緊縛の島
Added 2020-05-24 10:02:18 +0000 UTC飛行機のロビーにて
「なんとしてでも紛れ込む!」
「あなたは本当に無鉄砲ね...」
学校の授業で仕方なく男子と女子が別れてしまう事はよくある話だ。しかしウチの高校ではなんと、修学旅行が男女別なのだ。先に男子が飛行機に乗って出発し、海外で楽しんでいる中、女子の私達は学校で授業を受けることになる。
「あり得なくない!?」
「ほんとね」
もちろん後日、"女子だけ"で同じ所に行くのだが。
「修学旅行といえば男子とのイチャイチャでしょ!」
浮かれ気分に押される形で男子どもが女子の部屋に乱入して来るのは修学旅行の大事なイベントなのだ。私達から男子部屋に行く事は気が引ける。女の子はいつでも待ってるの!
「それで今回の計画は?」
「男子達の乗る飛行機に潜入する」
突撃作戦を言い出したのは私だが、この計画を実行するにあたって私には決定的に足りないものがある。それを補うのが彼女、愛菜(あいな)だ。頭の良い彼女はいつも、馬鹿な私の馬鹿な計画でさえ可能にしてしまう。
「...鈴香(すずか)」
「なに?」
「本気なのね」
鈴香と愛菜
この学校の問題児。否、正確に言えば学校の認識としての問題児は私ひとりだ。しかし私の問題行動の全てに愛菜が加担している。彼女は良い子の仮面を被ったとんでもなく恐ろしい少女なのだ。私は別に1人で怒られる事に抵抗は無いから気にしない。このまま行けば退学もあり得る。
しかし愛菜は別だ。非の打ち所がない秀才を演じる彼女はおそらく推薦で大学までエスカレーターだ。
「今回のあなたの野望はなかなかハードモードね」
「そうなの?」
「男子達の乗る飛行機には他の乗客がいない、つまり客に扮して乗る事はできない」
「ふむふむ」
「鈴香は男装する勇気ある?」
「いや愛菜、高校生の女の子がそれは無理だよ。胸の膨らみとか...体型でバレちゃうよ」
「なら出発直前に強行突破しかないわね」
「上等!」
放課後の教室での作戦会議は5分で終わった。
「あれが乗り込む飛行機?」
「そう...でも何かおかしい...」
「どういう事?」
「飛行機の定員は400、ウチの男子生徒は150人ほど」
「それがどうかしたの?」
「座席を開けすぎよ」
「ふーん」
私は特に違和感を感じないのだが愛菜がおかしいと言うのだからそうなのだろう。
「お前らーーー女子がいないからって度が過ぎた下ネタとか禁止な」
「はぁーー?」
「俺ら入る学校間違えたな」
朝早くの集合で男子どもは気怠そうな声になっている。
下ネタ大歓迎よ!ウェルカムよ!むしろ女の子の方が盛り上がってんのよ!
これは私の見解なので普通とは違うかもしれないが。
「鈴香、気持ちは分かるしあなたの意見に私も賛成だけれど心の声が漏れてる」
「ごめんごめん」
「バレたら一発レッドカード、いつもより慎重になって」
「おげ!」
影からウチの男子達を見る私達はヒソヒソと耳元で会話をしていた。
「あ、ほら行くよ!」
「あい〜」
飛行機に乗る男子高校生。騒がしい事この上ない。修学旅行のテンションも合わさって静かにしろと言うのは無理な話だ。それは私達にとって好都合。
「きしし、上手くいったね」
「まぁね」
既に空港を飛び立った後だ。私と愛菜は空いている後ろの方の席にどさっと座りお菓子を食べていた。
「男子達は前の方にいるの?」
「そうだよ、あの扉を挟んだ向こうにいる」
「突入しよっか?」
「...今は我慢して」
それくらい私だって分かる。お楽しみは向こうに着いてから。
「鈴香.....鈴香!!」
「おわぁ!?」
座席で居眠りしていたら愛菜に強引に起こされた。
「なにごと〜?」
寝ぼけ眼で夢見心地。なんともまぁ呑気な私に呆れたのか耳元で大声を出された。
「なんでこの非常事態に寝てられんの!シートベルトして!」
「ふぁい?」
「早く!」
愛菜に言われて座席に付いているシートベルトをカチャッと嵌めた。その頃には流石の私も異常事態に気付いていた。
「なんでこんなに揺れてんの?」
「分からない、アナウンスを待つ...」
『皆様、落ち着いて聞いてください。本機は不時着します...』
何かのトラブルだろうか、にしても説明が少なすぎる。
「飛行機は絶対安全じゃなかったの?」
「鈴香.....この世に絶対はないの」
「...ん.....」
飛行機の揺れと衝撃に気を失っていたようだ。目を覚ました私は隣にいたはずの愛菜がいない事に気づいた。
「愛菜!?」
辺りを見回しても愛菜の姿はない。何処へ行ったのだろうか。シートベルトを外して飛行機の中を歩き始めた。床がだいぶ傾いていて歩きにくい。歩きながら何となく窓の外を見てみると...
海だった。
不時着というより墜落ではないか。私は男子達がいる前の方の扉を開けた。
「誰もいない...」
私は取り残された気分になって何とか飛行機の外へ出ようと走り出した。
「愛菜ーーー!」
こんな時に愛菜がいてくれたらどんなに心強いだろうか。
5分くらい走って脱出用のスライドを見つけた。テレビでしか見た事のないすべり台のようなソレは私をさらに焦らせた。
「グルルル」
「お願いやめて!何それ.....んぐぅう!」
「グルル」
「ウガァ」
「この飛行機には男しか乗っていなかったはずでは」
「はい、この薬は男性にしか効かないので」
「んぐぅうううう!!」
「紛れ込んだのでしょう」
「愛菜ーーーー!」
不安で仕方ない。すべり台で脱出した先は島だった。人気のない島、おそらく無人島だろう。しかしこの島に愛菜や男子達がいるはずだ。草木を掻き分けて進んでいく。どうやら中央へ向かうにつれて高くなっているようだ。島なのだから当たり前だが。
「何あれ...!?」
突然の事だった。
視界にとらえたサルと人間の間のような生き物。原始人とでも言うべきか。私は咄嗟に大きな樹木に隠れた。木の隙間から半目を開けて観察すると、手に縄を持っている。誰かを探しているようだった。
あのサルが何人いるのか、敵か味方かも分からない。大声を出せば見つかってしまう。言葉が通じるようには見えなかった。静かにこの島を探索するしかない。
「何だこれ...?」
少し進むと白い大きな建物があった。しかし結論から言うと中に入る事は出来なかった。ドアはあるのだが鍵がかかっているようでノックしても返事がない。
「こんな所に住んでる人がいるというの...?」
「んぅう!んぅう!?」
「ウガァ」
「あの少女はどうするのですか?」
「丁度いいではないか、最初の被験者だ。我々もこのサル共の行動は読めないからな」
『ビリビリ...』
「ウガァァ」
「むぅうううううううう!!」
「今のは...」
確かに聞こえた。女の人の呻き声。この島に降り立って初めて聞いたヒトらしい声。誰であろうと構わない。声のする方へ...
私は島の中心に向かって歩く。途中何度か原始人を見つけたが向こうは私に気付かなかった。
呻き声の主は愛菜かもしれない。そう思うと自然と足が速くなる。自分がこうしている間にも愛菜が酷い目に遭っているかもしれない。分からない事だらけだが、現時点での最善は愛菜との合流だ。
歩くこと20分、高台に出た私は信じられない光景を目の当たりにした。
「ふぅ!ふぅう!んぐっ!」
「グルルゥ」
「グゥ」
(愛菜!とあの原始人!?)
愛菜が太い木に縛り付けられていて周りをあの原始人達が取り囲んでいた。口には猿轡を噛まされている。
「んぐぅうう!」
愛菜は必死に首を横に振り、原始人から逃げようともがいていた。腰回りを何重にも縄が駆け巡り彼女を木に固定していた。まだ自由な両足で近づいて来るヤツらを蹴飛ばしていた。
「んんぅうう!?」
するとヤツらは愛菜の足首を縄で束ねて拘束した。恐ろしい事に学習能力があるらしい。危険だと判断した愛菜の両足を縄で封じてしまった。
「んくぅぅぅ...」
もはや抵抗の術を持たない彼女は小さな呻き声を最後に大人しくなってしまった。
何あれ!やばい!どうすればいいの!?
今私があそこに飛び込んで愛菜を助けるのは無理だ。原始人達の数が多すぎる上にヤツらについて何も知らない。使えそうな武器もない。
(ごめん愛菜...)
「んんーーーー!!」
彼女は下半身の洋服を破かれて完全に下着姿にされてしまった。
「んっ!んぅうう!」
(あぁ愛菜、ごめんもう少しだけ耐えて...)
原始人達に弄ばれている彼女は悲痛な声を出していた。一度は大人しくなったがヤツらに服を破かれてから再度もがき始めた。
「んもぉうう!?」
胸を揉みしだかれ、下半身を撫でられ、愛菜は女性として最大限の屈辱を味わされていた。
「んんっ!?.....くぅぅ....」
この短時間でどうやら達してしまったらしい。彼女の身体が縛られたまま大きく跳ねる。
私も捕まれば同じ目に...
最悪の事態が頭をよぎったその時、ヤツらは愛菜から離れていった。理由は分からなかった。愛菜がイってしまった事と関係してるのか、はたまた巧妙な罠なのか。いや、見かけからして優れた知能を持っているようには思えない。ならば.....
「愛菜」
「んぐぅうううううう!?」
「静かに」
塞がれている愛菜の口をさらに私の手で上から押さえて静かにするよう促す。押さえた手が愛菜の吐息で温かくなるのがわかった。私の顔を確認すると涙で濡れたくしゃくしゃの顔を私にすり寄せてきた。
「今解いてあげるから...」
原始人達が帰ってくる前に何としてでも縄を解かなければ。
「おぉ、もう1匹紛れ込んでいたらしいぞ」
「確認できました直ぐにサル共を送り込みます」
「私の計画を邪魔されては堪らんからな」
もう少し、あと少しで解けるのに木の後ろに回された縄の結び目が固すぎて解けない。
「鈴香...私.....」
「今は逃げる事だけ考える」
いつも無謀で乱暴な私はこういう時だけは誰よりも冷静になれる。私なんか足元にも及ばない愛菜でさえも超える頭の回転量。
しかし現実は甘くない。
「「「ウグルルルル」」」
「!?」
ヤツらが戻って来た。目算にして私たちとの距離は40メートルほど。私に与えられた時間はもう数秒しかない。
「鈴香逃げて!」
「...」
「何してるのはやく!」
「...うるさい」
私は愛菜から全速力で離れた。愛菜の泣き顔が一瞬、微笑んだのが見えた。
「これは私の計画だ。愛菜は私に従ってもらう」
「!?」
その微笑み顔は日常でこそ輝くの。だから私1人で逃げる事なんてできない。
第一、この島から脱出するには
「まだあなたが必要なのよ!」
「「「グルルルル」」」
「うぉおおおおおおおおお!!」
ヤツらの1人に突進した。衝撃を受けた原始人は後ろに転ぶ。驚いた。女子の弱い力でも転ばす事くらいは出来る。すぐに次へ、足元に蹴りを入れて転ばせる。
「てめぇら!ここから消えろぉぉおおお!」
原始人達は怯えた様子だった。自分達よりも目の前の小さな少女の方が強い。そう錯覚したらしい。
「次はお前だぁああああ!!」
虚勢。当たり前だが数的に私は圧倒的不利。否、一対一でも私が負けるだろう。コイツらに刻み込ませるしかない。
"私の方が強い"
「知能レベルを調整しろ」
「...それは危険です」
「はやくしろ」
「......仰せのままに」
「だぁああああ!!」
叫んでいるだけで1人も近寄ってこない。私を怖がっているのだ。勝った。後1人転ばせて大声で威嚇すればクモの子を散らすように逃げていくだろう。
「サルどもぉおおおお!!」
狙いを定めて飛びかかろうとした瞬間。
「んぅうううう!!」
「!?」
愛菜の呻き声を聞いた私は咄嗟に振り返る。なんとヤツらの1人が愛菜の口を塞いだ上、喉に手を当てていた。
「やめ...」
「ふぐぅううう!」
体が一気に固まった。私は原始人達に睨まれている。あと一歩動けば愛菜が危ない。本能でわかった。
それを悟られたのか一気に群がって来たヤツらに捕まってしまった。
「んぉううう!ふぉううう!」
ジタバタと暴れるが縄は解けない。愛菜と一緒に木に縛り付けられてしまった。
「んくぅぅぅ...」
隣で愛菜が申し訳なさそうに呻く。
「ふぐぅゔゔゔ!!」
胸やアソコを触られ反射的に身体がビクンとする。口に噛まされた猿轡から涎が垂れた。そして...
「んんんんんんんんん!!」
私は愛菜と同じようにイかされてしまった。
「素晴らしい。想像を超える結果だ。」
「はい、彼女達がサル共の力を証明してくれました。」
「人間は進化しすぎたのだ。元々は狙った獲物を捕らえる種族だった。この島での研究は成功したと言えよう。」
「はい」
「して予定の女達はいつ到着するのだ?」
「数日後です。なんでも修学旅行の女子生徒だそうで。」