『あの女、ユキトに色目使いやがって・・!』
仕事から帰ってすぐ、ノースリーブのドレスシャツのまま、麻子(あさこ)はキーボードを叩いていた。
ユキトとは、彼女の意中の人である。そんなユキトに言い寄る女がいるー
いや、実際の所、いないわけないと思ってはいた。だって、とても魅力的なヒトなんだもん。背が高く、切れ長の目で、スタイルもよく、優しくて、仕事もできる。惚れないわけないじゃん。
・・・そんなユキトに、人前で堂々と、そしてべたべたと肩を寄せる忌々しい女。大通りを外回り中に偶然それを見つけてしまった麻子は、退社後怒りに任せてその女を『排除』する方法を探していたのであった。
あらゆるリスクを無視し、彼女は深層ウェブと言われる世界に辿り着く。そしてそこで、『撤回屋』なるものを生業とする人間のサイトを発見する。
説明を読めば、ターゲットに対し、あらゆる手を用いてどんなことからも手を引かせる。そう書いてあった。これしかない!麻子は盗み撮りしていた女の写真を添付し、慎重に依頼を出すのであった。
ー同日同時刻。
『あの女、年増なのにユキトを狙うとかいい度胸だわ・・・!』
外出から帰ってすぐ、勝負服であるノースリーブのニット姿のまま、自室にて真衣(まい)はキーボードを叩いていた。
彼女もまた、ユキトに思いを寄せる女の一人。当然、彼のSNSも追跡している。そして、彼の写真を延々と眺めていたとき、一枚の写真が目に留まった。
ユキトと腕を組んで、カメラにピースを向ける一人の女。場所はどこだろうか。背景から察するに、どこかのカフェのテラス席だ。勝手に彼をタグ付けして投稿したのだろう。付き合ってるとかなんとかいったふざけた既成事実を作ろうってわけ?冗談じゃない!腹立たしい!
怒りと興奮に任せ、彼女は深層ウェブと言われる世界に辿り着いた。そしてそこで、『撤回屋』なるものを謳うサイトを偶然にも発見する。
それが言うことには、どんな相手でも、そしてどんな内容でも、証拠を残した状態で絶対に手を引かせる、とあった。これだ!真衣は問題の写真からユキトを消したものをフォームに添付し、邪悪な笑みを浮かべながら依頼を出すのであった。
ー数日後。
麻子と真衣は、同じベッドの上に並んでいた。ただし、全身はテープで厳しく拘束され、顔も目から下は完全にテープで塞がれている。
『どちらかが参ったと言うまで、終わらないよ。その上で、ユキトくんだっけ?彼から手を引くと誓う動画を撮影させてくれたら、家に帰してあげる。それまでは何度でもこれを繰り返すからよろしく。・・・しっかし不思議なもんだね。同じ時間に、同じ人間を巡り、手を引かせようって女が揃って依頼を出してくんだもん。どっちの執念が勝つかな?見てて面白いよ。』
『(この女には絶対負けない・・・!早く降参しろ・・・!!!)』
極限の状況下、二人は偶然にも同じことを考えているのであった。
ー完
スペシャルサンクス:GPTmarkⅡ氏