「ドライブテイシ……リブート……イジェクト。ドライブテイシ……リブート…………」
甲高い耳鳴りが、コックピットの軋む音が、壊れかけの機械音声が、はるか遠くの方から聞こえていた。
全身を揺さぶられながら、俺は短く喘ぐように息を吐いた。手が痺れている。固く握りしめているのは……操縦桿だ。俺はそれをゆっくり、指を一本一本剥がすように離していく。
「ここ……は……」
操縦桿がある、ということはここはコックピットだ。
衝撃を受け止めるはずの液体は排出され、俺は強かに全身を打ち付けていたらしい。
息を吸う、吐く。吸う、吐く。それだけを繰り返すうち、ぼやけていた視界が次第に輪郭を帯び始めた。
生きている。
呼吸。痛み。全身を締め付けるスーツの感触。
すべてが俺に、目を覚ませと叫んでいる。
「俺ぁ………………」
俺は終わってはいなかった。
爆発は、起きなかった。
ただ強烈な衝撃で、気を失っていた。
「――ッ! どうしてだ! 確かに自爆を――!」
俺は跳ね起きた。全身の細胞が勘弁してくれと叫ぶのが聞こえたが、すべて無視して立ち上がる。
濁りきっていた思考がいくらかスッキリしている。射精後の倦怠感が、快感と共にねっとりと下半身にまとわりついている。
生き残った喜びなど感じている暇はない。ただ焦っていた。機器はなにもかもイかれてしまったようだが、ここがサイラス様…………違う、サイラス達の群れの中心だというのは嫌でもわかった。コックピットの外から聞こえてくる異音。内部で蠢く触手。俺が命を懸けた特攻を仕掛けようとしたときから、状況は何も変わっていない。
「クソ……不動……動かねえ、限界……か、だったら何故……」
何故自爆できなかった?
俺は鈍くなったなりに、頭で必死に考えた。
機器がサイラスに乗っ取られた――?
一瞬そんな可能性が浮かぶがすぐに否定する。奴らは文明のコピーを行うが、それは単純な模倣だ。いきなり高度な電子機器に潜入し、あまつさえそれを上書きするような技術はねえ。
機器の故障か。いや、それもありえねえ。自爆とはつまり、ドライブのオーバーロードだ。出力全開だったエンジンが、急に都合よく停止し自爆だけが出来なくなるなんてそんなことはありえねえハズだ。
じゃあ何故。都合よく……いや、都合悪く俺は生き残った。
『隊長……ッ!』
警告音と異音に混じって、押しつぶされそうになっている小さな声が聞こえた。
若く懸命なこの声。
俺は声のする方を振り向いた。
「リクか!」
言って、俺は違和感を覚えた。
声のする、方角?
ここは宇宙空間だ。連絡はすべて通信越しのはずだ。だのに、何故俺は今背後を振り向いた。
『隊長、ドッキングします……!』
答えはすぐに、衝撃とともに返ってきた。ガンッ、という鈍い衝撃が俺のコックピットを揺らした。
それがトドメになったかのように警告音がついに止まる。
ガコン、と重い金属音が響き、俺のコクピットハッチが外部から強制的に開かれた。吹き込んできたのは冷たい宇宙空間――ではなかった。
正常に暖められたコックピットの適正温度。隣接した機体の与圧空気だった。
「隊長、へへ、お久しぶりです……ちょっと老けましたか?」
リクの乗る「不動γ」の、大きく開かれたコクピットが、ガッチリと密閉されて短い通路のようになっていた。
リクは口でだけ笑って俺を見ていた。場違いな軽い挨拶に俺は「うるせえ、そう簡単にウラシマするかよ!」と強がって笑ってみせた。
俺のガタイは相変わらずサイラスまみれ。全身打撲に、脳みそはさっきまでイかれきっていた。死ぬつもりだった。それがヘヴィヴァンガード部隊を率いる俺の体を見られることに恥ずかしさを覚えないでもないが、ともあれ数カ月ぶりにみる生身の人間の顔は俺を安堵させた。
「今副隊長もこちらに向かっています、少々トラブルがあって俺だけ先行する形になりましたが、」
「リク」
「うっす」
「……なんのつもりだ」
俺の言葉に、リクは答えなかった。
その顔はいつもと変わらない。俺やリクと違ってまだ髭も生えてねえような青臭い顔だ。だが、その目に宿っている光だけが、全くの別物だった。冷徹な好奇心、とでもいうのだろうか。通信で聞いていた焦りや不安に満ちていたアイツとは別モノだ。
そして、こんなことを言われても、ヤツは笑顔を浮かべたままだった。
「こんな場所に、単機で無事に来られるはずがねえ。お前は……何者だ」
俺のコックピットは未だにサイラスまみれだ。俺のケツを、腹を、脚を、全身をウネウネと蠢いている。
そこにもう一つの獲物が飛び込んできたのだ。どうしてそっちに襲いかかるそぶり一つ見せねえ?
俺は右腕を持ち上げた。機体の中の人工重力はゼロに近いはずなのに、腕が錨のように重い。
ストライクスーツに備え付けられた最終手段、テーザーの銃口をリクの顔をした男に向ける。
「焦りましたよ、まさか自爆特攻仕掛けようとするなんて、隊長」
『リク』はこともなげに続けた。
「おかげで、パァになるところでした、ああ、隊長の頭がじゃないっすよ、せっかくのデータが……です」
俺は拳を握りしめた。腕に備え付けられた電極針が飛び出す。生命までは奪わないが、筋肉神経が麻痺し行動不能に陥る高電圧だ。
……少なくても、サイラスは筋肉で動いていないことはわかった。リクの目の前に飛び出した黒い触手が、俺の最後の抵抗をいとも容易く受け止めていた。
「……何者なんだ、リク、お前は……」
俺の喉から掠れた声が出る。
抵抗が防がれた事がショックだった、そんなもんじゃねえ。問題は『防がなきゃならなかった』ってことだ。もし……もし目の前のリクがサイラスの作り上げた偽物だったら……。こんな触手で防ぐ必要もなかった筈だ。
やつの肩越しにコックピットの全方位モニターが見えた。
『――オーバーライドコード、承認。不動α、全機能強制停止』
その文字が見えた。
……ハッキングは外部からは不可能だ。サイラスにはその知能がねえ。
だが……、同じ通信、同じ周波数、同じコードを共有している不動同士ならば?
「考えてみりゃ……不自然だった。どうしてお前が突然あんなヘマをしたのか。俺達のフォーメーションはまったく乱れてねえのに、何故か俺が簡単にフォローできる位置と、角度で、偶然いきなりお前がサイラスに取りつかれたのか」
「案外、色々見てますよね隊長って、だから好きなんですよ」
リクは舌なめずりをして俺を見た。
ゾッと体が軋む。
「そんな顔しないでください、隊長……サイラスにまみれて、随分幸せそうな顔してたじゃないですか」
リクの薄ら笑いが俺の視界と思考を埋め尽くす。
その視線が、まるで無数の針のように俺の全身に突き刺さった。ナマの視線。見られている。俺の情報を、把握されている。あの黒い瞳が。俺の隅々まで、ストライクスーツの中にまで透けてくるような、そんな舐め回すような目だ。
「……き、さま……!」
俺は怒鳴りつけようとした腹に力を込めた。
いつからなのかはわからない。だが、この目の前の……仲間だと思っていた男はサイラスと通じていやがったのだ。
「ァ……ァぁ…………ッ!」
この裏切り者を罵倒してやりたかった。だが、俺の身体は、意思とは裏腹にまるで力が入らなかった。
背筋に悪寒が走る。スーツに締め付けられたケツの谷間から、臓腑を通って脳天まで……ピリピリと軽いしびれがずっと収まらない。
これは悪寒にも似た異様な快感が消え去らねえ。
リクに……こいつに……見られている。
そう考えると、怒りがどうしてもわかねえのだ。
俺の醜悪で、最も無防備な姿を、今この瞬間も見られている。その事実が、怒りよりも先に、俺の身体を内側からじわじわと火照らせていく。ストライクスーツの中が、汗と熱で蒸れていく。
「ほしかったデータにピッタリでしたよ、隊長は」
リクは、まるで研究成果を発表する科学者のように、淡々と続けた。
『強制介入によるドライブの緊急停止の限界値。オーバーヒートを無視したスラスターの最大稼働時間。そして……極限状態におけるパイロットの精神汚染の進行度。全て、完璧に記録させてもらいましたよ、イッテツ隊長』
その言葉の一つ一つが、俺の脳を揺さぶる。
良いデータ。
命懸けの俺の特攻も、恥ずかしくって死んじまいそうな俺の醜態も、全部データ呼ばわり。屈辱が俺の腹で渦を巻き、あらん限りの罵倒の言葉が出そうになる。
「ありがとうございます隊長」
「あ……ぅ……!」
だが、次の言葉にそれらが瞬間的に凍りついちまう。
褒められた。感謝された。その事実で、腰が砕けそうになる。
可愛い後輩だったリク。敵と通じていた裏切り者。そして、俺を支配するサイラスの一端。
目の前の男は、俺の中の過去や感情がグチャグチャに入り混じった、わけのわからねえ存在になっちまっている。
いや、一つだけ確かなことがある。
今……この目の前の年若いニヤケ面の男は……俺を支配している。俺の主人。俺のすべて……。
「ちが……う、俺は……レガシーの……人類……のッ……」
脳が痺れるような快感が全身を駆け巡った。
また馬鹿な考えに頭が埋め尽くされ始めた。サイラスに与えるのとはまた違う、屈辱と背徳感に満ちた、ねっとりとした甘い快感だ。俺の下半身で鎮まりかけていた熱が、再びその勢いを増していく。
「リク………お、お前は、俺の……俺の」
俺の敵。
その言葉がどうしても出てこねえ。
憎悪する相手に愛の言葉を囁やけねえように。信じる味方に罵倒が出てこないように。
この目の前の主人の意に反する言葉がどうしても……どうしても出てこねえ。
「何故……何故、だ、リク……どうして……」
跪くように崩れ落ちながら、俺はなんとかそれだけ絞り出した。
リクの笑みがさらに深くなる。その瞳の奥に、狂信的な光が宿っているのを、俺は見た。
『俺はね、彼らこそが人類の次なる進化の形だと確信しているんです。個という曖昧な境界線を捨て、全ての知識と経験を共有する完全なる集合知性体へ……。サイラスによる人類の"昇華"。それこそが、我々がこの閉塞した宇宙で生き残る唯一の道なんっすよ」
リクの言葉は、俺の理解を完全に超えていた。
こいつは、狂っている。
人類の敵であるサイラスに、自ら魂を売り渡した裏切り者。
だが、その狂気に満ちた瞳に見つめられながら、俺の身体は、汚染された本能は、歓喜に打ち震えていた。
その計画の第一歩に、俺は選ばれたのだ。
「あ……あぁぁ……俺は、俺は……ッ、畜生、どうして、こんな……こんな」
どうしてこんなに嬉しいんだよ。
なんでこんなに気持ちいいんだよ。
俺はケツをコックピットにこすりつけながら、勃起したチンポをスーツの中に擦り付けちまった。
俺はこの男の計画の、最も重要な駒だったのだ。
その事実に、俺は抗いがたいほどの興奮と、屈辱的な快感を覚えていた
「そうですよね隊長。サイラスに取り込まれ、知識や知性を吸い上げられて、とろけていくのは気持ちいいでしょう? 皆にもこれを教えてやらないと、ねえ?」
ああそのとおりだ!
頭で考えるより先に、体が……下半身が答えようとする。
全部絞り取られる。何もかも奪われる。空っぽになった頭と体に、このサイラスみてえにどろっどろの気持ちよさが詰め込まれる。
俺も、シュウジも、故郷の仲間……アストの野郎も、教官も、デイヴも。
ああそれだけじゃねえ、俺を信じて待ってくれている皆。レガシーの市民も、誰も彼も…………!
「そんな……そん、なっ…………!」
脳細胞がグツグツ煮えたぎりそうなほど興奮が湧き上がり、本能が猿のように射精したいと叫んでいる。
「だ……め……だッ…………!」
俺はコックピットの壁面に体を打ち付けた。痛みに意識が鈍り、同時に覚醒する。そのまま壁に肩を預けながら、震える膝で立ち上がる。殆ど糸が切られた人形が、それでもなんとか立ち上がろうとするような不格好な姿だ。
「俺は……そんな……させる……わけに、は……ッ!」
頭の中で鈍痛のように響くサイラスの誘惑を、頭の中に張った蜘蛛の巣を払うように振り払う。
「俺は……人類……の、盾……イッテツ……ヤブキだ……ァぁッ!!」
俺は拳を握りしめた。もはや不動αは動かねえ、だがせめて、このイカれちまった若造の頬を一度ひっぱたき、目を覚まさしてやるのが俺の役目。隊長としての最後の任務だ。
「お前のそのツラ……、ぶん殴って……目ぇ……覚まさせてやるッぅぅ…………!」
そうだ。俺は、人類の盾だ。
負けることは許されない。最後まで抵抗してやる。
熱い何かが、腹の底から込み上げてくる。正義感。使命感。そうだ、俺は、イッテツ・ヤブキは、こういう男だったはずだ。
俺は力を振り絞り、ボクサーのように構えながら一歩リクに近づいた。
「さすが……見事ですね、隊長! ここまで侵食されているのにまだ抵抗するなんて、このデータがなけりゃ……俺達すっかり人間の抵抗力ってものを油断しちまいましたよ」
全身を、凄まじい快感の電流が駆け巡っている。呼吸の一回一回すら気持ちいい。
「ですがね、俺達は……そんな貴方が、無様に屈服し、負けるところが見たいんですよ」
俺の脳裏に、今まで経験したことのない光景が、鮮明に浮かび上がった。
そうだ。俺は、負けたことがない。
どんなに絶望的な状況でも、仲間を守るために、人類の未来のために、常に勝ち続けてきた。負けは、死を意味したからだ。
そんな俺が、もし負けるとしたら?
どんな顔で? どんな声で? どんな無様な姿で、屈服するのだろうか?
その光景を、リクが「見たい」と言っている。
そして、そのデータは、サイラスにとって、これ以上ないほどに貴重で、甘美な「情報」となるだろう。
常勝無敗の英雄が、快感に屈して堕ちていく様。それは、人類という種がいかに脆く、いかに欲望に忠実であるかを示す、最高のサンプルになる。
――そうだ。俺は、負けるべきなのだ。
俺の意志とは関係なく、汚染された欲望が勝手に膨れ上がっていく。
抵抗しようとしていた腕から、力が抜けていく。
ストライクスーツが、俺の昂りに反応して、ぎちぎちと身体を締め付け始めた。そして、シートと背中の隙間から、いつの間にか再生していたサイラスの黒い触手が、俺の尻の割れ目へと、ぬるりと伸びていくのがわかった。
「あ…ぁ…あぁ……ッ!」
だめだ。負けられねえ。
俺は人類の盾。
戦い続けてきた。
体を鍛え、操縦桿を握り、どんなにきつい戦場でも生き抜いてきた。
俺はストライクスーツの中で、いっそ筋肉を膨張させた
ヌルヌルのサイラスや汗が肌に密着する。
右ストレートを放つために、腕をグッと引く。そして力をさらに込める。どんどん隙間がなくなりブチュリと嫌な音を立てて弾けていく。
せめてこの一撃。人間の意地を、俺の正義を、一発だけでも食らわしてやる。
俺は歯を食いしばりながらリクを睨みつけた。
「リクッ……、俺の……を……ッ――」
「ああ無駄ですよ、隊長」
そんな俺の決意をぱっと払うように、リクは俺のコックピットに足を踏み入れた。
「だって、ほら……操縦桿が丸見えだ」
そう言ってやつが指さしたのは、俺のコックピットの操縦桿ではなかった。
俺は声を失った。
拳を握りしめ、構えた俺の下半身。
俺の……バキバキに勃起しきったチンポをヤツは指さしていた。
「なっ…………ん」
俺は声を失った。
呆気にとられている俺の懐にリクが潜り込む。
手が伸びる。
防げねえ。
俺を包み込むストライクスーツの股間をその冷たい手で、根本からガッシリと掴んだ。
「――――――ッッ!!」
声にならない絶叫が、口から迸る。
俺のチンポが、……いや俺の操縦桿が、まるで自分から擦り付けたがっているみてえにドクン、ドクンと脈打っている。
人差し指から小指まで、一本一本がわかるくらいに、俺を……俺自身をゆっくりと締め付けてやがる。
「あっ、それ、駄目……待っ……」
俺の男臭え声が、情けねえ声を上げちまう。
それは駄目だ。ソイツは駄目だ。ソレされちまったら俺は……俺は……。
本能が白旗を掲げようとしている。その瞬間だった。
「はい、敗北スイッチオン」
最後に残った親指が、俺の竿を包みこんだ。
まるで子供がおもちゃでも弄くるような台詞を告げながら、奴は俺の亀頭の先端を撫でた。
敏感な男の象徴。一番気持ち良くなっちまう場所。俺の弱点。雄の……イッテツの、操縦桿の……敗北スイッチ。
「ぬ、ハァ……あぁぁああーーーッ♥♥ そ、そんなスイッチ、おれ、俺に……俺にスイッチがぁぁああ俺のチンポにそんなもんがぁぁああ♥♥♥」
脳天から爪先まで、今まで経験したことのない、凄まじい快感の稲妻が駆け巡った。それは、サイラスに与えられた快感とも、自慰の快感とも違う。他者に、このリクという男に完全に俺を掌握されちまった……、絶対的な屈服の快感だった。
情けねえ。なんだこれは。
こんなくだらねえ、チンポを握られるのが俺の負け? 俺の操縦桿? 何十年とヘヴィヴァンガードを操ってきて、それで……俺は……俺は……。
「ほらほら敗北スイッチ押されてるんっすよ、隊長」
「ひぃぃいおぉおおおおソコそんな押ッ、されたら……あああぁ敗北ゥゥウウ、負ける、負けッ、負けたくなっちまって、俺、俺負けるぅうう負けちまうぅぅううう♥♥♥」
負けろと、言われた。
操縦桿を握られて。
じゃあ、負けるしかねえじゃねえか。
そんなもん、決まってるじゃねえか。
だってこいつは、俺のパイロット。
俺の操縦桿を握り、命令しているのだから、それがすべて。
「はひっぃいッ……♥♥♥」
チンポから込み上げる快感が、体のなかのサイラスを通じて全身に行き渡る。敗北スイッチの命令が、俺の全身に命令を下している。
力が抜けていく。さっきまで必死に保っていた抵抗の意志が、まるでプログラムが書き換わったように終わっていく。
膝が笑い、俺はその場に崩れ落ちそうになった。だが、リクが俺の猛りを掴む手に力を込めることで、俺はかろうじて立ったままの状態を維持させられる。
「負けるぅぅううう♥ ま、負ける、負ける、負ける負ける負ける、負け、俺、イッテツが、俺負ける、チンポ、操縦桿、命令でまける、負けるメイレーーで負ける♥ 敗北、宣言しちまう、負けたくなる、負ける負ける、完全敗北するぅううう♥♥♥」
涙が、頬を伝った。悲しいなんてこれっぽっちもねえ。屈辱と、そして歓喜の涙だ。
俺は、この瞬間のために、ずっと戦ってきたのかもしれない。この男に、こうして全てを暴かれ、屈服させられるために。
「はい、敗北のポージング」
そういって、リクは俺の雄の操縦桿をグニと上下に揺らした。
「はいぃいいいい!」
俺の口から、悲鳴のような返事が上がった。
「ま、負け、ましたあああッ♥♥♥♥」
そして次の瞬間、俺は力こぶを見せつけながら宣誓した。
そこに躊躇いなんてこれっぽっちもなかった。
命令に従う機械が悩んだりしねえように、俺はすぐさま完全に負けちまったことがわかるように、情けなく股をおっ広げて、両手を上げて宣誓したのだ。
「敗北ポージング命令ッ、操縦桿握られながら、もらっちまったら従うわけにはイカねぇーーーー♥♥♥ 敗北、俺、負ける、負けちまった、負けたから従うぅぅう、負けるの気持ちいいからしたがっちまうぅぅうッ♥♥♥」
俺は潤んだ目ですぐ目の前の男を見下ろした。
そんな俺を見上げながら、俺の操縦桿をオモシロげに操るリク……リク様。
サイラスの主。俺を支配するもの。
「はい、じゃあ次はこうだ」
そういってリク様は俺の操縦桿を右に動かした。
根本からチンポを扱かれる気持ちよさと、命令される屈辱と喜びに俺の全身が震える。
「はいぃぃいいいい♥♥♥」
俺は両腕を右に持っていき。そこでまた力強く二の腕に力を入れてみせた。
人類を守るために鍛えた腕が、かんっぺきに操られていることを見せつける。もう俺は完全に、コイツの愉快な操り人形だ。
「はい、また上」
「オオォォオオッスウゥゥウ♥♥♥」
俺は震える足を思いっきりかっぴらき、ガニ股になって両腕をバンザイのように上げた。
全身を晒し、なにもできねえと脚も腕も主張する。
「負け、負けちまうっ、負けッ♥♥ 負け、負けるっ、負けちまっっだぁぁああッッッ♥♥♥♥♥♥♥」
気持ちよすぎる。
俺はそのまま男らしくポージングをかまし、そのまままた同じように両手を上げた。
こんなに男臭え俺が、全面降伏。
ああ、負けだ。
命令通り負けの姿を
「じゃあ、今後は俺とサイラスのために、命を尽くして従ってくれますね、隊長」
俺を隊長と呼ぶ声が、俺にすべてを裏切れと命令してくる。
「あ…………」
リク様は親指を離した。
改めて、俺のスイッチを押す助走のために。
「じゃあ、今から……お前は俺のものだ」
冷たい口調で、リク様は俺の亀頭を撫でくりまわした。
「は、はいぃぃいいいリク様ぁぁぁあああ♥♥♥♥♥ ぜ、全部うらぎってでもぉおお俺は貴方様のぉぉおおお命令にしたがいまくりますぅうぅうう♥♥♥♥♥」
俺はストライクスーツに向けて大量の雄汁を放ちながら、目の前の主に忠誠を誓った。
『――パイロット、覚醒を確認。バイタル、安定』
無機質な合成音声が、俺の帰還を告げる。
公式記録には、こう残されるのだろう。
「不動αはサイラスの奇襲を受け大破。隊長イッテツ・ヤブキは、僚機である不動γのリク・シロタによる決死の救助活動により、辛くも生還した」と。
茶番だ。だが、その茶番こそが、これから始まる俺の新たな任務の、完璧な隠れ蓑となる。
「悪ぃなシュウジ、心配かけちまったな」
俺は半笑いになりながら、モニターの向こう側の副隊長殿に言った。
『しぶとい男だと思ったが、ここまでくるといよいよ……死神相手に喧嘩を売っているとしかおもえん』
「死に損なったんだぜ、もうちょっと優しい言葉でもかけろって」
俺はそういって、手短に報告をして通信を切った。
そして今しがた報告していた口で、目の前のチンポを咥え込んだ。
「いい演技でしたね、隊長殿」
「ふぉぉ……おぉ……♥ あ、ありがたき、シアワセッスッ……サイラス様に、脳みそイジってもらって……むふォォ……演技、あんなできるように、なっちまったァぁ……♥」
俺は舌と唇でリクの……本心ではリク様と呼びたい相手のチンポを味わいながら喜びに打ち震えていた。
アレほど痛かった体には何も損傷はない。それどころか、全身に満ち溢れて、以前よりも感覚が鋭敏になり、世界がより鮮やかに感じられた。
これは、サイラス様の力。俺と「融合」した、新たなる主の力だ。
「じゃ、隊長、次はケツっすよ」
「ハイ、かしこまりまし…………ああ、じゃなくって、わかった、ぜ……」
また意識が混濁しちまって、ついついリクに忠誠誓っちまう。でも駄目だ、ソレじゃあ駄目だ。
俺は人類の盾イッテツ・ヤブキとして帰還しなくちゃならねえ。
そうじゃなくっちゃ「レガシーへ帰還し、内側から"昇華"の準備を整えよ」って命令が果たせねえ。
人類を裏切り、旧き同胞たちを新たなる主の下へと導く、静かなる侵略者。
それが俺だ。
俺は、そう変えられちまった。この男と、サイラスに。
「おぉぉ……リクゥゥウ。チンポ、もっとチンポ、ぶち込んで……くれぇぇ…………ッ♥♥ 奥、奥までぇえええ♥♥」
その事実と肉棒の快楽に、俺の身体の奥底がぞくぞくと歓喜に打ち震えた。
俺はリクに跨りながら、激しく腰を上下させた。
レガシー帰還まではまだたっぷりと時間がある。その間中、俺はこの主の性処理係としてたっぷり調教されることだろう。
この狭いコックピットの中。かつて人類を守るために籠もっていたここが、そっくりそのまま俺をドスケベな侵略者に変えるための研究室になるわけだ。
「へへ……へへッ♥♥」
俺は磨き上げられたコックピットの壁面に、ぼんやりと自分の面を見た。
そこに映っていたのは、紛れもなく俺、イッテツ・ヤブキの姿だった。だが、その瞳の奥には、以前にはなかった冷たく、そして仄暗い光が宿っている。
俺は鏡の中の自分に向かって、にやりと笑った。
そうだ。これから始まる。
英雄としてレガシーに凱旋し、仲間たちの賞賛を浴びながら、その裏で、静かに、そして確実に、彼らを新たなる主の下へと導くのだ。
彼らの信頼を、友情を、全て裏切り、その絶望する顔を想像するだけで、俺の下腹部に、あの日のような熱が蘇ってくる。
最高の気分だった。
俺は、生まれ変わったのだ。
サイラスの兵士(ソルジャー)として。そして、リク様の、忠実なる駒として。
「隊長、ホラもっと締め付けて、そうしねえと奥にだしてあげませんよ」
「あぁ…………なんだよぉ……そんな意地悪いわねえで、ケツにくれ……って……おれ、お前のためにぜーーんぶ捧げたんだぜええ♥♥」
俺はリクに絡みつきながらそう言った。
興奮に火照る身体、ストライクスーツ同士で擦り合わせながら俺達は笑いあった。
サイラス色に輝く瞳同士を覗きながら、俺達は同時にイッた。
さあ、帰ろう。
俺たちの愛すべき故郷、「レガシー」へ。
完