正月に食ってすぐ寝たら牛になってしまった話(完全版)
Added 2022-01-28 10:00:00 +0000 UTCSSに挑戦する回の2回目になります。 今回のお話は、タイトルを読んで字のごとくですが、聞いたことが一度はあるであろう、とある言い伝えにまつわるお話です。 人間から牛になるというtransfurの要素が組み込まれている他、当然私の手掛ける話のため、ふたなり及びdickgirl成分も含まれています。放屁、脱糞、射精のシーンがありますので、読む際にはご注意ください。 pixiv版との変更点は、最終盤にもうワンカット含まれている点になります。 拙作ですが、ぜひご堪能いただければと思います。 ___ 「いつもの休みと変わらねー」 つい中身のないぼやきをあえて口に出してしまう。誰に聞かせるわけでもないのだが、わざとらしく声を大きめに出そう、と思ったつもりではあった。しかし体に力を入れることができず、結果大した音量でもない声が、虚しく殺風景な自室に広がり、響くこともなく消えていく。今日だけで何度目かわからない深いため息をつきながら、お世辞にも健康な見た目とは言えない、第一印象で不摂生を察することが可能な、やや肉付きの良い、大柄な体躯を翻す。 久々になる休日は、国民であれば大体は働かなくてもよいとされているであろう正月だ。ありがたいことに今年の自分は三が日、つまりは一月三日までは仕事をしなくても良いらしい。本日はまだ一月二日だ。あと一日も休みがある。現在はまだ昼が少し過ぎたくらいなので、夜という長い時間も残されている。 普通であれば、まだ休みがあることに喜びが湧いたり、あるいはもうこれほどしかないのかと悲しみに暮れたりもしようものであるが、自分にとってはこの休みが何か特別な事象が発生しないとわかっている以上、喜怒哀楽の感情が沸き上がることもなく、至って平坦な、一種の悟りを開いたかのような態度で過ごさざるを得ないのが現状だ。 どこかに遊びに行くような行動力もなく、共に遊べるような知り合いと呼べる人脈もなく、実家に帰るような余裕もない。まあ、ご時世柄、自ら外に出歩くようなこともわざわざするものでもないわけではあるが。つまるところ、イベントのフラグなどというものは一切合切立ちやしない。というか、そんなものを立たせようとも思わない。よって、いくら休日があろうと、正月という期間であろうと、普段過ごしている休日と何ら変わらないというわけである。 ひたすらに何もできず、何もやらず、自室のベッドから動くことなく過ごしている。腹が減ったら物を食べ、催したら最低限トイレには体を動かす。それ以外のことは全てベッドの上で生活が完結していた。人に会うわけでもないなら風呂に行く必要もない。ただただ寝転びながらスマホを弄るだけの怠惰極まりない休日を送っている。 小腹が空いたので、ポテトチップスでも開けてつまむ。自らの体をいかにも重そうに、のっそりと緩慢な動作で寝返りを打ちながら。実に自堕落な時間が経過していく。 ここで、正月は実家に帰るものだということが頭を過った瞬間、とある母親の言葉を思い出した。 「食べてすぐ寝たら牛になっちゃうわよ」 幼いときに良く言われていた言葉だ。三つ子の魂百までとはよく言ったもので、昔から自分は食べてはすぐ寝るを繰り返す怠け者常習犯だったらしい。その頃から、確かに体格としては太っていた方ではあるが、牛というレベルまで体が大きくなることはいくらなんでも無いだろう、と母親の発言には真面目に取り合わずに、自らの行いを恥じることも自制することもなく大人になっていった。 脅しにしては、面白い例え話ではあるかもしれない。だが、牛はそもそもあのような牛という生き物であって、食って寝るのも当たり前、自ら望んであのような体になったわけでもない。それを自分自身と比較対照するのはお門違いではないだろうか。もっともらしくかつ正当だと自分では思っている屁理屈をこねて、勝手に憤った。 暇つぶしにしては、まあまあな思い出に浸れたな、と自分で思いながら、またポテトチップスをつまみながら、ゴロゴロと身を捩る。それにしても、あまりにやることが無さ過ぎるあまり、少しでも考え事をやめるとあっという間に眠気が襲い来る。昨日だってどれだけ惰眠を貪ったことか。しかし、性懲りもなく、そのまま睡魔に襲われるまま身を委ね、うつらうつらと微睡む。大きな欠伸をひとつ、それを契機に自分は意識を手放した… ふと目を覚ますと、そこは見慣れた、天井。またしてもつい昼寝をしてしまったようだ。まあ、ついもなにも、休日の常ではあるのだが。ああ、これは、寝てしまうな、という感覚も、眠りにつく前から既に分かっていたことではないか。そう思いながら寝ぼけ眼のぼんやりとした視界の中、寝返りを打とうとしたその刹那、体にちょっとした、違和感を覚える。 妙に、重い。そして息苦しい。ただ寝転がっているだけでそんなことがあるものか。いつもの感覚で体をねじってみようとするが、持ち上がらない。あまりにぐだぐだとした生活故に筋肉が衰えてしまったのだろうか。それにしてもたった数時間でそれほどまでに体の機能が低下するものか。まだ体が目覚めきってはいないのだろう。 ふっ、と短く息を押し出し、勢いを付けて寝返る。横向きになれたと同時に、胸元に重みと痛みを感じた。何故だろうか、誰かに引っ張られているような、根本から肉が離れていく感覚。いくらなんでも、太っているからといってこんな痛みを感じたことはない。 痛みも併せて漸く目が覚めてきた。しかし、依然として上体を起こすのには苦労している。勢いを付けても何故か体を起き上がらせる事ができない。持ち上がらないのはおそらく腹筋が衰えたせいではない。肉同士が干渉し、邪魔しているからだという結論を、自らの腹肉の感触が告げている。自分でもわからないくらいにも太ってしまっていたのだろうか。 ずり下がった布団から覗く自らの腕を見て、ぎょっとした。ここで自らの体に起こった異変に気付かされることとなった。 これは、毛? 腕が白い毛で覆われている。それも白髪になった、というレベルの物ではなく、信じたくはないが、まるで、動物の体毛のような、そんな代物だ。腕が丸ごと、高密度の毛でふさふさと覆われている。毛が生えていないところを探すことの方が難易度が高い。触れてみようと思い反対の腕を持ち上げて自らの毛が生えた腕に手を添えようとし、二度仰天。 指先が黒く、大きな爪のような硬質の物質に覆われているのだ。どうなっているのだろうか。このような手をしている覚えはもちろんのこと全くない。腕だけでなく当然手も白い毛で覆われており、指先は固いはずだが、物に当てているという触感は得られた。 この驚くべき事象を目の前にして、流石に自らの頭は完璧に覚醒した。ただ、覚醒したと言えども、次に襲い来るのは得体の知れない恐怖による混乱であった。 すぐに身に起こった変化を確かめるべく、急いで自身の体を隈無くまさぐってみることにした。 胸元の重みの理由がわかった。とても大きな膨らみが存在している。間違いなく乳房だ。手で抱えるには零れてしまいそうなほどだ。どう考えても女性の体にしか存在できない程度の大きさであるが、あまりにも体積・質量ともに申し分ないそれは、今までに自分が見たことがあるものどころか、世の中の女性の一般的知見からしても容易に逸脱している代物であることは明白だ。 女性になってしまったのかと思うや否や、自分は咄嗟に股間へと手を伸ばしていた。しかし、そこに存在してたのは女性のそれではなく、毎日見慣れている自分のそれ、男性の象徴そのものだった。ただ、数時間前の自分のものと異なる点があった。恐らく、元の自分の物と比べ、段違いに、大きいということだ。いや勃起したというわけではない。それにしても、まるで勃起したかのように既に大きい。触ると大きさ以外は、いつもの感覚と同様、だった。ほんの少しだけ、敏感に、なっている、ような、気がしないでもなかったが、見た目に理解できる異変からすれば、些末な問題であろう。今はそれどころではない。 続けて顔に触れてみる。鼻先が少し伸びているようだ。視界の目元には、視線を下に動かすことで辛うじて膨らみが見える。団子っ鼻を大きく前にも横にも広げたかのような、控えめにしてもやや動物らしい鼻先だった。 頭にも手をかざす。こつり、と手が固い物に触れた感覚を受け取った。角が生えているのだろうか。指先の爪と同様に硬質な物質のようだ。不思議なことに、頭を弱めに小突かれたかのような軽い刺激が神経を通り抜けていった。髪はどうやらあるらしい。しかし、これも以前とは異なり、長くなっている。肩先を覆う程度にはあるようだ。やや首元が暖かい感覚すらある。 ひとつのことに意識を集中させると周りの物事への意識が薄れてしまうことがよくあるが、流石に自らの体の感覚であろうはずのことを、こうして改めて測り直し、自分に落とし込む作業をするというのはなかなかに慣れるものではなく、そして驚かされるばかりである。 尻に触れてみる。以前の自分も腰回りが大きいとは思っていたが、信じられないくらいに大きい。尻の根本にはあり得ないものが存在していた。尻尾である。細いながらもうっすらと肉質を感じられ、先端に向かって手を沿わせると、先には柔らかな毛が集まっていた。ふさふさとして心地よい。触っていることを、手も尻尾も感知できており、尻の根本がこそばゆい。尾てい骨周囲に意識を持っていき、本来動かせるはずもない箇所の筋肉を動かそうと試みると、ぴくりと尻尾が脈打った。どうやら尻尾は立派に自らの体に存在できる器官であり、自らの意志でも動かせるようだ。 すっかり忘れていたが、この体つきにして自分の声はどうなっているのか、気になった自分はおそるおそる声を発してみる。 「あ、あー」 たった「あ」の二言で普段と異なる雰囲気を感じ取り、驚きで無意識に口元に手を持ってきて覆い隠す仕草を取ってしまった。 「えっ嘘だろ!?」 声が高くなっていたのだ。まるで女性の声だ。男が裏声を使って悪ふざけしている類の物ではなかった。自然に、ごくごく普通に、女性の声になっていた。平時の自分の口調では不釣り合いで、何故か衝動的に女性の口調を真似しなければならなくなってしまう位に、自分の口から発せられている事が信じられなかった。自分の体は女性になってしまったということだろうか。そうすると今度は例の男性器が場違いな雰囲気を醸し出していることになるのだが… ひとしきり触感で自らの体を調べたところで、体に起こった変化は十分に確かめられたというより、疑いようのない事実ではあるのだが、どうしても他者からはどのように見えているかを確認せずにはいられず、相変わらず動かしにくく重苦しい巨体を、なんとか必至に動かして洗面台へと向かった。 元より運動不足なのは百も承知ではあるが、それにしてもこの体は重すぎる。ただ部屋を移動しただけにも関わらず、ぜえぜえと息を切らしてしまった。呼吸をしようにも不幸にも自分に備わってしまった巨乳の圧でなかなか難しい。やっとの思いで洗面台にたどり着き、鏡に映った自らの姿を双眸へと映し込んだ時、困難だった呼吸を瞬時に止めてしまう位に、はっ、と息を飲んだ。驚きのあまり、女性の声になってから妙に甲高くなったと思われるだろう叫び声を上げることすら忘れてしまっていたようだ。 牛、だ。 視覚の認識から一拍置いて、えっ、と小さく声が出る。 鏡に映っていたのは牛だった。その顔、体はまさしく牛と思われる特徴を見せていた。牛が人間の形になって目の前にいる。さながら牛人間だ。いや、目の前に異形の生物がいるだけならまだよかった。何故ならこの鏡に映っている姿はすなわち自分自身を意味するのだから、何よりも自分が牛人間になっていることの揺るがない証拠を叩きつけるには十分だった。 顔は本来の牛よりもデフォルメを施したキャラクターのような、人間味を伴った顔立ちをしている。しかしそうは言ってもやはり牛だ。耳が横に突き出ている。耳元に力が入ると共にぴくりと動いたことが確認できた。角もやっぱり生えている。思っていたよりも短めだ。 普段見ている自分の姿よりも一回り、いや二回りほども大きな体つきをしていた。背丈だけの話ではない。太ったと言って差し支えないほどの厚い脂肪による胸と腹が大きく飛び出ており、それらを支えんとばかりに腰回りがどっしりと大きくなっている。横にも太く大きくなっている体が牛らしさを一層際だたせている。体重計に乗ったらどれほどの数値を叩き出してしまうだろうか。想像するに三桁は下らないであろう。 そして完全に意識の蚊帳の外だったが、遅れて服がとんでもないことになっていることに気付かされる。大きくなった体に合わなくなってしまったシャツは無惨にも引きちぎられたかのように裂けており、辛うじて形を保っていた首元だけが顎下に追いやられ、豊満な乳房を露わにさせ、大きな乳輪を包み隠さずさらけ出していた。それにも関わらず、代わりと言ってはおかしい話だが、乳首は大きな乳輪に埋もれており、まるでせめて自分だけは隠れておこう、といった状態になっている。 対して下はもう完全に裸同然の状態であり、恐らく、この尻と太股の圧力に耐えられず破れてしまったか脱げ去ってしまったかにより、道中か布団の中か、いずれにしても置き去りだろう。完全に生まれたままの姿の股間には、触った感覚に遜色ない程の、いや、瞳に映って見える分にはさらに大きく見える程の巨根がぶら下がっている。体色と同様の白い余っている包皮では、完全に覆いきれないほどの大きさなのか、亀頭がちらりとピンク色の顔を覗かせている。金玉も腫れ上がったのかと思わずにはいられないほどの大きさだ。自らの握り拳よりも断然大きい、と思うのだが、改めてよく観察すると自分の手は今の状態になる前よりも大きくなっている。それよりも大きいのだから、一般男性の域を軽く逸脱しているどころか体格の大きな動物の範疇でもここまで巨大にはならないのではないかと考えさせられる。 思わず、自らの逸物に手を伸ばしてしまう。 やはり大きい。鏡で見ているだけに余計に大きさを認識してしまう。金玉を下から持ち上げてみる。支える手にしっかりとした重みが感じられる。これほどに重いものだっただろうか。そんなはずはない。ぶら下がっている様はしっかりと水風船のような丸みを保っており、重力に従いその重みを下へ下へと体に伝えるように垂れている。体を軽く動かすと、振り子運動のようにゆさゆさと重々しく揺れ動く。たっぷりと精子を溜め込んでいますと言わんばかりの張りと艶が感じられる、実に柔らかそうな見た目だ。ついまじまじと見つめてしまう、見つめざるを得ない代物だ。自らの睾丸をきれいだと思うことは今まででは到底あり得ない話だからこそ、眺めることができてしまうのもあるだろう。 しかし、確認もここまでだ。 目の前に広がる想像の範疇を超えた現象である「鏡に映る牛人間」をひとしきり観察した後、これが自分の今の体なのだと頭に過った瞬間、嫌でも脳が問題を認識し、ふと我に返る。 どうしてなのか。なぜなのか。いやそれよりもこれからどうしたものか。 どうにも半端で不格好なので、首に掛かっているシャツの残骸を頭から抜き取るように脱ぎ去る。一糸纏わぬ姿が眼前に現れる。というか、この姿のままでは今までの服で着られるようなサイズなどない。裸で過ごさなければならない。だが、牛ならいつも裸ではないか。いや、それだと外出できないではないか。流石に出かけるのに全裸で出るわけにはいかないだろう。牛としてもだ。この限りなく巨大な乳や逸物をひっさげて歩いていたら公然猥褻の度も越している。待て、牛だったら別におかしくないのでは。牧場にいる牛が猥褻物陳列罪に問われることなどないのだから。だとしても、自分は完全に牛ではない、牛人間だ。牛人間は人間の罪状が適用されるのだろうか。そもそも牛人間とはなんなのか。存在していいのだろうか。ここに存在しているのだから、今更それを気にしていても仕方のない話ではあるが。牛も働かねばならないのだろうか。正月が終わればまた出勤する必要があるのだろうか。牛人間になったことを報告する必要があるのだろうか。というより牛は牧場で飼われていることが仕事なので、特に働きに出る必要は無いのではないか。乳を絞られるのだろうか。この大きさであれば確かに牛乳を絞れそうだ。違う、自分は男だ。男の体から母乳が出るはずがない。男性器だってついている。では種付けをするのが仕事だろうか。たくさんの女性と交わるのだろうか。いやそもそも自分は男性と言えるのだろうか。中途半端な自分は仕事ができないのではないだろうか。そうすると肉が削ぎ落とされるだけだろうか。牛肉がどれくらい自分の体から得られるのだろうか。とんでもない、自分の体が切り捌かれる姿など想像したらぞっとする。人間に会う時は肉が目当てではないか確認しなければ。肉牛になることはなんとしても避けねば。 混乱しているのは間違いなかったが、次から次へと浮かんでは消える心配事への思考内容が、これから人間社会で生きていくのにどうしたら、というよりは、牛としての心配へと興味が移っている自分がそこにいた。徐々に牛人間であることを脳が受け入れているかのような、順応してしまっている錯覚を、何度かまるで他人が聞いて理解していくかのように認識してしまった。牛であることが今日に始まったことではないかといった具合に… 取り留めのない問答を一人脳内で繰り広げているうち、突如自らの尻に、むずむずとした感覚が生じる。こみ上げてくるような、もしくは迫り来るような、何かに満ちていく感触。 催したのだ。 こんな非常事態でも、お構いなしにトイレに行きたくなる物なのか。この感覚は牛人間になった今でも間違いない。大便が出口に向かって動き出しているのだろう。それにしてもタイミングが悪すぎる。今はそれどころではない、とも思いたいが、あれこれ考えるのはとりあえず後に回し、目先の問題となった便意を解消するべく、トイレへ向かおうとした、正にその時。身に起こった変化は外見だけではないことを思い知らされることとなった。 ブッ ブオオオオォォォォッ 腸が活発な動きを始めたことを知らせるかのような轟音が尻から発せられた。肛門を震わせ、尻肉を揺らすほどの豪快な放屁だ。これほどの大きな屁は未だかつて放出したことがない。自らの体から噴出したとは想像できない規模だ。隣の部屋にも聞こえたりしていないだろうかと頭の片隅に過る程度には自分でも驚いている。それと同時に、ここまでの屁を放り出すことができた感触に、多少の気持ちよさを感じてしまっていた。何者も気にせず、遠慮なく放つことができたという、半ば安心感にも似たような心地よさだ。わざわざ臭いを嗅ぐこともないのだが、勝手に鼻へと漂ってくる悪臭は、普段の自分の物よりも一段ときつい臭いをしているのではないかと思われる。人間の体の時よりも牛に近いと、こういう部分も牛と似通ってくるのだろうか、ほっと一息ついたところで、第二陣が押し寄せてくる。 ブスゥ プウウウゥーーー プッ 先ほどよりは大きくない屁だった。異なっていたのは、間髪入れずに襲いかかってきた、それ。トイレに行こう、という自らの意思に反する、自らのものであるはずのこの身体が反逆を企てたとも言える。思考と行動が一致していない、という感覚がこんなところに現れるとは思ってもみなかった。 つまるところ、トイレに駆け込む間もなく、放屁の後すぐに、勝手に体が排便を始めたのである。 ミチッ ブリュッ 間に合わない。瞬時にそう頭では理解した。しかしここで脱糞するのはいけない。人間の尊厳が奪われる。とはいえそうは思っていても、無情にも我が肛門は閉まる気配を見せず、我慢というものを受け入れてくれそうにない。自らの尻は完全に排便する体制を整えている。 徐々に肛門から顔を覗かせる便塊。速度を落とすことなく、今にも尻から滑り落ちようとしている。 「え、やめ、止まれ、んぉっ」 止まってくれ、という惨めな懇願も受け入れられることなく、無情にも次々と尻の出口へと送られてくる大便が、ついに放たれ、後へ続けと言わんばかりに産み出されては地に落下していった。ぎちりと密度高く詰まっている便は、いかにも重量があると主張する鈍い音を立てて床と衝突していく。ずろろと連なっていた便も、重力には敵わず千切れては床へと着地する。 ブリリ ボトン ボドボドッ 「ちょ待、んっ、ふぁ」 自らの声が女性の物になっていることもお構いなしに、口からは自然と、言うことをまるで聞かない体に言い聞かせるかのように言葉が出てくるのだが、排便を促進するべく強ばる体の息みにかき消される。 しかしながら、出る。まだ出る。どんどんと出てくる。この体のどこにこれほど溜め込まれていたのか。本当に牛になってしまったのではないだろうか。この体では当然と思わせられるような量。大便が自らの後方に、為す術もなくまさしく山のように重ねられていく。 ムリムリムリッ ヌチッ モリモリモリ… 「あんっ、んくっ、んんぅ」 やめなければならない、はず、なのに。どうしてだろうか。この状況に、流されてしまっているのか。それとも。 止めどなく排出され続ける大量の大便が肛門を擦り上げていく感覚がどんどんと心地よく感じられる自分がいる。最早トイレに行きたいという願望はどこかへと追いやられてしまっていた。段々と脳内の思考は排泄する行為のことで満たされていくように塗り替えられていく。 ああ、うんち。気持ちいい。我慢できずにうんちしてしまっている。でも止められない。さっぱりする。まだお尻はむずむずが止まらない。まだまだ出せそうだ。早く出したい。もっと出したい。出し切ってしまいたい。お腹の中をすっきりさせたい。 ニチニチィ ドサッ はぁっ、と安堵と快楽が入り交じった艶めかしい溜息が口から漏れ出てくる。一方で暖かくも柔らかさを伴った、長大な糞が放り出てくる。力まずとも、というよりは体が自然と腸を空にしようと内容物を自然と捻り出そうとしている。腹に、尻に意識が集中される。肛門には蕩けるような熱を感じている。 その時、とろり、と体を何かが伝う感覚を得た。冷たい。どこだろうか。自分は今うんちしている最中なのだ。集中できなくなると気持ちよくなれない。そう思っていたが、視線を落とし、体の前方へと意識を傾けることで、全てを理解した。 自らの陰茎が濡れて艶やかにきらめいている。カウパー腺液、いわゆる先走りだった。すっかりそそり立っている自らの陰茎は、鏡でその目に納めたとき、布団の中で触れて確かめたときよりも一段と大きく、両手では収まりきらないほどに膨張し、断続的にぴくりと動いている。細かく動く毎に、こぷりと鈴口から露を吐き出し、反り返った竿を伝って床へぽたりぽたりと滴を落としている。この光景を見て、自分は刹那的に状況を理解できた。 これほどまでにうんちすることは気持ちがいいことだったんだ、と。 動物はいちいち排泄するのに断りを入れることもしない。したくなったらする。場所だって気にしない。したくなったその場がトイレである。それでよかったのだ。この体だって、うんちをしたかったからすぐしただけなのだ。なにも悪いことはない。改めて考えると馬鹿馬鹿しいほど当然のことだと、そう思えた。 ムリリッ ブポッ ビュクッ ビュルル ビュッ ブビィ プスウウゥゥゥ 最後の一本が、尻穴から勢いよく放出され、もう出せる物は出し尽くしたぞという合図の放屁を最後に、牛人間の最初の排泄行為は終わった。肛門からだけではなく、ついには固く張った陰茎からも精液を勢いよく迸らせた。一度の放出では足りないのか、二度、三度とその砲台をびくんびくんと上下させながら吐精し、まだどくどくと発射口から生臭い液体を垂れ流し続けている。 下半身を駆け巡った後、一気に脳天へと至った快楽に、緩んだ口元から唾液を滴らせながら身を委ねている自分があった。全身がぴくぴくと痙攣するように震える。足下がおぼつかない。まるで太股をすり合わせるようにがくがくとさせているのが自分の体ながらにわかった。はっ、はっ、と乱れた甘い吐息を少しずつ整えるように吐き出す。 やってしまった。こんなところで。 うんち、してしまったんだ。 未だ熱を持っている、じわりと汗が滲む顔を上げ、背後に広がる悲惨な光景へとおそるおそる視線をやった。 おびただしい量の茶色の山ができあがっていた。暖房もない冬の寒さが広がる洗面台の下、出したばかりでほかほかであると主張する湯気が見えている。立ち上ってくる臭気がもわりと鼻にまとわりつく。これほどの悪臭を、自分が排泄したものからは嗅いだことがない。牧場の臭いに近いだろうか?いや、あのような自然に溢れた動物的な臭いともまた異なる。堆肥は処理をする前だとこれほどの臭さだろうか。かといって、バキュームカーのような下水を凝縮したような臭いともまた趣が異なる気もする。というより、わざわざ臭いを分析する必要などないことに気付く。臭い物は臭い。驚くほど臭い、それだけは間違っていなかった。瞬間的に眉間にしわを寄せてしまう。それはこれほど大量の大便がなせる業なのか、はたまたこの自分の牛人間になっている体が影響していることなのか。答えはすぐには出ないが、眼前にそびえ立つ糞の山は依然として筆舌しがたい臭気を発し続けている。 顔をゆっくりと近づけてみる。顔でもはっきりと感じとれるほどの、不快なじんわり湿った熱を未だに帯びている。臭いも遠くからふわりと届くものよりも断然濃い。うぐっ、とうなり声を上げてしまった。しかし理由はわからないが、我慢できないほどに忌避するべきという感覚が、反射的に起こり得る体からの危険信号が、明白に少ないと本能でわかっている自分がいた。それはそうだ。牧場の牛だって、普段からあの糞尿に塗れた牛舎で日がな生活しているのだ。この臭いに耐えられないようでは生きていけない。自然界では汚物がすぐそこに存在することなど当然じゃないか、と。もちろん、進んで汚したいわけではないのだが。 山の最下部はゴツゴツとした拳大の糞が床に叩きつけられてもなおその形を保って転がっている。その上に重なるように、南国の大蛇と見紛う位の太くも長い糞が数本、のたうち回り鎮座していた。表面は艶やかで、ぬらぬらとした妖しい光沢を放っている。 一方で、鏡の下、洗面台の回りはやや黄色みを帯びた白い粘性のある液体で溢れていた。自らが排便中にも関わらず射精したという証拠が広がっているのだ。水溜まりのように広がる精液は、人間にはとてもこのような量は出せないと一目でわかった。1.5リットルのペットボトルを故意に逆さに持ち上げでもしてしまったのかというレベルだ。壁や床にねっとりとへばりつくそれは、むせかえる大便臭の中でもしっかりと知覚できる、また異なった悪臭を放っていた。壁に放出されたものが、重力を受け、ゆっくりと滴り床に広がる白濁にたどり着く様子が現在も確認できた。自分の股間に目をやる。一番膨張していた時と比べるとそれほどでもないが、やはり改めて確認しても大きい。力なく頭を垂れている先端は、自我を持っているかの如く小さく震え、とろりとまだ出し切れていない精液を垂らしていた。 肌寒い感覚が戻ってくる。体の火照りが収まり、ふぅ、と小さく溜息をつき、意識を整える。やってしまったものは仕方がない、急いで片づけを行う必要がある。とりあえずこの体のことについて考えるのは、またもや後回しだ。可及的速やかに対処すべき問題が、事前から事後に移っただけで、眼前に変わらず存在する惨事をどうにかするべく、作戦を立てることにした。 ガサッ パリパリ ゴソッ ザクザク ポテトチップスを摘まみながらゴロゴロと横になるこの瞬間がたまらなく幸せだ。非常に不本意な形ではあったが、一仕事終えたあとのごろ寝は心地がいい。運動したからか、無性に腹が減っている。だが料理を行う気力はないので、ひたすらにポテトチップスを噛み砕いていくことにした。このポテトチップスもかれこれ5袋目だ。少しずつ消費していく計画で蓄えていたものなのだが、どうしても食欲に負けてしまった。また通販で頼んでおかなければ。 片づけもそれはもう大変だった。そもそもこの巨体を動かすだけでも苦労した。少ししゃがんで立ち上がってをするだけでも息を上がらせ、脚が無理だと語りかけてくる始末。 こんもりと積まれた糞の山はどうにも一度に運ぶこともできなければ、トイレに流すことも敵わない。少しずつ割り箸で崩していこうと思ったものの、その質量故に箸もなかなか通ってくれない。十数往復をかけてやっと全てを下水に流すことができた。 しかも問題は糞だけではなく、精液も処理する必要があるわけだ。こればかりは仕方がないので、鍋と玉杓子を使って掬っていった。この鍋と玉杓子は流石に洗って使おうとも思えないので別の物を買おう。いつまた己の粗相を処理する必要があるかわからないので、専用器具としておくことにした。 というわけで、自分がしでかした失態という名の災難を辛うじて退け、至福の時間を過ごすに至る。今日はもう日も暮れたどころかすっかり夜も更けてしまっている。後はもう何もしない予定だ。このまま寝転がって過ごそう。この巨体では動かすことも困難なのだから。 いつもならベッドの上で過ごすのだが、この体毛に覆われた体では多少暑く感じてしまう。ベッドに乗り降りするという動作すら面倒に感じてしまう。床に肘をつきながら巨躯を横たえている。だらりと体から垂れて地面に密着しその形を歪める乳。そして睾丸。これほどの大きさに最初こそ驚きはしたが、慣れてしまえばなんのことはないのかもしれない。むしろ牛ならばあって当然とさえ感じる。何らおかしいことなどないのだ。 ブビィッ プスウウゥゥ ポテトチップスを口に運びながら、大きな空砲一発に、高熱のガスを噴射する。いつだってどこだって構わない。屁をしたくなったからする。それだけのことだ。決して広くはない居間に、発酵と腐敗がない交ぜとなった、何とも言えないすえた香りを含んだ濃厚な硫黄臭が漂っていく。 モリュッ ブチチィ プリプリプリ ドチャッ 先ほどの一連の流れで心得ている。肛門をこじ開けようとする、大便の圧力。抗おうとするのは無意味だ。したくなったときにはもう、体は排泄することへと全神経を集中させているのだ。糞をしたくなったからする。それだけのことだ。生き物なら当然だ。だからするのだ。ああ、心地よい。出る。うんち。たくさん出てくる。うんちが出る。出ている。背後にはまた自ら迷わず出したうんちが積もっていくことだろう。でも今日はもう何もしたくない。片づけるのは明日でもいいだろう。困るのは自分なのだし、部屋が悪臭で満ちるくらいのものだろう。先ほど放出した屁の臭いを上書きするかのように、強烈な便臭が居間を支配していく。 尻の穴を捲り上げるような、大きな糞の擦れる刺激に、またしても愚息が膨張していることがわかった。どうにも排便の快楽が体に刻み込まれてしまっているらしい。こんなにも気持ちいいことなのだから、仕方がない。 少し、弄って、みてしまおうか 魔が差して、己の陰部を注視する。白い毛皮に覆われていた亀頭が露わになり、ぬめりを帯びている。人智を超えた量を排出したというのにも関わらず、その活動は衰えることなく、どくん、どくんと脈打っているのが見える。 思わず自分の陰茎を握る。暖かい。手を通して拍動を認識する。触っただけでも電撃が体中を駆けめぐったかのように、くすぐったさが全身に響きわたった。 躊躇無く、至極自然に、自分は手を上下に動かしていた。構いやしない。また出したところで、明日うんちと一緒に片付ければよいのだ。上に、下に、手をゆっくりと動かすその度に、言い表せない快感が体を支配していく。ちんちんが気持ちいい。うっとりと自らのちんちんを愛でるように撫でていく。無意識に大きな胸へと手を伸ばしていた。もにゅり、と掴んでみる。柔らかい。弾力が手に心地よい。乳輪をなぞる。体がびくんと跳ね上がる。頭の中が、突然白くなった。なんだこれは。もっと。もっと味わいたい。ほんの少しだけ顔を覗かせている乳首を、指で掘り起こす。あっ、と嬌声が漏れ出す。だめだ、これはまずい。ちんちんからは透明な我慢汁が垂れ、床にシミを作っている。腹も、陰嚢も丁寧に愛撫する。痺れるような心地よさが脳に襲い来る。我慢ならない。ちんちん。ちんちん気持ちよくなりたい。出したい。どうなってしまうんだろう。ちんちんもっと触りたい。出る。出ちゃう。ちんちんから。しあわせ。きもちよくなっちゃう。あっ。ちんちん。ああっ。 盛大に部屋中を精液だらけにしながら、ぷつりと意識が途切れてしまった。すごい。こんなことになってしまうなんて。 息を荒くして、ぼやけた視界の中、混濁した意識で自分は思った。 牛になったが、何に困ることがあるのか。牛でいいじゃいか、と。 こうして一人の男性は、古くから伝わる戒めの言葉を体現し、牛として自由気ままに脱糞し自慰をして過ごすようになったのだった。