーピングも有りなのに  なんで射精だけが反則なのか、どんな理由があるのか、  たんに主催者の遊び心かもしれないが、とにかく反則なのだ。 「貴様の動き、見切ったぞ!」 「あらそうですか? なら捕まえてごらんなさい♪」  乳房の露出したメルアを目で追い続けたせいか、  勃起したまま動き回ってペニスをパンツで擦り続けたせいか、  ダルシアの興奮度合いは一段階上がっていた。 「フー フー フー」  テントの先端に〝染み〟が出来ていたのだ。  ソレは本人も気付かず、見えていたのはメルアだけ。 「そこだッ!」  動きを見切ったというのは過言ではなく、ダルシアは見事  動き回るメルアの腕を掴んでみせた。 「――よしッ 終わりだ、小娘!」  彼にとっては小枝のように頼りない細腕。  捕らえたまま殴り倒すか、このまま地に投げつけるか、  なんなら握力で圧迫骨折させることも可能。  ここまで大恥をかかされたのだ、どう料理してくれようか、  と、ダルシアがコンマ数秒動きを止めた隙に。 「捕まってしまいましたわ♡」  メルアは自分から飛び込んだ。    ぽふん♡ 「!!」  愛する者へ飛びつくように、生巨乳を押し当てて  むにゅ♡っと抱き着いたのだ。 「ぬぁッ!?」  頭の中にあったいくつかの攻撃選択肢がすべて吹き飛び、  代わりに〝女の感触〟が思考を塗り潰してゆくと  ドロドロとした肉欲が沸き上がってくる。 「う… うぅぅ!」    今、手の力を緩めればまた逃げられてしまう。  こんな小娘の色仕掛けに負けてなるものかと  歯を食いしばるダルシアだったが、彼女の狙いは  捕まっている手を振りほどくことではなかった。  ――――――きゅ♡  勃起テントを掴むことだったのだ。   「はうぅっっ??」  少年のようなうわずり声が出た。 「あのですね~ オジサマ~」  厚い胸板に顔を預けるメルアが〝下〟をイジりながら妖しくささやく。 「私のこと小娘とおっしゃってますけど~」   すり♡  すり♡    テントの先端を指先でくすぐるように回し。 「これでもけっこう大人なんですよ♪」  しこ…♡  しこ…♡  極太の柱をシゴき上げ。 「〝コレの扱い方〟だって知り尽くしてるんですから… ねっ♡」  もみ♡  もみ♡  ずっしりした玉袋まで丹念に揉み込まれる。 「あ…あぁぁぁ♡」  このリング上で手コキは反則に当たらない。  ルールにそんなことは書いておらず、金的(タマへの攻め)が有りなら  〝サオを責める〟のも有りでしょ。と積極的に狙っていく  女性選手もいるくらいだ。    とはいえ、ただやみくもにペニスを握っても  擦って勃起させるまでに反撃をくらうものだが、  メルアの場合は〝下ごしらえ〟が絶妙だった。 「ほらほら♪ 腰が踊ってますわよ♡」  シュシュシュ…♡ 「あう… おほぉぉ♡」  乳房を露出してから【エマ】で勃起させ、  その後も丁寧に相手の性欲をあおり続け、  我慢汁が染み出すほど昂ぶらせてから巨乳押し当て密着手コキ。  最強の男を骨抜きにするために練り上げた作戦なのだ。  副産物として見ている男たちも〝マナーを守れなくなるほど〟  興奮してしまったが、そんなのはどうでもよかった。  うわっ エッロ―――  メルアちゃんの巨乳を押し当てながらの手コキかよ―――  やべぇな… こっちまで… 勃っちまう―――   勃つどころか もう 我慢が―――  〝おっぱい丸出し巨乳美女の手コキ責め〟というエロ動画を  もの凄く鮮明に見せられたのと同じであるため、  男性客たちは股間に垂れ下がる生殖器を充血させてしまい、  〝すでに勃たせていた者〟は辛抱堪らず擦り始めていたのだ。  えぇ! 何あいつら… アレ 勃ってない?―――  てゆーか… 服の上からこすってる奴までいるし―――  あ~… ま、仕方ないんじゃない、男だし―――  ふふ… おチンポイライラしちゃったのねぇ… かわいい♡―――  欲情した男性客に気付いた女性客の反応も様々。  敢えて気付かぬふりをする優しい者。  悲鳴を上げて嫌悪する者。  呆れつつも〝男なら仕方ないか〟と理解を示す者。  むしろ滑稽な男たちを見て笑いながら楽しんでいる者。  発情する男に当てられて秘所をイジり出す者、などなど。  メルアの手コキが引き金となり会場全体が桃色に染まっていった。 「……しかし、手で擦っただけでこの反応とは…  もしかしてオジサマ… 童貞でしたか♪」 「ッ! ちッ… ちがッ…」 「あら? それは残念。  童貞でしたら私が〝貰って〟さしあげようと思ったのに♡」 「え!」 「冗談ですわ、冗談♪」   すり♡ 「おぅぐ!」 「こんな凶悪なモノを持つ童貞さんから  猿のようにガっつかれたら壊れてしまいますもの」  シュシュシュシュ♡ 「このッッ うあ…あぁ…♡」  ここでもメルアの手コキが〝引き金〟を引き始めていた。  手玉に取られる中で性的興奮がレッドライン寸前まで昂ぶり、  〝栄養をたっぷりと蓄えた二つの果実〟がグググっと  竿の根元まで持ち上がっていたのだ。 (ッ!? こ、この感じは…)  いつ以来か分からぬほど久しい感覚が沸き上がる。  男が射精の寸前に感じる、亀頭がちりちりと焼きつくような  甘い心地よさが年老いたペニスに発生したのだ。 (ま… まずいッ!)  ダルシアは童貞だった。  が、練り上げた精神力をもって肉欲を押え込んでからは  〝女を抱きたい〟など思ったことは一度もない。  苦労して苦労して、どうにか封じ込めた性的衝動。  なのにムリヤリ呼び起こされてしまった。   長年眠っていた竿と玉を目覚めさせられた。 (このままでは… 逃れなくては… 負ける!)  長期休眠の解けた男性器はもう限界寸前。  あと数回擦られたら射精してしまう。  そうなれば即失格。  こんな小娘に、こんな恥をかかされて、そんな負け方をするのか。  最悪の展開が頭をかすめた。 「ふッ ふざけるなッ おおぉぉッッ!!」  腰に力を込めたダルシアがメルアを突き放すべく  彼女の両肩に手を置いた。  たとえ手コキを止めてもくっつかれているだけで  射精しかねなかったので、いったん距離取って  ペニスと睾丸を落ち着ける必要があったのだ。 「ぬうぅうん!」  ただし。 「―――オジサマったら単純♪」  メルアは〝反則勝ち〟を狙っていたのではない。  〝反則を利用して〟勝つ作戦を立てていたのだ。            ズグッ!  金的に蹴りが突き刺さった。 「!!!?」  突き放されたという事は〝蹴りの間合い〟が出来たという事。  射精を回避することにばかり意識が向いており、  かつ両手を自分の肩に置いているとなれば  股間を蹴り上げる事など誰でも出来る。 「がッ はッ」  そして彼女は〝誰よりも鋭い蹴り〟を持つ選手。  人を飛び越せるほどの跳躍を可能とする足の筋力と、  しなやかなバネから繰り出される蹴りは鞭の如き衝撃を生み、  ――――――ダルシアの陰嚢を破壊した。 「並みの男性なら快楽に負けて射精を受け入れるのでしょうが、  オジサマなら私を突き放してくると思ってましたよ。  だからその隙を狙わせていただいたという訳です♪」  説明しつつ、ずっと丸出しだった乳房を仕舞い込む。  もう必要ないからだ。  〝シンボル〟が破壊された男を誘惑しても  意味など無いからだ。 「こ…… こむす… め……」  最強の男が膝をつき、ゆっくりとリングに伏してゆく。 「う………」  パンツの両脇から血が流れ出ていたが、  これは陰嚢が、俗に言う玉袋が〝破れていた〟からである。  メルアの鋭い金的蹴りは玉袋の中心へと叩き込まれ、  二つの睾丸も強く打たれたものの潰れてはおらず、  代わりに睾丸を包む頼りない皮袋が引き裂かれたのだ。  幸いピッチリとしたパンツのおかげで睾丸がこぼれ落ちる事は  なかったが地獄のような痛みに変わりなく、並外れたタフネスを  持つダルシアもたまらず一発でKOされた。 「ぉ… ぐ… ぅぅ」  ところが。 「―――ん?」  メルアが小さい鼻をひくひくと動かす。 「これって…」  〝あの臭い〟が漂ってきたのだ。 「……ふ ふふ… あははは♪  ヤですわオジサマったら… お射精なさったのですか♪」  袋は破れても玉自体は無事だったからか、  ダルシアは金的蹴りの直後に精子を漏らしていたのだ。  それも普通の量ではない。  活力みなぎる大男が長年封じ込めてきた欲液がすべて漏れ出したのだ。  どぴゅ… どぷぷ…  びゅるる…  うつ伏せに倒れているためメルア以外気付く者はいないが、  この玉袋の破れた男は今も緩やかに射精し続けている。 「あ…… ぁ…」  びゅる…  どぷっ 「ふふふふ… 男性の天国と地獄を同時に味わうのが  どのような感じなのか… 女性の私にはまったく  想像できませんがひとつだけ言わせてもらうと……  とぉ~ってもカッコ悪いですわよ オジサマ♡  アーッハッハハハハハ♪」  【エマ】は使用者の性格を少し凶暴にする。  穏やかな口調を保っていたメルアも例外ではなく、  大事な袋を蹴り破いた男に向かって嗜虐の笑みを浮かべて  高らかに笑ったのだ。  その様子を見ていた男性客たちは。    は、速くてよく分かんなかったけど…股間を蹴ったんだよな―――?  じゃなけりゃあのダルシアが一発で沈むかよ―――  あんなムチみてぇな蹴りを金玉に喰らったら―――   ひぃ! そりゃ男なら誰だって倒れるわ―――  一人残らず青ざめて〝さっきとは違う意味〟で股間を押さえている。  密着手コキに見惚れてギュルギュルと活性化していた  男たちの金玉は〝同族の惨状〟に恐怖し、竿の方まで  ヘナっと軟化してしまう。  対照的に〝付いてない〟女性客たちの反応は実に明るかった。  最強の男も〝あの玉〟だけは鍛えられないのね―――  でも金的で負けなら〝仕方ない〟って感じでよかったんじゃない―――  いやいや逆でしょ。射精負け以外じゃ最悪の負け方だわ―――  だよね~ なんていうか… ずっごいカッコ悪いもん―――  あんなゴッツイ体してても玉打たれたら終わりなのねぇ 男って―――  しかも〝あの中〟で精子つくってるって思うと、余計に笑えるわ―――  これまでのダルシアが憎たらしいほど強かった反動もあって、  女性客たちがここぞとばかりに罵声を放ちまくる。  救いがあるとすれば気を失っていたため耳には届かず、  客の半数を占める男からは同情の目が向けられていた事だろう。  しかし、当の本人は。 「ぉ…… ぉふ…」  どこか気持ちよさそうな声で、まだ精液を出していたのだ。      ぴゅる… どぴゅ  痛みと快楽は表裏一体。  陰嚢が裂けるという地獄のような状況にあっても  長年溜め込んできた精液の放出という快楽は無視できず、  その二つが混じり合う何とも言えない刺激的な感覚へと  ダルシアの意識は浸り込んでいたのだ。 「―――これはこれは オジサマったら…   まだ腰が小踊りしてますわ。もしや…  マゾフィストの扉まで蹴り破ってしまったのでしょうか♡」  ピッチリとしたコスチュームを着るメルアが、  女性特有の凹凸の無い股間をエロティックに指でなぞり、  敗者に向かってこう言い放った。 「もし… また縁がありましたら。  次は玉の方をぶっ潰してさしあげますわね♡  そうすればもっと射精(で)ると思いますわよ♡  ふふ… あははは♪」


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