脱着自在の急所 「中編」
Added 2024-06-20 15:48:57 +0000 UTC宙に浮いていた精液がすべて回収され、 部屋に漂う生臭さが換気された頃。 3号とノゾミはすでに別室へと移っていた。 正確にはこの部屋の真下にある地下室だ。 「なッ なんだこれ…!」 3号はただただ驚いた。 ここは正義のヒーローの基地であるはずなのに 目に映る光景はまるで〝悪の秘密基地〟 〝いかにも〟な大型培養管が並べられ、太いパイプを通って 緑色の液体がゴポゴポと循環している。 しかも中に〝人と思わしきもの〟まで浮いているのだ。ふたつも。 (あ、あの女は〝何故俺がヒーロー3号なのか教える〟って 言ってたが…… まさか… まさか…) とてつもなく嫌な予感が沸き上がってくる。 「そ、そこに浮いているのが… 1号と2号じゃ、ないよな」 震える声で確認すると、最悪の答えが返ってきた。 「勘が良いわね。 その通りよ」 「!」 血が引き、まだ〝取り付けたまま〟だった男性器が 哀れなほど縮こまっていく。 改造された彼の顔に表情は無いが、男性器を見れば 興奮しているのか怖がっているのかくらいは判別可能で、 竿も玉も恐怖で萎縮しているのを見たノゾミは 笑い声を挟んでからこう言った。 「ふふ、そう怖がらないで。貴方〝は〟大丈夫だから」 「……こんなの見せられて信用できるわけないだろ」 第二の人生は刺激的に生きる。と決心したが、 〝前〟のようにただ使い捨てられる労働力になる気は無い。 3号が一歩下がると、ノゾミは立ち止まったまま説明を始めた。 「―――左側に浮いているのが〝1号〟と呼ばれたヒーローよ。 改造される前は貴方も聞いたことのあるような凶悪犯罪者だったわ」 「犯罪者!?」 恐る恐る3号が目を向けると、自分と類似点の多い人造人間が 緑色の液体の中に浮いている。 五体は繋がっているが大きな傷が複数ついており、 それが怪人によるものか〝そうでないのか〟… 怖くて今は質問する気にはなれなかった。 「死刑宣告を受けた人間を利用するっていうのは、 色々と手探りな1号を造るうえで合理的な判断だけど、 ヒーローとしてはありえない人材よねぇ。 ……でも結構いい線いっていたのよ、彼」 ノゾミが培養管をこんこんと叩く。 狙っているのか偶然か、叩いているのは股間の高さで 3号よりも大きいモノが液体に揺られて動いていた。 そして3号は気付く。 自分と共通点が多いのに股間は大きく異なっている。 正確には男性器の根元。 自分のように付けたり外したりするようには造られていなかった。 完全に本体と生殖器が一体化していたのだ。 「気付いたかもしれないけど、この1号の股間は 〝付け外し〟できるようになってないわ。 そもそもあの時点で〝生殖器を外す必要性〟を 知らなかったから」 ノゾミが視線を上げて、動かぬ1号の顔を覗き見る。 「この男は本当にいい線いっていたわ。 凶悪犯罪を犯すくらい溜まっていたストレスを すべて怪人へとぶつけてね… そりゃ大活躍だったわよ。 でも―――」 再び股間へと目を戻し、もう一度培養管を叩いた。 「性欲も有り余っていたんでしょうね。 彼の罪の中には強姦も含まれていたし… 〝オナニーじゃ物足りない、女を抱かせろ〟ってわめいていたわ。 フェラやパイズリくらいなら私がシてあげられるけど、 こっちだってあんなゲスを相手にしたくなかった… かといってヒーローを風俗に行かせる訳にもいかないし、 …さてどうしようかと迷っているうちにこの男は、 あろうことか女怪人に手を出したのよ」 「え!」 3号が戦った〝赤爪のライラ〟も女怪人であり、 確かに妙な色気はあったが性的に襲うなど考えられなかった。 「怪人とヤったのか!? てゆうかヤれるのか!」 「ヤれると思うけど… ヤってないわ」 「?」 「逆にやられたの」 「!?」 ひと呼吸おいてからノゾミが詳細を話す。 「監視ロボを通して見てたけど相手はまだ未熟な女怪人でね、 1号にとっては雑魚だったわ、だからか… この男は女怪人を押し倒してその未熟な体の前で 勃起させた生殖器を露出させたの。 こういうのもなんだけどどっちが怪人か分からなかったわ。 …でもね、いくら未熟でも怪人を舐めてはいけない。 ヒーローとして最低の心構えを失ったこの男は… 手首から飛び出した小さな刃でシュシュッと切られちゃったの」 「ど、どこを…?」 「男性器を♪」 「ひッ」 3号は腰を引いて股間を押さえた。 彼も〝赤爪のライラ〟から膝金的を喰らったばかりなので 余計に生々しい想像を働かせてしまったのだろう。 「〝竿〟に二回、〝玉〟に一回の斬撃だったわ。 急な反撃に驚いた1号は飛び退いたけど、着地と同時に 陰茎の中心と亀頭らへんから輪切りに崩れ落ちて 玉袋も真ん中から横に真っ二つ♪ 上下に斬り裂かれた二つの玉が袋の中からこぼれ落ちて… あ、上半分は管がつながってブラブラしてたかしら、 1号は声も出せないくらい痛がってたわね――」 「も、もういい! 〝その辺〟は詳しく説明しなくていいから」 耳をふさぐ3号とシワシワに縮む股間を見て、 「あら、そう?」とノゾミが少しとぼけるように言った。 どうやら分かって詳述したらしい。 「―――で、そうなった男はもう赤子も当然。 一歩も動けないところを切り刻まれて負けちゃったってわけ」 「………そうか」 1号についていた大きな傷は怪人によるものだったのか、と、 3号は少し安堵した。 用済みとなったヒーローが 組織から処分された可能性も考えていたからだ。 同時に、陰茎と陰嚢には説明通りの傷跡が付いており、 今の冗談であってほしい話が本当であることに戦慄する。 しかし、続く言葉はさらに恐ろしいモノだった。 「だから2号は〝男性器そのものを無くしたの〟 性欲のせいで格下相手に負けたからね」 「は!?」 驚愕する3号へとノゾミが掌を向ける。 「あぁ誤解しないでね。 〝2号の元〟となったのは貴方と同じバイク事故で死んだ男 なんだけど、事故にあった時点でもう股間がグチャグチャだったのよ。 バイク乗りなら分かるでしょ?」 猛スピードで走る鉄の塊にまたがった状態での交通事故は 股間もただでは済まず、事実、バイク事故で陰嚢や睾丸に 大けがを負うケースは多い。 「あと、遺体から大量のアルコール成分が検出されたし、 身元を調べたら交通違反常習者だったから こっちも罪悪感なく玉無し竿無しヒーローに 改造する事が出来たわ」 1号に続きこいつもどうしようもないクズだから実験体に もってこいだった、そう言いたげな目で2号の培養管を叩く。 「……こいつはどういう風に怪人にやられたんだ?」 3号が少し近づいて2号の死体を観察すると、 生殖器が無いと同時に傷らしい傷がついてない事にも気づく。 「怪人じゃないわ」 「!」 まさか今度こそ組織自体に消されたのか! そう身構えるが 事実はさらに悲しいものだった。 「自殺よ。 ある日突然発狂して… 頭を壁に何度も打ち付けてね」 改めて死体を見ると、その頭部は少しだけ歪んでいた。 「な、なんでそんなことを」 「私には〝無いから〟ハッキリと言い切れないけど 睾丸は男性ホルモンの製造臓器でもあるからねぇ、 肉体の無理な改造に加えてホルモンバランスも乱れたせいで 精神が耐えられなくなったんじゃないかしら」 無責任に言い放ったノゾミが3号をじっと見据える。 「―――これまでの説明で不安にはなったでしょうけど アナタは大丈夫よ。自信作だもの」 「だ、大丈夫な補償なんてないだろ!」 大声を出す3号に対してノゾミは背中を向け、 1号と2号の死体を見上げた。 「まぁ聞きなさい。 この二人と違ってアナタは違法者じゃないし、 私も〝実験体〟を糧として完成品を造るつもりで心血を注いだのよ。 ほらっ ゲームなんかでも三作品目でシステムが 完成することが多いじゃない」 「…よく分からん」 同意を得られなかったノゾミが振り向いて強引に話をまとめた。 「とにかく。 その〝取り外せる男性器〟はヒーローとして画期的なの! 男にとって最大の弱点を外して戦えるし、 ちゃんと〝男の楽しみ〟を味わう事で精神的にもいいし、 欠点は無いわ!」 そう言われても不安は払拭しきれなかったが、 ヒーローも怪人も何も知らない一般人だった3号には ノゾミを信じるという選択肢しかなかった。 ~十日後~ 怪人の発生頻度は週に二回から三回。 なので、この十日間は異例ともいえる平和な期間であり、 3号もじっくりと〝現状〟について学ぶ事が出来た。 「――おわったおわった、っと」 トレーニングを終えた3号が自室のベットへ飛び込んだ。 「怪人が全然出てないみたいだけど… それが不気味だな」 寝返りを打って天井を仰ぐ。 「聞いたところ〝向こう〟の対応力はヤバイらしいし…」 ノゾミから色々と聞かされた中でも特に驚いたのが 〝科学力では怪人側の方が進んでいる〟ということ。 〝ヒーロー〟は人間をベースに造られるが、 〝怪人〟はゼロから生み出される。 それゆえ〝敵に対応した怪人〟を短期間で造り上げてくるのだ。 1号が性欲のせいで負けた後は露骨に女性怪人の数が増えた。 ここまでの情報共有力と対応力を持つ怪人たちが 十日間も沈黙する理由は… 「どう考えても〝俺に対応した怪人〟を造っているってことだよな」 3号は強烈な金的を喰らってもほとんどひるまずに 〝赤爪のライラ〟を撃退した。 その情報は既に怪人全体へと回っているはず。 となれば奴らはどう考えるか。 2号と同じく弱点そのものを取っ払った―― 強烈な防具を着用している―― 弱点の位置を変えた―― 取り外して安全なところで守っている―― ノゾミたちも向こうの出方を予測する会議を開いているが、 後出しで来る怪人は厄介なものに違いない。 「………ま、その辺はノゾミさん達に任せて 俺は俺でトレーニングを重ねるしかないな」 と、3号がもう一度寝返りを打った直後。 ビー! ビー! 『怪人発生! 怪人発生!』 「ッ!! マジか!」 十日ぶりとなる警報が鳴り響き、 3号はすぐに現場へ向かう事となった。 ※ トレーニングを終えたばかりとはいえ、いつ怪人が発生してもいいように メニューは軽めだったので3号に疲れなどは無く、 現場で暴れていたザコたちはあっという間に退治された。 「ふぅ… いやいや油断するな、ここからが本番だ」 ザコを倒せばボスが出てくる。 前回のように後ろは取られまいと周囲を満遍なく注視した。 (警報が鳴ったからか、ビルとか店とかある場所なのに 人ひとりいない……人質にされても困るから好都合か……ん!) ピリッと静電気のような刺激が走り、上を向くと 何者かがこちらめがけて急降下してきた。 「おわ!!」 間一髪で回避したが、蹴りぬかれた地面は大きくへこみ、 周囲には黄色い火花が散っている。 「で、電撃!?」 薄い煙の奥から幼い女性の声が聞こえてきた。 『ヒーロー3号。 お前はこの〝黄鱗のロギィ〟様が倒す!』 黄色に発光する鱗が腕や足に張り付いた女怪人だが、 その体格は小さく、顔つきは少女のものだった。 「!」 ノゾミから聞いていた。 怪人にも人に似た成長段階があり、〝3号対策〟として 最近生み出された怪人は子供の見た目をしているはずなので、 もし出会ったら特に注意せよ、と。 『いっくぜー!』 顔は美のつく少女だが、長髪のわきから生えた二本の角や 手足に張り付いている光る鱗は人間のものではない。 しかも、つるぺったんボディの〝大事な部分〟が鱗で隠れているだけ という格好なので3号も色々とやりづらかった。 (俺はロリコンじゃないしチンポも無いからムラムラはしないけど… 見た目が少女ってのは殴りにくいな… なんかピリピリするし) 〝黄鱗のロギィ〟は見た目通りの電撃属性。 素早い動きからの一撃一撃は破壊力は無いものの、 防御しても手足が痺れてしまうという厄介な追加効果があった。 ただ、3号対策として生み出されたのがこの電撃攻撃なのか、 という疑問も沸いたが、彼女の狙いは〝次の手〟にあった。 バチィッ!! 手足に痺れが蓄積したところで股間を殴ってきたのだ。 「おぅッ」 反射的に体を折ってしまうが、やはり痛みはそれほどでもない。 なのにこの怪人少女は。 『ほらほらほらほらぁッ♪』 股間への連撃を続けるのだ。 「うッ…ぬ…」 大の男相手に少女が取る戦法としては正解だが、 3号の情報を持っている筈の怪人がたいして効かぬ 金的攻撃を続けるのは不自然だった。 ところが、その不自然な戦法の効果は 遠く離れた場所で表れた。 「……え!」 モニターで3号の戦闘を見守っていたノゾミ、 のかたわらに置いてあった男性器がピクリと動いたのだ。 「これは…」 続けてピクピクとうごめき、「まさか!」とモニターを見ると その脈動は金的攻撃と連動していた。 (―――あの少女型は間違いなく3号対策に造られた個体。 戦闘光景からも電気系統の能力を持っているのが見て取れる。 そして、睾丸(じゃくてん)の無い股間を叩き続け、 その度に彼の生殖器が反応している) ここまでそろえばノゾミで無くとも分かる。 「なんてこと」 今、3号の股間を通して〝生殖器の位置〟が探知されていたのだ。 「まずいわね――!」 探知には快感が伴っているのか、ペニスの先からは 先走りが滴り出している。本体と繋がっていないので血は流入せず 勃起も起こらないが明らかに性的な興奮をしていた。 「急いでコレを隠さないと」 白衣の前を開けたノゾミはすぐに男性器を谷間深くへと埋め込み、 再び白衣を閉めた。彼女の白衣も〝胸を小さく見せる〟特殊品で 多少なり電波対策になるがあくまで応急処置、ノゾミは周囲を見渡して 電波を完全に遮断できる物を探した。 その時、現場では――― 「い…いい加減にしやがれ」 3号は〝黄鱗のロギィ〟を捕まえる事に成功していた。 『ぐぬ…』 左右の二の腕を掴まれたら体格の小さい彼女は圧倒的に不利となるが、 それでも攻めの姿勢は崩さなかった。 『こッの… はなせスケベ!』 ここでもまた股間を蹴り上げてくる。 「ふぉッ」 足にも電気を纏っていてビリッとした衝撃が下腹部に広がったが、 〝玉がある時〟に比べれば痛みは無いに等しい。 「……じゃあ、はなしてやるよ、おらぁッ!」 『わわわ!?』 〝赤爪のライラ〟と同様に思いっきり投げ飛ばし、 分厚い壁へと叩き付ける。 『んギャ』 これにて決着。 のはずだが、3号は〝変な感じ〟に戸惑った。 「ん! んん?? お……」 違和感というよりは快感。 下腹部が… 股間が… 〝なんとなく気持ち良かった〟のだ。 「な… なんだこれ… おふ♡」 ペニスが無くとも分かる。 これは性に関係した気持ち良さ。 勃起や射精に伴う〝人前で感じてはならない〟気持ち良さ。 だがなぜ今… 竿も玉も無い自分が感じたのだ… 「どうなってやがる…… あ!」 困惑しているうちに倒れていた〝黄鱗のロギィ〟がいつの間にか 遠くに逃げており、こちらに向かってあっかんべ~してから 走り去っていった。 「………勝った、けど、 なんか色々とおかしい点が多かったな」 小首をかしげるヒーロー。 その本拠地で、彼の生殖器が… 「え、えぇ~~…」 ノゾミの谷間深くで射精していた。 勃起していないのに〝平常時〟のまま、 柔らかいペニスの先からドプドプと少しづつ、 しかし大量の精液を漏らしていたのだ。 「ま、まさか射精までしてしまうなんて… いえ、それはいいわ。 問題はあの怪人が〝自分から撤退していった〟という事。 自ら退いたという事は〝もう目的は果たした〟という事。 3号の弱点、つまり〝コレの位置は探知されてしまった〟という事。 ひいてはこの施設の位置まで知られてしまったというこ事。 …………少しまずいわね」