■ 「教えて」 早瀬ユウカは言う。 「リオ会長はどこにいるの?」 予想通り、厳しい声で詰め寄られても生塩ノアの微笑みは崩れない。キーボードから指を離した彼女はむしろ笑みを深めた。 「私にはわかりませんよ、ユウカちゃん。リオ会長は現在行方不明なんですから」 「違うわ。あなたがどこかに勾留してる――そうでしょう? 正直に答えて」 ミレニアムサイエンススクールの生徒会であるセミナー。その会長を務めていた調月リオは、ノアの言葉の通り、現在失踪している。姿を消す前に彼女がセミナーの資金を横領して建設した要塞都市エリドゥにまつわる一連の騒動――シャーレの先生、ゲーム開発部、特異現象捜査部、エンジニア部、C&C、そしてユウカたちの奮戦によって無事に収束したそれは、影響を考えて一般生徒には秘匿されている。 辞表だけを置いて消えたリオの行方について、ユウカは独自に捜査を続けていた。独善的で、冷徹で、度の過ぎた合理主義者で、今回は道を間違えてしまったけれど――やはり、セミナーの長たる人間は彼女であるべきだ、と思ったのだ。 ネットの書き込み、噂話、金銭の動き……様々な情報から真実らしきものを拾い上げ、つなぎ合わせる。そうして浮かび上がってきたのは、ユウカの友人であり、生徒会の書紀、騒動の際には一緒にリオに立ち向かったノアがリオを拘禁しているのではないか、という疑惑だった。いや、ユウカの中で、その疑惑は確信に近いものとなっていた。 「どうなの、ノア」 答えなさい、と迫ると、ノアは表情を崩さないまま、 「ばれてしまったのなら仕方がありませんね」 何の躊躇いもなく、自分の仕業であることを認める。 「どうしてそんなこと――」 それはですね、とノアは言った。 「もしまたリオ会長が何か問題を起こしたら、今度は隠蔽しきれるかわかりません。ミレニアムの権威が揺らげば、キヴォトスのパワーバランスが崩れてしまいます。そうなれば混乱は必至――それを防ぐためです」 それはわからないでもない。実際、その通りだろう。しかし、それならばセミナーとして監視勾留すればいい。実際、黒崎コユキの時にはそのように対応していた。ノアが私的にそれを行う必要はない。それを言うと、ノアはやんわりと首を振った。 「あのリオ会長がそれで大人しくしていると思いますか?」 「それは――」 思う、とは絶対に言えない。もし何か目的があれば彼女はそこを脱してしまうだろう。前回は奇跡的に計画を阻止できたが、次回はどうなるかわからない。 「だから、私はリオ会長に大人しくしてもらう方法を考えたんです。セミナーでは絶対に採れない方法を。安心してください。資金は私の懐から出ています。苦しめたり、痛めつけたりはしていません。むしろその逆――幸せを与えてあげているんです」 それはどういうことなのか、と問いかける前に、ノアが立ち上がった。 「それじゃ、行きましょうか。――ちょうど今はリオ会長が『幸せ』になっている時間なんです。その様子を見ればユウカちゃんも納得してくれると思います」 ノアの瞳に浮かぶ色は、これまでに見たことのないものだった。ユウカは思わず後ずさりかけたが、拳を握りしめ、かろうじてそれに耐えた。 ■ ミレニアムサイエンススクール自治区内のとある場所に建つ建物の地下。今、調月リオはそこにいる。 パステルピンクの壁と天井、ピンクラメのシーツが敷かれたハート型のベッド、一面を占める大鏡――リオでも、それがラブホテルの部屋を意識して作られていることは理解できた。広々としたその部屋にはバスルーム、トイレ、キッチンまで揃っているが、外部との通信手段は一切なく、外へと続く扉も生体認証でしか開かない。 生塩ノアによって捕らわれ、ここに閉じ込められてどれくらい経ったのか。それを考える余裕はリオにはない。ソファーで身をこわばらせる彼女の頭は別のことでいっぱいだ。 「何緊張してるんですか? もっとリラックスしましょう★」 「そうです。そんなに硬くなってたら楽しむものも楽しめませんよ♡」 リオの右隣に座るのは鰐渕アカリ。ゲヘナ学園3年生で、美食研究会に所属している生徒だ。美しい金のロングヘアー、それを飾る黒角、澄んだ碧の瞳――今、その瞳には嗜虐の光が凶暴に輝いている。 そしてリオの左隣に座るのは十六夜ノノミ。こちらはアビドス高等学校2年生で、学校の抱える多額の負債を返済するための対策委員会に所属している。穏やかで気品に溢れた顔立ちで、ふわふわと柔らかく軽い雰囲気だ。黄緑の瞳にはアカリのそれとは正反対の慈しみが浮かんでいた。見られているだけで、意識を吸い込まれてしまいそうだ。 「リラックスなんてできるわけ……」 リオは耳まで赤くしながら言う。その声はかつてならば考えられないほどにか細く震えていた。それはこれから自分に何が起きるのかをよく知っているからに他ならない。 ふたりは制服を着ているが、彼女たちに挟まれたリオは一糸まとわぬ裸体だ。リオの股間――本来ならば女性器があるべきそこには、男性器が屹立している。形状、長さ、太さ、色合い、匂い、ぶらさがる睾丸。何もかもが本物と酷似しているその正体は、ノアがブラックマーケットで手に入れた人工ペニスだった。 一夜の快楽のために開発されたそれは、拘束具としてリオの股間に据えつけられている。 接合面に存在するナノマシンが、生体への一時的癒着及び神経伝達を行う仕組みだ。ただペニスとして機能するだけではなく、電気刺激を発してオスとしての欲望を装着者の脳内に生み出す。「要するに女の子で興奮できるカラダになっちゃう、ということです」――リオにそれを装着した際、ノアは言っていた。 解除コードを知るのはノアだけ。ハッキングを試みれば、ナノマシンが暴走してもう二度と癒着が解けなくなる。つまり、ノアがこれを外してくれる日が来るまで、リオは彼女に命じられた通り、この部屋にいなければいけない、ということだ。 くすくす、と笑いを漏らしながら、アカリとノノミがリオに身を寄せる。 「明日は新装開店のステーキハウスに行く予定なんです。今日はそのぶんの代金、たっぷりいただきますね」 「アビドスの債務返済のお手伝い、よろしくお願いします」 右耳と左耳にアカリとノノミが妖しく囁く。 二の腕に押しつけられるふたりの胸――どちらも爆乳と呼んでどこからも文句の出ないボリュームだが、衣類ごしでも、それぞれの肉質の違いがはっきりと感じられた。健啖家らしく、抜群の張りと弾力を感じさせるアカリの乳房。ノノミの乳房はどこまでも柔らかく、蕩けてしまいそうだ。 ここを訪れるのは、ノアに見込まれ、声をかけられた生徒たち。リオを1度射精させるごとに即座に口座に振り込まれる巨額のクレジット――それが彼女らの求めるものだ。金銭の出どころはノアの私財らしい。彼女の聡さであれば、どれだけの資産を形成していても不思議ではない。部屋の各所には極小のカメラが設置されている。それが撮影した動画と音声をAIが分析し、自動的に振込みを行なっているらしい。 ただし、単にリオを射精させるだけでは報酬は発生しない。彼女たちがそれを得るのは、リオをとある行為で射精させた時に限られる。それは―― 目配せをしあって、アカリとノノミが立ち上がる。リオを見下ろすふたりの姿は逆光になっているが、不気味に落ちた薄影の中、彼女たちの瞳だけは爛々と輝いている。少なくともリオにはそう感じられた。 「それじゃあ、そろそろ始めましょうか★」 「お待ちかねの――パ♡ イ♡ ズ♡ リ♡」 パイズリ。 女が左右の胸でペニスを挟みながら刺激を与え、男に性的興奮を与えるプレイ。最初に聞いた時には、そんなことが本当に気持ちいいのかと疑問だった。生殖器を愛撫するならば、容易に加減の効く掌で行ったほうが効率的なのにと思った。 しかし、今――その単語を耳にしただけでも、リオのペニスは、びっくんっ♡ びっくんっ♡ と物欲しげにいなないてしまう。女が感じることのないはずの感覚に呻きが漏れる。その鈴口からは早くも透明な粘液が滲み出始めていた。 ―――――― 続きはBOOTHにて頒布中です https://ringokidjp.booth.pm/items/5878971