Extra chapter
「有栖、あった?」
「いや、無さそう。こうなったら口を割るまで絞り上げようか」
無数のファイルが表示されたパソコンのモニターを眺めながら、有栖は棗に、努めて冷淡に答えた。
「・・ぅあえぇ!!」
冬のある日、とあるアパートの一室に、3人の女子大生が集まっていた。
ただその内の一人は、スーツの上から厳重な拘束をされ、ベッドに転がされている。
その縛られた彼女に向って、棗は邪悪な笑みを浮かべて語り掛けた。
「仁紫子先輩、あの合宿であんなことをした犯人、あなただってわかってるんです。結構雑な裏工作でしたね?私たち以外には合宿の連絡が回ってないこと、最後の最後まで姿を消していたこと、そして何より、実はお金にめちゃくちゃ困っていたこと・・あの後色々聞き込みをして、確信したんです。だからこうして、”仕返し”に来たってわけですよ。就活帰りに、酒飲んで、夜遅くに帰宅・・。今日は絶好のチャンスでした。」
「うぅ・・」仁紫子は観念したように、脱力してうなだれた。
「いや、この際データはもう良くない?ほら、核兵器を持っている国同士が戦争できないように、うちらも同じような状態になればいいじゃん。」
有栖が腕組みしながらそう答えた。その提案に、棗は目を輝かせて、頷いた。
そして二人は、縛られた仁紫子にカメラを向ける。用意してきた道具をチラつかせ、"この後"に何が行われるかを仄めかせる。
その顔はハッキリとおびえていた。今まさに、自分がしてきたことの全てが返ってくることを理解したのだろうか。
それを見届けてから棗は、カメラに映らないところから、陽気に語り掛けた。
「お、繋がりましたね!お待たせしましたぁ、皆様、今日はー♪」
ー完
※過去のストーリーはこちらです☆

プロローグ 「・・・うぅ~ん・・」 家計簿代わりのExcelファイルを表示したまま、芳須 仁紫子(はす にしこ)は長いうなり声を出した。 水泳部部長にして、経済学部経営学科の3年生。明眸な顔立ちと黒縁眼鏡が相まって、非常に知的な印象を醸し出すが、その実は根っからの・・ズボラ人間である。 今の格好も、意味不明なイラス...

Chapter01 植谷 有栖(うえだに・ありす)はスマホをいじりながら、アパートの前で、ある人物を待っていた。 その人物と有栖は同じ大学の同じ水泳部であり、学年も同じ大学2年生である。共に今日から夏合宿を控えているのだが、部長からの指示で【現地集合】と伝えられたため、車を持つ有栖と一緒に向かうことに決めてい...

Chapter2 着いてみれば、そこは手入れの行き届いた学校であった。 廃校になって間もないのか、普通に夏が過ぎれば生徒がやってきそうな雰囲気である。 有栖と棗は、荷物を取り出し、遠くに見える廃校舎を目指した。 「おっすおっすー」 そんな二人に後ろから声を掛けたのは、部長・芳須 仁紫子(はす にしこ)であった。 ...

Chapter3 同好会レベルの部活だが、この日の練習は飛び切りハードであった。 部長の芳須がネットで拾ってきたメニューの受け売りらしいのだが、どうやらそれは【エリート】が取り組むレベルだったらしい。異常にキツい。 そんなメニューを持ってきた芳須はちゃっかり、プール外から指示を出す係に徹していた。 ー1時間も...

Chapter4 (あ・・あれ・・?いつの間に私、寝ちゃって・・) ぼんやりした意識の中、有栖は自分がいつの間に眠っていたのかを思い返していた。 ーハードな練習が終わって、そしたら部長が、 「ハードなトレーニングの後は、ストレッチをやったらいいって聞いた!こんなアッツイところでやったらお尻火傷するから、日陰で涼しい...

Chapter05 「え、そろそろ拘束が解けそう?そいじゃ、ちょっと次の準備にいってきま~す☆」 そう言い残すと、”配信主”はカメラからフェードアウトし、部屋を抜け出した。 ー一方、有栖と棗の努力は、数十分の苦闘の果て、実ろうとしていた。 「もう少し・・!」 「ちょっとくらい血が出ていいから、一気にいっちゃって!」 ...

Chapter6 「(ひ・・ひとの身体って、こ、こんなに重いのね・・・)」 ひと仕事終えた"配信主"は、額を伝う汗を拭いながら、そんなことを考えた。 「(自分がされるのは超イヤだけど、こっからの仕打ちはウケる人にはとことんウケるから、稼ぎどきね!!)」 そして冷たい飲み物をぐいと流し込んだのち、再び覆面を装備して、二人...

Chapter07 ギチギチ、ズリズリ。 何かが軋む音と、衣擦れの音が倉庫内を反響する。 ー目覚めてから再び、二人は強度を増した拘束に抗っていたのだ。 胸の上下、膝の上下、足首、手首。そして、口も厳重に封じられていた。中には何かが詰め込まれているらしく、二人は口内に異物感を強く覚えていた。 ーガタン。 不意に扉...

Chapter08 「何か気付くことはない?ー例えば、いつの間にお二人は素足になったのかな?」 機械音声が二人に問うた。 確かに足をみると、さっきまで履かされていた靴下が、いつの間にか消えている。 ーま、まさかー 二人がそう思った瞬間、覆面の人物が行動を起こした。 「もしかしたら、クセになっちゃうかもよ♪」 そう...

Chapter09 「ふぅ・・すぅ・・」 「んん・・」 ―数十分後。 屈辱的な仕打ちと、遮られる呼吸によって、有栖も棗も明らかに疲弊し始めていた。 「う~ん、ちょっとずつペースが落ちてきたねぇ・・・」 ”その人物”は、顎を撫でつつ、別室でモニターを見つめていた。それは、投げ銭されたことを示すポップで埋め尽くされている。 「...

Chapter10 「はいはーい、お待たせしましたぁ!ちょっと準備に手間取りましてぇ・・」 覆面の人物は、カメラにそう語ると、画角を下に向けた。 「こっからは、長時間やるのはどうしても無理なスペシャルコースなので、目に焼き付けるようにご覧くださいねぇ!」 ーカメラの先に居たのは・・ 鼻口を完全にテープで塞がれた有...