洗脳怪人シリーズ
いわゆるヒーロー番組だけれど、主役をヒーローにはしないで「序盤の一般市民が洗脳されて大変だ」というシーンを洗脳される側を中心に濃厚にして書いてみました。
それは潮の香りと錆びた鉄の匂いが混じり合う、ある離島で始まった。
港は早朝こそ男たちの活気で賑わっていたが、昼過ぎともなると人々は海へ町へに向かっていき、残ったのは寂しげな波音だけだ。
そんな静かな港で、一人の漁師がタバコを咥えながら浅黒い顔面を海に向けて呆けていた。筋肉質でゴツゴツとした顔立ち、いかにも波に揉まれて生きてきたような太い腕、節くれ立った指。彫りの深い顔に刻まれた細い目が、今は海と並ぶようにして寂しげだった。
「ちゃんと食ってるんだろうなアイツ」
彼は煙を噴きながら髭面の口の中で小さく愚痴をついていた。
「都会の魚食って、故郷が恋しくなって情けねえこと言ってねえといいが……ったく」
一人息子が都会の大学に進学して一ヶ月。
決して仲睦まじい親子ではなかったが、それでも大事な一人息子の不在は男からすっかり毒気を抜いてしまった。
家に帰ってももう口うるさく怒鳴られることもない。自由になったはずなのに、糸が切れた人形のように体が重かった。
「グシャシャシャーーー!なんと退屈で、不幸そうな顔をしたオヤジだガニィ!!」
「……あ?」
そんな彼の目の前で、意味不明のテンションで叫ぶものが一人、いや一つあった。
かろうじて人型をした生き物だ。海水まみれの真っ赤な爪をパクパクと開閉させ、体を上下に揺らしている。聞き苦しいが間違いなく人語でもある。
「なん…………だァ…………」
深紅の甲殻に覆われた、巨大なカニ。
彼がもう少しネットニュースなどを見る人間であれば、胸のエンブレムからそれが『怪人』と呼ばれるものであるとわかっただろう。
「グシャシャシャ、しかしいい体をしておるようだ、立派な『アヘガニー親父』になるにちがいないガニィーッ!」
ソレが笑っているのだということさえ理解できないまま、漁師はその生物を見つめていた。煙草の灰がアスファルトの上に落ちる。
――もしも彼が、いま己の身に降り掛かっている事態を正しく理解し、すぐさま然るべき場所へと通報していれば、おそらく世界の有り様は随分と変わっていただろう。
しかし彼を責めることなどできない。田舎の漁師として質実剛健に暮らしてきた男にとって、目の前の出来事はあまりにも常識外れで理解できないものだった。
「おめぇ一体なんだ、けったいなもん着おってからに」
「ああなんと可哀想に…! よかろう! このわしが、お前を脳みや苦しみに満ちた人生を全部全部シアワセに変えてやるガニーー!」
「なんかの撮影かなんかか、あァ?」
会話は成立しなかった。
数ヶ月前、突如世界に現れた侵略者AHーEros。
男の脳を快楽漬けにし、腑抜けにし、快楽のためならどんな命令にも従うように変える恐るべき犯罪集団である。だが現状はヒーローが全戦全勝しているため被害規模は小さく、パニックを防ぐための情報規制が敷かれていた。
それで今までは問題なかった。この見るからに異常で奇っ怪な
生物に好んで近寄るものなどいなかったからだ。
「ハー…………こんな場所までわざわざくるたぁ……妙な流行りがあるもんじゃのお」
漁師も好き好んで海水まみれの巨大蟹に近寄るようなことはしなかった。
しかし恐怖してもいなかった。虚脱感に加え、荒波とともに育った肝の据わった男である。ただ奇妙な生き物が喚いている程度で、悲鳴を上げて逃げるなど男らしくないと無意識的に思っていた。思ってしまっていた。
「グシャシャシャァ、まずはお前からだ! 食らうがいいッ『アヘガニバブル』!!!」
組織が送り込んだ第四の怪人、変態洗脳怪人4号『アヘガニー』は滑稽極まりない技名を叫ぶと開口部を大きく開いた。
「な、なんだァ」
そこに至り、漁師はこの生物が造り物でないことを理解した。だが遅かった。
次の瞬間には、大量の泡が一つの塊のように飛び出した。
「ハァ!? な、なんだってんだァコイツはァッ!!」
漁師は椅子を蹴るように立ち上がり、煙草を放り、泡を躱すために後ずさった。そこでもまだ、彼は背中を向けて逃げることができなかった。
泡は形を保ったまま漁師の顔面へと迫った。磯臭い香りを放つ泡の壁が、濁ったピンク色で視界を覆い尽くす。
逃げ切ることはできなかった。潰すこともできなかった。
漁師が振るった拳は泡をすり抜け、そのまま太い腕を逆流するように泡が顔面に襲いかかった。
「んぼッ!」
一塊がまぶたと口にぶつかった。不思議と割れることもなく、それは漁師の顔をどんどん埋め尽くしていく。
漁師は大股開きで立ったまま、ゴツゴツした手で泡を乱暴に拭おうとした。
だがそれはベッタリと張り付いたように離れない。少しも割れる様子がない。
気色が悪ぃ。前が見えねえ。そのうえ臭えし、わけがわからねえ。
漁師は苛立ちで奥歯を握りしめた。
パチン。
泡の一つが弾けた。
「んぐっ…!んんんーーーっ!!」
くぐもった声にならない声が、泡の下から漏れた。そして次の瞬間、漁師の鋼の肉体は、まるで雷に打たれたかのように、ビクンッ! と天を仰ぐように激しく仰け反った。
身にまとっていた服が彼の常軌を逸した動きに合わせて張り詰める。服の上からでもわかる分厚い胸板、丸太のような腕、そして大地に根を張るかのような逞しい太腿。その全身の筋肉が、意思とは無関係に、限界まで収縮と弛緩を繰り返す。
体のコントロールが利かない、そしてわけもないのに怒りと苦悶で股間の隆起がガチガチになっていた。
(な……なん……だ、今、なにがおきた……俺になにが!)
竿はなおも猛々しく、脈打つように存在を主張している。
ピク、ピク、と全身が小刻みに痙攣を続ける。その間、漁師の思考は、ピンク色の泡の中で、静かに、しかし確実になにかが起きていた。
(なんだ、やべえぞ、なんだこれ、俺ぁ……なにを……して……)
体から自然に力が抜けていく。
じわり、と体の芯が温まり、筋肉の強張りが解けていく。
防水防寒の作業着の中で、肉棒だけがガチガチに張り詰めてテントを作っている。
「グシャシャッ! このバブルでお前のなかのいらないものをぜーーんぶ消してやるガニよぉおおおーー」
目の前にいるはずの化け物がなにか叫んでいるが、言葉がうまく理解できない。そんな余裕がない。焦り、困惑、だが同時に心地よくもある。異常なものが混じり合っていた。
「な、なんだァこいつは!」
「おい健さん大丈夫か、どうなってんだこいつは!」
騒ぎを聞きつけて男たちが集まってきた。
もはや誰も撮影や冗談とは思っていない。それだけ漁師のうめきと痙攣は激しかった。
パチン!
鼻先でまた泡が弾ける。泡の海に顔を漬けながら、漁師は目を見開いた。
(あ……ガぁ! ……なんだ、泡が……弾けたとたん、に…………また……!)
それは苦痛ではなくなっていた。長時間の漁を終え、熱い湯船に浸かった時のような、心地よい弛緩……それに近かった。
「アッ…ガっ…………!」
さらにバチン……と泡が弾けた。
突如、漁師の脳裏に、若い頃の甘い記憶がフラッシュバックした。初恋の相手の顔。交際。そして――
色々な思い出が凝縮されて、一瞬で脳を埋め尽くし……そしてパチンと消えてなくなった。
(あ……ああ…なんじゃ…これはァ!)
消えた。消えた。消えちまった。
思い出せねえ。
漁師の鋼の肉体が、ビクン、ビクンと規則的な痙攣に変わる。
(なんじゃこりゃッ、こりゃ……あ、…熱ィッ…脳が…直接、かき混ぜられちまってるみてえにぃ……ッ!)
直ぐ側で男たちが漁師を囲み、顔面から泡を引っ剥がそうとしている。
だがやはりビクともしない。当然だ。アヘガニー様のバブルが、人間ごときの力でなんとかなるはずがない。
視界はピンク一色。呼吸をするたびに、甘く痺れるような毒が、脳の奥深くまで染み渡っていく。
(ああ……きえ、消え……俺が、今、泡の音で消え……あっ……)
混乱の中でも次第に理解し始めた。この心地よさは、頭が空っぽになっていく気持ちよさだ。
悲しみも苦しみも悩みも、泡が弾けるのと一緒に消えていく。
今の俺の心を蝕んでいたもの、苦しめていたもの。
ふっと……漁師の頭に息子の顔が浮かんだ。
喧嘩ばかりしていた厄介者。頭が回るせいで口ではまるで勝てなかった。幼い頃の約束を忘れ、漁師を捨てて島を捨て、都会にいった……大切な一人息子。
(ま、待て、だめだ、駄目だ駄目だだめだッ!)
「ンーーーーッムゥウーーッ!」
漁師は必死に顔を振り、泡を弾き飛ばそうとした。
理解したことで強まった恐怖が彼をがむしゃらに動かす。
忘れて楽になる。楽になっちまう。
嫌だ、冗談じゃねえ、俺の頭に勝手なことをするんじゃねえ。この俺の怒りや苛立ちや不満は全部――
パチン! パチン! パチン!
(………あ……う……あっ!!!!)
思考が、一瞬だけ途切れる。些細なことだ、と彼は自分を励ました。しかし、その「パチン」という音は、一度鳴り始めると、もう止まらなかった。
頭の中の脳細胞が、一つ一つ音を立てて弾けて、そして消えていくのだ、何度も幾つも……。
パチン!
(…息子の………顔が……ッ、どうして、どんどんぼやけていきやがるッ、どうなってるんだ!!!)
愛する子供の顔が、のっぺらぼうのように霞んでいく。
パチン!
(…あいつのいった大学、名前が……思い出せねえ! 何度も見た、あの合格発表の……あれだ、あれ……ええっと……ああ、なんだぁぁあッ!!)
家族と積み重ねてきた、絆の記憶が色褪せていく。
パチン!パチン!
(やめろ、消えるな、消えて、ああ、すっからかんになって、ふわっふわして……あ……アァァアアッッ!!)
そして、泡のように体が軽くなっていく。
頭が軽くなっていく。
思考が緩んで、力が抜けて、消えていくことなんてそんな……どうなろうとしったことじゃねえような……そんな気分が彼のすべてになっていく。
(え……あっ、なんで……俺、焦って……たんだ、なにを、思い出そうと……して……あ、あれ……まずいんじゃねえ……のか、もっと……困ったほうがいいんじゃ、え、でも困ったりするのって……嫌だ……いや……だよな……)
そして、その恐怖すらも消えていく。
ああ、どんどん泡になって消えて、そのパチンパチンという音が……愉快で、楽しくて……。
「ひっ…………へへ……」
少なくなった泡から、髭を蓄えた漁師の口が露出した。
その口端には、透明な泡……彼自身の口から溢れたヨダレででてきた泡がこびりついていた。
パチン、パチン。
ああ音が気持ちいい、右耳、左耳、どちらからも聞こえてくる弾ける音、シュワシュワと泡が縮んでいく音、なにもかもが、脳みその隙間に潜り込んでくる。
いつしか痙攣はおさまり、代わりに彼の体はゆっくりと弛緩したまま動き始めていた。腰を落とし、勃起した竿を服の内側に擦り付けるように振っている。
「お、オイ! どうした、なんだこれ!」
「グシャシャ! そいつはもう完全に俺様のアヘガニバブルの虜だガニぃいいいッッ!」
助けようとしていた男が後ずさる。
漁師は泡の隙間から男をみた。当然……彼の名前などわからなかった。何十年と同じ海で働いてきた仲間のはずなのに、これっぽっちも思い出せない。ああなんて頭が軽い。浮かび上がっちまいそうだ。
快感の前になんもかんも意味がない。息子の名前も思いだせねえのに、こいつの名前なんて思い出せるわけがねえ。
あ? 俺、………………息子の名前……忘れちまったのか。
「へへ……へ…………へへへッ」
それがどうにも間抜けで面白く、漁師は厳つい顔を完全に緩めて笑った。
肉棒から自然に汁が溢れる。
パチン。
パチン。
泡が消えていく。もう半分以上弾けてしまった。
だが、彼の頭にはもう半分も残っていなかった。
空っぽになった脳の領域を、どろりとした変態的な欲望が、まるでピンク色の粘液のように満たしていく。
(ああ…そうだ…なんで俺は、……あんなに悩んでやがったんだ…………?)
(もうぜーんぶどうでもええじゃねえか……なんか、もう、思い出せねえから、ねえもおなじだぁ……)
(ああぁ……すげえアヘガニー様の……泡……きもちぇえ…………)
(難しいことなんか、もう考えたくねぇー…………、ただ、この気持ちよさに、全部任せて………腰を振って…泡出して……へへ…………へへへ……えへへ……あへッ♪)
そして、ついに。彼の脳内で、最後の理性を繋ぎ止めていた、一番大きな泡が、「パチン」と、ひときわ大きな音を立てて弾けた。
ふっ、全身から力が抜けた。
顔面を覆っていた残り少ないアヘガニバブルが、ゆっくりと、ずるりと地面に滑り落ちていく。その下から現れたのは――
「アヘ……へ…………へへへへ♥」
もはや、厳つい漁師の顔ではなかった。
瞳の焦点は合わず、理性の光は完全に消え失せている。口元はだらしなく緩み、泡になったよだれが、たらりと垂れていた。そして何より、その表情は、恍惚と歓喜に歪みきった、完璧なまでのアヘ顔だった。
「お、オイ大丈夫かよ健さ…………」
「け……ンン……へへ……へへへ……そぉんな名前だったガニぃぃい?」
男らしく低い声で、ふざけたような語尾をつけて漁師は笑った。
「さあ第一号のお前は、俺様が直々に……特別に仕上げをやってやるガニィッ」
そういって蟹の怪人は漁師に近づき、巨大な鋏を彼の体に突きつけた。
あっ、と男たちが言う間もなく……彼の体は切り刻まれた。
そして残っていたのは。
「はひッ…………」
素っ裸に剥かれた状態でヘラヘラと笑う屈強な漁師だった。
「あえ……? へ……? ええ?」
何も理解できないままの漁師にアヘガニーは滑らかな泡を吐きつけた。今度は怪人と同じギトギトとした赤色で、それは漁師の毛深く浅黒い体を覆い尽くしていく。
「さあ完成ガニィ!」
「なっ…………なんだこれ……」
「なにがおきて……どうなってやがる……」
「…………あへ♥」
驚愕する男たちの声など無視して漁師は笑顔を浮かべていた。その体はまるで蟹の色を模したよう赤いスーツで覆われ、異様な光沢を放っていた。
そして漁師はゆっくりと、実にゆっくりと、その両腕を持ち上げた。逞しい二の腕を見せつけるようなると、顔の横で、あの忌まわしいピースサインを作って見せた。
チョキ、と軽い音を立てて指が動く。
それと同時に、彼の屈強な下半身が、ぐにゃり、と奇妙な動きを見せた。鋼のように引き締まっていたはずの腰から力が抜け、両足は大きく開き、つま先で体を支える、滑稽なガニ股のポーズへと変わった。
「アヘ…アヘヘ…」
それは芸人や子供がするような、蟹のジェスチャーのようであった。
しかし大の大人が、それも逞しい髭面の漁師がしている様は、卑猥かつ威圧感すらあった。
大きく開いた股の間ではガチガチになった勃起がピクピクと跳ねて、両手のピースサインが開閉するのに合わせるようにドクンドクンと脈動している。
「アヘ♥」
その声と同時に竿が跳ねると、そこから精液――だったのであろう液体が泡になってブクブクと溢れてきた。
「き、気ン持ちいいぃぃぃい~~~ガニぃぃぃい♥♥♥」
彼は、自分の変わり果てた姿を見せつけるように、数回ひょこひょことその場で足踏みをしてみせた。そして、満足したかのように、ニタァ…と笑うと、高らかに宣言した。
「わしはもう、人間なんてくだらねーものも、漁師もぜんぶぜんぶやめるがにぃぃいい♥ わしは今日から、『アヘガニー親父一号』だガニィ!」
その言葉の締めくくりと同時に、彼は突き出した腰を、**ビンッ!!**と、天に向かって力強く突き上げた。
「アヘガニーサマに永遠の忠誠をぉおおおンン♥」
口とちんぽから泡を飛ばしつつ、かつて漁師だった男は真っ赤な体で愉快そうにはずんだ。
残された男たちの顔が青ざめる。腰を抜かすもの。逃げ出そうとするもの。人を呼ぶもの。
反応はそれぞれだったが、彼らに共通するものがあった。
もう手遅れということだ。
「さあ一号、まずは手始めにここの男たちをお前と同じアヘガニー親父にするんだガニィッ!」
「かっしこまりましたぁン♥ アヘガニーサマァ♥♥ ちょきちょきぃいい♥」
子供を男手一つで育て上げた凄腕漁師は、両手のピースサインを嬉しそうに動かしながら振り返った。
男らしい顔は嬉し涙とヨダレと鼻水でぐずぐずになり、満面の笑みを浮かべて腰を抜かす漁師を見下ろした。
「ひっ……」
「さあお前も……なんもかんも忘れて、俺と一緒にチョキチョキアワアワまみれになるがにぃい♥」
ガチガチに勃起した肉棒が漁師の顔面に迫る。
息子をこさえた自慢のイチモツ。息子ができてから働き詰めでセンズリばかりだったイチモツ。銭湯にいけば注目を集める立派なデカマラ。
今では真っ赤なスーツに包まれ、精液を出すこともなく泡を生み出す器官になってしまった竿が、それを喜ぶように鈴口を開いた。
「あへええッ♥♥ きもちぃいぃいい♥♥ 雄を洗脳してやるガニィィイイイイ♥♥」
そのまま漁師――アヘガニー親父一号は仰け反って、ピースを浮かべたまま腰を突き出した。
頭の中でまた、パチンパチンと音がなる。
もうすっかりおぼろげだった男の……青年?若者?子供?とにかくどこかのどいつかの顔がパチンパチンと消えていく。
それが気持ちいい。
「アヘ♥ はへ♥ あへええッッ♥♥♥ あへえへへへへあへええッッ♥♥♥♥」
「んぶーーーぅぅぅううくせ――――おぼぉぉぉおおッッ」
大事な仲間を泡まみれにしながら、アヘガニー親父は天にも登る絶頂を味わってガニ股のまま痙攣していた。
パチン……パチン。
という泡のはじける音。
男たちの怒号や悲鳴。
そして、どんどん増えていくアヘアヘオホオホの大合唱。
一時間もしないうちに、漁師は一人も……いや人間と呼べる価値観を残した男は一人残らず消え去っていた。
「さあお前達ィ、次なる目的地に向かって行進ガニィ」
「「「「「がにぃぃいい♥♥」」」」」
こうして変態洗脳怪人4号、アヘガニーの侵略は始まった。
残ったのは真っ赤なスーツを身に着け、ガニ股のままズシズシと重たげに体を動かす変態アヘ顔集団だ。
果たしてヒーローは間に合うのか。これだけの数を相手に勝利できるのか。男たちはもとに戻るのか。彼らの尊厳が取り戻されることはあるのだろうか。
――しかし今のところ、そんな事を気にする脳みそを残した親父は、一人も残っていなかった。