

撮影スタジオの控え室。
カーテンを少しだけ開けて、ナツキがこちらを覗いた。
「……あ、あのさ。マジでこれ着なきゃダメ?」
競泳水着の肩紐を引っ張りながら、恥ずかしそうに顔を赤くする。
「似合ってるぞ」
俺がそう言うと、ナツキはぶんぶんと首を振った。
「に、似合ってない! だってライン出すぎだし……やばいやばい!」
けれど、いざ撮影が始まると、カメラの前で硬直してしまうナツキ。
「笑顔お願いしまーす!」とカメラマンが声をかけても、ぎこちない笑顔しか作れない。
そこで俺は手を振り上げて声をかけた。
「ナツキ! いつものバトルポーズでいいんだよ。胸張って、堂々と!」
「えっ……あたし、グラビアなのに戦闘ポーズでいいの?」
「お前はヒーローなんだから、それが一番似合う」
その言葉に、ナツキの表情がふっと変わった。
真っ直ぐに立ち、肩を張り、拳を握ってカメラに向かう。
その姿を見て、カメラマンが思わず息を呑んだ。
「いい! その強さと美しさのバランス、最高です!」
シャッター音が次々と響き渡る。
俺が小声で「かっこいいぞ」と呟くと、ナツキはちらっとこちらを見て、耳を赤く染めながら小さく笑った。
「……ま、相棒が言うなら、ちょっとは自信持ってみるよ」
その瞬間の笑顔は、戦場では決して見せない、年相応の女の子の顔だった。