誰がどう見ても詐欺だった。
最近は詐欺もどんどん巧妙化しているなんて話を聞いたけど、こんな前時代的通り越して石器時代の詐欺メールが届くなんて、ほとんどギャグみたいなもんだ。
ていうかなにこれ、催眠?改変? 盛りすぎだろ。
夫が帰ってこない大富豪の人妻のほうが現実的ってどういうことだよ。
まあそもそも俺は貧乏学生だしホモだから、騙されることも奪われるものもないんだけど。
…………。
画像を送るだけ?
口座番号とかログインも必要なし?
つまりこれ、画像を集めているとか?
そしてめくるめく夢の世界は……別にやってこなかった。
いやそもそも町中で見かけたなんかゴツくてエロい髭親父さんの写真を貼っつけただけだから、何も起きなくても当たり前なんだけど。
変化してようがしてまいが確かめることなんてできないわけだ。リスクを嫌ってリターンを逃す、典型的なやらかしをしてしまった。
……多分こういうのって恋人とか、友人とかにやるもの? 嫌でも怖いじゃん、身近な人の写真かってに使うの。
ていうかそもそも詐欺メールになに本気になってるんだろ。
そんなこんなで、メールを送ったことを一週間ですぐ忘れた、そんな塾の帰り道だった。
工事現場の近く、真っ暗な道で俺はあの人とすれ違った。
猛暑とはいえ夜なのに随分汗だくで、がっつり着込んだジャンプスーツが体に張り付いて前に見たときよりエロく見えた。ゴリラみたいにムキムキマッチョな上に汗だく。いやまじで汗だく。隣を歩いただけで匂い立つようなかんじ。
胸板なんてでっかい大胸筋に全部びたっと張り付いていて、なんかすげー雄の色気がムンムンだった。
…………?
おっさんはあたりをジロジロ探りながら、胸元のジッパーを下げようかどうしようかずっと迷っているようだった。
正直この暑さなんだから、多少脱いだところで誰にも文句言われないと思う。
それなのにおっさんは、随分迷っている様子で、右や左をしきりに気にしていた。
え、なに。なにか隠している?
そのわりにはなんか……こう……見られたがっているようにも見えるっていうか。
汗で張り付いた胸元を俺はじっと見つめた。
なんかこう……気のせいじゃなければ……おっさんが着るインナーのシャツにしてはやたら派手なエンブレムみたいなものが……透けていた。
「……なんだ」
目があった。
さっきからジロジロ見ている俺に気がついていたのだろうか、おっさんは威圧的な雰囲気でまるで追い払おうとするかのように俺に一言告げた。
普通だったらその一言で、俺みたいなガキは退散していただろう。
だけどさ、俺……ほら……。
…………
俺はありったけの勇気と下心で、おっさん相手に一歩近づいた。
「あの……もしかしてヒーローとか好きだったりします?」
連絡先を交換した俺に届いたのは、まじで夢みたいな画像だった。
本当にあのマッチョな親父さんは、ヒーロースーツを下に着込んでいたのだ。俺がリクエストしたとおりに。
そんでもって返ってきた文章も……なんかこう……妙な熱がこもってるかんじだった。
無骨で照れている、だけどなんか……なんか興奮しているのが短い中からでもわかる。
正直メッセージのやり取りしながらずっと勃起していた。もっとエロい格好見たい、でもそんなことしてブロックされたら怖い。
そんなかんじで探り探り……だけどつい欲が勝って一歩踏み込んでしまった。
俺は焦ってビビって取り消そうとした。
そうしていたら、返ってきたのがコレだった。
嫌がってるのだけれど、それが興奮するような文章。
まるで、脅迫されたがってる。
バレたがってる。
だけど隠したがっている。
人質を取られたヒーローが、屈辱を感じながらも従ってしまう――みたいな……。
そんな雰囲気だ。
俺は生唾を飲み込んだ。
もしかしたらブロックされるかも……。
でも、我慢できなかった。
え。待ってろって何。
まじで?まじで?
俺はもう止まらなくなっていた。
拒否の言葉が「もっとやってくれ」って言葉に見えちまう。
ついに観念したおっさん……いや、俺に脅される哀れなスーパーヒーローは、自分から俺に電話をかけてきた。
激しい息遣いと喘ぎ声、スーツの擦れる音。チンポを激しくシコる音。
全部が丸聞こえだった。
そしてついに、ヒーローは自分から俺に射精姿の写真を送ってきた。
凄え格好だ。
とんでもねえエロい射精。
最後にそのやり取りをして、メッセージの往復は終わった。
まだ名前も知らない年上マッチョな髭親父が、まる一時間以上俺のいいなりになっていた。
その興奮で俺はもう何度目かもわからない射精をしていた。
そうだ名前、今度はちゃんと名前も聞かなきゃな。
本名も、ヒーローの名前もだ。
俺は次のメッセージへの期待を込めつつ、ちょっとふざけたスタンプを一つ送っておいた。
hikarumochi
2025-07-08 04:46:14 +0000 UTC