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親方と親父の筆下ろし




「親方ー!」

「おう、大地。どうだった」

「はい、えーっと『白波瀬寿司の皆様方、今年もありがとうございます、あとは神輿も出店も我々準備会が引き継ぎます』だそうです」

「うむ、そうか」


親方と呼ばれた大男は満足気にゆっくりと頷くと、これまたのっそりと大きな手を青年の頭に載せた。

毬栗頭が分厚く力強い手のひらに包まれる。この瞬間が、黒部大地はたまらなく好きだった。

寿司職人として敬愛してもしてもし足りない親方の掌は、新米の大地にとって目指すべき目標そのものだ。そんな掌に直に褒められる時間というのは、厳しい修行の日々にやすらぎや達成感を運んできてくれる。



「ご苦労だったな、大地。お前ももう自由にしなさい。よく手伝ってくれたな。あとは東京の祭りを楽しんで来るといい。――ホレ、少ないがこれで見て回ってくるといい」

「え、親方いけません! 俺、ちゃんとお賃金はいただいてます」

「わかりきったことをいうな、誰が出していると思っているんだ?」


そういって親方は小銭というには多すぎる量の駄賃を大地の手に握らせた。

「で、でも――」

「……なに、遠慮することはない、今日はお前の子供時代最後の祭だ。思い残すことなく楽しんでこい」

なおも食い下がる生真面目な弟子の背を、優しかった掌が力強くドンと叩く。


「親父さんに……孝行してきなさい。もうじき駅につく頃だろう」

最後のひと押しを口にされて、大地はそれ以上何も言い返せなかった。


深く頭を下げ、ありがとうございます!と、祭り囃子に負けぬほど大きな声で礼をすると、大地は人混みに走り出した。



親方の言う通り、今日は特別な日、特別な年だった。

白波瀬寿司で働き始めて数年、毎年参加してきた祭も来年から変わる。

次からは一人前の男として、そして寿司職人として、ついに『つけ場』と『出店』の両方に参加できるようになる。まだまだ任されることは少ないが、しかし大地にとって大切な一歩である。


山奥に一人残った父も、そんな記念すべき日のために重い腰を上げて苦手だ嫌いだと言っていた都会にやってきてくれた。


……父。

実父。田舎に残してきた、大切な父さん。


大地が振り返ると、腕を組んだ白波瀬親方がじっとこちらを見ていた。

都会のコンクリートを地下足袋でガッシリと踏みしめ、雄々しい仁王立ちをしている。白髪の角刈り頭に、頑強そうなどっしりした肉体。祭装束と白い六尺ふんどし姿は、使い込んだ年季を感じさせながらも、まっさらに美しく選択されている。

まさに男の中の男。職人の中の職人といった風体だ。どんなものにも揺るがない、店の白い大黒柱。


――その笑みをじっと見返すのが、正直少しばかり気恥ずかしかった。

子供としての最後の祭。


そう、今日の夜、自分の子供時代は終わる。



「と、父ちゃん、迎えにいかないと、な」


大地は気恥ずかしさを誤魔化すように両頬を叩いた。


父に会える。

何年ぶりかに、実際に顔を合わせて話すことができる。

子供っぽい感傷かもしれない。そう思いながらも、大地は心が躍るのを抑えられなかった。


父は白波瀬寿司の人々と違って、とても客商売などできない男だった。

手紙もメールも最低限の文章しか書かない父で、なにをかんがえているかわからないと親族からすら言われるような男だ。

一度など、『変化なし、庭の柿少し残る』とだけ書かれた手紙が送られてきて、一人笑ってしまったこともあった。


だが、息子である大地はわかっていた。父は決して無精なわけでも、薄情なわけでもないのだ。

手紙を送ればかならず返事が戻ってくる。あの短い一行の手紙は、父なりの誠実さと愛であるとわかっていた。



もちろん白波瀬寿司の方々のことも、ほんとうの家族のように思っている。

親方は最初に働くときに、自分のことは父と思え、先輩方のことは兄と思え、この店のことを家と思えと言ってくれた。

山奥の田舎から一人やってきた大地を、一人にすまいという親方の気遣いであることはわかっていた。


だから大地も、心から白波瀬寿司の先輩方に心を開いた。

先輩方は厳しかったが、それが辛いと思ったことはなかった。

親方の教えはさらに激しかったが、苦しいと思ったこともなかった。

愛してくれたからだ。中卒の自分が、何も持たない自分が、寿司職人としてついに一歩前に進めるのは、全て親方のおかげだ。

畏れ多くてまさか言えしないが、父のように思っていた。慕っていた。



二人の父。

自分には、恩師と実父の二人の父がいる。

感謝してもしきれない。そんな大切な人たちが、今日始めて顔を合わせ、語らい、そして―――。



「ああ……ええっと、夜、夜に考えればいいんだ!」


大地は再び両頬を叩き、駅に向かって走り出した。







駅についてすぐ、大地は父の姿を探した。

いまどき古臭い携帯電話しか持っていない父から、十分程前に「もうじきだ」という一文が届いている。

おそらくもう到着している頃だろう。


予想の通り、父の姿はすぐ見つかった。

大量の人を避けるように、わざわざ改札から少し離れた椅子に腰掛ける大きな黒い影。間違いなかった。


「父ちゃん!!」

声を張ると、山が動くようにのっそりと影は立ち上がった。


「………おう」

「遠かったろ、大丈夫だったかい? 満員電車とか、父ちゃんには大変だったろ、疲れてない? ああ荷物持とうか?」

「馬鹿野郎。……そんなマネできるか」


ふざけ半分で父の荷物に手を伸ばすと、ずっしりと重そうな鞄が軽々と持ち上がった。

黒部玄地。都会で見る父は、まるで熊が山から降りてきたかのようだった。固くチクチクした髭の反り残しが見えるし、眉毛は相変わらず繋がりかけているほど太い。

髪の毛だけは散髪したてのようで、キリッと短く角刈りにまとまっているが、親方のキリッといなせな江戸っ子のそれとは随分違って見えた。


「――駅は人が多くてかなわん……、さっさと行くぞ」

「でも父ちゃん、祭のほうがもっと人が集まってるよ」


事実を伝えると、太く繋がりかけた眉毛の下で小さな目が大きく見開いた。

ほとんど山に囲まれた村から出ない父にとって、都会の喧騒や人混みは、それこそ信じがたい嵐のようなものなのだろう。


「目眩がしてきた……。お前はこんなところで毎日働いとるのか……」

「今日は特別だよ。大丈夫だって。――やっぱり父ちゃん、無理して来なくっても」

「馬鹿野郎……お前の、たった一回の……だぞ」


無口な父にして驚くほど饒舌に語ると、そのまま毬栗頭が鷲掴みにされた。

乱暴で力強い。そのうえ山仕事でカサついた皮はまるで岩のようにゴツゴツしていた。

けれどもそこに確かに父の暖かさを感じた。


……そういえば、こんな服を着ている父を初めて見た。古臭いデザインだが、きっと父なりの特別な一張羅なのだろう。







結局、もらった駄賃は、ほとんど使うことができなかった。

何かを買おうとすると、その前に父が強引に割って入って来て、不必要なほどに買い与えられてしまった。


これもまた意外なことだった。

贅沢を嫌い、粉飾を避ける父だった。

実家で住んでいる間は、無骨で、無口で、何を考えているか他人にはまるで伝わらず、父と隣人の間を大地が取り持つことがしょっちゅうだった。


「父ちゃん、俺ちゃあんと残してあるからさ、父ちゃんにちょっとくらいご馳走させてくれよ」

「莫迦もん。お前は…………」

「うん」

「今日の夜までは………まだ、子供だ」

「あ、まあ、そうだけど、さ……」


父は大地に顔を向けないまま、ぱちんと激しい音を立てて両頬を叩いた。


「食え………。まあ、食いきれんなら、残しておけ」

「うん、ありがとう父ちゃん」


そんな父のプレゼントが抱えきれないほどになった頃、『家神輿』の時間がやってきた。大勢の男達が雄叫びを上げながら御輿を担ぎ、新築の家の前に福を運ぶ目玉行事だ。


都会らしい新しいものを認める価値観と、古くからの伝統を重んじる姿勢が混じり合った儀式は、毎年大地の心を高ぶらせた。


「………」

「………やあ、これはこれは」


そんな男たちを間近で見ながらも、しかし今年は圧倒はされている暇がなかった。それ以上に格別に逞しい男たちが、大地を挟み込むように立っていたからだ。


「初めまして。大地くんを預からせていただいております、白波瀬柳と申します」


神輿を見ようと集まった中に、白波瀬寿司の先輩方と女将さん、そして親方もやってきていた。大地を見つけた親方は自ら歩み寄って、真っ白な角刈り頭を深々と下げてきてくれた。


しかし困ったのは玄地である。後ほど挨拶に伺う予定が狂ったことで、口下手に拍車がかかったようだ。咄嗟に言葉が出てこないようで、肉厚な顎をモゴモゴとさせていた。


普段ならばここで大地が口を開くのだが、さすがに自分の恩人と実父の間を割って入るような、出しゃばった真似もできない。

そんな二人に助け舟を出すようなタイミングで白波瀬親方が再び口を開いた。


「大地くんの勤勉さ、実直さ、明るい人柄に、我々白波瀬寿司店一同励まされることも多く、日々感謝をしている次第であります――」


「ム――むぅ、いや、こちらこそ……」


何に対する返礼かもわからぬことをいって、父は大きな頭を深く降ろした。


大地はそんな二人のやりとりを、緊張と可笑しさの入り混じったような不思議な気持ちで聞いていた。


夕日が沈みかけて、二人の大きな体に、これまた大きな影をつくっていた。


じきに、夜が来る。





祭の騒がしさ嘘のように、闇夜のなかは静かだった。

白波瀬寿司の面々の大半が寝静まった深夜、奥座敷では白い頭と黒い頭が、深く深く頭を下げていた。

祭装束に六尺ふんどし、清酒と水で体を清めた巨漢二人が夕方にしていたときよりずっと深く恭しく頭を下げている。その光景は、まさに『儀式』としか言いようのないものだった。


「本日これより、師弟の契りを結ばせていただきます。改めまして、白波瀬柳と申します」


深く頭を降ろす親方の姿はこれまでいくどもみてきたが、その角刈り頭を見下ろすというのは、大地には初めての経験だった。


「最初に、謝らなければなりません。我々白波瀬の取り決めでは、本来ならば妻が、息子さんを『男』にするのですが――」


「が、妻の心身の都合や、昨今の世情も考えまして、息子さんの契りは私自身が――」


「この私、白波瀬柳自身の躰でもって、契りを結ばせていただきます」


そう言うと親方は、巨躯を小さく折り曲げて三つ指をついて父にていねいな礼をした。


父は普段からしていた胡座の姿勢ではなく、慣れない正座で聞いていた。


赤いふんどしに、祭装束。卸したての衣装に比べ、父が締める赤いふんどしは使い古されてヨレていた。まっさらな白褌を締めた親方に比べ、やはり山から下ってきた厳しい熊が衣装を着ているようだった。

だが、……その口からかつて聞いたことのないほど淀みのない声が発せられた。


「せがれは……昔から、働き詰めの俺に変わって、飯炊きから掃除までこなしてくれていました」


肩を掴む父の手が、今日一番強く、力強い。


「俺にはもったいねえくらいに、できた息子です。こんなでけえ店に、働けて、息子も……手紙でなんべんもなんべんも、礼を言っていました」


「どうぞ、よろしく、お願いします。末永く、愛してやってください」


おそらくなんども練習したであろう言葉を最後まで言い切ると、玄地は深く深く頭を下げた。


裸の状態に祭装束だけを身に着けた大地は、二人の父が互い互いに思いの丈を伝えるのを静かに聞いていた。


男になる。

契り。

儀式。


言葉ではわかっていたが、実際に狭い室内で成熟した雄の熱気と臭気を鼻に感じると、その緊張で心臓が口から飛び出そうだった。

そのせいか、毎朝勝手に元気になるイチモツも反応しない。

コレほど愛し、魅力的な二人の父を前にしながら、うまくいかない。


「………大丈夫だ」


そんな大地の太ももを、玄地はパシンと叩いた。


「父ちゃんに任せろ」


父も緊張しているのだろうか、常に真一文字に閉じた口と、逆ハの字の眉がヒクヒクと歪んでいた。

息遣いがいつも以上に荒い。


「俺は……ただ見届けに来たわけじゃねえんだ、聞いてるだろ……」

「あ、うん……だけど……」

「いいから黙って、…………父ちゃんに任せておけ……」


何年ぶりかに聞いた父の一人称に驚いているうちに、大地は文字通り父に包まれた。

大きな毛だらけの体が大地の下半身を覆い尽くす。そのまま玄地は息子の六尺の前袋を掴み、やや荒っぽく息子のムスコを取り出した。


「――あ!」

「待ってろ、お前を……男にしてやる。してやるぞ……ン……ッ!」

父は実の息子の前に跪き、下から覗き込むように垂れた肉棒を頬張った。


食器を洗うのすら荒ごとな父の、驚くほど優しく滑らかな舌使いに大地は息を呑んだ。


「あ……あぁ……」

大地は自分の足もとで小さな岩の塊のようになっている父を見下ろした。

記憶の中でいつも見上げてきた父が、すがるように自分の脚を抱え、肉棒を柔らかく刺激している。


表情をじっと見つめるも、父は集中しているのかずっと自分の肉棒をしゃぶっている。


開いた口からヨダレが垂れている。

口以上にモノを語っていた鋭い目が、どこかとろけている。

視線は寄り目になり焦点がすべて一人息子のイチモツに注がれている。

鼻の穴が開き一呼吸ごとに逞しい首が仰け反っている。


父は明らかに、大地の知る父ではなかった。


それは、極上のモノを食べた人間がするような、歓喜と多幸に満ちた……卑猥な表情だった。


「り……立派に、なりやがって」

父が舌先で、そして口で大地の肉棒をツンと突いた。さっきまで怯えて縮こまっていた青年の性器は、今やすっかり男の顔に変わっていた。

ハッキリと芯ができて、亀頭が包皮の中からはみ出ようとしている。


「あ……そ、うかな……」

「だが、も、もっと……必要……だな………もっと……も――むぉぉ……」

言葉も言い切らないうちに、父玄地は大地の竿にしゃぶりついた。ジュルジュルと下品な音を立て、ヨダレと先走り汁を混ぜ合わせる。

口に溢れる一人息子の先走り。清潔にしているようだが、青臭さがどうしても染み付いている。

玄地はゴクリと喉を鳴らした。静かな室内に玄地のいやらしい音だけが鳴る。その音につられるように、白波瀬もツバを飲み込んだ。



――自分の匂いや、魅力というのは、わからぬものだ。


大地にとって、この部屋は成熟した二人の雄の臭いに満ちているのだが、果たして屈強な父達の感じているものは違った。


大地という中卒の青年は、彼自身がまったく自覚していない、天性のものを持っていた。

誰にでも真っ直ぐに向き合う心、指先に至るまで他者を喜ばせる技、山が育てた頑丈な肉体。それらから発せられる魅力が、屈強な男の肌から肉を、心から魂を、そして鼻腔から脳に至るまでをとろけさせていた。


父が必要以上に無口になっていたのは、息子との交流を本能的に避けていたからではないか。

妻一筋の親方は決まりを捻じ曲げて己が筆下ろしを担当するなどといい出したのは、はたして社会や妻のためだけだろうか。


「と、父ちゃん、嫌だったらもう大丈夫だからな、俺……もう」

「ば、馬鹿野郎ッ、息子の、大事なモンが嫌いな父親がどこにいやがる……こんな、大事なもん、どこのだれが……嫌いになる思ってやがる……ああ、クソ……ッ」


玄地は低く濁った声を荒げ、腰を引いた息子の尻に絡みついた。

逃すまいとするように、力こぶで膨れ上がった腕でガッチリと若い体を縛り上げる。


「ハァ……ハァ…………立派だ、立派になりやが……むぉお」


跪いて、とろけた顔をする父。

目をつぶり、片膝を付き、愛おしい宝物を口全体で愛撫する不器用で厳格な父。

熊のような男を屈服させる快感は、次第に控えめな青年の中の熱に薪を焚べた。穏やかな青年の中の雄がみるみるうちに刺激される。


「父ちゃんっ、俺……俺もう……」

「ン、ンンンッ!」

大地は父の盛り上がった三角筋に両手をついて喘いだ。

そしてわずかにだが、確かに腰を振り始めた。口内を犯してくる息子の肉棒に、玄地は感極まって僅かに涙さえ流した。

男になろうとしている。俺の口の中で、息子が、あの息子が。


「むぉぉ――おぉおっ……」

「父さん――ンッ……くぅ……」

「よし、いいぞ大地。ああ、お父さんも……喜んでいるぞ」

親子の不器用な交流を見つめながら、親方は腕を組んで満足気に頷いた。

昼間する指導と同じような堂々たる態度だが、六尺ふんどしにガチガチに浮かんだ肉棒には、人々から尊敬を集める大黒柱の落ち着きはなかった。


水に漬けたわけでもないのに、前袋の中心に肉色が妖しく浮かびあがり、血管と亀頭の位置までまるわかりだ。

ただ見ている白波瀬親方でそれなのだ、当然……玄地の赤褌の中など、先走り汁でベタベタになっていた。妻が死んでからまともに使ってこなかった竿は、人生で味わったことないほどガチガチに激しく隆起し震えていた。


――玄地にとって、雄の竿の愛し方など知ったことではない。だがそれが息子のものであれば別だ。自分と同じか、それ以上の立派な竿。奉仕、という言葉の意味が初めてわかった。口全体を使って、この巨大なブツを愛する、従う、慰める。それこそが、口で肉棒を咥えるということなのだ。

自分のような熊の如き男がであっても、たとえ相手が息子であっても、この行為に真摯になればそれは『奉仕』なのだ。


(奉仕――この俺が……。あ、あぁ、デケえ……ああ、喉の奥まで入ってきやがる、腰振られると……俺の口が犯されっ……ちまうっ)


片膝をついているのに、崩れてしまいそうな快感だった。


目を開くと、息子が気持ちよさそうに半目になり、口を開いていた。

「父ちゃん――きもちいい」

「!!」


汁がますます口内に溢れてくる。

グチュグチュという音が激しくなる。

デカさは最高になりつつある。


欲しい。


これ以上ないほど、シンプルな欲望が湧き上がってくる。

コイツを最後まで、飲み干してえ。

口を強引に奥まで犯されたい。

愛し続けたい。


玄地は腰を激しく振った。

締め慣れた真紅のふんどしに、まるで発情期の犬のように腰を振る。それがどんなに浅ましい姿に写るか、理解していわけではない。だが、やらなければいけなかった。


このまま興奮が続けば、我慢ができなくなる。

それがわかっていた。

射精しなければいけない。


「と……父ちゃん」

息子が驚愕と当惑で声をだすのがわかった。

俺の一人息子。大切に育ててきた息子。自分の背中を見せてきた息子。

その大事な宝物の前で腰を振って、チンポを刺激している。


亀頭が擦れ、肉体の快感が精神の快感に絡みつく。


「ンンン、ォおぉ――!!」


玄地はそのまま、一人で腰を振って射精した。


「父ちゃん……」


大地はそんな父の耳元を、子供にするかのように撫でた。

昨日か一昨日に刈り揃えたばかりの角刈り頭が、チクチクと指先に当たる。

無様な姿であることは知識でいえばわかった。だが、父のこの姿を情けないなどとは微塵にも思わなかった。



「白波瀬……さん、準備、完了しました」


ぎゅポ……と、父の口から開放された肉棒は、ガチガチに勃起し唾液でたっぷり濡れていた。


父の痴態で興奮しきった魔羅は、完全に皮も剥け、今すぐにでもどんな穴でも穿ちそうなほどの固い棒へと変わっていた。


気まずそうに背を向ける父の肩を、大地は逃すまいと掴んだ。

「だい……」

「父ちゃん、ありがとう。俺、父ちゃんがいたから……ひとりじゃないってずっと思えた、この店に来る前、東京で本当に一人ぼっちのときも、父ちゃんの分厚い掌や、ちょっと厳しいゲンコツ思い出して、ずっと頑張ってこれた」

「大地……っ」

尻に食い込む赤いふんどしの中で、イッたばかりの雄棒からどくどくと精液が溢れた。


「う……ぬぅ………」


口下手な父はそれ以上なにも言わず、ただ背中を向けたまま静かに射精を続けた。





「お父様には、感謝してもしたりないな……大地」

「はい、親方」


両肩を掴み、正面から自分を見つめる白波瀬親方の目には慈愛や感謝、善性のような穏やかさに満ちていた。


大地は父に向けていた顔を、白波瀬の親方に……これから自分が抱く男へと向けた。

毛だらけの父の体をじっと見ていたぶん、間近で見る白波瀬親方のまた違った男らしさは文字通り輝いていた。

きっちりと整えられた角刈り頭は、彼の生真面目で職人気質さの象徴だ。それでいて髭も陰毛も見事に剃られて、一部のすきもなく磨き上げられている。肉を圧縮したような頑強な体の中で、六尺ふんどしの真っ白な輝きだけが際立って見えた。

そんな六尺の中で、ただ一点。制御しきれていないブツがビクビクと上下していた。


「ぬ……おぉぉ……これは……その、うむ。か、……完璧だ……これほど、とは……」


修行中、一度も聞いたことのないような甘い声を上げ、親方は腰を落とし始めた。

鼻先を竿に近づけるように、関取の股割りのようにゆっくりと分厚い体が開いていく。

そうして、父と同じように親方も大地の股間を愛すための体勢へと変わっていく。


「お前が来てから、儂は……いや、うちの店は……、儂たちは、とても……うぉ!?」


親方の言葉は遮られた。

大地は師の言葉を待たずして、その大きく逞しい肉体に全力でぶつかったのだ。

尊敬する恩師の言葉を無視するなど、普段の大地であれば絶対にしないことだ。しかし、今ただ親方に『抱かせてもらう』というのは、それこそ親方のこれまでの教えを無視することのように思えた。


白波瀬に比べれば二まわりは小さな肉体だが、その肉体にはガッシリとした筋力が備わっている。大地は今までの全てをぶつけるかのように、力強く親方の分厚い筋肉の塊のような体を抱きしめた。


「親方、素性も知りもしない俺のことを……ここまで育ててくれて……本当にありがとうございます」

「……ああ」


白波瀬は天井を見上げながら、自分の中に湧き上がる未知の感情に溺れ始めていた。

尻の穴が疼く。

股が開く。

力が抜けて意識が遠のく。

使ったことなど殆どない、出すだけの器官が歳の離れた弟子の言葉で開いていく。


「俺、親方のこと、すんませんこんな……東京の、もう一人の父親にみたいに……思っていました」

「あ、ああそう思えって、言ったじゃねえか」

何年も使っていなかったような、荒い言葉が口をついて出る。余裕がなかった。大地の腕の中で、そのままとろけてしまいそうだった。


「さ、さあ、来い、大地、あんまり―――と、父さんを待たせるんじゃねえ」

「――! ハイ!」


待ちきれずにかけた発破の言葉に、大地はまっすぐに応えた。

もう一人の父にしていたときのように、腰を愚直なまでの一直線に打ち付ける。

突き出した竿が、分厚い壁のような筋肉に止められる。鍛え抜かれた大殿筋だ。だがそこに確かにある穴の存在に、雄の本能はますます刺激された。


「――そう……そこだ……わかるな……」

「ハイ」

大地は息を止め、腰を深く突き出した。

「――ぁ……親方、ここ……っすか………!」

「!!!  ああ、そうだ、……そうだ……、大地……」


先端が肉の中に呑まれていく。それは、童貞の大地にとって、体の芯が煮え立つような快感だった。

竿が少しづつ親方の中に沈んでいく。二人の境がなくなっていく


「す、凄えこれ……親方っ……! 父ちゃん……ッ、………父さん……!!」

気持ちよさと興奮と熱で、全てが薄く遠のいていく。そうしてボケた中で、父に対する愛だけがハッキリとしてくる。

大地は二人からもらったものを少しも取り流さぬよう、全ての筋肉を使って目の前の雄を食らった。



「あぁ……大地、だ、大地いまなんと……う、おぉぉ……!」

白波瀬は感激と興奮で、上ずる声を抑えられなかった。

ぐいと解された男らしい尻に、若く未経験の竿が埋まっていく。

体に痛みがないといえば嘘になる。だがそんなものは、今まさに迫ってきている腰の勢いと、大地への情が覆い尽くしてしまう。


「ハァハァッッ!!」

眼の前の青年は一突きごとに、快感に負けてすぐにイッてしまわぬよう、歯を食いしばり、体を強張らせ、腰を打ち付けきている。

皮が剥けるように、一突きごとに大地の中が変わっていく。

前立腺も奥も手前も、めちゃくちゃに犯される。若々しく技術は拙いが、しかし愛と才とで満たしてくる。


「おう! ぬう! おぉぉ……!」


その時間を一秒たりとも逃すまいと、白波瀬もまた尻を突き上げ、汗だくの体を大地に擦り付けた。



「ハァ……ハァ……!」


そんな二人のまぐわいを見ながら、玄地は黒い毛だらけの体をただ激しく揺すっていた。筋骨隆々、並の人間なら逃げ出す巨体と二の腕で、玄地はただただ一人で竿をしごき続けた。


射精したばかりなのに興奮がまるで収まらない。息子が今まさに筆を下ろし、変わろうとしている。自分のような巨躯でありながら、自分とは似ても似つかない大男を相手にだ。


息子が男になっていく光景は、愛する山の景色よりも美しかった。


その光景を目に焼き付けるように、玄地は小さな目で二人を見つめ続けた。



「ああ、父ちゃん、父さん……! 俺、俺……嬉しいよ、俺、これからもっと、もっと頑張るから……!」

「おおぉ大地、凄いぞ大地……ああ、玄地さん、あ、あなたの息子さんはすごい、すごすぎる……!!」

「ああ、大地ィ! ……ぬぅ……むぅぅ――ッ、親方、息子を……俺の大事な息子を頼みます……ッ!」


二人の父と一人の息子は一つの巨大な肉の塊になったかのように、狭くない室内で一箇所に固まった。


「も、もう……俺、俺ッ」

「ああ、儂の中でイけ……! 出せッ、全部出せ、お、お前のを、」

「本当に、本当にいいんですか!」

「ああ、あたりめえだッ! 欲しくないわけ無いだろう、ああ、お前の……愛するお前の子種だッ、ああ」

「そうしろ、大地ッ、さあ、なってこい……男になってこいッ……!」

「―――は、ハイ! ンッ……ンぅぅぉぉお………ッッ!!!」

父に背中を押され、父に抱きとめられ、大地はついに最後の壁を突き破った。

「ああ、い、行く、イくよ! 俺! 俺おとこになる、二人のおかげで、男になれるんだッ」


ズンと、最奥部まで肉棒を突きつけ、掘り抜き、亀頭を壁にぐりと埋める。


子供のような高い声と、ケモノのような低い雄叫びが混じったような咆哮を喉から吐くと、大地はついに親方の中に射精した。



「おぉぉぉ、は、入ってきている、入ってきているぞ……おっぉおお!!」

「あぁぁ……大地ぃぃぃぃ……ッッ」


その声に震わされるかのように、二人の父は同時にのけぞり、赤と白の褌の中に自分たちの子種をグチュグチュと放った。






「ああ……完全にモノにされてしまった、ああ、契り、契りどころの話ではない……お前の、その、立派なモンで、儂は、あああッ………」

「ああいいぞぉ大地………、こいつで、コイツで……本当に、やりやがったのかあぁ……俺の息子が……あぁあ……」


情事から数分後。

部屋の中の熱は、まだ冷めていなかった。

熱気は嵐の最中よりも、雨後のほうがより強くなる。三人の男は全身に汗をびっちょりと浮かべながら、いまだ尽きぬ欲と情で絡み合っていた。


「大地……あぁ、はぁぁ……」

「大地……むぉぉ……」

その熱気の中心、精液をぶちまけた竿は白波瀬の中から出た後からずっと脈打っていた。

湯気の出そうなほど激しいこすり合いのあと、本当に生まれ変わったかのような迫力だ。まるで色味までも変わっているかのように見えた。



「ま、まだ出ているじゃねえか、すげえ、すげえぞ大地。さすが、さすが俺の息子だ……」

「ああ、これでお前は、正式に……儂のもんだ、いや、儂は、おまえの……はぁ」


男となった大地の前に、二人の親父は我先にと舌を伸ばしていた。

儀式が終わり、留めていた理性はもうどこにも残っていない。それまでの友好的な雰囲気すら脱ぎ去って、筋骨隆々の熊と巨人は奪いあように息子の魔羅に口づけをした。


大地の竿を舐めたい。その結果、愛し合うかのように二人は舌を絡め合い、唇をくっつけ、頬と頬を合わせていた。


「あぁ……うめえ」

「なんて量だ……儂にあれだけ出して……ああ」


二人は陶酔した顔で角刈り同士をぶつけあわせていた。


「そんなにいいんすか、ふたりとも……」


そんな角刈り頭を両手で撫でて、大地は嬉しそうにイッた。


「あ、ああ………」

「そう、だあ……」


その声、その表情は優しい大地青年のものであり、同時にまるでこれまでとは違う圧もあった。


尻が疼き、喉が乾き、瞼が堕ちてくる。

そんな声と表情に、現地と白波瀬は戦慄と興奮で縫い付けられた。


「く、くれ……父ちゃんにも、コイツ……くれよぉ」

「ああ、儂と正式に師弟となった最初の……最初の交尾をせんかぁ……ああ、頼む、父さんはずっと我慢していたんだぞお」

「そ、それを言うなら俺ァ……ずっと、ずっとだ……」


二人はチュウチュウと亀頭に口をつけ、いまだ止まらない放出を飲み込んだ。

激しく喉を鳴らし、大袈裟にベロを伸ばし、鼻水が垂れるのもいとわず肉棒を愛する。

そうすることで、先に犯されようとする二人の角刈り男。そんな二人の愛を感じながら、大地は嬉しそうに微笑んだ。


「ああ、父ちゃん……父さん……」

愛おしさと喜びで再び肉棒が跳ねる、汁が飛んだ。

二人の父は息子の成長を心から喜びながら、その汁を浴びたのだった。



終わり


親方と親父の筆下ろし

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