てぃろりろりーん♪だの、でゅいんでゅいんでゅいん♪だの、なんとも調子の狂う騒々しい電子音ばかりが両の鼓膜を叩いてくる。ゲームパーク、ボーイズキングダムなどと豪奢な横文字がついているが、一橋陽三にとってはトンチキなお祭り騒ぎのようにしか感じられなかった。
同じ祭りの音楽でも、和太鼓の勇ましい音などのほうがよほどわかりやすく魅力的だと思うのは……もう古いオヤジの価値観なのだろうか。
この音楽といい、青空柄に塗られた壁といい、大型商業施設の中でこの一角だけが文字通りふわふわと浮いているようだ。
「いやあ面白そうだなあ、さ、どれからやるんだ陽之助、良二くん」
そんな感情はおくびにも出さず、陽三はすぐ横の子供たちに笑顔で語りかけた。
自分にはわからぬが、こういった電子ゲームは幼い息子たちにはたまらない娯楽なのだろう。
実の息子の一橋陽之助はもちろん、隣に住んでいる岩島良二くんも目を輝かせてゲームを機を見ている。
「おっちゃん、まずはなあメダル取ってこなアカンねん」
「うんそう。この前ここに着たときに溜めておいたんだ」
「………? ん、むぅ、めだる……そうなのか、よし」
簡単な説明だけのこして、息子たちは父親たちをおいて最初に向かうべき機械に恋焦がれるように向かっていってしまった。
陽三があのくらいの年の頃は、サッカーボールを夢中に追いかけたものだ。その流れでラグビーに興味を持ち、泥と汗で青春を彩った。
「……と、とにかく、走るんじゃあないぞ!」
しかし、息子には息子の人生と楽しみがあるのだ。そんな思い出話を語る必要などはない。もう少し陽之助が大人になって、スポーツに興味を持った頃にすればいい。
陽三は自らの感情を押し留めて、どう扱うのかもわからない機械を器用に扱う子供たちただ見つめた。自分の三分の一も生きていない子供たちが、よくわからない用語で楽しそうにしているのを見ると、つくづく自分は娯楽に縁遠い人間なのだと思い知らされる。
電子ゲーム、なかでもメダルゲームと呼ばれる機械は、要するに機械相手に遊ぶ麻雀や、金のかからないパチンコのようなものくらいの認識だ。
そんな巨大施設が町中に作られると聞いた当初は、大事な息子をそんなものに関わらせることの嫌悪感からか、随分と反対したものだ。
今でも完璧に承服しているとは言い難い。だが、このなにもない田舎町だ。子供たちの選択肢が増えることは、決して悪いことばかりではないと考え直した。
――思い返すと恥ずかしいものだ。
この狭い街に必要なのは、地域全体で子供を見守り、楽しませる意識だったのだ。
頑固な親父達の息子たちへの願いなど、子供たち自身の楽しさ幸せに比べればゴミのようなものだ。この街の未来は、この国の新たな王は、若者たちである息子たちなのだ。
ボーイズキングダム。ああ、なるほど言い得て妙だ。そうだ、頑なさなど捨てて正解だ。俺たちはみんなで、彼ら全体の父親なのだ。
「しっかし騒がしいのう」
しかし、すぐ横にいる男はいまだそこまで納得いっていないらしい。
同じく大反対だと声を荒げていた男、良二の父の岩島梁が大袈裟に耳をほじりながら言った。
昔気質の町大工である男だ、今でもこの施設にいい印象を持っていないのだろう。
「まあそう言うな、――自分でもわかっているだろう?」
「ふん」
共に反対運動を行った、いわば同志ではあるが、今は矛を収めて共に笑い合うべきだと陽三は言い含めるように語った。
梁自身も息子が楽しんでいることは否定していないのだろう。それ以上何も言うことはなく、ただ汚れた地下足袋を薄い桃色の床に擦りつけ、青空の描かれた壁に分厚い背中を持たれかけた。
こんな態度だが、息子の良二にせがまれて付き合っているのだから、彼も随分変わったものだ。
「お、めだるを取ってきたのか。よし陽之助、もう好きに遊んできてもいいぞ」
「お父さんたちは?」
「お父さんたちも……まあ、うむ、楽しんできたり、あそこで飯を食っているから」
「うん! じゃあいこっか、良二くん!」
「へっへー今日は負けんへんで!」
「ハッハッハ、どっちも頑張るんだぞー」
飛び跳ねるように去っていく息子たちの背中を見ながら、陽三は心の奥から温かくなるのを感じた。
穏やかで、とてもいい気分だ。
息子は父親二人が退屈そうにしているのを不安がっていたが、とんでもない。これが楽しいのだ。父親になってみないとこの『楽しさ』というのはわからないことだろう。
ヤッター!
ガンバレ! ガンバレ!
電子音に応援されながら、息子たちはタイミングよくボタンを押すだとか、レバーをガチャガチャと必死になって動かしている。
原理としては単純で簡単なものだが、激しい明滅や楽しげな音楽で、わかりやすく応援されるのは楽しいものなのだろう。
「――お父さんお父さん!」
二人でコーヒーを飲みながらぼんやりとゲームセンターを眺めていると、少し遠くの陽之助が声を上げてこちらに呼びかけてくるのが分かった。
さてなんだろう、なにか特別な「ぼす」とやらを倒せたのだろうか。
「梁さん、ちょっと持っていてくれますか」
「おう、行ってき」
陽三は缶コーヒーを預けると、息子小さな背中が待つ筐体へと向かった。
『さあ勝負じゃ勝負じゃあ!』
ガンバレ!ガンバレ!
息子が遊ぶ筐体からは、電子音に混じって男の低い渋い声が響いていた。
小さな子供が座るための小さな機械の向こう側、大きなガラスの壁の向こうに筋骨隆々の巨漢がいた。ラガーマンのコスチュームを一式身につけ、ダブルバイセップスのポージングをして挑発的な表情を浮かべている。
なるほど、コレが今陽之助が「やっつける」敵なのだろう。
「――ん?」
すぐに気が付かなかったが、よく見ればあれは穂村太陽ではないか。
やはりこの施設の建設に反対していた自衛官だ。浅黒い肌に糸のように細い目、短く刈り込まれた頭髪は、いかにも国防の要を務めてきた男の中の男といった風貌だ。
そんな彼が、息子の目の前でラグパンからはみ出したムスコを強調しながら勇ましくポージングをかましている。
よくよく見れば、挑発的に思えた表情も…糸のような目がニタニタと嬉しそうに笑っていた。
『一点も入れさせんぞお! この魔王ラガーマッスルが負けるわけがなあい!』
ガンバレ!ガンバレ!
ゴールの前に立ちふさがる守護神。つまり息子にとっては敵対するライバルとして、彼はいまこのゲーム機に入っているようだ。
タイトルを読むと【イッパツキメろ! ラガーマッスル大撃退!】と書いてあった。
「ああ、なるほど。これはラグビーのゲームなんだな、陽之助」
「うん。お父さんラグビー得意でしょ、僕もこのゲームできるんだよ!」
「ハハハ――そうかそうか」
内心色々と引っかかるところはあった。
ゴールキーパーのように立っているあの姿。これではまるでサッカーだ。本当のラグビーというのはこうではない。それに、あの自衛官の穂村は確か柔道を嗜んでいたはずだ。ラグビーなどやったことないのだろう。構えがまるで格闘技のそれだ。
「――うむ、よし、ガンバレよお」
しかし陽三は、息子が楽しんでいるところにチャチャを入れるようなことはしなかった。
「さあ、父さんのように決められるかな、難しいんじゃあないかー」
「そんなことないよ! ようし!」
陽三は期待を込めて、陽之助の肩にボンッと分厚い手を置いた。
陽之助が目の前の大きな3つのボタンを次々に押していく。
ボールの位置を左右に決めている。パワーを選んで……ボタンをカチャカチャ通すと、ドゥンドゥンドゥン♪と大袈裟な音がして茶色のラグビーボールが黄金色に輝いた。
「あ♥あ♥そ、そのボールは♥ああぁイカン♥いかんいかんぞッ♥わしは、魔王ラガーマッスルが負けるわけにはァァァン♥♥」」
ショウブダ!
最後に電子音の掛け声がなると、ピーーとホイッスルが鳴った。
それと同時に、息子がグッとボタンを押した。
ドキュウウゥゥウン♪
レーザービームのような音がして、ラグビーボールが画面の中を飛んでいく。
そして――
「ヌヒョォォオオ♥♥」
ガラスの向こう側に突っ立っていた穂村が、間抜けな叫び声を上げてドスンとひっくり返った。
ブィィィイン……
ガラスの向こう側、魔王ラガーマッスルと名乗っていた大男のケツに、丸く太いディルドのようなものがズッポリと埋まっていた。
なるほど、これは………見事なシュートだ。
ゴーーーールッッ♪
爽やかな機械音とともに、やはりサッカーのような陽気なファンファーレが鳴り響く。
どうやら見事敵に必殺ショートをぶち当てて、一点入れて勝利したようだ。
「すごいゴォルキックじゃぁぁあ♥ こ、この魔王ラグビーマッスルも、かたなしっ、台無しっ、面目丸潰れじゃのぉおおっ♥♥」
仰向けになった穂村は神聖なラグビーユニフォームを身につけたまま虫のようにカクカクと痙攣していた。
ラグパンから露出した太い肉棒からは、時折気持ちよさそうな精液が飛び出して、紅白ストライプのユニフォームに転々と白濁した痕を作っていた。
まるで白旗でも上げるかのように、ドクリドクリと雄汁が吹き出している。そのたびに穂村は「はひぃ♥」だとか「おほッ♥」だとか無様な声を上げているのだから、やった方はなんとも爽快だろう。
「へへ! すごいでしょ!」
見事あの巨体を打倒した息子は、やはりなんとも得意げに振り返った。
「ああ、すごいじゃないか……ええっと、レベル4?だもんな」
なんともよくわからないが、とにかく息子がラグビーに興味を持ってくれていることは誇らしかった。
なるほど、父親世代が夢中になったモチーフを取り入れることで、親子関係をも良くしようとしているのかもしれない。なかなか抜け目ない施設だ。
「はひいぃぃ♥ もう一球、もう……もう一球ぅぅ♥」
変態無様ラガーマンと化した穂村は腰を浮かしながら次の一発を求めているが、陽之助はメダルだけ受け取るとさっさと次のゲームに向かっていった。
もう少しラグビーらしさがあってくれればいいのだが、それでもやはり楽しいものだ。何より息子が幸せなのだからそれでいい。
あんなに俺と一緒に反対していた穂村さんも、今では幸福そのものな顔で床で仰向けになってピクピク痙攣している。
素晴らしいことじゃないか。
屈強な身体と立派なチンポで子どもたちを楽しませる。自衛官なんかよりも遥かに素晴らしい。
―――何かがおかしい。
「ううむ、何故だ……俺は……。なあ、梁さん、ちょっと聞きたことがあるんだが……」
壁際に戻った陽三が見つけたのは、揃えて置き去りにされたコーヒー缶だった。
つまらなさそうに壁にもたれかかっていたはずの岩島が、いつの間にか消えている。
口では悪態をつくが、前回ここに来た時も良二の楽しそうにはしゃいでいるところを眺めて、口元に笑みを作っていた男だ。黙っていなくなるとは思えない。
『お、おい! 良二聞こえとるやろッ! わしが、このわしがなんでこんなんせなならんねん!』
『やっぱりここはあかん、あかん、おかしッ、わしはこんなもん望んでへんぞ!』
しかし、この騒々しいゲームセンターの中でも、あの大きなだみ声の大阪弁はなんとも目立っていた。
声のする方に向かうと、岩島はすぐに見つかった。
【ボタンで応援! 押忍、マンキニ団!】
そう書かれていたゲーム筐体の中に岩島はいた。ねじり鉢巻と地下足袋だけを残して、藍色の男らしいマンキニを身に着けた岩島が、青筋を浮かべて怒鳴り上げていた。
その筐体のすぐ前、大きな一つのボタンの前に良二くんが座っていた。
『出さんかい! 出さんか! やっぱおかしかってん、なんで気ぃ付かへんかったんや、おい、陽三! 早うここから出してや!』
岩島もこちらに気がついたのだろう。息子さんに頼んでもしょうがないと考えたのか、陽三に対して必死の訴えを始めた。
「――ハッ!」
陽三は突然目を見開いて声を張り上げた。
「な、なんてことをしているんだ! キミ、待ちなさい! 待たないか!」
陽三は機械に近づきながら、指差し声を低く轟かせた。背中を向けていた良二くんがびくりと肩を弾ませた。
「ん……? あ、違う違う。キミだ、そこのキミ。分かっているだろう」
陽三は腰に手を当て背を曲げて、上から見下ろすようにしてその少年を睨みつけた。
「えーオレ?」
「そうだ。いくら腹が立ったからって、ゲーム機を蹴るなんていけないことだ。この機械はみんなが使うものなんだぞ」
陽三が怒りを覚えたのは、すぐ隣の筐体を蹴りつける子供の方だった。
コレは許せないことだ。他の子供たちを怯えさせるし、機械にもよくない、なによりこんな力任せに怒りをぶつけていてはいつか彼の体で事故がおきる。
今見当たらない父親に代わって叱ってやる必要があった。
『ハ!? そ、そんなんどうでもええやろうが! こっちや、こっちを見やがらんかい! わしのアホ息子を止め、あ、はよう、メダルが、メダル入れられてまうぅぅうッッ!』
機械の中で岩島が随分荒っぽい言葉で叫んでいた。一体どうしたことだろうか。息子に対してあんな言い方、父親としてすべきではない。
「どうしたんだ岩島さん、そんな言い方は――」
今日はお説教しなければいけない事態が妙に続く。あまり気持ちのいいものではないな。陽三が呆れていると、ジョイン♪という愉快な音がして岩島が入っている筐体にメダルが吸い込まれていった。
『あ、ぬぁぁああ……始まっ――始まってもうたァァ、クソッタレがぁぁ!!』
「よっしゃあ! やるでえ!」
良二くんは改めて腕をまくると、ぐっと目の前の画面に身を乗り出した。
画面には『タイミングよくボタンを押してパワーを溜めよう!と大きく書かれていた。他の機械に比べればボタンは一つ、操作がシンプルなぶんリズム感が求められるようだ。
『良二ァァッ! わしはオヤジやぞッ、やめえ、やめんかァ!』
「頑張ってね、良二くん!!」
意気込む良二くんの肩に、息子陽之助が手をぽんと置く。さっき自分がしたときのような光景に、おもわず口が綻んだ。
『わしはこんな――』
ゲームスーターート♪
機械で再生される音声が流れると同時に、メリーさんのひつじのようなゆったりしたテンポのメロディが流れ出した。
『ぐ、ががああ、こんなもん絶対に――マンキニッ♥ おほ♥』
ピンポーン♪
画面が光る、そのタイミングで良二くんがボタンを押した。
その瞬間、さっきまで叫んでいた岩島が見事な姿勢のコマネチを決めた。足はガニ股。背は真っ直ぐ、逞しい二の腕をピンと伸ばして股間から肩幅まで見事なVを描きあげる。
音に合わせてボタンを押すと、コマネチ戦闘員がポーズでパワーを溜めて、正義のヒーローをやっつける……というシステムらしい。なるほど、岩島さんを倒すゲームではなく、彼は息子良二くんの忠実な戦士、ということだ。
『ひぎぃぃい体が勝手に、アカンわしはマンキニなんかぁぁせぇへんぞぉぉおおマンキニィ♥』
音楽のタイミングに合わせ、バチン、っと良二くんがボタンを押す。
タイミングが合えばピンポーン♪
少しずれればブッブー♪
どうやら良二くんはこういったリズム感はないようで、なかなか苦戦しているようだ。
ピンポーン♪ ピンポーン♪ ブッブー♪ ピンポーン♪
『マンキニッ♥ マンキニ♥ はひぃこんな頭がおかしゅうな マンキニぃん♥』
タイミングが合えば見事なコマネチとなり、声も素っ頓狂なマンキニ雄叫びがなる。
ずれると無様なポーズで左右ちぐはぐな動きをして、梁さんはわけのわからないことを言ってしまうようだ。
なるほどよく出来ている。うまくやればご褒美がもらえるというのは、どんなゲームでも同じようだ。
ピンポーン♪ ブッブー♪ ブッブー♪ ピンポーン♪
『マンキニぃ♥ はひぃぃ脳が、脳がおかしマンキニィィィッ♥♥』
藍色のマンキニを身に着けた角刈り大工が、正気と間抜けを行き来しながらゲームの中で喘いでいる。
体からは汗が滴り、ヨダレが分厚い顎を垂れ、アレほど意思の強そうだった瞳からも徐々に光が消えていく。
「最後、集中だよ頑張って良二くん!」
「わ、わかってるって、任せんかい!」
父親譲りの負けん気を見せたタイミングで、どうやらラストスパートがやってきた。
音楽が締めにはいり、ボタンのタイミングが一斉に訪れる。
ピンポーン♪ ピンポーン♪ ピンポーン♪ ピンポーン♪
彼は見事プレッシャーを跳ね除け、連続成功を決めていた。
『マンキニマンキニマンキニマンキニィッ♥』
ガラスの向こう側では、抵抗の一切できない梁さんが連続でコマネチをして、体からぼたぼたと汁を垂らした。
『結果発表~~♪』
電子音が鳴り響くと同時に、ドラムロールが始まった。
梁さんの収められていたガラスにブシューと煙が吹きかけられて、彼の姿が見えなくなる。
緊張の一瞬だろう。
そう思って陽三が見ていると、息子たちが一足先に「やった!」とガッツポーズをした。
なぜだろうか? まだ結果は出ていないぞ。
そう思って陽三がガラスをじっと見ると、なるほど息子たちが喜んでいる理由がわかった。結果は先走って出ていたのだ。文字通り。
ちょうど岩島梁という男がいた場所に、ねっとりとした精液が飛び散っていた。
その瞬間。
テレレレッテレー♪
『だいしょうりぃぃいぃんん♥』
煙が失せると同時に、見事なピンク色のマンキニを身に着けた梁さんが寄り目がちの笑顔で現れた。
彼はボタンを押すまでもなく何度も何度もマンキニコマネチを繰り返し、誇らしげに勃起した肉棒を振り回している。
『見事正義のヒーローをマンキニビィムで討伐やぁ♥ マンキニマンキニ♥ 司令官殿、ご指導ありがとうござマンキニィ♥ マンキニマンキニィ♥♥』
彼はニタニタ笑いながら、実の息子であるプレイヤー相手になんどもマンキニコマネチで讃えた。
射精後の肉棒からは、ブットイ尿道に残っていた精液がしつこいくらいに何度も何度もトロトロトロトロと亀頭に溢れているのが見えた。
『マンキニマンキニ♥ 勝利のマンキニィお射精やでええ♥♥♥ えへえへ♥♥♥』
かつて岩島梁として大工の棟梁にまで上り詰めた男は、腰を突き出して自分の精液をガラスに塗りたくっていた。
コマネチで揺れる勃起をグリグリ擦りつけて、精液と汗でVの字を描こうとしているようだ。アレほど立派な家を建てれる男で、ここは器用ではなかったようでVというよりはUくらいの出来になっていた。
「どや!これで俺のがちょっとコインの量追い越したで!」
「うーん……よーし、次はなにやろっか!」
そんなオヤジを無視して、二人は排出されたメダルを比べあっていた。
「ま、また遊んでやぁ~~♥」
という声を聞きながらも、クリアしたゲームを見返すことはなく立ち去ると、ガニ股姿の梁さんの立っていた足場がパカリと開き、彼の姿は消えていった。
「う~~む」
話し相手もいなくなった陽三は、ゲームセンターを見回しながら深く思案していた。
子供たちはみな楽しげで、オヤジたちも幸せそうだ。
さっきの子のように時折乱暴な素振りをする子もいるが、一見何の問題もないように思える。
しかし、それならばこの引っかかるようなものはなんだろう。陽三は首を傾げながら、なぜか2つも残っている缶コーヒーをグビグビと喉に流し込んだ。
二人の息子達の面倒をみるのは体力勝負だ。カフェインも倍必要ということなのだろう。