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【無料】愛妻廃業

■  夜見雅人は夕食の席に着いた。 「いつも通り、美味しそうだね」 「今日は特別よく出来たものがあるの。どれだか当ててみて」  根菜の煮物、揚げだし豆腐、山菜の和え物、五穀米……いつも通り、食卓に肉は見当たらない。妻の麻里佳は、動物愛護の観点から菜食主義の立場をとっている。「他に食べるものがあるのに牛さんや豚さんやお魚さんの命を奪う必要はないと思うの」と彼女は言う。結婚してから今月で三ヶ月目――たまには家でも肉が食べたいと思う。だが、麻里佳の作る料理は玄人顔負けの味で雅人を満足させてくれる。 「この揚げだし豆腐、美味しいね」 「そうでしょう。それが自信作」 「美味しいだけじゃなくて、心が弾む味がする」 「どういうこと?」  麻里佳は箸を止めて小首をかしげる。 「僕への愛情が伝わってくるってことだよ」と答えると「もうっ、そんなこと言って」と赤面されてしまった。恥じらう彼女を見て、ますます箸が進む。自分のような男が麻里佳と結婚できたのは奇跡以外の何物でもないと思った。  背中に流れる長髪は典雅な漆黒。瞳は黒目がちで、涙袋が目元にわずかな影を落としていた。ほんのりと丸みを帯びた鼻先が、完璧に整った顔全体に穏やかな印象を与える。華奢で小柄な体は、名匠が手掛けた硝子細工のように均整がとれている。  年齢は雅人と同じ二十七歳。だが、十歳サバを読んだところで誰ひとり疑いはしないだろう。造作以上に、神々しい雰囲気が彼女を若々しく見せている。人間ではなく、妖精や天使と見なすべきではないかと雅人は考えている。  一方、雅人の外見は、中肉中背、顔立ちも良からず悪からず……実に冴えないものだ。  麻里佳との出会いは去年。よく利用する古書店の店主が主催する読書会に参加した際に知り合い、雅人のほうから交際を持ちかけて恋人になった。異性に縁のなかった雅人にとっては、麻里佳が初めての女性だ。しかし、麻里佳のほうも、雅人が初めての相手だと知って驚いた。言い寄る男は多かったが、下心丸出しの告白を断るうち、男女交際それ自体に嫌気が差してしまったのだという。  それならどうして僕の告白には頷いてくれたのと尋ねると、彼女は悪戯っぽく笑い、「下心だけのひとはあんな不器用な告白をしないから」と答えた。知れば知るほど麻里佳は魅力的で、気がつけば結婚まで申し込んでいた。  雅人はそれなりに名前の知られた商社に勤めている。麻里佳はフラワーショップの店員として働いていたが、結婚を機に退職し、今は専業主婦として雅人を家庭から支えてくれている。今は年季の入ったアパートで暮らしているが、しばらくしたらそれなりの物件に引っ越すつもりでいる。子作りはそれから――というのは暗黙の了解だ。だから、当面は避妊具の世話になるだろう。  夕食を済ませると、ふたりで協力してキッチンを片付けた。その後は居間のソファーに並んで座って、他愛もないバラエティ番組を見る。ふたりとも、番組ではなく、ふたりで過ごす穏やかな時間を楽しんでいた。  そうだ、と麻里佳が呟く。 「今週の土曜日は休めそう?」 「たぶん。何かあるの?」 「だったら、ショッピングモールに行きましょう。一緒に洋服を選んでほしいの」 「僕じゃ有益なアドバイスができるとは思えないけど。ロバを連れて行くのと変わらないよ」 「好みか好みじゃないか言ってくれればそれでいいから」 「なるほどね。それならロバよりは役に立てそうだ」  彼の物言いに麻里佳はくすくすと笑いを漏らした。  最近は仕事が忙しくて、麻里佳と一緒にどこかへ行くのは久しぶりだ。「楽しみだな」と言うと、「私も」と微笑みが返ってくる。すべての男を恋に落とせるであろう笑みが、この世でただひとり、自分のために浮かべられている。強烈な欲望が雅人を襲う。抱きしめたい、と腕を動かしかけたところでCMが明け、芸人の喚き声が衝動を挫いた。  抱きしめておけばよかった――と雅人は後々強烈な悔恨を抱くことになる。  その翌日、雅人が仕事に行っているあいだに、麻里佳は忽然と姿を消してしまった。近所のスーパーの防犯カメラに、買い物を済ませて出ていく姿が残されていたが、それ以降の足取りは警察がいくら捜索を重ねても掴めなかった。一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月と無為に過ぎていく時間――雅人は仕事を辞めて彼女の行方を追ったが、警察組織にできなかったことがたかが一市民にできるわけもない。  麻里佳の失踪から一年と半年が経過し、蓄えが尽きかけた頃、別人のように痩せこけた雅人のスマートフォンに見知らぬアドレスからメールが届いた。件名はなく、本文もない。ただファイルがひとつ添付されているだけだ。ファイルのタイトルは「夜見麻里佳改造報告書」。今、雅人がいるのは夫婦の寝室。時刻は昼だが、カーテンが締め切られているため、部屋は薄暗い。乱れたベッドには、麻里佳の香りはもう微塵も残ってはいない。  雅人は指を震わせながら、そのファイルを開いた。 ■ 『最初にどんな挨拶を書くべきなのか、私にはわからない。』  という文章で、忌むべき報告書は始まっていた。 『挨拶というのは相対する者への親愛のメッセージだ。しかし、私は君と仲良くなりたいとは露ほども思っていない。君のほうだって、妻をさらって、一年半もの長きに渡り、君と離れ離れにした人間と親しくなりたくはないだろう。』  報告書の執筆者は男。目をつけた女性を略取しては自分好みに改造するのを趣味にしている――何の罪悪感も感じられない筆致でそう述べられていた。女性の略取にあたっては、警察や報道にも睨みをきかせて邪魔が入らないようにしている、という記述から、相当な権力と資産の持ち主であろうと推察できた。とすると、それなりに年齢は重ねているのだろう。 『麻里佳を初めて見たのは、クラシックのコンサート会場だった。開演前、私が落としたハンカチを拾ってくれたんだ。ありがとう、と礼を言った時にはもう、彼女をどうするかを決めていたよ。』  確かに失踪の少し前、麻里佳はクラシックのコンサートに行っていた。楽団にいる友人にチケットをもらった、と言っていた気がする。雅人も誘われたが、平日夜は残業が発生するかもしれないからと断った。もしも断っていなかったら運命は違ったのだろうか。  男は人を雇って調査を行い、麻里佳の身元を突き止め、身柄を我が物にした。彼にとっては、バターにナイフを入れるように造作もないことだった。麻里佳をさらってすぐ、男は彼女を抱いた。まずは素材そのままの味を楽しもうと考えたのだ。当然、麻里佳は抵抗したが、逆らったり、逃げようとしたりすれば、雅人に危害を加える、それどころか筆舌に尽くしがたいほど無惨に殺す、と言ったところ、たちまち大人しくなった。 『ずいぶんと愛されていたようだね。羨ましいよ。でも、性的能力については、君が私を羨むべきだな。君は麻里佳を絶頂させた経験がないらしいじゃないか。あれほどの美女を相手にしてそんな体たらく、申し訳ないと思わないのかい? 同じ男として嘆かわしい。代わりに謝罪しておいたよ。麻里佳には憤慨されてしまったがね。』  確かに男の言う通り、麻里佳を絶頂させた経験はない。努力はしたが、叶わなかった。己の技術的な拙さを彼女に謝罪したこともある。しかし、麻里佳は雅人の気持ちが何の問題もないと微笑んでくれた。 『大切なのは愛。愛のない性行為に意味はない。そんな御高説を垂れていたが、いざ抱いてやると、こちらが驚くほど乱れてくれたよ。最初のうちはどうにか耐えていたが、少し本気を出しただけで、潮まで吹いて狂っていた。意味のない性行為で迎える意味のない絶頂――その感想がどんなものか、尋ねておくべきだったと今になって後悔しているよ。」  その文章の下に、動画が埋め込まれていた。  見たくはない。だというのに、憑かれたように、雅人はそれを再生してしまう。 『あっ♡ あっ♡ はあっ♡ んんんっ♡ もうやめてっ! やめてください! 雅人くんのところに帰し……あああっ♡ イくっ♡ 嫌なのに……イきたくないのに……イくっ♡ イッ……ちゃう……♡ ごめんなさい、雅人くんっ♡ ごめんなさいっ♡ おっ♡ おっ♡ おお゛~~~~~~っ♡♡♡』  ベッドに全裸で仰向けになった麻里佳。それを正常位で貫く男の視点で、動画は撮影されていた。吹き出す汗。紅潮した肌。桃色に濡れた喘ぎ声。麻里佳は雅人が見たことがないほど激しく乱れている。結合部は映っていないが、こんなことをする人間が避妊具を装着していたとは思えない。この男は、雅人も知らない感触を直に堪能したのだ。 『一週間程度、普通に彼女を抱いて楽しんだと思う。』  と、動画の下に文章が続く。 『彼女の名誉のために言い添えておくと、そのあいだ、麻里佳はずっと君に謝罪していたよ。ごめんなさい、許してくれ、とね。』  ばき、と雅人の耳に不快な音が刺さる。噛み締めすぎた奥歯が割れたのだ、と遅れて気づく。こんなもの読みたくはない。そう思うのに、彼の指はスワイプを続け、視線は文章を追ってしまう。今まで感じたことのない強烈な感情が胸に逆巻いていた。それがどんな名前で呼ばれるべきものなのか、雅人にはわからない。 『素敵な時間ではあったが、あいにく私が求めているのは特別な時間でね。では、ここからは私が彼女をどんなふうに改造していったのか、順を追って書いていこう。』 ■  bimboという単語を知っているだろうか、と男は尋ねる。 『知らなくても無理はない。英語の試験で問われるような単語ではないからね。セクシーだが頭が空っぽな女性を意味する英語のスラングだよ。麻里佳にはそのbimboになってもらうことにした。本来の清純な彼女とはあまりにも違う。だからこそ、その過程を楽しめると考えたんだ。』  変えるべき部位は無数にあったが、まずは骨格から手をつけることにした。 『bimboは必ずしも人種を限定しないが、白人女性というのがお決まりになっているからね。日本人らしい奥ゆかしい体つきとはお別れしてもらった。』  最新の技術のみならず、研究途中のものや、倫理的に問題があると葬られたものまで惜しげもなく投入して、男は麻里佳の体を改造していった。肩幅を広く、胸部と腰部を厚く、骨盤を横に広げる……麻里佳の体型は、またたく間にモンゴロイドとしての特徴を失い、コーカソイドのそれへと変わった。 『体が済んだら次は顔だ。』  鼻筋を高く、目はアーモンド型の二重に、顎のラインはシャープに……容赦のない整形で、麻里佳の顔は体同様、日本人離れしたものへと変えられていった。 『ここを弄るのは難しかったよ。人種を改変しつつ、麻里佳としての印象は残したかったからね。執刀医や技術者と何度もミーティングを重ねた。顔の作りを整えるというより、新しくひとつ顔を建造するような経験だったな。』  体、顔、その次は肌が改変の対象となった。麻里佳の肌は元々白いが、それはあくまでも黄色人種の白色――メラニン破壊の効果がある薬を塗布したおかげで、温かみのある白は透明感のある白へと変わり、血潮の赤を仄かに透けさせた。 『それから髪だ。bimboな白人女にはゴージャスなブロンドが欠かせない。』  男は麻里佳に酸素ボンベを装着させ、その全身を特殊な溶液で満たしたタンクに長時間漬け込んだ。溶液の効果は毛髪の融解――毛根までも破壊する強力な代物だ。頭髪、眉毛、睫毛、脇毛、陰毛、産毛までも……体毛という体毛を根絶し尽くした後は、人工毛を植えつける。素材は耐熱ファイバー。耐久性が高く、加熱によるアレンジも可能な代物だ。徹底的な植毛により、華美な金髪とそれと同色の体毛が各所に作り出された。 『見たまえ。これがここまでの成果だ。見事なものだろう?』  その文章に続いて貼られている画像に、雅人は言葉を失う。  クリーム色の壁を背景にして呆然とした表情で立つ全裸の白人の女性。その造形に不自然なところは見いだせない。すらりとした体躯。美しい白肌。流麗な金髪。澄んだ青の瞳についての記述はなかったが、それはコンタクトレンズの産物だろうか。……変わり果てているのに、麻里佳としての面影は確かに感じられる。だからこそ、その無惨な差異は際立った。 『しかし、スリムな体は、美しくはあっても性的魅力には欠けている。グラマラスな体型こそ、bimboの醍醐味だ。では、どうやって胸や尻を豊かにするか? シリコンバッグ挿入や脂肪注入も悪くはない。しかし、今回は素材の優秀さに敬意を払って、これまで試したことのない方法を試すことにした。』  麻里佳に投与したのは、すでに第二次性徴を遂げた女性に、さらなる成長を強いる薬――しかし、効果があまりにも急速かつ激甚すぎるため、どこの国でも承認を得られなかった代物だ。本来の麻里佳の乳房はAカップ。事前の推定では、それがIカップ程度にまで成長するだろうと見込まれていた。 『どういう結果になったか、動画を見て確認してくれ。』  雅人の指が動き、動画が流れ始める。先程の画像と同じクリーム色の壁を背景にして、全裸の白人女性――ではなく麻里佳が一人掛けのソファーに座っている。  彼女が白い顔を蒼白にして見下ろすのは、自身の胸部だ。あるかなきかの膨らみが、じわじわと大きくなっている。『い、嫌っ!』という悲鳴も虚しく、望まれぬ成長は坂を転げるように加速していく。AカップがBカップ、BカップがCカップへ……胸の谷間や下乳の影といった、これまでは存在しなかったものが形成されていく。人体がそこまで急激に変化していく様子は劇的を通り越して滑稽ですらあった。 『もう大きくならないでっ。お願いっ。お願いだから!』  乳房を両掌で押さえつけて、麻里佳が叫ぶ。しかし、乳肉の膨満は止まらない。指檻を内側から押し上げつつ、その隙間からむにゅむにゅと柔らかな盛り上がりを見せる。無いに等しかった麻里佳の乳房は、今やおそらくDカップ――巨乳の領域へと足を踏み入れている。麻里佳に痛みを感じている様子はない。 『んんっ♡ やっ♡ 止まってっ♡ おっぱい、もう大きくならないで……♡』  紅潮した頬。焦げた息遣い。潤んだ目。痛みどころか、彼女を襲っているのは間違いなく快感だ。身が切なくよじられ、内腿が擦り合わされると、濃厚な愛液の匂いが画面越しに伝わってくるような気がした。  乳肉の爛熟につれ、麻里佳の声は糖度を増していく。  いくらも経たないうちに、乳肉は掌には収まらないサイズへと肥大を遂げた。抜群の柔らかさのあまり、押さえつけている手指が乳海にずぶずぶと没した。胸にばかり注意を奪われていたが、その下肢も乳肉同様に熟れていっている。臀部は大きく。太腿は太く。膨れ上がっていく一方の肉感に、威圧感すら覚えた。さらには、悲鳴をあげる唇までもが淫らに厚みを増していく。  巨乳が爆乳となっても、豊乳化の勢いは衰えない。飢獣が獲物を食らうような貪婪さで、麻里佳の胸は大きくなり続けた。「ああ……」と諦めの吐息を吐いて、麻里佳の腕が垂れる。掌の保持を失った乳肉が、自重で甘く垂れる。長く伸びた谷間は、すでに容易に底を覗けないほどに深い。 『ああっ♡ 嫌っ♡ 嫌っ♡ こんなの……もう、嫌……♡』  甘すぎる声で絶望を訴える麻里佳。乳と歩みを合わせて熟れゆく下肢が痙攣しているのは、絶頂を重ねているからなのだろう。淫らな胸の変化が勢いを止めたのは、左右の乳肉それぞれのボリュームが自身の頭部を上回ってからだった。 『あ……あ……』  ようやく快感から解放されて、麻里佳はソファーの背もたれにぐったりと崩れ、荒く呼吸を喘ぐ。その瞳には、一切の光が見当たらない。淫らに咲いたぶ厚い唇。麻里佳自身を上回る存在感を誇る乳房。正面からでもその莫大な質量を確認可能な尻。むちむちと女の脂を詰め込んだ太腿。……それらを順繰りと接写して、映像は終了した。 『計測の結果、最終的な乳房の大きさはLカップだと判明した。当初の想定を大幅に上回る成長ぶりだ。まさか彼女に爆乳の才能が眠っていたとは思いもよらなかったよ。予想外のことが起きるからこそ、人生は面白い。』  これで彼女の肉体の改造は一通り終了した、と男は書いている。 『改造は次の段階に映った。肉体の次は精神の改造だ』 (続き→ https://ringokidjp.booth.pm/items/7354022 )

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