―――――― 季節は春。うららかな午後の空気が、室内に満ちている。 私立碧洋学園――このミッション系の私立女子学園は、政治家や富裕層の子女が多く通っていることで知られている。多額の寄付金で建築・整備されている校舎はどこもかしこもセンスと清潔で磨かれているが、なかでもこの生徒会室は格別だ。 ヴィクトリア朝時代にタイムスリップしたかのような古風な内装のそこで、今、ふたりの女子生徒が穏やかに談笑していた。 「この紅茶、とても美味しいわ」 と、カップを手に微笑むのは望月香織――世界規模の造船会社社長の娘である彼女は、現在、学園の生徒会長をつとめている。 真っ直ぐ伸びた背筋に波打つ濃茶の髪。陶磁器のように白くなめらかな肌。はしばみ色の双眸。優美な顔立ちは、神が彼女を女神に据えるために造作したとしか思えない。北欧の血が流れている、と聞けば誰しもなるほどと頷くだろう。 「本当に美味しい。――茶葉も素晴らしいけれど、何より淹れ方がいいのね」 「ありがとう。でも、美味しくなるに決まっているわ。以前香織に教えてもらった通りに淹れたんだもの」 と答えるのは椎名紗綾。生徒たちの人気を香織と二分する黒髪が特徴的な麗人だ。旧財閥の流れをくむ企業グループ会長の孫娘であり、香織の指名で生徒会の副会長をつとめている。 ふたりは幼稚園以来の友人だった。 「そんなこと教えたかしら」 覚えていないわ、と可愛らしく小首を傾げる香織に、紗綾は笑みを濃くする。 「香織のそういうところ、昔から変わらないわね」 「それ、私が抜けていると言っているの?」 ぷう、と膨れた香織に、紗綾がクッキーを勧めようとしたその時、生徒会室の扉が叩かれた。ノックと呼ぶには焦燥しているその音に、ふたりは怪訝な表情を浮かべる。どうぞ、と招き入れる声を待たずに部屋に入ってきたのは香織の担任である女性教師だった。 「望月さん、来てくれるかしら?」 有無を言わさない口調にただならぬものを感じ、香織が「わかりました」と立ち上がる。「私も」と心配を抱えて立ち上がった紗綾を、教師は「椎名さん、あなたはここにいて頂戴」と掌で制する。 大丈夫、すぐに戻ってくるから――と言って出ていった香織が戻ってくることはなかった。香織の父の会社が破綻した、というニュースを紗綾が知ったのは帰宅してからのことだ。 ―――――― VIPのみに部屋を提供している高級ホテル――その大広間には、深夜にもかかわらず、多くの人間が集まっていた。それぞれ豪奢な料理や酒の並ぶテーブルを囲む彼らは、仮面舞踏会用のベネチアンマスクで目元を隠している。 彼らの視線の先――それまで暗がりに沈んでいた舞台に、スポットライトの点灯音とともに浮かび上がったのは、真紅のナイトドレスに身を包んだ美熟女だ。 「今夜はようこそおいでくださいました。――」 それから、女は流れるような舌使いでひとしきりの口上を述べた。 「それでは、そろそろ皆様のお待ちかねに移りましょう♡」 女がそう言うと、ふたたびの点灯音とともに、もうひとつのスポットライトが、舞台に立つ少女の裸体を浮かび上がらせる。その姿に、歓声とも悲鳴ともつかないどよめきがあがった。 見ないでくださいっ、と叫ぶ少女――望月香織の哀願を聞き入れる者は誰もいない。両手を手錠に戒められ、両足首に枷を嵌められた彼女は、逃げることもかなわず、ただその裸身を好奇の視線に晒し続けることしかできない。 父の会社の倒産を知らされたあの日から一ヶ月――それはつまり、学園にやってきた者たちに、莫大な負債の形代として囚われてから一ヶ月が経過した、ということでもある。 肌の色艶も肉付きも、以前と何も変わりはない。しかし、彼女の女性性は、股間にふてぶてしく実るものに粉微塵にされていた。男性器――そう呼ぶには、香織の股間に存在するそれは、あまりにも異様だった。 先端がドリル状になった肉棒は、だらりと下がった今の状態でおよそ二十センチ、根に連なる睾丸はグレープフルーツ大の大きさで、指でつつけば破裂しそうなほどに皮を張り詰めさせている。 「今回の品物には、豚の生殖器を改造ののち移植させていただきました。きちんと機能するのかって? もちろんです♡」 女が指を鳴らすと、香織の尻穴に抉りこまれたアナルバイブが振動をはじめる。香織は歯を食いしばりそれに耐えようとするが、豚ペニスはどこまでも快感に従順だった。だらりと垂れ下がっていたそれは、みちみちと肉の軋みをあげながら勃起を遂げる。物欲しげにいななくその全長は三十センチを超えていた。 人間ではありえない形に加えて、美しい少女の体に屹立している、という事実が、巨根をさらに長大に演出し、観客たちの失笑を誘っている。 そのあいだに、いったん袖にはけた女が舞台に押し運んできたもの――それは動物のメスを模した、いわゆる擬牝台だった。ほとんどすべての部品が透明なのは、観客たちの目を楽しませるためだ。 女は香織の手錠を外し、その手を強引に擬牝台の背中にあたる部分に存在する取っ手にベルトで固定した。足枷を外したのち、香織の腰を抱えて、勃起したペニスを擬牝台の「膣」へと突き入れさせる。温かなローションにぬめる感覚が、香織に望まぬ快美のうめき声をあげさせた。 「ただ勃起できる、というだけではないところをご覧いただきましょう」 や、やめてください――という香織の悲鳴を無視して、女はあらためて抱え直した彼女の腰を前後させはじめる。容赦のない抜き差しを強制され、悲鳴はすぐにあえかな悶えへと変わってしまう。 「ほら。さっさと射精なさい。みんなが心待ちにしているわよ」 という女の囁き――射精なんてしませんっ、と反抗の言葉を紡ぐことも香織にはできない。生まれて初めて味わうオスの感覚に心を大いに乱されつつ、彼女はオスの頂点へと強制的に押し上げられていく。 女の手が腰から離れても、香織の腰の動きは止まらなかった。それどころか、前後運動にさらに力がこもり、擬牝台の頑丈な筐体を軋ませていく。 止めなければ、という思いはあるのだが、それがどうしても行動に繋がらない。そうしているうちにも、香織の内側に熱いものが満ちていく。 「ああっ。ああああっ!」 吠え声と表現したほうがいいような絶叫とともに、香織は喉をそらし、決壊する。ゴム製の膣道に包み込まれたペニスが鋼のように固くなり、その脈動とともに特濃の白濁が怒涛のように噴出する。大量の液体は、筒の先端に繋がった袋へとなだれこんでいく。 その様子に、観客たちが嘲笑を浮かべながら、拍手をする。 「わ、笑わないで……。笑わないで、ください……っ」 もうこんな恥を晒したくない。その熱望を、何よりも香織自身の体が裏切ってしまう。ベルトの戒めなど関係ないほど強く取っ手を握りしめ、彼女は腰を振り続けていた。白肌に汗がじっとりと滲み、髪が肌にへばりついて、凄艶な図像を描き出す。 (ど、どうして、私の体っ……) なぜ、自分の体が自分の自由にならないのか。問いかけながらも、香織にはもう理由がわかっている。その答え――外科手術で植えつけられた豚ペニスは、まるで第二の心臓と化したかのように猛り狂っていた。 ああ、とその喉から絶望の色が濃い悶えが絞り出される。 (私、またっ……) 欲望の暴走にその身を慄かせつつ、香織は二度目の放精を行った。そして、三度目、四度目……射精を重ねるたび、香織のなかで、牡欲は解放されるどころか、さらに膨らんでいく。そして、その肥大にあわせて、香織の肉体が変化していった。 それに気がついた観客たちから、どよめきがあがる。 「勃起するだけではない、と言いましたでしょう?」 と、女が彼らにむけて挑発的な微笑みを浮かべてみせる。 三十センチあまりだった香織のペニス――それが、今や四十センチへと迫ろうとしている。ゴム筒は抜群の柔軟性を見せつつ、肉棒を密着して締めつけ、快感の度合いをさらに深め、香織を追い詰めていった。 大きくなっているのはペニスだけではない。睾丸もまたグレープフルーツ大からさらに大きくなっていく。張り詰めきった皮ごしに、精巣に煮えたぎる精汁の音が聞こえてきそうだった。 (しゃ、射精したら、駄目なのにっ……絶対に駄目なのにっ……♡♡♡) 果てれば自分の体がさらに変えられてしまうとわかっていながらも、腰の動きはやはり止まらない。焦げた息を吐きながら、早くももう何度目になるのかわからない射精を果たす香織――精液を溜めておく袋は、香織の体のどこにこれほどの水分があったのか、と思わざるをえないほど、たっぷりと白濁をたたえて破裂寸前に膨れ上がっている。 「絶頂のたび、性器は際限なく大きくなっていきます。――いかがですか、この玩具♡」 そして、女がオークショニアとなり、この催事の目的――香織の競売が開始される。天文学的な数字を飛び交わせつつ、皆が、堕ちた令嬢を手に入れようと躍起になっている。 熱狂の渦の外で起きていることを知覚しつつも、香織はどうしても腰の動きを止めることができない。もはやメロンを凌ぐ大きさに成長を遂げた陰嚢を揺らしつつ、香織は擬牝台の愉悦を貪ってしまう。 「あああっ♡ また出るっ♡ 出ちゃううううううっ♡」 白熱の入札合戦のすえに落札者が決定するのと、もはや五十センチに届かんとするペニスがいななき、白濁を溜め込んだ袋が内圧に耐えきれず破裂するのがほぼ同時だった。 解放された精液が、べちゃべちゃと粘度たっぷりにステージの床に垂れていく。蓄積した激感のになかば失神し、擬牝台に覆いかぶさるように体を倒しつつも、香織のペニスは隆々と勃起を続け、腰は名残惜しくカクカクと動いている。 そのあさましさには、さすがの観客たちも苦笑いを禁じ得ない。 擬牝台にもたれたまま、酸素を喘ぐ香織――いつまで経っても興奮は醒めやらず、体の細胞を燃やしている。一体、もう何度射精してしまったのだろう。わからない。わからなくなるほどの回数であるのは間違いなかった。 まともに立っていられなくなるほどの回数射精しても、香織はまだ射精し足りない、と感じてしまっている。今や、荒ぶる牡欲は香織の体力を凌駕していた。射精、という単語を思い浮かべるだけで、肉竿の先端から白濁がぴゅるぴゅると飛び出してくる。 「香織……」 という声に、香織は顔をあげる。 そこに立っているのは、女によって壇上に導かれたオークションの勝利者、つまりは香織の所有者となった人間だ。顔をマスクで隠していても見間違えるわけもない。それは椎名紗綾――彼女の長年の友人だった。 「紗綾……」 助けに来てくれたのであったら、どれだけいいだろう。しかし、そうでないのは、侮蔑に満ちた紗綾の目を見れば明らかだった。 「最初は助けるつもりだったの」 本当よ、と紗綾は話しはじめた。 香織が人倫に外れた競売にかけられるという情報を耳にして、彼女を助けるためにここにやってきたのだ、と。しかし――香織の晒した痴態を目の当たりにして紗綾の決意はあっけなく砕け散った。 「助ける必要なんてないわよね」 だって、と香織は言った。 「あなた、楽しんでるんだもの。苦境にない人に手を差し伸べる必要はない。――そうでしょう?」 「それはっ」 違う、とは言えなかった。香織の体が何よりも雄弁に紗綾の質問に答えていた。観客たちは、楽しげに囁きを交わしあいながら、彼女たちの様子を眺めている。 「香織、私はあなたを助けはしない。その代わりに、あなたのことを楽しませてあげることにしたの」 紗綾は前かがみになって香織と視線をあわせ、微笑んだ。親友が浮かべた笑みは、これまで香織が見たことのないほど凶悪で――それとは比較にならないほどに魅力的だった。 「これからよろしくね――豚さん♡」 豚、という忌むべき単語が、香織の心身を電撃が貫く。物理的には何の刺激も与えてはいないのに、肉棒から精液が撃ち出された。その量も粘度も勢いも、これまでとすら比べ物にならないほどに凄まじい。 「おおおっ♡ おおおおおおおっ♡」 擬牝台の取っ手を関節が白くなるほどに握りしめ、野太く濁った声を喉から漏らす香織――脈動のたび、肉棒はさらに果てのない急成長を遂げていく。そして、異形の肉棒は、とうとうゴム筒をもはちきれさせてしまった。 (私――私は――) 自分は一体何であるのか。 その答えを与えられて、ふたたび動きはじめる香織の腰――射精の快感それ自体を愛撫として、彼女は歯茎までも剥き出しにし、眼球を裏返らせつつ、怒涛のように切れ目なく精液を打ち出していく。呼吸の激しさのあまりに無様に鼻を鳴らしてしまう姿はまさに、 (豚♡ 豚♡ 豚♡) そうとしか言いようがない。 しかし、人間からの転落を不幸だとは思わない。なぜなら、香織は、これから紗綾の元で幸せを畜生の貪り続けるのだから。 (了) 過去月のバックナンバーはBOOTHにて https://ringokidjp.booth.pm/