不気味に脈打つ肉の床が地平線まで広がり、垂れこめる雲のように巨大な肉触手が天を覆い尽くす。辺り一面に肉が脈打つ異空間に、淫らな水音とあられもないうめき声が響いている。あらゆる場所で、人間が、エルフが、ドワーフが、オークが、そして淫魔が互いに交わり合い、貪り合っている。この異常な空間――淫魔界に囚われてから、どれほどの時間が経過したのか。昼も夜もないこの場所で、時間の感覚はすでに失われていた。
「んあ゛ぁあっ♡もっとっ♡もっとくださいっ♡おしりっ♡あ゛ぁあ゛っ♡♡」
首から聖印を下げ、黒い頭巾を被った聖職者と思しき女性が、四つん這いの姿勢で後ろから淫魔のふたなりペニスに貫かれている。端正な顔は快楽に蕩けきっており、嬉々として腰をくねらせて淫魔の動きに応えていた。激しい突き込みにあわせて、肉厚の尻肉が波打つように揺れ、肉棒を咥えこむアナルがぐぽぐぽといやらしい音を立てる。彼女のアナルの周囲には、調教された肉穴を囲うように淫紋が刻まれており、丸い巨尻を妖しく彩っていた。
「ちゅぷっ♡じゅるるっ♡どうですかぁ♡私、ちゃんとおちんぽ気持ちよく出来てますかぁ?んむっ♡」
「くうっ。ああっ、君がこんなことをする必要はっ……うああっ♡」
そのすぐそばでは、エルフの少女が人間の青年の股間に顔をうずめ、一心不乱に舐めしゃぶっていた。少女の舌は異様に長く、まるで蛇のようであった。舌の中ほどには淫紋が刻まれており、妖しく光っている。
「あはぁん♡もうっ、またそんなこと言ってぇ♡んちゅっ♡おちんぽはこんなに喜んでるじゃないですかぁ♡じゅぷっ♡」
「ううっ……そんなことはっ……くぅああっ!」
少女の瞳は赤く染まっており、魔力汚染が進んでいることがうかがえる。青年の方も、口では拒絶の言葉を吐きながらも、少女の奉仕にすっかり感じ入り、自らも腰を振って少女の口内を楽しんでしまっている。
ここで狂乱の宴に興じているものたちの多くは、私と同じように淫魔によって強制的にここへ連れてこられた者たちだ。みな、初めは抵抗していたものの、淫魔たちに犯され、弄ばれるうちに、ひとりまたひとりと魔の快楽に身を委ねていった。
「ね~え、勇者のお姉さん……ヤってる最中に他のこと考えられると、こっちもショックなんだけど」
私のアナルを犯している淫魔が、後ろから乳首をつねりあげた。軽い痛みと同時に、脳天まで突き抜けるような快感が走りぬける。逸らそうとしていた意識が、強引に呼び戻されてしまう。
罠に嵌り、淫魔界へと強制転移させられたあの瞬間が、鮮明に脳裏に浮かぶ。淫魔の膂力や魔力は、人間とは比べ物にならないほど強い。聖剣と引き離されてしまった私は、淫魔の群れに成す術もなく敗北した。身体のあちこちに淫紋を刻まれ、抵抗を封じられ……いまは、二人の淫魔に前後から挟まれ、秘所と不浄の穴を犯されている。
「んぃいいぃっ!?♡♡♡」
淫魔の指が乳首を強く引っ張りあげ、私はあっけなく絶頂した。はしたない声をあげ、海老反りになって、母乳を噴き出す。極太の淫魔ペニスを咥えた二穴が、きつく締まって痙攣する。膝がガクガクと震え、全身から力が抜ける。
いま私が立っていられるのは、硬く勃起した二本のペニスに串刺しにされ、支えられているからに過ぎなかった。
「はーっ♡はーっ♡はーっ♡……くぅっ♡」
荒く熱を持った息が、半開きになった口から断続的にこぼれる。顎を伝って垂れた涎が、異様に大きく張り出した乳房へ滴り落ちた。
射乳の快楽にはいまだ慣れない。平均よりやや小ぶりだった私の胸は、淫魔たちによって徹底的な改造・調教を受け、凄まじく巨大で敏感なミルクタンクと化していた。片方の乳房だけで大人の頭ほどの大きさがあり、その先端には、手のひらで隠せるか怪しいほど大きくぷっくりと盛り上がった乳輪と、乳牛のソレを思わせる肉厚の乳頭が鎮座している。
淫魔に蹂躙され、性的魅力を過剰なほど強調する私の乳房は、その大きさに見合った大量の母乳を分泌する。ねっとりとした濃ゆい母乳が乳腺を迸る感覚は、脳髄が蕩けるかと思うほど甘く、筆舌に尽くしがたい快楽を伴う。硬くしこった乳頭を乱暴に押しつぶされるだけで、私はシャワーのように母乳を噴き出して、簡単にイかされてしまうのだ。
「くぅっ……締まるっ♡♡♡お姉さん、またイったね? もうこれで何回目かな♡♡♡」
前から私の秘所を犯している淫魔が、いたずらっぽく笑う。前後から私の二穴を責めている二人の淫魔は、見分けがつかないほどそっくりの双子の淫魔だ。人間だったころは姉弟だったらしい。二人ともがふたなり淫魔と化しているため、どちらが姉でどちらが弟だったのか、私には判別がつかなかった。
「千回じゃきかないよね♡1万回くらいイってるかな?」
「こんなにシてもまだ抵抗しようとできるなんて、流石勇者のお姉さんだね!」
「でもでも、勇者なのに簡単に捕まっちゃったよね♡♡♡」
「そうそう、私たちが人間の子どもに化けて助けを求めたら、あっさり騙されちゃって……あれには笑っちゃったよ!♡♡♡」
「もしかして、本当は私たちが淫魔だって気付いてたのに、こうして犯されたくてわざと捕まったんじゃないの~?♡♡♡」
淫魔たちは笑いながら、私に囁きかける。下賤な淫魔の問いかけに、応えるつもりはない。私は沈黙したまま、顔を反らした。
「また無視? つれないなぁ……」
少しむくれたような口調で、淫魔たちが言う。
「まあいいや、どうせお姉さんはもうここからは逃げられないんだし?♡」
「何日でも、何年でも……気が済むまで犯してあげるから、覚悟してよね!」
二人の淫魔は腰を振り始めた。息を合わせたピストンで、私の二穴を穿つ。二本のペニスが、私の奥深くを抉り、敏感な部分を容赦なく擦りたてる。
「んぐぅっ♡んぅううっ♡ふぅっ♡うぁっ♡」
歯を食いしばり、唇を硬く引き結んで、私は必死に声を押し殺す。だが、私の意思に反して喉から漏れ出る声は、甘く、いやらしく、蕩けきっていた。自分のものとは思えない、媚びるような声色に虫唾が走る。
幾度となく淫魔の精液を流し込まれた私の秘所と肛門もまた、胸と同じように淫猥に造り変えられている。膣内部の肉壁には無数の肉ヒダや肉粒が蠢いており、私の意志とは関係なく、肉棒を奥へ奥へと引き込むように蠕動し、絡みつき、舐めしゃぶる。排泄器官に過ぎないはずの肛門や直腸も、いまや胸や性器と変わらぬ性感帯となり果てている。肛門括約筋は肉棒を食むように締め付け、直腸は全体をうねらせて柔らかな腸壁を肉棒に絡ませ、精を搾り取らんとするのだ。
私の意志とは関係なく肉棒に媚びを売る、淫乱な肉穴。私はその内部の様子をつぶさに感じとることができる。いや、できてしまう。敏感な肉ヒダが血管の浮き出た肉棒の幹を愛おし気に舐め上げるのがわかる。粒立った膣壁が裏筋をゾリゾリと擦り上げ、子宮口が肉棒の先端に熱烈なキスを繰り返すのがわかる。出て行こうとする肉棒を引き留めようと、直腸全体が波打つように蠕動し、肛門括約筋が強烈に締め付けるのがわかる。そうして、貪欲に蠢く媚粘膜が、熱く滾る肉棒を愛撫し、精をねだるたびに、私は快楽に悶え、あられもなく嬌声をあげてしまう。
「お゛っ♡んぉっ♡んぅっ♡うぅ~~~~~っっ♡♡♡」
パンパンと肉と肉がぶつかり合う音。ぐちゅぐちゅと響く淫らな水音。私の口から漏れ出る卑猥な喘ぎが、淫らな三重奏となって響き渡る。
私は神託に選ばれ、聖剣と共に魔を断つ使命を与えられた勇者だ。魔物を討伐し、世界を救うために戦い続けてきた。その私が……淫魔に犯され、よがり狂っている。
心身共に蹂躙される、耐えがたい屈辱と恥辱。同時に、否定しようのない肉の悦楽と被虐の歓喜が脳髄を痺れさせる。
「くふっ♡んぁっ♡あぅっ♡はあっ♡ああっ!♡♡♡」
「お姉さんの声、だんだん余裕なくなってなってきたね♡♡♡」
「そろそろイっちゃいそう?♡♡♡いいよイっちゃえ!♡♡♡」
淫魔たちのピストン運動が激しくなる。肉穴を責める肉棒がビクビクと脈打ち始めた。吐精が近い印だ。もはや数えるのも馬鹿馬鹿しくなるくらい何度も味わわされた、中出しの快楽。淫魔の精液が私の腸内に叩きつけられ、熱く粘ついた子種が子宮を灼くあの感触を思い出して、私の背筋がぶるりと震える。子宮が降りて来るのを感じる。淫魔の精を求めていやらしくうねる肉穴が、きゅっと窄まり、肉棒を食いしめた。それが、無意識の反応によるものなのか、意識的な行為なのか……私にはもう判断がつかない。
「ほらイっちゃえ、勇者のお姉さん♡♡♡」
「イって無様にアヘ顔晒してよ!♡♡♡」
「んぉお゛っ♡あぉっ♡あ゛っ♡あっ♡ああぁあぁああああぁああ~~~~~~っっ!!!♡♡♡♡♡」
私の奥深くで、二本のペニスが同時に爆ぜた。熱く滾った白濁液が、子宮と腸内へ流し込まれる。
「お゛ぉおっ♡♡♡んぉおおぉっっ!♡♡♡お゛お゛~~~っ♡♡♡」
灼熱の白いマグマが、私のナカを灼き尽くし、満たしていく。凄まじい絶頂感。目の前が真っ白になり、ただ快楽だけが私の感じられるすべてになる。もはや、声を抑えようとする努力すらできない。下品で野太い嬌声が喉奥から迸って止まらない。
「お゛っ♡♡♡お゛ぉおおっ♡♡♡んぉっ♡お゛~~っっ♡♡♡」
淫魔の射精は長い。凄まじい勢いでなだれ込み続ける白濁粘液。そして、一滴でも多く精を搾り取ろうと、絶頂する間も肉ヒダが肉棒に絡みつき、子宮が鈴口に吸い付きちゅうちゅうと吸い上げているのがわかる。その感覚に、私の絶頂は引き延ばされ、終わらない。ぐりんと瞳が上を向いて、瞼の裏へと隠れる。だらしなく開いた口から舌が突き出る。情けない顔を晒しながら、私の意識は白んでいく。
「んあっ♡♡♡……はーっ……はーっ……♡」
淫魔の肉棒が引き抜かれる感触で、私は意識を取り戻した。いつのまにか、肉床にうつ伏せになっている自分を認識する。快楽と多幸感で、頭がふわふわする。たっぷりと灼熱を注ぎ込まれた胎から感じる温かさが、強い酒のように私の思考を蕩かせる。
「んぉっ♡……はーっ……♡あっ♡」
内股を、熱い粘液が伝い落ちる感触がした。尻に力を入れると、ぶぴっという下品な音とともに精液が漏れ出てくるのを感じる。完全に屈服し、汚された惨めな自分の姿を自覚して、私の胸に屈辱感と……仄暗い悦びが込み上げる。あってはならない喜悦。私はそれを打ち消そうと歯を食いしばる。
私は勇者になるために、多くのものを捨てて来た。故郷、家族、友人。そして、愛する人を。普通の村娘として一生を終える未来を、私は捨てて勇者になった。だというのに、このありさまはどうだ? 私のすべてを捧げて得た「勇者」という肩書はこんなものか? こんな低俗な淫魔ごときに、いいように弄ばれて……。
甘やかな余韻に身をまかせたくなる衝動に抗い、私はなんとか上体を起こした。そして、せめて抵抗の意志を示そうと、淫魔たちを睨みつける。
「なにその目?♡」
「そんな恰好で睨まれても怖くないよ?♡」
淫魔たちがクスクスと笑う。
私は視線はそのままに答えない。ひたすらに淫魔たちを睨み付ける。そんな私を見て、淫魔たちは呆れたように溜息を吐き、これ見よがしに肩をすくめた。
「ふうん、まだ抵抗する気でいるんだ?」
「身体はもうすっかり堕ちちゃってるくせに……まだ勇者気取りってわけ?」
淫魔たちが尻尾を、私の胸へと伸ばす。
「ん゛お゛っ♡♡♡」
先端がハート型に膨らんだ淫魔独特の尻尾が、私の乳房に巻きついた。巨大な柔肉が、さながらボンレスハムのように縛り上げられる。
「んぉおおぉっ♡♡♡ほぉっ♡♡お゛っ♡」
淫魔の尻尾が私の乳房に食い込むと、甘く鋭い快感が胸から全身へと広がり、脳髄を灼く。私は母乳をびゅうびゅうと噴きながら無様に悶絶する。
「見てよ、このえっろいデカ乳♡私たちのよりでっかくなっちゃってさぁ♡淫魔でもこの大きさの人はなかなか居ないよ♡♡♡」
「簡単に母乳噴いてイっちゃう敏感おっぱいに改造されちゃって、これじゃあもう勇者のお仕事なんてできないよね♡お姉さん♡♡♡」
淫魔たちの嘲りに、私はなにも言い返せない。事実だから……というだけではない。淫魔の尻尾が私の乳房を締め付け、搾り、揉みしだく度に感じる甘い快楽に、私の喉は意味のない嬌声を発するだけの楽器と化していた。
「お゛っ♡♡♡んぉおおぉっ♡♡♡お゛~~~っっ!♡♡♡♡♡」
「お姉さんだってわかってるでしょ?♡自分の身体が、もうほとんど淫魔に堕ちちゃってるってことくらい♡」
「だからさ、堕ちちゃお♡勇者なんてやめて、私たちと気持ちよくなることだけ考えて生きていこうよ♡♡♡」
「淫魔の暮らし、最高だよ♡♡♡毎日、朝から晩までエッチし放題♡」
「難しいことな~んにも考えなくていいんだよ♡お姉さんも淫魔になっちゃおうよ♡♡♡」
そういって、淫魔たちは私の乳首を手で弄り始める。肥大化した肉厚の乳首を根元から扱くように擦り上げられると、胸の奥から熱いものが込み上げてきて、胸の先端から母乳が勢いよく噴き出してしまう。一層勢いを増した射乳は、私を再び高みへと押し上げていく。
「んくぅぅう~~~~~っ!♡♡♡お゛ぉっ♡♡んぉぉおお~~~っっ!♡♡♡♡♡」
母乳を噴きながら身体を弓なりに反らして痙攣する。快楽が私の視界を白く染め、思考を彼方へと吹き飛ばす。私は舌を突き出し、白目を剥いて無様にイキ続けた。
「お゛っ♡♡♡んぉおっ♡……お゛~~っっ♡♡♡」
長い、長い絶頂だった。射乳の蕩けるような余韻の中で、私はぐったりと身体を弛緩させる。
「母乳絞られるの、気持ちよかったでしょ?♡人間の身体じゃここまで気持ちよくなれないもんね♡」
「もう人間なんてやめて、私たちと一緒に楽しく生きていこうよ♡ね?♡♡」
淫魔たちが私の顔を覗き込み、甘い言葉をささやいてくる。快楽の波に揺蕩う私は、その言葉に頷きそうになる……だが、なんとか踏みとどまる。
「……こと、わる」
私ははっきりとそう告げた。私は勇者なのだ。これだけは譲れない。たとえこの身が卑しく堕ち果てようとも、その誇りだけは決して捨てない。……でなければ、私が置いてきたものたちに顔向けができない。
淫魔たちは困ったように顔を見合わせた。
「う~ん。おかしいね」
「勇者だからってこんなに快楽に耐えられるものなの?この前堕とした聖女ちゃんなんて、ちょっとお尻開発しただけですぐ堕ちたのに」
「身体はすっかり変化してるのに、角とか羽根とかはいつまでたっても生えてこないのも変だよね。あと一歩のところで心が堕ちきってない……って感じなのかな」
「勇者の心意気ってやつ?それとも信仰?」
「いや、お姉さんはそんなに殊勝なタイプじゃないと思うよ。持ち物に聖典とかもなかったし。それに、誇りだとか信仰だとかに自信を持ってる人間なんて、いくらでも堕として来たじゃん」
「じゃあなんで?お姉さんはどうして堕ちてくれないの?他に魔の快楽に耐えるほど心の支えにできるものなんて、ある?」
淫魔たちはああでもないこうでもないと議論を始めた。どうやら私は淫魔たちにとって予想以上の難敵らしい。議論は長引き、私はその間に息を整える時間を得た。気絶しているとき以外に休息を取れるのは、淫魔界に連れてこられてから初めての事だった。このまま諦めてくれれば、と淡い期待を抱く。
「もうあれしかないんじゃない?」
片方の淫魔がそう切り出すと、もう片方がやや怪訝な表情になった。
「まさかと思うけど……」
「そう、愛だよ!愛!愛の力だよ!」
爽やかな笑顔で淫魔は言った。もう片方は、頭が痛そうにこめかみを抑える。
「また始まった……あのねぇ、神への愛だの、なんだの言ってた人間が、気持ちよくなりたいがためにそういうのを捨てちゃうところ、なんども見て来たでしょ?」
「え~、でも私たちは愛の力で人間辞めてここまで来れたし?♡お姉さまに淫魔にして貰えたのは幸運だったけど……ね♡♡♡愛には運命すら変える力があるってことでしょ!」
そういうと、淫魔はもう片方に抱き付いた。抱き付かれた方はパッと頬を赤らめると、まんざらでもなさそうに笑みを浮かべる。
「ま、まぁ……それはそうなんだけど……」
「でしょ~?♡だからさ」
淫魔はハグを止め、私の方へ向き直った。
「お姉さん、もしかして好きな人とか、いる?」
淫魔の問いかけに、どくんと心臓が鳴る。故郷の村に置いてきた許嫁の顔が脳裏に浮かぶ。隣家の少年。幼いころからよく一緒に遊んだ幼馴染。二つ上の私を姉と慕ってくれて、いつも私の後を付いてくる甘えん坊のテオ。私が神託で勇者に選ばれなければ、きっと共に家庭を築いていたはずのテオ。私がはじめて恋をして、はじめて愛した人。
「いるみたいだね♡」
淫魔たちはニヤリと笑って言う。図星を突かれて、私は反射的に顔を逸らした。
「お姉さんが好きな人のこと、もっと知りたいな♡」
「私たちに教えてよ♡その人って、男の人?それとも女の人?」
淫魔たちが私にしなだれかかってくる。淫魔たちの張りのある胸が、私の腕にむにゅりと押し当てられる。淫魔特有の甘ったるい媚香が鼻腔をくすぐり、否応なく身体が熱くなってしまう。
「ふうん、男の人なんだぁ♡」
淫魔が耳元で囁く。その吐息の感触に、背筋がゾクリと震える。淫魔は人間の感情の機微に敏感だ。私の動揺など、手に取るようにわかってしまうのだろう。質問を投げかけた際の反応を見るだけで、その答えすらも類推できてしまうのだ。
「その人はいくつくらいの人なの?♡お姉さんより年上?年下?」
淫魔が私の太ももを撫でさすり、内股へと手を滑らせていく。穏やかながら確かな快感が、私の身体に走る。質問に対して反応を見せまいとしていた集中が途切れて、熱い吐息が口から漏れる。
「年下かぁ♡……付き合いは長いの?」
「へえ♡ひょっとして姉弟だったりする?それとも幼馴染とか♡」
二人の淫魔は私を愛撫しながら次々と質問を投げかけ、私の想い人の人物像を絞り込んで行く。幼馴染で、許嫁で、かつては弟のように思っていた。気弱で、泣き虫で、でも根は優しくて……もう何年も顔を合わせていない、遠い場所にいる最愛の人。
「そっかぁ♡お姉さんはその人のこと、大大大~~~好きなんだね♡♡♡」
淫魔の甘い囁きが、私の鼓膜をくすぐる。
「人間のままで居たかったのも、その人とまた一緒に過ごしたいから……ってことだよね?♡」
「……」
押し黙る私を見て、淫魔はわぁと手を叩き、嬉しそうにはしゃいだ。
「すごい!その気持ちだけでギリギリ堕ちずにいられたなんて……!」
「本当に一途なんだね……見直したよ。お姉さん」
感心する淫魔たち。だが、淫魔に褒められても嬉しくはない。
「ねえお姉さん?♡もしお姉さんが私たちの仲間になったらさ……」
「その人のこと、私たちが堕としてあげようか?♡そうしたら、永遠に一緒に居られるよ♡」
どくんと、心臓が跳ねる。テオが二人の淫魔に襲われる光景が脳裏に浮かぶ。私と同じように、犯され、弄ばれて、屈服し……最後には、二人の与える快楽の虜となる。二人の淫魔に蕩けた顔で精を吐き出すテオの姿を想像して……瞬間、猛火のごとく怒りが燃え上がった。
「ふざけるなッ!テオに手を出したら殺してやるッ!!!」
凄まじい力が、私の身体にみなぎる。聖剣を帯びているときよりもさらに強い、なにかドス黒い力。私は淫魔たちの拘束を振りほどき、片方の首に掴みかかった。
「うっ!?ぐぅう~~っ!??」
私の渾身の力で首を締め上げられ、淫魔は苦し気に呻いた。先ほどまでびくともしなかったあの淫魔が、いまは私の腕一本でじたばたともがいている。そのまま、首をへし折ってやろうと腕に力を込める。
「お姉さん、それはダメだって!」
焦った声が背後から聞こえたと思ったそのとき、全身に痺れが走り、私はがくりと崩れ落ちた。これは、麻痺魔法……。
「げほっ、げほっ。あ~苦しかったぁ!ビックリした!」
霞んでいく私の視界の端で、解放された淫魔が苦し気に咳き込む。片方がそばに駆け寄り、介抱する。
「大丈夫!?」
「うん、すこし驚いただけ……身体がほとんど淫魔化してるんだから、淫魔並みの力が出せるのも当然だよね。油断した!」
淫魔たちはすこしの間息を落ち着けた後、顔を見合わせるとニヤリと笑った。
「でも、これでわかったね♡お姉さんがどれほどその人のことを思ってるか♡」
「好きな人を想う気持ちが人の限界を超える……なら……♡♡♡」
笑い合う二人を横目に見ながら、私の意識は深い闇へと飲まれていった……。