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九条林檎
九条林檎

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中等部の時分に書いた小説「ドリームクラッシャーズ」第一話

現在の我からあの頃の我へ


・メタネタは意外とあまり面白くないぞ

・そういえば話を遮ることを表現するのにそんなのが流行っていたな、でも使い過ぎだと思う

・続くと書いているのに一話しか書かなかったな、でも一話きちんと書いたのは偉いぞ

・あの頃は世に夢も希望もないと絶望していたな、誰も味方がいなくて辛かったな

 しかし今あの頃抱いた夢のまま我は空想の世界をあっちへこっちへ飛び回る売れっ子になったんだ

 全部無駄にはならなかった、魔法の杖も振り続けてみるもんだぞ

 五年後を楽しみにしているといい、はっはっは



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あなたはこんな経験はないだろうか。




小さい頃は「プリンセスになりたい!」や「ヒーローになる!」なんて言ってたのに、


今じゃそんなこと恥ずかしくて言えないし、なろうとも思えない。




なんでだろう。




昔は絶対になれるって信じてたのに。


大人になったから?現実を見れるように成長したから?


いいえ、それは彼らのせい。




あなたの夢を奪い、また新たな夢を授ける存在。


そんな彼らの名前はドリームクラッシャーズ。








夢事案①「ドリームクラッシャーズ」




朝が来た。


徹夜をしたからか身体中をうねるような気持ち悪さが襲う。


“仕事場”から出られずどうしたものかと悩んでいると外から軽快な足音が聞こえた。


それにつづいてドアを開ける音。




「ん!もっくんおはよー!今日も元気に暗いねー!」


「…おはよう」




彼女は僕の仕事をするときのパートナーだ。


仕事をするためにうまれてきた僕らには名前はないはずだが、


彼女は「あたしのことはドローネって呼んで!」と初対面で開口一番そういってきた。


なぜ日本人を扱う種なのに外国名なのか。


先日聞いてみたところ、語感が好みだという返答が来た。




「もっくんまだ仕事場にいたの?」


「ああ」




そんな僕らの中では変わり者なドローネはドリームクラッシャーであり、


担当はドリームクラッシャーという名に一番相応しくない夢を見させる事。


夢見を取り扱う彼女とタッグを組む僕はもちろん夢を壊すのが担当だ。


さっき言ったとおり僕にも名前はないが、なぜか彼女から「もっくん」と呼ばれる。




「早く起きなよ~じゃないと次に仕事が来た時に辛くなっちゃうよ~」


「そうだな…そろそろ起きようか…」




体からやる気を絞り出してなんとか”仕事場“から出た。


夢を動かす事を生業とする僕らの“仕事場”は、言わずもがなベッドである。


そして肝心の“仕事”は…




「もっくんもっくん!仕事!キタ!行こ!仕事!」


「分かったから言葉をいちいち叫ぶのをやめてくれ頭に響く」


「あっ、ゴメン」




仕事内容を口で説明するのは難しい。


丁度仕事も来たところだ、実際にみてもらった方が分かりやすいと思う。




そしてドリームクラッシャーズの一日は始まる。








夢事案②「魔法使いになりたい!」






名前 高畑 俊


年齢 12歳 小学6年生


夢 魔法使い




「じゃーなーしゅんたろー」


「またなーとみー」




いつもの分かれ道で友達と別れる。そうしたら家までの坂を一気に下っていく。


もしかしたら下りながらピョンピョンしてる内に一回くらい空を飛べるかもしれないから。


で、今日も見事に飛べずに家に着いた。




「俊ちゃんおかえ…「ただいまっ!」


「もう…」




家に着いたら真っ先に部屋にとじこもってひたすら修行だ。


百均で買った木の棒を持って念を込めながらティッシュと向き合う。


まだ成果は出たことはない。


でもきっとやり続ける事が大事なんだ。


ここで諦めたら一生魔法使いにはなれない気がする。


頑張るんだ俺!つらい修行の先にバラ色の日々が待っている!




「典型的な痛い子だね…あははは…」


「これも酷いな…」




これは滅多に笑わないもっくんが苦笑いするのも仕方ないね。


いつもの事だけど叶うことのない夢を見てる人を見ると胸が痛んじゃう。


魔法使いになるなんて人間が独学で出来るような事じゃないもん。




「じゃあ始めようか!」


「ああ、さっさと終わらせよう」




ドリームクラッシュには大きくわけて3つの手順があって、1つ目は夢の原因を調べて記憶から消すこと。


そこで我らがもっくんの出番!




「おりゃっ」


「…」




最新鋭のドリームコネクトベッド「白昼夢」!


…の一世代前のを使って座標を決める。




「おりゃおりゃおりゃおりゃっ!」


「よしっ!セッティングできたよー!」


「なぁ、いい加減にボタンを押す度に何か言うのをやめたらどうだ?

 それだとただの痛「さあ!早く入って入って!」




もっくんは“仕事場”を通じて人間の頭の中に入れる。


考えていることも記憶も筒抜けの空間でひときわ輝く記憶を探して壊す。


もっくん曰くそれはその人の将来への希望が詰まっているから、


ひとつひとつがまさに夢のように美しいんだって。




「わかったわかった」


「頑張ってね!」




そしてそれは壊す時に一番綺麗になるんだって。


もっくんはもしかしたらちょっとアブナイ人なのかもしれない。




キュインキュイン




「何度やっても慣れないな…」




頭に入る瞬間はいつも不規則な揺れを伴う。


最初の頃は酔って頭の中で吐いてしまった。




「おえぇぇぇ…」


「もっくん!?大丈夫!?」




懐かしい思い出だ…。


しかしココは薄暗いな。しかもホウキや木の棒がそこかしこに浮いている。


まったく危なくてしょうがない。




ガッ




「痛っ…?これか」




そこには1つだけ1ミリも浮いていない黒くて白い綺麗な球体があった。


多分ここまでなら誰でも出来るだろう。だがここからは僕じゃないと出来ない。


それはコレに入って内部から破壊して無事に戻って来ること。


僕らが夢喰人と呼ばれる由縁だ。




「やるか…」




神経を研ぎ澄まして球体と繋がる。


そして、入った。




「…ん、着いたか」




そこは海辺の公園だった。休日らしく人通りも多い。


その中に全身を仮面ライダーグッズで埋めた男の子がいた。


季節は初夏と思われ、スタイリッシュな服装の人々のなかにいるそれは異様な雰囲気を撒き散らしていた。




「おかーさんおかーさん!」


「どうしたの?」


「あそこ!魔法使いがいる!火だ!火だ!」


「ああ、そうね」


「おかーさん!僕も魔法使いになれる?」


「ええ、いい子にしてればきっとなれるわよ」


「やったあ」




その子はマジックのパフォーマーを尊敬の眼差しで見ていた。


元々そういうのが好きなんだろう。


それが今は正しい進路を邪魔する荷物になってしまった。


悲しいものだ。壊そう。


魔法に邪魔されて見えない本当に好きなことを見させてあげよう。


そして僕は魔法の木の棒を取り出した。


これをあのマジシャンの頭に投げれば…




グサリ




バラバラ




崩れていく少年の日。


揺らぐ炎が春の終わりと共に消えて、


ついには藻屑となり記憶の彼方に葬られる。


記憶破壊完了。


それじゃ戻るか。




「もっくんおかえり~」


「ただいま」


「今日はやけに静かだったな」


「んん?あ、状況が分かりやすいようにと思って!」


「お、おお…」




僕の仕事はここまでだ。




「ちょっと早すぎたか?」


「ううん全然!この夢見の鬼と呼ばれた私なら余裕余裕!」


「そうか?じゃあ後は頼んだ」


「ラジャー!」




夢を壊す手順の2つ目はその人の正しい夢を探すこと。


担当はもちろん私!


さっきもっくんが見ていた景色は全部こっちのモニターに送られてくるから、


それを元にその人の好きな事、得意なことを生かせる職業を探して与える。


もっくん達が夢喰人と呼ばれるのに対して、私達は夢見人って呼ばれるらしい…


でも呼ばれたことないんだけどなぁ…


どちらかというと妖精ハローワークってよく言われるよ?


それはともかくあの子の職業を考えなくちゃいけないけど、


今回は簡単。


これはやっぱりマジシャンで間違いないよね!


というわけで私のスーパー催眠術で周りの人をちょこーっと操って、


それとなーくマジシャンに興味が出るように仕向けてく。




「なにがそれとなーくだ」


「この間なんか強引過ぎて対象のアイデンティティーが半壊してただろう」


「あれ?声に出てた?」


「いや、今目の前に活字で表示され...「わあああああああああああ

 もっくんメタい!メタすぎるよ!メタさ加減が定番過ぎて何の面白味もないよ!」


「ん?だって今モニターに出てたぞ?白昼夢のチャットスイッチ入ったままなんじゃないか? 」


「えっ!?あっ...本当だ」


「メタいって何のこと...「わああああああああああ

 細かいことは気にしない!神経質な男はモテないよ!」


こうして鮮やかに夢を導くそんな私たちこそが!


夢の案内人 ドリームクラッシャーズ!


続く


Comments

素敵な作品のご投稿ありがとうございます。配信を拝聴し、読んでみたいなと思ったのでとても助かりました。 昔の作品やそれを書いていた自分に対してのメッセージ、それは”今”だから出来ることで”昔”に対してのリスペクトであるように感じました。 作品を通じて5年前の林檎さまに会わせて頂けたこと、深く感謝いたします。

takara

先日の配信での朗読からの早速の投稿、誠にありがとうございます。 夢をクラッシュする手段が思いのほかバイオレンスでちょっとビックリしつつ、 貴様も歳をとる過程でこんな感じに妖精さんにあれやこれやされてたのかもなぁと思ったり。 夢の更新って、わりかし誰かになんやか影響受けた結果だったりしますし、 その誰かが妖精でも上位存在でもおかしくないのだろうなぁ、なんてことを読んでいて思いました。 あとは冒頭の現在の主人様から5年後の若かりし主人様への手紙に、 なんと言うか、とてもじんわりと暖かいものを感じたりしております。 貴様もいつか今の自分を振り替えって、苦笑しつつも褒められるよう仕事に趣味に精進したいものだなぁと、 そんな気持ちにさせられる、素敵な小説でございました。 重ね重ね、投稿していただき誠にありがとうございました。

にが豆汁


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