「えー二人のヒーローとしての目覚ましい活躍に関しては、同じヒーローである私よりも皆様のほうが詳しいことでしょう。無論、その身を以てという意味ですが」
マイクを力強く握りしめる男の言葉に、会場内で低い笑い声が起きた。冗談を交えながらも二人を立てる、結婚式の披露宴で行われるには「お手本どおり」の挨拶だ。ガーデンウエディング形式で、青空と芝生も美しく輝いている。これだけ揃っていれば、さぞ幸福そのものの光景――になるはずだ。
「いやはや失敬。しかしそのように最前線で戦果をあげていた二人が、この
争いの日々の終わりを象徴的に彩るということ、それを皆様と一緒に祝福できること、この私としても大変喜ばしく思っております」
続く言葉も、清く正しく美しい言葉ばかりだ。
だが、その光景は奇妙と言う他なかった。
この式、参列しているのはゴツい男ばかりで、礼服を身に着けているのも四割程度しかいない。あとは全員同じような格好をしていた。すなわち、筋骨隆々の肉体をピッチリと包むヒーロースーツだ。
代表として挨拶している男も例外ではない。
彼は全身の筋肉を誇示するようなヒーロースーツを身に着けて、それを当然のように誇っていた。
「ええ、二人揃って最後の最後まで洗脳に抗ってしまう、正義感に燃えた、熱い男たちでありました」
その言葉に続いて空中の3次元モニターに映像が映し出される。
『世界を貴様らの思い通りになどさせんぞ、我らの歴史! 我らの規律! 我らの正義は、このインディゴゲイルが守って見せる……!』
シールドを張りながら四方八方からの攻撃に耐えるのは、紫色の渋いスーツを身にまとった正義のヒーローインディゴゲイルだ。
第二期から現在までをほぼ常に最前線で戦い抜いた、ヒーロー組織の最古株の一人だ。
四角四面で几帳面。その真面目さが周囲と軋轢を生むこともあったが、その実力と誠実さで多くのヒーローの憧れとなっていた。
『オラオラどんどんかかってきやがれ! どうしたァ、こんだけ数の有利があるのに、このブルーゲイルに恐れをなして一歩も前にでれねえってかあ! それならこっちからぶっ込んでやるぞお!』
青く爽やかなスーツの男が暑苦しく吠える。全身筋肉の塊といったゴツい顔面の男が、その宣言通りに敵をなぎ倒していく。
まさに圧倒といった様子で、機械兵や戦闘員が紙切れのように吹き飛んでいく。
若い頃から現在に至るまで戦闘スタイルも強さも、そして一本気な性格も変わっていない。
生涯現役。正義一筋。
粗野ではあるが心根は優しい。ヒーローらしさのド真ん中に居続ける男だ。
「そんな男たちが完全に改心し、我々と同じ存在となる。今日はなんと素晴らしい日でしょうか」
彼らのかつての輝かしい歴史を眺めながら、感極まったのか壇上の上でヒーローは手を握りしめた。
マイクを握っている方ではない。
挨拶をしながらもずっと絶えず握り続けていたガチガチの肉棒の方だ。
「はぁ……はぁっ、い、いま二人は、最後の『お色直し』の最中だそうで、今しばらく、ハァ……んひっ、ご歓談のうえお待ち下さいぃ……♥」
誇り高きヒーロースーツ姿のままセンズリショーを始めるヒーロー。あまつさえマイクを握りしめたままだ。
グチュグチュと肉棒からこみ上げる音と、男らしい低い喘ぎ声が青空に向かって響いている。だがそんな変態行為を咎める人間はどこにもいない。
「ハァ、で、も、もう我慢の限界ですので、……私は、私の主人のもとに戻ります……ぬほぉ♥」
さっきまでの感動的な涙と挨拶はなんだったのかというほどあっさりそう告げると、ヒーローは壇上から降りてすぐ側のテーブルへと帰っていった。
そこにいる黒色の礼服姿の目つきの悪い男がヒーローを迎える。彼は自らの伴侶が最後まで見事に……そして無様に成し遂げた様子を満足そうに見届け、犬の頭でも撫でるかのようにヒーローの尻を撫でた。
「ぬおぉ……♥」
それと同時に手に持った空のグラスを差し出す。ヒーローは体格も年齢も一回り以上離れたその男の無言の命令に対して、ほんの少しの抵抗もせずそのグラスにワインを注いだ。
このテーブルだけではない。会場内のすべてのテーブルに色とりどりのヒーロースーツを身にまとった男が座り、そして奉仕していた。
披露宴会場でありながら、それはまるでヒーローコスプレ男たちのキャバクラだ。
どこもかしこも甘い声があがり、媚びた熱が立ち昇り、そして雄汁のすえた臭いがしていた。
『ぬぉおお、こ、こんなことが! ヒーローたちが、我々を裏切るなど、そんな……み、みんな、目を覚ますのだ、我々の正義を思い出すのだ!』
『この…………馬鹿野郎共がっ、今までなんのために体張ってきたんだ、こんな気色悪い野郎共に好き勝手されて、腹は立たねえのか、どうしちまったんだ!』
二人のヒーローの映像は今も空中に映し出されている。まるで現在のヒーローたちに呼びかけるようなその心からの叫びを、しかし会場内の人間は誰一人真剣に受け取ってはいない。
ヒーローは今そこにある幸せと快楽を貪り続け、礼服姿の男達……秘密結社トリリオンの幹部達はこのシチュエーションをただ嘲り楽しんでいるのだ。
「しかし……意外だったなァ、インディゴゲイルとブルーストーム。我々を苦しめてくれたあの二人が、まさか相性最悪だったとは、それは本当か?」
「はい♥ ふたりともヒーローでありますから、表立っての口論などは控えておりましたが、どうにも性格や価値観が真反対というか、若い頃からどうしても反りが合わず衝突が多く、むふぅ♥」
「ほうほう、誰とでも仲良く、愛と正義をもって接するのがヒーローの本懐であろうに、人間というのはなかなか面倒なものだな。我々の支配がいかに正当であるかの証左ではないか」
「そのとおりであります♥ このように我々全員を皆様と愛させていただき、本当にありがとうございます、ああ……ヒーローチンポもこのように、感謝のおじぎを繰り返しております♥ ハイ、ハイ♥」
「ハッハッハ! おいおい宴会芸にはまだ早いぞ、まったくとんだ変態になったものだな!」
インディゴゲイル、ブルーストーム、二人はたしかに衝突が絶えないヒーローだった。
だがそれは二人が真剣に世界と平和を願っていたからこそであり、言うなれば信念の衝突というものだった。
『緊急支援要請に駆けつけてみりゃあ、よりにもよってお前かインディゴの野郎。なァオペレーターちゃんよぉ、俺達のチームアップのスコアはちゃんと見てくれてるか? この堅物と俺とじゃどうにも歩幅っちゅうかやり方がよぉ』
『むぅ……、到着するなりなんだブルーストーム…。正義にまず必要なのは忍耐だというのがその齢になってもまだわからんか。私に合わせろとはいわん、だが不和を生ずるような物言いは控えろ。私とて不服なのだ』
顔をつき合わされば、そのような小競り合いもするが、こと事態がはじまれば、二人はだれよりも熱くなった。互いを認めているからこそ、譲れない部分があった。
正義を護るヒーロー同士、よりより世界のために語り合った。
「おぉ♥ どうやら……はぁ、二人の『最後のお色直し』が終わったようでございます♥ さあ皆様、んんっ、二人の新しい門出を、笑顔と拍手でお迎えくださいぃぃ♥♥」
その声と同時に、大地を轟かせて2つの影が空から舞い降りた。
スーパーヒーローが出現するとき特有の土煙と轟音が、ガーデンウエディングの穏やかで美しい光景に奇妙に絡み合う。
だがその煙が晴れると、そこにいたのは紛れもなく幸福な二人だった。
「も、元正義のヒーローインディゴゲイルであります……♥ みなさま、今日は世界征服でお忙しいなか、私共愚かにも洗脳に抗ったヒーロー達の結婚式にお集まりいただき誠にありがとうございますぅぅ♥」
「押忍、同じく元正義のヒーローブルーストーム! つい先程までギリギリのギリギリまで抗っておりましたが、今はこのように皆様に教えていただいた愛と幸福でいっぱいであります、押忍ッ」
結婚式の主役たる二人は、やはりヒーロースーツ姿で現れた。
二人は力強く肩を抱き合い、筋肉と筋肉を寄せ合い、男臭い顔面同士を擦り付けんばかりに近づけ、顔中体中に笑顔を浮かべていた。
……肩を抱き合うたくましい男達。
それだけであればスポーツマンのように爽やかにもなりそうだったが、この二人のヒーローのソレはまるで違っていた。
「ハァハァ……ブルストーム……あぁおまえは……お前がこんなにも男臭いたまらん人間だとは、どうして俺は気づかなかったんだろうか♥」
「インディゴゲイル……お、お前にそんなこと言われちまったら、俺ますます……チンポがギンギンになっちまう……。もっと、もっとお前の顔みせてくれ、その男前を俺に……んおぉぉッ」
二人は今にも絡み合いそうなほどに熱烈に、そして暑苦しくお互いを見つめ合っていた。
その表情と口調はつい先程まで映像で流れていたものとはまるで別人だ。
常に口を引き結び、穏やかさの中にも鋭いものを秘めていたインディゴゲイル。だがその口はだらしない笑顔が絶えず張り付き欲望にまみれた涎がダラダラとたれている。
自らの力と信念に自信を持ち、豪快さと優しさを併せ持った目をしていたブルーストーム。そんな彼は会場内をじろじろと眺めては、自らの痴態がどのように晒されているかを確認して興奮に喘いでいる。
「ハァ……二人揃って洗脳していただき、あまつさえ愛し合うように変えていただき本当に幸福であります♥ あぁ……ブルーストーム、お前のチンポの雄臭ェもんが私の鼻をガンガンに犯しているぞお♥」
「そういうお前もひでえ汗臭さだぞインディゴゲイルぅ、あぁ……全身ピッチピチのスーツの中で、涼しい顔してそんな汗臭親父筋肉を隠していたなんて、お、お前はなんてヤらしい親父なんだぁ……たっまんねぇ」
「ぬひぃ♥ ……こらこらぁ、まだ挨拶中なのに、そんなとこを舐めおって♥ あぁぁお前に舐められているだけで、チンポががビンビンのギンッギンになっちまったぞぉ♥ そらあぁお返しだぁ♥」
「はひぃぃ、あーやっべええ……! やべえたまんねえ! 男相手に、お前相手に汗舐め合ってベロベロしあうなんて、ヒーロースーツのままこおんな変態行為するなんて、興奮しすぎて脳みそ沸騰しちまいそうだァァッッ!」
信念をぶつけあっていた二人。
正義に燃えていた二人。
悪を憎んでいた二人。
そんな正義に人生を捧げたヒーローたちは、ものの無惨に仲睦まじい関係へと変わり果てていた。
「はいぃぃ愛し合うのが一番、仲良しが一番ッ、我々はトリリオン様への抵抗を全面的に停止し、これよりさきトリリオン様によって決められた相手と愛し合うことに全人生をささげます♥」
「我々は今までの人生を卒業しッ、新たにつがいとなる男、雄、チンポに集中し、過去のしがらみにお釣りが来るくらいにたっぷりじっくり愛し合おうとおもいます、なぁインディゴォッ♥」
「ああそのとおりだ……毎日毎日、ヒーロー同士鍛え抜いた体でたっぷり愛し合おうじゃないかブルーゲイルぅ♥♥」
二人はそういってついに堪えきれなくなった様子で唇を押し当てあった。
ヒーローとしての人生が長すぎたからか、その睦み合いは随分と豪快で、まるで組手でもするかのようだ。
本能からこみ上げたような雄と雄の絡み合いだ。いい年齢のヒーロー二人の幼稚でゴリラのようなキス合戦。そのなんとも可笑しい光景に会場内では笑いが起きた。
「いやあ見事見事、我々の妻にしてもいいと思っていたのだが、これは最高の催しだ。こんな見ものは他にはないぞ」
「なんともはしたない肉棒だ、見てみろあれを、ここに来てから勃起しっぱなしだぞ!」
二人はその言葉を聞いて見せつけるように腰を突き出した。
キスをする顔を見せつけ、ヒーロースーツにくっきりと浮かんだチンポを振りかざす、その表情も振る舞いもまるきりただの色情狂だ。
「ああぁ~~愛しあうってなんて素晴らしいんだぁ、心と体が火照って……とろけてしまいそうだぁ……♥♥」
「世界を護るだとか救うだとか偉そうなこといってたけどよぉ……こ、こうやって愛し合いさえすれば……こんなに簡単なことはないよなぁ……はひぃ……」
二人は肩を組みながら股を開き、足を上げ、下手くそなラインダンスでも踊るように歩き出した。
「それでは、お二人からのキャンドルサービスです。皆様のテーブルに、我々因縁の相手であるブルーストームとインディゴゲイルが順番にご挨拶に伺います」
半笑いの声の司会の言葉通り、二人はすぐ近くのテーブルへとたどり着いた。
「ん――――おぉぉチンポが込み上げるうぅぅう♥ おほぉぉ♥」
「ハァハァ二人揃って無様にイキ汁出します、出ます、お渡ししますぅぅう♥」
ヒーローが肩を組んだままの姿勢で腰を落とすと、青と紫色のヒーロースーツから二色の光が瞬いた。
かつてヒーローとして腕や脚からシールドやブレードを作り上げてきたエネルギのー塊が、いまは肉棒からぼんやりと放たれる。
それはまるで肉棒の先端でキャンドルがひっついたかのようだ。
理論上は武器を生成するのと同じことだが、世界の規範となるべきスーパーヒーローとしては絶対に行わない卑猥で変態的な行いだ。
「あーこっちだこっち、さあさあ点けてくれたまえ」
会場でワイン片手にそれを眺める男が指先で本物のろうそくを指した。
少し低い場所に置かれたその燭台だ。二人が腰を落とし、いやらしいガニ股の姿勢にならなければチンポがつかない位置にある。
「はいぃぃ♥」
「押忍了解っす」
二人のカップルはそんなことは少しも恥ずかしがらず、むしろ喜んで燭台に近づいた。
「おごおぉおおチンポこすれるぅうう♥」
「き、きもちいぃぃきもひぃぃいい♥」
二人のエネルギーに満ちた肉棒同士が触れると、その快楽はまるで混じり合って倍増するかのように服等上がった。
ポッと一瞬でろうそくに火が灯る。だが、それが終わっても二人のヒーローは変低滝なガニ股姿のままガクガクと腰を揺らしていた。どくどくとヒーロースーツから濃い雄汁の臭いが貫通してくる。
ただ触れ合っただけで、歴戦のヒーロー二人は射精し、その快感で動くこともできなくなっているのだ。
「おいおい、こっちもたのむぞ!」
「なにしているんだ、我々はせっかく祝福しにきているんだぞ!」
「そんな有り様じゃあ、二人の結婚は認められねえぞ!」
会場から面白がった野次が飛ぶ。
「は、はいいぃただいまあぁ♥」
「い、いま、今すぐ向かいます、なのでどうか俺達を引き裂かないでくださいぃい♥」
かつて戦ってきた組織の要求に二人はへこへこと従うと、ガクガク震える腰をなんとか持ち上げた。
今このヒーローにとって、世界より正義より……このすぐ横の伴侶……むくつけき男臭いヒーローと絡み合ってよがり合ってしゃぶり合ってイキ狂うことが大切なのだ。これを奪われることは死よりも恐ろしい。
愛が引き裂かれることが、なによりの恐怖なのだ。
「どうか、どうか我々の愛を認めてくださいぃい♥ あああぁ出るぅうう♥」
「俺達は組織の名のもとに、これから永遠に幸せにいきていきたいっすぅう♥」
二人はテーブルを廻りながら、隙を見ては口づけし、肩を寄せ合い、肉棒を絡め合った。
そして行く先々のテーブルで、かつて仲間だったヒーローに、かつて敵だった幹部にその肉体を弄ばれた。
「あうぅうう♥ あぁぁすぐ側に愛し合うブルーストームがいるというのにぃい、ケツを揉まれるとチンポが欲しくなってしまうぅう♥ あぁぁ……すまないブルストームこんな変態淫乱親父ヒーローを許してくれえ♥♥」
「しょうがねえよぉおインディゴゲイルぅう♥ お、俺もちょっと触られるだけで、体を預けたくなっちまうぅう♥ あぁで、でも一番愛しているのはお前だけだぞお♥ でも、でも変態ヒーローとしちゃあチンポの誘いは断れねえんだぁ♥」
二人は今にも崩れ落ちそうな体を支え合い、それでいて裏切るように他人のチンポや手を求め、それから更にひっついて愛し合った。
二人は揃ってこの組織の所有物だ。
どれほど互いに強く愛し合っていても、組織が望めばその尻穴もチンポも使い放題のオナホディルドに早変わり。
どちらか片方だけを使っても良い。両者いっぺんに使っても良い。
そういう契約がなされるのが、この新たな結婚式になっている。
「あぁぁ……我々の新しい門出をぉおどうかご祝福くださぃいいいひひひ♥ 気持ちヒィ良い幸せぇえええ♥ 夫の前でイかされちまってきもちいぃいい♥♥」
「愛しているぅぅううインディゴゲイルぅううう愛しているけどぉおおお他人のチンポ気持ち良すぎてイッちまうぅうううう♥♥ あぁぁダメだとおもうほどきもちいぃいい♥♥」
まだ尻は使ったこともないが、今晩中には二人揃って抜群の感度になるまで掘り合うことだろう。
そして慣らした穴を、名前も知らない男に使われることだろう。
二人が愛し合えば愛し合うほど、それを裏切って射精する快楽が脳を焼き、ヒーローたちをもっともっと壊していくことだろう。
そんな素晴らしい未来を頭に描きながら、インディゴゲイルとブルーストームは二人揃って全く同じ笑顔を浮かべて射精し続けるのだった。