とある日のこと。
今日は、任務ではなく撮影の仕事が舞い込んできた。
なんでも、ナツキの活躍をいたく気に入ったどこぞの社長が、「是非宣伝用に撮影させてほしい!」と相談がきたのだそうだ。
ナツキに確認すると、「えっ!?まぁ…君が一緒に来てくれるならいいよ」とのことだったので、なぜか俺も同行することに。
スタジオに足を踏み入れた瞬間、思わず目を見張った。
中央には二つの舞台。片方は白砂と青い波打ち際を模したミニチュアの浜辺、もう片方には摩天楼を思わせるビル群の模型。
――どうやら“海も街も守るヒーロー”を一度に表現するらしい。
カーテンの奥から姿を現したナツキを見て、息が止まった。
鮮やかな青のビキニアーマー。肩や腰を金属の装飾が飾り、わずかな布地が彼女の肌を際立たせていた。
普段の戦闘服と違い、あまりに露出が多い。
「……ど、どうかな」
胸当てを両手で押さえながら、彼女は俺にだけ小さく問いかけてきた。
頬は赤く、目は泳いでいる。
「似合ってる。強そうに見えるぞ」
そう答えると、ナツキは「ほんとに……?」と疑わしげに唇を尖らせる。
カメラマンが声を張った。
「はい、まずは浜辺のほうから! ヒーローらしくお願いします!」
ナツキは渋々ジオラマの砂浜に立ち、ぎこちなく拳を突き上げた。
「……これ、本当に撮るの? あたし、この格好でヒーローとか無理あるでしょ!」
その声に思わず笑いそうになったが、真剣な瞳は確かにヒーローだった。
衣装チェンジのたびに、彼女は必ず俺を振り返る。
――第二形態。
銀色の肩当てに、剣と丸い盾とコルセット。
「ちょっと戦士っぽい? どう、変じゃない?」
「軽快でいい。守ってる感じがする」
「……ふーん、そっか」
照れ隠しの笑み。

――第三形態。
さっきと少しだけ違うようだが、どこが違うのか俺にもよくわからない。
この後も、ナツキは似たような衣装を着るたびに、「大丈夫かな?」と確認していた。



撮影後にタオルを巻き、耳打ちしてくる。
「ねぇ……ほんとにポスターになるのかな。恥ずかしいだけじゃない?」
「誇らしい姿だよ。ちゃんとヒーローに見えてる」
そう伝えると、ナツキは一瞬驚いた顔をして、それから小さく笑った。
撮影が進むにつれ、変化ははっきりと分かった。
最初は「大丈夫?」「変じゃない?」と俺に確認ばかりしていたナツキが、
いつの間にか「じゃあ次はこう構えてみようか」と、自分からポーズを提案するようになった。
海を背に剣を振り、街を背に盾を突き上げる。
ライトに照らされたその姿は、もう恥ずかしさを越えて、本物のヒーローに見えた。
撮影が終わると、タオルをきゅっと巻いて俺のところへ駆け寄る。
「はぁぁ……やっぱり恥ずかしい恥ずかしい……! でも……ちょっと楽しかったかも」
肩で息をしながら、満面の笑みを浮かべる。
その笑顔には、最初に見せた赤面とは別の、誇らしさが宿っていた。