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Lord to Road Game Book

大地色のタテガミをなびかせて、老いた獣剣士は君にこう言った。

「ではこうしよう。ワシに一撃入れてみい。

 それができれば、お前さんの望みを聞いてやろう」

彼は双剣を置いて、素手で相手をしてくれるようだ。君はこの申し出を受けてもいいし、受けなくてもよい。


モチベーション上げの落書きをTwitterに上げ、ちょっとした遊びで選択肢をつけてみたら、意外とご投票いただけたりしまして。流石に絵を描くのは大変なので、それぞれの選択後を少し文章で書いてみました。

【素手で挑む】

一瞬のことだった。

間合いも、構えも、しっかりと。ただ受け体であった彼に、そのまま渾身の一撃を叩き込もうと、その拳を振り抜いた……と、思った瞬間には、彼ではなく自分の視界がぐるりと裏返っていた。

「なるほど、腕に自信はあったわけか」

はっはと小さく息を吐くような笑い声を発しながら、老いた獣剣士は感心したような呆れたような声で、覆いかぶさるように覗き込んでくる。

気がつけば地面に大の字になっていた自分に、降り注ぐように流れる茶色のたてがみ。そして眼前の獣の困ったような微笑みに。まるで大地に抱き込まれたかのようだ、などと呆けてしまう。

「その気概たるや、よし。じゃが、鍛錬がたらんな。

 それでは口で言うだけの戯言と、然程変わらん。応えられやせん」

そういうと、岩のように硬い掌でぐいっと持ち上げられ、バンっと背中を叩かれて出口へと促される。

「また来るといい人間。自分に何ができるのか、それをちゃんと理解したあとにな」

振り返れば、老いた獣剣士は、すでに他の冒険者のもとへと足を運んでいるところだった。残念ながら、彼の期待には応えられなかったらしい。特に痛むところもない事に驚きながらも、しぶしぶその場をあとにすることにした。

(格闘に+1。廃都の出口まで戻る)

【交渉を続ける】

とてもではないが、素手でも武器を持っても、太刀打ちできる相手ではない。

そう察するのは難しいことではなかった。なにせその体躯だけで、並の獣人の倍は厚く、広い。どうしたどうした、と軽く手招きする老いたその顔は、しかし玩具で遊ぶ子供のような表情を浮かべていた。だが害意がない事が伝わったのなら、まだ方法はある。

「なんじゃ、せんのか」

少し残念そうな顔をしつつ両肩を上げて、さも不服そうな顔をする彼に、先の森で出会ったハイエルフから預かってきた文書を差し出す。彼はそのよく利く鼻で匂いを嗅いだあと、ほう?と小さく息を吐いた。

「交換条件というわけか。だがええのかね。

 それを持っておる事がわかった以上、ワシは力づくで奪う事もできるが」

言われた言葉にハッとし、とっさに手を引くが、そのときには獣はもう一度両肩を上げながら踵を返していた。おそらく今度は、呆れているのだろう。

「賢しい者よ、残念だな。その切り札は、もう少しあとで使うべきだった」

そういう彼が手を上げると、数人の獣人が周りを取り囲む。すまんな、と言いながら立ち去る彼に声をかけるより早く、周りの獣人が襲いかかってきた。

(交渉に−1。HPを最小まで下げる。ハイエルフの文書を失う。廃都の出口まで戻る)

【武器を持ち挑む】

周りの獣人達の、嘲笑うような声が聞こえる。

おそらくそれは、目の前の老いた獣剣士への絶対の信頼ゆえのものなのだろう。手に持った長剣を持つ手がしびれ、構えた盾はすでにひしゃげつつある。何度か兜の上から殴られ、頭はぐわんぐわんと鐘のように鳴り響いていた。

それでもなんとか、持ちこたえる。

「ほう?」

その太い綱を撚り合わせたような両腕をぐいぐいと回しながら、大地色の獣はもう一度踏み込んでくる。何も隠さず、正面から。ただその力だけで、人間を圧倒する獣の本能。

振り下ろされる拳に兜が弾け、突き刺さるような肘打ちに盾ごと体が持ち上がる。最近やっと覚えた剣を振り下ろすが、それはいとも簡単に手の甲で弾かれ、そのまま相手の体当たりを食らって突き飛ばされる。

はぁはぁはぁ……

息を、しなければ。空気がたりない。もっとちゃんと見なければ、動かなければ。はやく、剣を握らなければ。次の攻撃が、来る……。

「ふむ、なかなかどうして。人間とは思えん根性をみせよる」

獣剣士のその言葉を境に、周りからの嘲笑は消え、ざわつきはいずれ歓声へと変わっていく。

立ち上がり、防ぐ。防げず、倒れ、立ち上がる。次第に耳に聞こえてくる歓声は、応援へと変わっていく。立ち上がろうとする自分の背中を、皆の手が押すかのように。

「いいぞ人間、根性みせろ!」

「もっと小さく振るんだよ。あぁもう、じれってえな」

「シューベルト様、もうちょっと遊んであげましょうよ」

獣は。獣人は、力あるものを認める。なにより、強くあろうとする、その意思を認める。そう言っていたハイエルフの言葉を思い出す。足りないかもしれない、認められはしないかもしれない。それでも、全力を出さなければ、彼には伝わらないのだろう。

「……名を、聞いておらなんだな。いや、今はいい。あとで聞こう」

感覚のなくなった両腕で、ぼろぼろになった長剣を小さく振りかぶる。脇を締めて、確実に彼の胸元へと。だがそれは、かわされることもなくその掌に掴まれ、ぐいっと引き込まれる。その腕に弾き飛ばされ、これで終わるだろう事を覚悟したところで、もう意識を保つ事ができなかった。

「……やれやれ。ワシの胸で眠りこけるなぞ、どこぞの弟子か狼以来だぞ。

 これも一撃、とカウントせなあかんのか……?」

ドスンと何かにぶつかった感触。不思議と倒れこむ痛みはなく、そのまま何かに包まれていることだけがぼんやりと伝わってくる。

遠のく意識の中、大司祭の部屋へ運べ、あとで手紙を持たせて部屋へよこせ、と話す獣の声は、どこか楽しそうに笑っているように聞こえた。

(剣術に+2。HPを最大値まで回復させる。獣の住処へ進む)

【問答無用で押し倒す】

「のわっ!?」

咄嗟に避けようとするその大地色の被毛に、自動追尾よろしく空中で体勢を入れ替えて、さらに覆いかぶさるように飛びつく。なんじゃなんじゃと叫ぶ彼を押し倒すが、その声は驚いてはいてもヒステリックではない。

土の匂い。汗の匂い。僅かに煙草と、酒。そしてそれら全てを覆う「血」の匂い。

「最近の人間は、何を考えておるんだか……」

腰を付き、押し倒されたその姿勢のままで、害がないと悟ったのか、獣剣士はされるがままにしていた。その、膨らんではいても硬い突き出た腹部の獣毛に、鼻を押し付けハスハスと匂いをかぐ。獣らしい、乾いてはいても脂と草や土の匂いが混じったような、独特の匂い。長毛種であるがゆえに皮膚が近く、その胸や腕の盛り上がる筋肉の輪郭がはっきりと見える。両腕を回しても届かない広い背中に厚い腹。その上に乗るゴム板のような胸板。あぁ、たまらん。

「おい、ご満悦なところすまんがな。一応ワシはここを統率しておる身なんじゃよ。

 お前さん、数十の獣人の前でこんなことして、生きて帰れる可能性はありゃせんぞ」

言われてみれば、後ろに並ぶ獣達の目が爛々と輝き始めている。特に銀の狼と蒼い竜のコンビは、おそらく何を言ってもその牙と爪とで襲いかかって来るのだろう。

「蛮勇も過ぎれば滑稽よな。お前ら、ちょいとコレと遊んでやれ。

 おぉーい、クェイヴァスも呼んでこい。司祭がおりゃ埋めても問題なかろう」

物騒なことを言われ、必死にしがみついてはみたものの、いともたやすく剥がされて獣の群れへ投げ飛ばされる。周りには青、銀、黒、白の獣達。なんとか会話で解決できまいかと言葉を探すが、もっとも話が通じそうだと思っていた細身の白い獣が、他の誰よりも殺意を押し殺していることに気がついた。

「済ませたら、ちゃんと掃除しておけよ」

「もちろんです、シューベルト様。染みの一つも残しませんとも」

唯一の抵抗は、その燕尾服を汚すことくらいだろうか?そんな風に考える余裕も、にじり寄る獣たちの背に阻まれて、彼の苦笑いする顔が見えなくなった時点で、なくなった。

(交渉に−3。装備・所持品を全て失う。廃都の出口まで戻る)

【武器を持ち挑む】が先にすすめるルートになりそうです。いや、普通こういうノリなら問答無用で押し倒すを選ぶわな。皆さんのストレートなご意見はごもっともです。

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