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親父の背中 BADEND2 紺と紅、ヒーロースーツ擦り付け

子供は親の背を見て育つ、なんていうが……思えば息子には背中ばかり見せてきた。

平和の為、人々の為、滅私奉公することがヒーローにとって必要だと言い聞かせて、背中ばかり見せてきた。

玄関まで見送りに来る幼い息子をわかっていながら、背中を向けた。

だがそれでも、今でも………、間違ったことをしてきたとは思わない。そんな幾人もの犠牲のもとに、平和や社会は守られてきたんだ。

これが俺の生き方だ。

背中を見せるのが俺の生き方だ。すまない許してくれ。

だから頼む。振り向かないでくれ。

俺の背中の記憶だけを覚えていてくれ。

こんな、俺の無様なツラを最後に見ないでくれ。

ああ……ああ……頼む。頼む。

ヨダレが、とまれねえんだ………。父ちゃんは。

「最初の報告は今から19時間前だ。第一発見者は現場の作業員。建てた覚えのない巨大な建造物が一夜にして出現、会社の規定に則って即座にヒーローに報告、調査能力持ちを中心に三名が派遣された」

二階から降りてきたばかりの息子は、目を見開いて俺を見ていた。

それはそうだろう。野球部の朝練に備える忙しない早朝に、親父がリビングでどっかりと座っている待ち構えていたのだ。それだけでも珍しいのに、真っ赤なヴァンキッシャースーツを身に着け、臨戦態勢で腕を組んでいる始末だ。

短い黒髪、チクチクと生い茂った髭、太い眉。リビングのテーブルよりも居間で胡座をかいているほうが似合う芋臭い顔は、爽やかな朝にはさぞ暑苦しいだろう。

「………」

息子の返事はなかった。無理もない。数ヶ月前の口論以来まともに会話もしてこなかったのだ。

それが今日になって突然、父親ではなくヒーローとして話しかけてきたのだ。そりゃあイイ気はしないだろう。

だが今は一介の高校球児といえど、元はヒーローとして英才教育を尽くされてきた息子だ。どんな感情があったにせよ、息子は自分を抑えて俺の正面に座った。うんざりとした表情をしっかり俺に向けながら。

「三名のヒーローが現場に到着後、建造物が起動。塔の最上部が開口し、眼のような模様のついた石が出現、そして――」

俺は手元のリモコンを操作し、リビングのテレビの電源を入れた。スーツに覆われた指で操作する自宅のリモコンというのはなんだか奇妙な押し心地だった。

「頭頂部から光線を発射。ここまでは、各ヒーローの視点で鮮明にデータが残っている」

「………」

「ヒーローといえど、この速度と量じゃあ、目視で回避しつつ接近するのは、ほぼ不可能だな」

映像の中のヒーローは身体能力と飛行能力を活かし、巧みに攻撃を回避している。しかし体力と集中力は、いかなヒーローと言えど有限だ。

一発、二発と、水色に輝くスーツに攻撃が直撃する。

『な、なんだこれは、攻撃なのか!』

スーツから異音を発し、胸のコアが危機を示す色に変わる。

そこで映像は停まった。

「本来ならば、どのような窮地であってもスーツ内蔵の記録装置が止まることはない。強力な電磁パルス攻撃か、スーツにハッキングが行われたか。エナジーの急速な枯渇か。基地のコンピューターは数少ないデータから答えを出そうとした。だが結論が出る前に、ヒーロー基地がハッキングを受けた」

「で、どうしろってんだよ俺に。そもそも俺はもうヒーローでもなんでもねえぞ」

結論を急くように、息子はついに口を開いた。

「言えよ、親父。朝練行かなきゃならねえんだ」

俺は語った。

作戦の成功率を高めるためにお前の協力が必要なこと。

電磁パルスに対しては、稲妻の力を持つ俺たちの能力が耐性を持つこと。

ハッキングに対しては、旧式のスーツのままヒーローを辞め、アップデートしてないお前のヴァンキッシャーJrのスーツが有効に働くということ。

エナジーの枯渇に対しては、エナジーの受け渡しが円滑に行える親子が適任であること。

「すべての条件が、お前に言っているんだ。もう一度世界を救ってくれと」

「勝手な話だな」

「そうだ。お前個人の意志や感情は無視し、能力を見ての依頼だ」

「そりゃあ、正義のヒーローヴァンキッシャーとしてか」

「――ああ、そうだ」

俺は迷わず答えた。

坊主頭の息子が睨みつけるように俺を見ている。

「ヒーローの息子として、受け入れてくれ。お前が必要なんだ」

これまで語ってきたのは、すべて真実だ。

誰かに頼まれたからではない。世界のためにそうするのがいいと、俺自身が判断して息子に語った。

だが、俺自身の耳にさえ、この言葉は寒々しいものとして響いていた。

こんな情報不足の戦地に息子と出撃したいなど、子を想う親が言う言葉ではない。やはり俺は、一人のヒーローとしてはともかく、親父としては失格なのだ。

それでも、伝えないという選択肢はなかった。正義と平和の為にできることを、我欲と家族のために我慢するという道は選べなかった。

「どうする」

俺は息子をまっすぐ見つめていった。

真紅のスーツに包まれた肉体が、僅かに熱を帯びていた。

元ヒーローとして、もう一度世界のために戦うと言ってくれ。

俺の息子として、そんなの御免だ俺は嫌だと断ってくれ。

二つの感情が同時に渦巻いていた。

「やりゃあいいんだろ」

久しぶりに見つめる息子の顔は、すっかり男の厳ついものになっていた。

あの時の息子の顔は男そのものだった。

あんなに小さかったのに。

将来はパパのようなヒーローになる、なんて、そう言ってポーズをとって見せてくれた時、ああ、あれは今でも人生最良の日だと思い出せる。

「お前の位置は俺のすぐ後方だ、距離300までは攻撃を回避しつつ目標に接近。その後は攻撃が激しくなると予想される、ここから先は俺が電磁バリアを張り先行する、お前は俺を盾にして接近し、出来得る限り消耗を抑え、最後は単独で突撃してもらうことになる」

「おい聞いてねえぞ、親父」

現場の目前にした最終ブリーフィングの最中、息子は再び俺に食って掛かってきた。

俺と全く同じ造形の紺色のスーツに身を包んだ、ヴァンキッシャーJrと登録されたヒーローは坊主に丸めた頭を俺の髭面のすぐ前までずいと突きつけて吠えた。

「どういうことだ、なんだよ盾にって」

「今は、俺のことはヴァンキッシャーと呼べ、Jr」

「Jrって歳じゃねえよ。クソ、そんなことはいいんだよ。なんだよその作戦、盾にしてって……俺はともかく親父はどうするってんだよ」

「お前が無事目標を破壊すりゃあ、連絡が取れない先遣隊共々救出されるってわけだ」

「………クソ、聞いてねえ……聞いてねえぞ」

「ああ、言ってなかったからな」

「………」

「俺がお前の壁になり、同時に外付けの電池になるってことだ。それが最も、作戦の成功率を高める」

「なんで伝えなかったんだよ」

「そりゃあ――」

そんなもの決まっている。こんな言い方をしたら、お前はきっと断れなかっただろう。口は悪いが、優しい子だとわかっているからだ。

「ったく、後味最悪だ。ヒーローが嘘つきやがって」

「嘘はついてねえ。詳細は現場で伝えると言ったときに、お前が尋ねなかったのが悪い。ま、年相応に賢くなったってことが、こんなゴリラ親父でもよ」

そう言って俺は真紅に輝く胸板をドンと叩いてみせた。誤魔化すように、わざと豪快にそう見せた。

「覚悟決めてもらうぞ、よし、行くぞ」

「お、おい!」

もはやこれ以上考える時間を与えるわけにはいかない。

今回の作戦に必要なのは頭脳やテクニックではない。

ひたすら前へと邁進する、覚悟とヤケだ。

なるほどそういう意味でも俺のような親父より、若造のほうが適任だろう。ハッキングされながらも、基地のコンピューターってのは色々と賢いらしい。

工事の最中に投げ出された現場は、荒々しい岩肌がむき出しになっていた。

風に吹かれて砂塵が舞う。俺たちはその中をゆっくりと、縦に並び、雄々しく行進でもするように進んでいた。

映像ではわからなかったが、常に風が吹いている。

距離が近づいていく。600、550、500……、前触れ無くソレは俺たちを襲った。

「避けるぞ!」

声が息子に届いた頃には、俺たち親子は既に一発目の光線を回避していた。

着地と同時に二発め、間髪を入れず三発目。スピード自慢の下半身が、赤と紺の二色の帯を描く。

距離450、400……。攻撃は苛烈になってくる。300までは温存していたかったが、このペースではむしろエナジーよりも集中力が持たない。俺はともかく、息子が直撃を食らっては作戦が完璧に瓦解する。

「仕方がない、現場においては臨機応変! 少し早いがシールドを展開するぞ、ここからは俺の後ろにぴったりついて離れるな! いいな!」

俺は叫ぶと同時に俺は腰を落とし、ガニ股にして両足をパイルのように大地に突き立てた。

「ぐ――ヌゥッ、ヴァンキッシュシールドォォッ!!!!」

世界のため、平和のため、そして息子の活躍のため。

俺は両腕を限界までパンプアップして、前腕をクロスさせた。赤と黄色で∨の字の描かれたエネルギーシールドが正面に展開される。

「ク……す、進むぞォッ!!」

光線が俺の正面、ど真ん中を射抜くように突き刺さる。

5発までは問題なかった。しかし六発、七発と攻撃を受けるうち、スーツに表示されるメッセージにノイズが混じり始めた。

「まだだ――おとなしくしてやがれ……!」

俺は自分のスーツに言い聞かせながら、ガニ股中腰の姿勢でズリズリと前進した。

俺の後ろには息子がいる。

俺の背中には息子がいる。

いつも置いていってばかりだった息子が、今は俺のすぐ後ろにピッチリとついている。

背中ばっかり見せてきたんだ。

親父の背中を、今日はせめて格好いいものとして最期まで見せてやる。

「親父ッ」

耳の後ろで小さな声が聞こえた。

右側25メートルほど先に、先遣隊のヒーローが見えた。

仰向けに倒れた彼は、緑色のスーツに身を包んだままビクビクと痙攣していた。どうやらまだ生きているようだ。良い知らせだ。

「ああ、問題ねえ、大丈夫だ、なんせお前が助けてくれるからな」

「………いや、あれって」

「集中しろ、馬鹿になれ! とにかく前だ、前に進むんだッ!」

とんでもない教えだ。だが、時にはそれくらい割り切ることが必要なのだ。

そうだ、馬鹿だ。今の俺は正義馬鹿そのものだ。

エナジーをギンギンに滾らせて、筋肉を盛り上がらせて、ただひたすらに前へと進む。目標を破壊し、平和を取り戻すため。とにかく一歩、一歩と前進する。

髭面を限界まで歪め、汗だくになって、とにかく前へ、前へ前へ。馬鹿になって突き進め。

俺は盾だ。上等だ。この生命を使い捨てるつもりでとにかく進め。

スーツに筋肉食い込ませ、腰を振って、腋見せて、息子にケツを突き出す姿勢で、とにかく全身、エナジーをどばどば吐き出して気持ちよくなって全身だ。

「おい、親父ッ!」

「ハッ、ヌゥ―――!?」

俺はもう何発目かもわからない光線を弾きながら、息子の声に我に返った。

待て、腰を振る、だと? な、なに考えてやがる。

エナジーを吐き出すだと。そんなもん以ての外だ。こいつをギリギリまで温存するための作戦だぞ。

「待て、いったい、なにが起きてやがる――」

俺はスーツのデータを網膜に展開させた。

………

計器はまだ正常に作動している。ように見えた。

気がつけば、俺の体をピッチリと覆っていたスーツが、ギュウギュウと俺の筋肉を締め付けている。

似ているようだがこれはまるで違う。筋肉の動きを全く妨げないからこそ、俺のような髭ゴリラの親父が全身タイツ型のスーツなんてものを身に着けているのだ。それが、なんだ。

ケツに食い込み、股間が擦れ、胸板の乳首までツンと突き出るくらいにまでピッチリ張り付いてやがるじゃねえか。

「く、クソ、ハッキング型――で、間違いなかった、ようだなッ」

体が動かしにくい。

いや、違う、正確には妙な動きだけが楽だ。

前へ進むだとか、まっすぐ立つだとかができねえ。その代わりに腰を振ったり、ケツを突き出したりのポーズが妙に楽で、気持ちがよくなっちまっている。

ああ、気がついたら、意識したら、途端に全身がむず痒くなってきやがった。スーツが俺の体をシゴいてやがる。よりにもよって息子の前で!

「ハァ……ハァ………ぜ、前進だァ、い、急ぐ、ぞ、ヴァンキッシャーJrよォォ……!! ンオォォ!!」

俺は雑念を振り切るように吠えて、再び一歩脚を動かした。

ほとんど震脚だ。だが、それぐらいの決意がないと体が動かなかった。

スーツがビービーと音を立てている。

撤退。解除。敗北。危険。

そんな音だ。

「グゥウゥゥ、だ、黙ってやがれッ、俺は正義のヒーローヴァンキッシャーだぞッ、お、親父の胆力舐めんじゃねェぞォォ……!!!」

左、右、左、右。

俺はどんどん不格好になりながら、とにかく盾を前へと持っていった。

息子は何も言わない。

黙って俺の背中を見つめている。見つめてくれている。

せめてもう少し格好いいスマートな親父だったら、この場も鮮やかに切り抜けれたかもしれねえな。

だが、ないものねだりをしてもしょうがねえ。

俺は息子のミルクを作るのだって四苦八苦したし、息子の精通をデリカシーなく慰めたようなこともしたし、息子の授業参観もほとんど出席せずにヒーローをしてきた、そんな親父だ。

だが、正義のため、平和のため、お前の為に戦ってきたつもりだ。

そんな背中がこれなんだ。最期まで俺はそうあるんだ。

「グ……オォォオオッッ、オホォ!?」

だがそんな決意を捻じ曲げるような、とてつもない快感が股ぐらからこみ上げてきた。

体が痺れる。全身が電気になっちまったみたいだ。俺の正義と一心同体のハズのスーツが、俺の股間とケツを小刻みに振動させて弄ってやがる。

すでにスーツは狂わされ、完全に悪に堕ちていた。今ここにいるのは、丸裸の正義の親父と、悪に堕ちたスーツ。そして無傷の息子ってわけだ。嗚呼クソ、とんでもねえ事態になったもんだ。

「オォォ……ま、前だけ、み、見てろォ……も、目標、だけェをォォッ!!」

俺はたまらず、後ろの息子にそう言った。

背後からでは見えないだろうが、既に俺の肉棒はビンビンに勃起し、プレエナジーがたらたら溢れていた。

息子の前でこんな無様を晒すなんて。

とんでもない屈辱感だ。

だが、だからこそ息子をこんな無様な姿にするわけにはいかないという決意もあった。

ああ、そうだ、俺の大事な息子を、こんな恥ずかしい目に合わせるもんかよ。俺だけだ、俺だけで十分だ。

光線が容赦なく俺のシールドに突き刺さる。

だいぶ光が薄くなってきやがった。

ああ、あちこちに仰向けになっているヒーローたちは、みんなこの直撃を受けて、エナジーを吐き出されて、あんな姿になっているのだ。どうりで連絡が取れないわけだ。

ああ、シールドが消えちまう。

股間にエナジーが集まって。腕の筋肉に力が入らねえ。

まずい。まずい。俺まで直撃受けちまう。

息子の前で、息子の前で息子の前で―――

駄目だ、進め、耐えろ、進め。

「親父、限界だろッ! 一旦下がれよ、交代だ! 俺にだってシールドくらいつくれんだ」

何言ってやがる、お前を無事に届けるための作戦だぞ。

そんなもん却下に決まってる。

「現場においては臨機応変だろッ! 親父がここで崩れちまったら――」

息子の声の最中にも、光線は容赦なく俺を狙い撃つ。

盾にヒビが入る。汗が吹き出す。雄汁が飛び出しそうだ。スーツの中で蒸れた体がぐるぐると蒸発しちまいそうだ。

俺は――

・限界まで耐えた

・息子の提案を受け入れた

『息子の提案を受け入れた』

俺は息子の提案を受け入れ、フロントを任せることにした。

実際のところ、消耗は事実だが余力がないわけではない。目標が目視圏外である現状から逆算し、ここで息子のエネルギーを大量に消耗させるのはどうあっても避けたかった。

プロのヒーロー同士であれば、俺は最後まで力を尽くし……そして無様にエナジーを吐き出し、力尽きただろう。たとえ無様だろうと、屈辱だろうと、それが最も作戦の成功率が高いからだ。

だがしかし、息子は技術や能力があるとはいえ、まだ学生だ。

実の父親が目の前で倒れれば、精神的な消耗が必ず生じるだろう。

「………」

胸中にこみ上げてくる感情は複雑だった。しかし、俺はそれらを飲み干して、ただ一言だけ息子に返した。

「わかった」

親父として無念ではある。しかし、そのプライドの為に作戦を台無しにするわけにはいかない。

「大丈夫か。シールドの面積は広げなくても構わんが、反射の為にはある程度の角度が必要だぞ」

「うるせえな、そういう小ワザができるから俺が呼ばれたんだろ」

もっともな指摘に俺はただ口を閉じた。ヒーローらしからぬ、冷静ではない態度だった。どうしても『父親』が出てきてしまう。ヒーローとしては長く深いものだが、父でありながらヒーローをするというのは初めての経験なのだ。

しかしこれだけのヒーローの技術を、小ワザ呼ばわりとは。息子がヒーローを続けていれば、必ず大成したに違いない。

「それじゃあ、任せたぞ」

「――ああ」

俺はシールドを収めると同時に、後ろに引いた。

背中越しに息子がオレンジ色の光を前面に展開するのが見えた。

正面から光線が突き刺さるのがわかった。

怪しげな光線は直撃することなく、息子のシールドに弾かれて霧散した。

ああ、俺によく似たシールドだ。

角度は良好。エネルギーも均等に行き渡っている。しかしやや厚みが過剰だ。これでは消耗が俺以上に激しい。

「――よし、もう大丈夫だ、前進しろ」

「わかってる、ついて来いよ親父」

だが今は息子を信じ、進むしかない。

目標に近づき、破壊する。そのために親子二人の力を尽くし、光線の嵐を突き進むのだ。

嵐の中を突き進んでいるようだ。

雨のように降り注ぐ光線をしてそのように感じたものだが、前進を続けるに従っていよいよ俺たち親子は黒風の中でもがいているように思えてきた。

常に向かい風が吹き、砂嵐が巻き上がっている。

体を低くかがめ、盾を掲げながらゆっくりと歩行しなければならない姿は、雨の中で傘に身を任せる姿によく似ていた。

「ハァ……クっ、ぬぅ………」

機能を失っていくスーツは本来の通気性を失い、サウナスーツのように俺の体を蒸している。

本来スムーズに収縮するはずのスーツが、プログラムによる制御を失い俺の肉体を責め続けている。エナジーを放出させ、無力化させようと、常に快感を与えようとしている。

それらが合わさって、一歩歩くごとに不快感と快感が同時に襲いかかってくる。汗だくのケツが揉まれるような快感。股間が収まった部分が時折振動すやがる。全身の熱で頭がボーッとしてきちまう。

「大丈夫か、常に……スーツの状態は確認しろ……気がつけば、かなり侵食……ハッキングが」

「ま、まだ大丈夫だ」

そう返答する息子の顔は見えないが、背中越しにも既に『始まって』いることは伝わった。

息子のスーツはアップデートが行われていないぶん、おそらく俺ほど深刻に侵食されたり、蠢き出すようなことはないだろう。だが、まるで影響を受けないわけではないのだ。実の父親の視線を浴びながら、屈辱的な刺激を受けるというのがどれほど若いプライドを傷つけているかは……想像しきれない。

息子の紺色の背中を見つめながら、俺達は二人だけの進軍を再開した。

一歩、また一歩と進む。俺譲りの骨格はガッシリと逞しく、見ようによっては頼もしく思う人もいるだろう。野球部ではリミッターをつけてキャッチャーを任されているらしい。なるほど、シールドを展開しながら前進するという負担の強い動きでも、下半身はまったくブレていない。チームの大黒柱として、一本立派に務めているだろう。

……しかし、懸念していた通り消耗が早い。

脈拍、息遣い、どれも明らかに正常ではない。本来はもっと後に行いたかったが、これはもう仕方がない。俺は息子に一つの提案、いや、命令にも近い語気で語りかけた。

「もう一度、俺が前に立つ」

「おい、なんだよ、それじゃ意味がねえだろ」

「いや、休憩は十分だ。頭は冷えたってことだ」

自分自身の限界がわかった。

そして、息子の力量も見えた。

目的地までの距離も頭に入っている。

熊みたいな親父の俺だが、このヴァンキッシャーはベテランのヒーローだ。これだけの材料があれば、勝利のための方程式ってものは頭の中で十分計算できる。

「今からお前に、俺のエナジーを送り込む。その後、残ったエナジーのすべてを使って俺がシールドを展開し……お前に託す」

「おいそれって」

「お前が振り返らずにまっすぐ進めば、目的地まで足りる計算だ。多少のトラブルがあっても、な。無事解決すりゃあ、その後で……ここでヘロヘロになってる親父を迎えに来てくれりゃあいい」

結果として出した答えはスマートとは言い難い。

だが、息子の精神的消耗を避けつつ、作戦の成功率を上げるにはこれが一番。これしかないと、そう思った。

「悪いな、お前に託すことになっちまって」

「………」

息子は答えなかった。その無言の回答を良しとして、俺は息子の背中に手を伸ばした。

紺色のスーツと赤色のスーツが重なり合う。侵食は目測通り進んでいた。じっとりと汗ばんでいるのが薄いスーツ越しに伝わってくる。

「少しばかり違和感あると思うが――」

「わかってる、我慢してやる」

生意気な口を聞けるだけの余力はあるようだ。

頼もしい限りだ。

問題は俺のエナジーが潤滑に受け渡せるか、だ。

実際のところ、俺でさえこの経験はほとんどない。

ヒーロー同士、エナジーの譲渡が可能というのは皆知っていたが、しかし実際行われることは極めて稀だからだ。

そもそもヒーローがここまで消耗する事態が少なく、親子や兄弟でもなければ、エナジーの種類が大きく違っている。二つの条件を満たす状態、というのがめったにないのだ。

俺は息子の背に置いた手をグッと突き出した。

目を閉じ、意識を集中する。

ヒーローとヒーローの魂を通じ合わせるように、エナジーと心を一つにして右手一本に集め、そして注ぎ込んだ。

繋がる。

繋がる。

力が届く。

「ぬぅ………!」

急速に俺の全身を疲労感が襲う。抜けていく。全身の細胞から、力が抜けていく。

「ぐ、おぉお………!!」

閉じているはずの視界が瞬き、頭の中で整理不能の情報が弾けるのが分かった。

息子の力からも、力や情報が流れ込んでしまっているのだ。

なるほど一方的な譲渡が困難な理由はこれか。俺の方で出力を調整し、息子にだけ力を与える量を……それでいて苦しめないような出力にしなくてはいけない。

強く、それでいて穏やかに……。そんな調整が終わるより早く、数多くの光の粒のような感情が流れ込んできた。

不安。そして恐れ。

いろいろなものが見えた。

今の感情だけではない。もっとずっといろいろなものが流れ込んでくる。息子の根幹。ここに至るまでの経緯。そんなものが断片的に見えてくる。

あれは……あの姿は。

俺の背中だ。

息子の記憶の中の自分だと、気がつくのに時間はいらなかった。

『よし、父さん行ってくるから、夕飯は用意してあるけど、足りなかったら――』

俺が去っていくのが見えた。

何度も何度も、優しげな言葉だけを残して玄関から戦場へと飛び立っていく。

しかし、息子の胸にあるのは決して寂しさだけではなかった。誇り、憧れ、いろいろなものが混じっていた。父の背は遠いが、それでも大きく頼もしかった。

そんな父に倣って、ヒーローになるのは当然だと思った。

幼い頃から野球を続けていたので、競い合うことや体を動かすことも好きだった。

ヒーローを尊敬もしていたし、体格やエナジーも恵まれた物を持っていた。

立派な教官にの元で教えられ、幾つものテストを合格した。

だからずっと気が付かなかった。

目の前の敵を打ち倒すというのが……、力で以て敵を征するというのが、性に合っていないなどとは考えもしなかった。自分自身も気がついていなかった。

親父譲りの強面に、恵まれた骨格、鍛えた肉体。ヒーローとしての血筋。

だが、本来は戦い向きの性格ではなかったのだ。

「…………」

息子の感情が止めどなく流れ込んでくる。

父に頼られ、この場にまでやってきてしまったが、本当は今も緊張と恐怖ですくみそうだった。戦う力を持っていることと、戦い向きであることは違う。不安と恐怖、そして緊張。あの静かな顔のうちに、幾つもの感情が隠れていた。

「お前……」

閉じきっていたまぶたを開くと、すぐ目の前には紺色のスーツが変わらず輝いていた。

だが大きく成長した息子の背中の震えが、今度ははっきり見て取れた。

「……すまん。すまない。お前をこんな場所に呼んじまって」

俺は後悔に身を焼かれながら、それでも右手からエナジーを送り続けた。

それでもなお先に進んでもらわなきゃならんのだ。

人々が救われるために、今はお前が必要なんだ。

「頑張ってくれ……」

俺は込み上げたものが抑えきれず、涙声になってそう呼びかけた。

「え、親父……」

突然の父親の変化に、息子は驚き振り返った。

「馬鹿野郎振り返るんじゃねえ! 前だ、俺達はとにかく前に進まなきゃならねえんだ」

熊のような俺のツラは、一体どんな顔をしていたのだろうか。一瞬だけ見えた息子の顔は、ゴツさと幼さが混じり合っていた。

俺はそれを頭に刻み込んだ。これが終わったら、改めて一度話し合おう。どうしてリミッターをつけてまで野球を続けたのか。将来はどうしたいのか。いやそんな大仰なものじゃなくてもいい。いま食いたいものの話だけでもいい。男同士、親父と息子になって話をしよう。

「―――!?」

そんな甘ったるい未来図を描いている俺を叱責するように、ヒーローとしての俺が覚醒した。

塔が見える。砂嵐の向こう側、光線を放つ巨大な塔の影がぼんやりと見えた。

光り輝いている。光が強くなっている。唸る音が変わっている。

来る。

若い頃から親父になるまで、ヒーローを続けていた俺の勘が嫌なものを感じった。

スーツは何も答えない。息子も気がついていない。

だが俺にはわかる。長年戦ってきたヒーローとしての勘が、おぞましいものを感じ取った。

「出力を上げろ、備えろ!」

俺の声に息子はとっさにシールドの範囲を広げた。

俺も振り返り、背中と背中を合わせた。

鍛え上げられた男同士の背筋が、盛り上がった部分を中心にぴったりと重なり合う。

180度展開したシールド同士を重なり合わせて、360度の防御を作り上げる。

完成の瞬間、光が降り注いだ。

直進するはずの光線が、どういうわけか俺たちを取り囲むように全方位から照射された。

「う、ウォオオオオ!!!」

「な、なんだよこれ、どうなってんだ、突然ッ!!」

「落ち着け、落ち着け!!」

俺は息子を宥めながら現状を必死に分析した。

おそらくはこいつは奥の手だ。それだけ追い詰めれている、ということだ。

問題はこの包囲網を抜ける手段だ。

俺はいい。どうなってもいい。

狂っちまおうが、無様を晒そうが、もうそんなものはいい。

どうにかして息子だけでも。送り届けられないか。

頼む、俺の脳みそ。なんとか思いついてくれ。息子のために、正義のために、平和のために、冴えたやり方を思いつけ。

背中から伝わる息子の熱が震えている。怯えている。限界だ。体力以上に精神が保たない。シールドがもう続かない。俺は……俺は息子を――

・俺は息子を抱きしめた

・俺は息子を突き飛ばした

『俺は息子を抱きしめた』 

「伏せろ!」

俺はそう叫び、360度の防御を解いて、同時に息子を抱きしめた。

ぶっとい腕で息子の体を挟み込み、胸板で押しつぶすように息子の体を包む、そしてそのまま地面に向けて押し倒した。

母なる大地と俺の背中、二つを使った新たな全方位防御へと切り替える。

「親父、なにやってんだ!」

「――ぐ、ぬぁああああッッ!」

当然、俺の背中にはあらゆる方向から光線が注がれる。

スーツからは異音がけたたましく鳴り、全身が余すところなく愛撫されるような刺激に晒される。

「ハァ……ハァァ、う、動くんじゃねえッ、きっと、すぐ止む、すぐ止むッ、ン、ン、ンォォオオ、ホォオオ!!」

侵食される、侵食される。俺のスーツが、正義のヒーローヴァンキッシャーのスーツが、俺のエナジーが溢れちまう。

ああ、だが大丈夫だ。俺の目の前には息子がいる。希望を託す相手がいる。ヒーロー状態で込み上げた雄汁はプレエナジーで、純粋な受け渡しに比べればいくらか不純物が混じっちまっているが、それでも効果はある。

俺がどんなに吐き出してぶっ倒れても、息子に受け継がれるってことだ。

「ンホッ、むぉぉッ、ケツ、ケツがッ、おっ、おっ、おぉぉっ、おぉぉッッ!!」

俺は大切な希望をガッチリ抱えながら、堪えきれず大きく海老反りになった。

しかし、わかっていても無様で恥ずかしいことには違いはない。息子もいい気持ちはしないだろう。

でも今は耐えてくれ。この猛撃が終わるまで我慢してくれ。ガマン、ガマンだ……ガマンッッああ、できねえ、止められねえッ。股間からどくどくと先走りが溢れて、染みがじわじわ込み上げてくるッ。きっと息子の紺色のスーツにまで染み込んじまってるッ。

ああ、すまねえ。おまえにこんな……親父のスケベな先走りを……。

だ、だが我慢ができねえ。溢れちまう。股間が揉まれる。ケツに食い込む。筋肉全部が締め付けられる。快感を強制的にぶつけられて、体が勝手に反応しちまう。

あッ、イク、イク……ケツでイク! 息子のこんな近くで、親父がケツイキかましちまう。 込み上げてくる、駄目だ、イクな、堪えろ、堪えろ、ああ、垂れるな、ヨダレ垂れるな、ケツ揺れるな、腰動くな、チンポイクな、イクな、イク、イクッ、イクッッ、イッちまうだめだァァァァ!!

「ハァ……ん、ヌゥぅ、ンハァァッ、す、すまァァアん!!!」

欲望がついに限界に達し、俺は腰を揺らしちまった。

その瞬間。ガチガチに勃起した俺の親父チンポが、柔らかい膨らみに触れた。ああ、息子の股間だ。紺色のあのでけえ膨らみに、ぶつかっちまった。

チンポが、チンポ同士、親子のチンポがくっついて、ああ、裏筋が擦れ……て、スーツとスーツのツルツルすべすべがッぁぁッッ………すげ、ぁぁぁァァアア゛!!!

「い、イグゥゥウッッ!!!」

俺は息子を地面に押し倒したまま、更に激しく仰け反った。股間同士をびっちり擦り付けて、真っ赤なスーツの親父ヒーローがチンポから勢いよくエナジーを……息子を作り上げたザーメンを吐き出した。

「ハァ――ハァ――ッ、ハァァハァァァ゛!!」

ああ、頭が真っ白になる。

気力も体力も全部雄汁に流れていく。スーツから情報がどんどん逆流してくる。止められねえ、止められねえ、空っぽの体にとんでもないものが入ってくる。息子の目の前で色々なものに侵されるザマを晒しちまっている。

ああ、目を見開いて俺を見ている。褐色の坊主頭のヒーロー……俺の自慢の息子が、俺の無様を見つめている。頭が沸騰しそうなほどに恥ずかしいじゃねえか、それなのに、どうしてこんなに気持ちいいんだッ。

「親父、しっかりしろ、しっかりしろ!」

わかってる。安心しろ、不安な面をするんじゃねえ。俺がどんなになっても必ずお前だけは護ってやる。お前は希望だ。世界と平和と、俺の希望だ。

「あ゛ァァア゛!!」

俺は叫びながら、激しく息子を抱きしめた。もっと強く、もっと力強く、大切な息子を俺の全身で包み込む。

ああ、なんていい気持ちだ。息子を護っているっていうのは、こんなに気持ちいいものだったのか。じわじわ熱いのが込み上げてきて、顔が自然にとろけちまう。

抱きしめれば抱きしめるほど息子のガタイから熱が伝わってくる。どうして今までやってこなかったんだ。もっとだ、もっと強く、もっと逞しく……。

「おぉぉ、むほぉぉおお、オッオッ、オゴォォオオッ!!」

震えるこの体を、抱きしめて護ってやらなきゃならねえ。

ほら、大丈夫だぞ、父ちゃんが護ってやる。父ちゃんに任せておけ。父ちゃんにたっぷり甘えて来い。もっともっと抱きしめ返してきてくれ。擦り返してきてくれ。ギュッとヤッてくれ、ああ、震えるんじゃねえ、気持ちよすぎるんだ。

「いいぞおっぉお、父ちゃん、父ちゃんが護ってやるぅゥゥゥ、じっとしてるんだぁぁああ、おほぉおおほぉおお!!」

俺は髭面を息子の坊主頭に擦り付けながら激しく上下に体を動かした。

スーツ同士、摩擦の低い体同士がうまい具合にスリスリ、スリスリと重なり合う。

「はぁぁ、スゲ、これスゲェ……いいぞ、イイぞぉッ、親子で、親子で重なり合ってッ、絆、キズナァ、取り戻すぅぅ、おっおぉお゛おぉぉお゛ッ!!」

「親父っ、お、親父、やめッ、あ、やめ、そこッそこはッ!」

「ここ、ここッ❤ ここいいよなぁわかるぞぉ父ちゃんもイイからすげえわかるぞぉおやっぱり俺たちは親子だなぁ❤ あ゛親子だ、親子だ、親子感じれて父ちゃんも嬉しいぞぉぉお゛❤」

紺と紅のスーツ同士がぶつかり合う。汗と汗が弾ける。膨らみと膨らみが競い合う。

ああ、息子のもっこり部分もどんどん熱く固くなってきやがった。凄えでけえぞ、俺そっくりだ。親子そろってドスケベで強いチンポしてるんだ。そんなことすら知らなかったなんて、俺はなんて駄目な親父だったんだ。

だが今日からは違うぞ。

「今日からは違うぞ、違うぞ、もっと、もっと❤ もっとッ❤」

もっと確かめ合おう。もっと親子の絆を感じ合おう。

チンポ同士、筋肉同士、顔同士、擦り合わせてわかり合おう

「ハァ、ハァ、ン、ンムゥゥ……❤❤」

重ね合わせた頬と頬、唇と唇がぶつかって、汗とヨダレでベタベタになる。股間では雄汁同士が混ざり合って、白い糸がねっとりと橋を作っている。輝くヒーロースーツ同士が、汗でますますテカテカになっていく。

ああ、俺達は今わかり合ってる。お互いのエナジーを交換しあって、なににも遮られないパワーになって、あぁあなんていい気持ちなんだ。

「ハァハァ、親父、オヤジィ……❤」

息子がついに俺を抱きしめ返してきた。

ああ、愛される、息子に愛されちまってる。

その喜びだけで、またチンポから汁がでる。護って、わかりあって、重なり合って、イキ顔見せあって、俺達はどんな親子でも達せない場所までたどり着いた。

「アイシテル、あいしてるぞおお❤❤」

俺はもちろんそれに答えて。チンポを激しく息子のチンポにぶつけた。竿の裏側同士を右に左に擦ったり、亀頭部分を小突きあったり、タマのある付け根をグリグリ強く押し付けたり、そのたびに俺たち親子は「「あぁぁ、凄え、凄え」」と同じようなツラで喘いだ。

「イクぞぉおイクぞぉお父ちゃんと一緒にイこうなぁあ❤ 一緒、一緒にイケェ、父ちゃんの前でイケェェ父ちゃんにぶっかけろぉぉお❤❤」

「あぁあぁ、あぁあ父ちゃんッ、あぁぁ父ちゃん❤❤」

息子は幼い子供のように俺にへばりついて、腰だけで激しくブリッジの姿勢になった。俺の体が持ち上がるほどの怪力、股間だけで繋がりあった体が浮き上がる。

「うぉぉおぉ出る、出るぅううッッ❤❤」

「あぁぁああ、スゲ、これスゲェ、と、父ちゃんもイクッゥゥゥウ息子の前でイクゥゥウ❤❤」

テカテカのスーツにお互いの雄汁をぶっかけ………ビクンビクンと体を痙攣させながら俺たちは力尽きた。

息子はヘロヘロ、俺もヘロヘロ。

汗でぐっしょりスーツは濡れて、髪も髭もねとねとだ。それがなんとも気持ちよかった。

「ハァ……ハァ……心配無いからなぁ、なんも、心配ないぞぉ」

倒れた息子を抱きしめながら、俺は耳元で囁いた。

ああ、大丈夫だ。護ってやるぞ。父ちゃんが絶対に護ってやる。

…………あれ、なにからだっけ。俺は、何から護っていた? ああ、いや、思い出す必要はない。俺はこの世の何もかもから、お前も護ってやればいいんだ。

既に嵐は収まっていた。

だが、俺たち二人の間では、まだグチュグチュと激しい音と、雨のような汗が続いていた。

俺たち二人だけの嵐。親子の絆。何にも負けない繋がり。

それを感じながら、俺は愛しの息子と息子のスーツに雄汁を塗りたくった。

BADEND2 

紺と紅、ヒーロースーツ擦り付け

親父の背中 BADEND2 紺と紅、ヒーロースーツ擦り付け

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