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倍々世界27(終わり)


 太陽系第三惑星、地球。


 緑と海に覆われた水の星は、今や原初の星のように岩石と溶岩しかない死の星に変わり果てていた。側面に星の形がいびつになるほどの大きな穴が開いており、そこからは星内部のマントルが溢れ、散らばった瓦礫はいまだ宇宙空間にその軌跡を残していた。


 その星が、ゆっくりと闇に包まれた。影が覆ったのだ。直径12000kmを超える巨大な星を、丸ごと覆っても余りに余りある、巨大な影が。そして、その影を作っているのは――――




「ええと……地球……多分これ、で合ってるよな……?」




 地球よりはるかに巨大な姿となった、育人だった。







 「ちっちぇえ……」


 育人は胸元あたりで漂うピンポン玉サイズの地球の周りに手を添える。すでに太陽サイズの育人にとって、地球はちょっとつつけば崩れてしまいそうなほど脆弱だった。


「結構時間かかったからなあ……」


 空気のない無重力の宇宙を育人は漂うことしかできない。適当な星でもあれば蹴って進むこともできたのだが、月を破壊できるサイズになっていた育人が使えるような星はなかった。それでも現在育人の胸元に地球があるのには理由がある。


「地球に届くくらいでかくなるのに、何日かかったんだろうなあ」


 月と地球の間の距離は、約38万キロメートル。ロケットでも3日。人が歩くなら11年かかる距離。だが、もう使う人間もいない、ただ経過時間を示す概念となった暦での9月7日。育人が成長を始めてから50日後。月を粉々にしてから約一週間。身長100万kmを超える大巨人となった育人にとっては、簡単に手の届く距離だ。

 育人は巨大化しただけで、長大な距離を無意味なものにしてしまったのだ。


「…………」


 地球には触れないように添えている育人の手。もちろん触れたらそのまま破壊してしまいそうなのもあるが、周囲をふわふわと漂う白い精液から守る意味もあった。


(流石にヤリすぎたか……)


 月を破壊しても育人の性欲は収まるどころか昂り続けていた。ガチガチに勃起する巨棒をただただ快楽のために扱く。惑星を破壊できる量の射精をしても、またすぐに勃ち上がるチンコ。地球に近づくまでの数日間、育人はただ本能のままにオナニーをやり続けて、周囲に溢れた精液はそれこそ星のように輝いていた。太陽サイズの育人の精液は地球なんて平気で飲み込んでしまうので、それが地球に触れないように手で守っているのだ。

 時折近づく精液を避けながら、育人は地球を見つめ続ける。人間どころか人類の生み出したものの痕跡すらもうそこにはない。けれど世界の全てが潰れて焼けて溶けてしまって、元が何だったかわからなくても、確実に今そこにある。育人は親指と人差し指で、慎重に、それこそシャボン玉に触れるかのように優しく地球を摘まむ。それでも北極と南極だった場所は大きく凹んだが、一瞬でつぶれることはなかった。育人は飴玉のようなそれをゆっくりと顔の方まで近づける。

 



「じゃあな……俺の、世界。」


 育人がおもむろに口を開けた。直径2万キロを超える闇の穴に、ぽい、と地球が放り込まれる。育人はそれをかみ砕きもせずに、ごくり、と一息で飲み込んだ。


「…………はは。飲んじまった……」


 ゆるく口角を上げながら、育人は手についた北極と南極のかけらをぺろりと舐める。そうしてその手で自分の腹をゆっくりとさする。こぶ一つが星より大きい腹筋の向こう。胃液の海に沈んでいく地球はあっという間に溶けて育人の一部となっていくのだ。それを想像して、手を挟んで腹筋の反対側にあるいまだ勃ち続けるチンコが一層固くなる。


「やべぇな……俺……地球食っちまったぜ……」


 地球の何百倍もあるチンコからどぶどぶとあふれ出る我慢汁。異様な興奮も相まって、その瞬間はすぐに訪れた。


「っっっ!!! いっく……ぞっ!!!!」


 宇宙空間に大量の精液が放出される。今日ですらもう何十回目となる射精だが、量も勢いも全く衰えない。むしろ増していくそれは育人がいまだ大きくなり続けているのを示していた。一日のどこかで巨大化していたのが、一日というものが無くなって、常に緩やかに巨大化を続けていくのだ。


 24時間後、今はなき暦でいうなら9月8日。そのとき育人は太陽の倍ほどに成長しているだろう。


 そこから一週間もすれば、育人はその場にいながら太陽に手が届く大きさになる。そのころには太陽は飴玉より小さくなっているはずだ。同じように一口で食べてしまえるだろう。


 さらに一週間で、育人は太陽系より大きくなる。既に太陽のない太陽系だが、育人の放つブラックホール並みの重力で周囲の惑星も育人に墜落し粉々になる。太陽系外へ秒速17kmで逃げていく、人類がいた最後の証のボイジャーも、その二日後には光より早く成長する育人に飲み込まれる。


9月30日というものが存在していれば、その時育人の身長は10兆キロを超える。もう質量は計算すらできない。恐ろしいほどの重力があらゆる星々を引き寄せているはずだ。


 倍々に大きくなっていく育人は、そこから一か月もしないうちに星雲よりも星団よりも大きくなり、銀河系を内側から突き破るほどデカくなる。


 そうして12月31日―――よりもずっと前。11月6日。育人の巨大化が始まってから110日後に、育人はついに宇宙より大きくなる。





 膨張する宇宙よりさらにでかくなった育人が、宇宙が、世界が、どうなるかは―――

















「そういや今日変な夢見たんだよな」



















「なんか神様が身長伸ばしてくれるって夢」

















神のみぞ、知る。





















―――ばいばい、世界。


Comments

コメントありがとうございます! 最後地球を飲み込むところは結構前からやるって決めてました! もう観測する人類もいないんですが、もし観測する地球外生命体がいたとしても育人の成長はもう光より早いので認識する前に滅びてそうです。 長い間お付き合い有難うございました!

ichiya / ichiarrow

ああ、ついに地球をゴクリと丸呑みにできるほどの巨大さに……! 地球を食べて、胃袋の中で消化されていくのを想像して 興奮しちゃうところ萌えました! やっぱり自分の強大さを認識すると興奮しちゃうんですねぇ(*´Д`) そこからも日に日に倍々になっていき続けることでしょうし、 そのうち人類が観測可能な宇宙の範囲よりも大きくなって 全てを飲み込んでいっちゃうんでしょうね~……!

曹達(ソーダ)


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