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けもの道☆ガーリッシュスクエア第0話SS完結編「けもの道☆ガーリッシュスクエア」

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-Interlude-


 東京都千代田区、秋葉原駅周辺としたエリアに人々が抱く印象とは?

 オタクの町。

 オタクの聖地。

 多く挙がるのはこのようなものではないだろうか。

 事実の一端ではあるが、全容ではない。

 古くは電気の町として中小の電気店が軒を連ねていたこの町は、時代と共にその表情を変えてきたのだから。

 パソコン用品やマニアックなゲームを取り扱う店の多さから、1990年代の過去においても秋葉原に流れ着く趣味人は多かった。

 それが、その後へのいわゆる下地となったのだろう。

 たとえば、漫画やアニメDVD、フィギュアなどといった、いわゆるオタクグッズを取り扱う店の台頭。

 雨後の筍(あるいは、初心者のぷ○ぷよ)のごとき乱立、大ふぃーばー。

 それに伴う飲食店の拡充。オシャレ化。

 町はどんどん華やかに、ショップを飾る看板などの肌面積も如実に増え……。

 秋葉原は僅かに過去の面影を残したまま、オタクの町としての認知を新たに得る。

 そして、現在。

 それら「アキバでしかそうそうお目にかかれない商品」はネットショップ・ECサイトへとその軸足を移し、この町は、歓楽街・観光都市としての色を強めつつある。

 秋葉原にメイドカフェが初めてできたのは、2000年代の初めとされている。

 広い意味でのオタクの町としての兆しを見せ始めてから20年、という言い方もできるだろう。

 僅か20年であり、もう20年。

 それだけの時を経ようとも、また、これからどれだけの時を経たとしても変わらないものがある。

 それは、熱。

 いつだってこの町は誰かの拠り所であり、オタクカルチャーという形のないふわふわとしたものの観測地点であり続ける。

 人は老い、トレンドは移り変わる。

 しかし、秋葉原は疼くような熱をはらみ続ける。

 ここが秋葉原である限り。

 ここはオタクカルチャーの最先端。

 誰かの夢の居場所。

 そして、また、ここにも――


 秋葉原駅の昭和通り口を出てすぐの道路、交差点を避けたところに、嫌でも目立つ黒塗りの高級車が停まる。

 その運転席から出てきたのは、冗談のように完成された老執事だ。

 執事のエスコートで、後部座席のドアから……こちらも絵に描いたようなご令嬢が現れる。

「ここまででいいわ、じいや。ありがとう」

「どうぞお気をつけください」

 執事は恭しく一礼。

「平気よ、頼もしいナイト様が一緒だもの。そうですよね? ろっぷさん」

「過分なご評価、痛み入ります。ですが……どうぞお忘れなく」

 令嬢の肩口には耳の垂れたデフォルメうさぎがふわふわと漂っているのだが、そこに目を向ける通行人はいない。

「ろっぷさんは優しくないということを、でしたっけ?」

「私は貧弱だということをですよ。見ての通り私は無力なうさぎですから。

 ここだけの話、荒事にはまるで自信がありません」

「まあ、うふふっ」

 一人と一匹の仲睦まじい様子を見届けた執事が恭しく一礼し、車の運転席に戻る。

「さて、どうしましょうか。お仲間と待ち合わせの約束をしていらっしゃるって……」

「あなた」

 なんの感情も乗っていないかのような、のっぺりすーんとした声に、彼女……。

 兎月白雪は静かに振り返る。

「それ、うさぎかしら」

 白雪にそう問いかけた少女は、その肩に茶トラ模様の猫を乗せていた。

「そう仰るあなたのお友達は猫さんですか?」

 まだ、他人行儀。

 だが、名乗りすらあげていない二人の間には、ある種のシンパシーが確かに存在していた。

 四の五の言わずにというか、論より証拠というか。 

 忙しなく人が行き交う秋葉原の昭和通り口にあって、誰ひとりとして目を留めない――

 その珍妙な生物が名刺のようなものだ。

「久しぶりね、ろっぷ」

「ええ、にゃも。あなたもお変わりないようで安心しました」

「それ本心から言ってる?」

「もちろん、この地は我らヘンデスメル魔法王国の住人にとって紛れもない異郷……。

 何が起きるかわかったものではありませんからね」

「ニヤニヤしてるんじゃないわよ」

 ふしぎ生物が親交を温める様を、二人の少女がそれぞれに見守る。

 一人は優しい笑顔で。もう一人はどうでもよさそうな無表情で。

「それで、その子がろっぷのパートナー? あなた好みのどうとでも操縦……」

 何かを言いかけて、一度、高慢そうな顔立ちのその猫はクイッと顎を上げた。

 どうしようかな? と悩むような仕草。

「よろしくね? ええと……」

「兎月白雪と申します」

「私はにゃもよ」

 もう一人の少女は名乗らない。

 ただ、ぼーっと……変わらない無表情でやり取りを眺めていた。

 さすがにこの態度には白雪も鼻白む。

「さて、ひとまず合流しましょうか」

 ナビをするつもりなのか、ふしぎ生物(猫)が今度は白雪の肩に足場を変える。

「どちらへ。もしかして、電車……というものに乗るんでしょうか」

「何かわくわくしてる? 残念だけど、すぐそこよ」

「そこと言われましても」

「私もこの辺りのことは承知しておりませんが」

 猫の言葉尻を取るようにして、ふしぎ生物(うさ)がひょいと肩をすくめる。

「呼ばれてるようなものなのよ。早く来い、こっちだって、うるさいくらい喚いてるわ」

「あれがうるさいのは今に始まったことではありませんがね」

「はあ」

 そうして、二人と二匹は歩き出す。

 秋葉原駅昭和通り口を出てほぼ正面の、黄色い総武線が走っている線路の高架下に沿って……。

 5分ほども歩いただろうか。

 やがて見えてくる公園が彼女達の『待ち合わせ』場所。

 ギャイイイィィーーーーーーーン!

 荒々しい……吠え立てるようなギターの音色に、うさぎと猫が苦いものでも口に押し込まれたような顔になる。

「What’s up buddy! 首尾は順調ってところかよ。

 まずは挨拶代わりに……」

「耳元でうっさい! 何を始めようってのよ」

 コントか漫才のように、ギターペンギンの頭(あるいは背中辺り)を傍らの少女がぽかっと叩く。

 目を引く派手な目鼻立ちの、いかにもという感じの『持ってる』少女だ。

「てことで、えーと……まずは? どうしようかな……」

 それは始まり。

 秋葉原の片隅で、今また、新たな物語が幕を開こうとしていた。




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「こっちであってる? ねぇ、ぐりくん」

「ガウ?」

「ちゃんと案内してよー。わたし、こっちの方に来たの初めてなんだから」

 ただでさえもわたしは金沢から上京してきて、まだほんの数ヶ月です。

 山手線の駅も言えません。

 さっきからごうんごうんと頭の上を電車が通っていく……

 線路の高架下? みたいなところは、薄暗くてちょっと怖い感じがします。

 見た感じでは飲み屋が多そうだけど。

 電気が消えてるビルも多いし、昼は普通にオフィス街なのかも。

 どうであってもわたしには敷居が高すぎて、こうしてるだけで頭がくらくらしてきます。

「あっちだ」

 ふよふよっと泳ぐみたいに、ぐりくんが顔の前に浮かび上がります。

 人通りも少ないですし、そもそも周りの人には(多分)見えてないみたいですけどハラハラします。

 まだ、ぐりくんの言う『魔法』慣れしてないのです。

(魔法、魔法かぁ……)

 東京そのものがわたしにとって異世界みたいなものなのに、いっそう変な世界に足を突っ込んでしまいました。

 ちょっと困ります。

 今日もアルバイト休んで来てますし。

 思い出し落ち込みでずーんとしていると、なんだか開けた場所が見えてきました。

 公園……でしょうか?

 あるのは広場とベンチだけという潔い作りです。

「ぐりくん、ここ?」

「ここであってる。まりょく……」

「魔力?」

 途中で面倒くさくなったんでしょうか?

 ぐりくんはわたしの肩に戻って、うつらうつらし始めました。

「あっ、あの子じゃないの?」

 起こす必要はなさそうです。

 最初は遠くて気付きませんでしたが、公園には三人の……多分、女の人が立っていました。

 その頭上には、ぐりくんと近いものを感じるふしぎな動物さん達がふわふわと……。

「Yeah! ウェルカム・トゥ・ニューワールドだぜ、嬢ちゃん」

 いきなり顔のすぐ横に、ぽこんとデフォルメ動物さんが現れました。

「わっ、ぺ、ペンギン……さん?」

「オレはぺん、ヘンデスメル魔法王国の最強ミュージシャンだ。

 大船に乗ったつもりでついてきな」

 その船はどこに向かうのでしょうか?

 怖くて聞けません。

「ぶっちゃけ心配してたんだぜ、ぐり。おめーはのんびりしたところがあるからよ」

「ガウ?」

「無事に相棒を見つけられてよかったな、って言ってんだ」

 旧交(?)を温めてます。

 ぐりくんは面倒くさそうですが。

「ぺん、ちょろちょろしないの。ごめんね? こいつ無駄に元気が有り余っててさ」

「わ!? わわわわわわわ」

「なんで、普通の人間であるあたしに対していっそうビビってるのよ」

 そんなの、いきなり話しかけられたからに決まってます。

 共感できないならその人は強者サイドです。ヒエラルキーの上位に慣れてる人です。

「もしかして、あたしのこと知ってる? ファンとか? そかそか、今はぺんの魔法が効いてないから……」

「ごめんなさいわたしあんまり知らない人と初めて話すのが得意じゃ……」

 ん? この人、何か言ってたような。

「ファン? って……すいません、どういう……」

「なんでもない忘れて」

 傷つけてしまったような気がします。

「まあ♪ 最後のお友達はクマさんですか。うふふ、可愛らしいですね~」

「どんぐりみたい」

 あちらのお二人は落ち着いた感じの人ですね。

 皆さん、三人ともすごい美人です。

「あれはそういう可愛らしい生き物ではありませんが……」

 あとは、うさぎさんと……。

「ケチをつける気はないけど……ぐりは、そういう子が好みなの? なんか野暮ったーい」

 エレガントな猫さんです。

「皿洗いとかしてそう」

「よくご存知で! 皿洗いの森野です……よ、よろしくお願いします?」

「なんで尻すぼみなのよ」

「ごめんなさいわたしあんまりよくわかってなくてですね……」

 わたわたしながら、わたしは頭の中でぐりくんの説明を反芻する。

 って言っても、ぐりくんは説明もぐりくん仕様なので、よくわかってないのですが。

「アイドル? を、やるようにとかそういうのだけ聞いてきました」

「そこの眠れる狂獣は何をさせても大雑把なので、心配していたのですが。

 最低限は伝わっているようで何よりです」

 あ、やるんだ。

「まさしく! 皆様にはぜひ、私どもと共にアイドルとしてこの時代を牽引していただきたい」

「時代を!」

「おうよ、目指すはトップアイドルってワケ」

「トップアイドル!」

「私達が力を貸すのよ? 鬼に金棒猫に小判、大船に乗ったつもりで言うことに従ってればいいの」

「……傲慢さを最後まで隠しきれてなかったのが残念だわ」

 相棒? さんは淡々としています。

「あの、もう少し事情を……ぐりくんには『よくわからない』って言われちゃったので」

 黙って流されるわけにはいきません。

 これは人生を左右します。

「わたしは皆さんの世界がピンチで力を貸して欲しいと言われて来たんです……けど。

 それがどうしてアイドルに繋がるんでしょうか……」

「ピンチって?」

 あの勝ち気そうな美少女さんは全然、知らないみたいなんですけど?

「違うんですか? ちょっと、ぐりくん」

「くあぁぁ~~っ」

 あ、興味ないやつだ。

「お嬢さんの仰る通り。私どもが暮らすヘンデスメル魔法王国は存亡の危機に直面しております。

 そこで、皆様にご協力をお願いしたく」

「それがアイドル活動なんですか? 敵と戦うとかじゃなくて」

 意外と皆さん、うんうん頷いてます。

「そういうことになるな。要は……あー、説明するより見せるのが早ェか」

 ペンギンさんが革ジャンの内ポケット(多分)をヒレでがさごそして、何かを取り出します。

 目が眩むようなギラギラとした輝きを放つ……こ、これは、なんですか?

 なんなんでしょうか本当に。

 宝石……とは違う感じですかね? 水晶か何かなのかな。

「ぱるくりすたる」

 眠そうに、ぐりくんが教えてくれます。

「皆様がイメージしやすいようにご説明するなら、バッテリー……のようなものでしょうか」

「一瞬の……なんてーの? お前ら人間の感情が放つどえらい熱を、オレらはパルって呼んでるんだが。

 まあ、嬉しさとか感動とかそういう精神エネルギーだな。

 本当ならパッと消えちまうそいつを、オレ達はこのクリスタルに溜めておくことができる」

「私達の世界ではこれがエネルギーなの。あなた達でいう石油とかそういうやつね?

 このエネルギーを溜めておける、このクリスタルはとても貴重なのよ」

 動物さん達が一生懸命説明してくれました。

 ちょっと可愛いです。

「事情はなんとなくわかりました。皆さんの目標はエネルギー資源の補充? みたいな……

 そか、人を喜ばせるのがエネルギーとかメルヘンですね」

 どうしよう、気の長い話かも。

「くっくくくく」

「ちょっと、ろっぷ。気付かれるわよ」

 なんでしょう? おしゃれうさぎさんの肩がぷるぷる震えてたような。

「コホン! お嬢さんの推察通りです。そのための効率的な手段と我々が考えるのが……

 そう、先ほどあなたも仰っていたアイドル活動というわけです」

「アイドルとして多くの人間を虜にすれば、合理的に大量のパルを集められるわ。

 あなたの言う通り、パルは人間が放つ喜びのエネルギーみたいなものだもの」

「100万人、1000万人、1億人! って感じに増えてったらどうよ。やべーだろ途方もねぇぞ」

 また、ふしぎ動物さん達が一生懸命説明してくれました。

 ぐりくんはわたしの胸に背中を預けて、鼻からちょうちんを出してますが。

「ふぅん、そういう事情で助けが要るんだったのね? いいじゃない。わくわくしてきた」

 表情にも言葉にも力がある、格好いい感じの女の子が言いました。

 どうも人生の主人公です、って感じの人です。

(この人、何も知らなくてついてきたんだ……)

 他人のことは言えませんが。

「私どもも相応の対価は示しているわけですし? 運命共同体ということで、以後よろしくお願い申し上げます」

「対価?」

 なんのことでしょうか。

 不安になります。

「……ちょっと、ぐり。本当に説明したの?」

「くみ、ぐりのことすき」

 猫さんがため息をついて……それから、憐れむような目をこちらに向けてきました。

「大丈夫なの? その子、トロそうだし。ちゃんと目的で縛……目的を共有してなきゃ逃げられるかも。

 それでなくても、これからトップアイドルをプロデュースしようっていうのに半端な覚悟で足を引っ張られたりしたら……」

「おいバカ、にゃも」

「…………(カハアアアァァァ)」

「ウソ! ウソよ、ウソ。ちょっとした冗談」

 なんでしょうね? 猫さん急に取り乱してますが。

「オウヨ! オレのハートにもそいつの秘めた才能の輝きってヤツがビビっときてんぜ」

「くみ、いちばん」

「はいはい、一番一番」

 何? 優しさと過大評価が重い。

「クマの目が赤くなってたような気がしたけど……」

「ぐりくんがですか? 眠いのかな」

 顔を覗き込んでみたら……うん、いつも通り眠そうです。

 まあまあ寝てる気がするので、目が充血するほど寝不足だったとは気付きませんでした。

「ちょっと! 引き下がらないでよ、そこのねこ」

「何よ」

「あなたの言う通りじゃない。ぺん、意思の確認は本当に済んでんの?

 足並みだけでもきっちり揃えておかないと後でこじれるわよ。

 あたしは何がなんでも絶対にやり抜くし、同じグループでやるなら同じ覚悟をメンバーには求める。

 それがないなら一緒にはやれない」

 わ、怖い。

 普通に逃げたくなってきた。

「おまえ、きらい。くみにやなこというな」

「意志の確認でしょ。あんたの方がよっぽど本人に嫌なことやらせてんのかもしれないって自覚ある?」

「そう! 意地悪で言ってるんじゃないんだぜ、ぐり。やる気が前のめりになってるだけで」

「……(コフー)」

 なんだか、ぐりくんの身体があったかくなってきてるような。

 それに、ゴゴゴって……これは何が轟いてるの?

「それで? どうするのよ、あなた……っと。

 その前に自己紹介くらいはしとくのが礼儀よね。前後ごちゃごちゃしてごめん」

 謝られました。

 わたしの対極です。ハキハキしてて憧れます。

「あたしは皇はねる。先に言っちゃうけど、昔はI/DOLLY55ってグループにいて……。

 まあ、選抜メンバーくらいには入ってたかな。

 その絡みでゴタゴタしてるんだけど、そこのとこぺんが魔法でごまかしてくれるらしいから」

 なんだか込み入ったご事情です。

 ごまかすってそんなの簡単にできるものなんでしょうか。

「やるなら一緒にトップ目指して頑張りましょ。教えてあげられることもあると思うし、遠慮しないでどんどんきて」

「すごいですね。ええと、あいどりー……?」

「知らないわ」

「申し訳ありません。わたくしも世俗には疎いもので……」

 ふわっと救いを求めてみたのですが、お二人からはこんな反応が返ってきました。

「あ、グループも知らない? そう」

 虚ろな笑顔です。

「…………そうなんだ」

 作り物の笑顔すらすぐに消えて、はねるさんはがっくりと肩を落としてしまいました。

「ごめんなさい。た、多分、見たらわかると思います!」

「いいし別に。次は誰? アイドルやるなら自分からどんどん前に出ないと」

 拗ねてます。

 さっそく、心証を損ねてしまいました。

「じゃあ、私? 二谷天寅よ。京東大学の一年生で、あとは……」

 首を傾げたてとらさんは、そのまま1分くらい止まっていました。

「あとは特に何もないわ」

 独特です。

「高学歴キャラってわけね。ま、まあ、見せ方によってはありか……試されるわねあたしの回しが」

 あの元アイドルさんは真面目な人なんだと思います。

「にたにさんとは珍しい名字ですね」

「二つの谷と書いて二谷」

「あのぅ、ずけずけしたご質問になってしまったらごめんなさい。お父様は二谷正……」

「そう」

「まあ、それは不思議な縁ですね。わたくしのお父様が後援会……」

 お父さん同士がお知り合いなのでしょうか。

 そう聞くと、確かにすごい偶然です。

「では……コホン♪ わたくしは兎月白雪と申します。うさぎさんの兎と月で兎月です。

 箱入りの世間知らずで、先ほどから上手くお話に入れず申し訳ありません」

 ぺこりとお上品に、白雪さんがお辞儀します。

 なんでしょう? 洗練されてます。

「頼りないかもしれませんが、覚悟はあります。皆さんの足を引っ張らないように精いっぱい努めますね」

「自信をお持ちなさい、お嬢さん。あなたはすっくと闇夜に咲く気高い月下美人だ」

「あのうさぎ、ちょっとウザいわ」

「慣れりゃ聞き流せるようになるぜ。最初のうちは我慢だ」

 こそこそ話すなら聞こえないようにお願いしたいです。

「って、ご、ごめんなさい、次はわたしですね! わたしは森野球美……です。

 こ、この春、料理の専門学校に通うために上京してきまして……

 右も左もわかりませんし、消極的な性格とよく言われて……皆さんみたいに綺麗でもないですし。

 アルバイトのシフトも結構入ってるので、な、何ができるか……戸惑っていて」

「ちょっと。芸能界は戦場よ? そんな意識で……」

「やあああぁぁめとけって、はねる! 球美はまぶしいダイヤモンド。あとはわかるな」

「何よ、あんただってガッデムしっかりしてくれよとか思ってるくせに」

「…………(ピクッ!)」

 あれ? ぐりくん起きたかな。

「思ってねーし。へ、へへへへ、変なこと言うな!」

 わたしのせいでしょうか? 険悪な雰囲気です。

「くみ、こまってるか?」

「困ってないよ! ぐりくんの世界を救うためだもんね」

 あ。

「…………(ムフー)」

 ……言わされてしまいました。

「友達だからね! が、頑張ります……はい」

「ぐりも、まほうでてつだうぞ」

「手伝うって何を……」

「くみのゆうきがでるようにだ」

 な、なんてまっすぐな目……これはちょっと裏切れません。

「……う、うん、心強いよ。よろしく」

 なんでわたしが助けてもらう感じになってるのかは、よくわかりませんが。

「ちゃんとやるなら、最初からガミガミ言ってやる気をくじくようなことはしないけど」

「さっきのは違ったの?」

「はい、それじゃ自己紹介も終わったところで」

 はねるさん強いです。豪快に無視しました。

「いいかしら」

 と思ったら、クールさん……ではなく、てとらさん? が手を挙げます。

「名前は決めないの? グループ名」

 あの人、すーんって感じに見えてるだけで実はやる気あるんですね。

 びっくりです。

「ああ、そういうのですか。わかります~」

「当然! この後、ファミレスでも行って、リーダーとかグループ名とか今後の活動方針とかひとつずつ決めてくから」

「ファミレス……」

「天寅だっけ? あんたのツボがいまいちよくわかんな……あ、悪い意味じゃなくて」

「どういう意味?」

「今、わくわくしてたでしょってこと」

 絶対、してました。

「してない。ちょっと興味があっただけ」

「認めたら死ぬの?」

 もうコントみたいなのが始まってるんでしょうか。

 なかなかノリについていけません。

「よろしくお願いしますね。ええと、森野さん」

「は、はい! 兎月さ……」

「あ……思ったんですけど、わたしも入るかな? わたし達ってちょっとだけ名前が運命的ですね」

 何が? みたいな顔でみんなが見てきます。

「皇さんは多分、皇帝の皇って字だからコウテイペンギンで……

 二谷さんはニャアさん」

「くす♪ わたくしは名字に兎が入りますからそのままですね」

「ですよね。そ、それで、わたしは森のクマさん……なんちゃってー」

 勢いで、がおーってポーズを取ってみました。

 結構、恥ずかしかったです。

「ちょっと強引ですかね」

「……どうして私がニャアなのかしら」

「あんたって天然? 二谷がニヤ、ニャーって読めるってことでしょ」

「!!」

 あ、天然の人だ。

「すごいわ」

(すごいわってちっちゃい声で言ってる……)

「森野さんは頭が柔らかい方なんですね~」

「そんな、わたしなんて」

「球美ちゃんでいいかしら」

「お好きなように!」

「……ふむふむ、なるほど動物か」

 顎に親指を当てて難しい顔をしていたはねるさんが、パチンッ! て指を鳴らしました。

 わたし、あれできないです。

「思ったんだけど! グループ名さ。『けもの道』……」




けもの道☆ガーリッシュスクエア第0話SS完結編「けもの道☆ガーリッシュスクエア」

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