8月11日
午前2時。明かりの消えた体育館の中心で一人の男が寝息を立てていた。いびきのようにうるさくはないものの、静かな体育館内で身長5メートルを超える育人の呼吸はそれなりに響いた。それを篠田は、一人の隊員とともに2階から監視していた。
「いつデカくなるんでしょう……」
「わからん。昨日は知らないうちだったからな」
篠田たちの監視の目的は、いつ、育人が成長するかの調査だった。8月9日時点で約3メートル半。その夜はさすがに監視はしなかった。流石に誰も次の日育人が身長5メートル半まで巨大化しているとは思わなかったのだ。いつ、どうやって大きくなるのか。同じ失態を繰り返さないため、育人が寝入ってからすぐに隊員たちは監視体制に入った。1階、2階ともに三方向から、暗視機能付きビデオカメラによる記録も行っている。
(……既にこのサイズでも、十分デカいってのに……)
明かりがないといっても、夜目に慣れれば十分動き回れる暗さ。ありったけの運動マットを広げた上で寝る育人の姿は肉眼でも十分に観察できた。当然のごとく服などなく、申し訳程度に腰元に食堂から外されたカーテンがかけられていたが、それはパンツほどにも育人の身体を隠せてはいなかった。そしてその身体はとんでもないほど筋骨隆々としている。たとえ同じ背丈だったとしても、軍で育人の身体にかなう者はいないだろう。胸部装甲とでもいうべき大胸筋は恐ろしいほど発達しており、寝た時の厚みは隊員の腰の高さを軽く超える。それが一つ一つのこぶがレンガよりもでかい腹筋とともに、呼吸によって上下している。もはやこれだけでちょっとした重機のようだ。極太の腕は男二人を束ねたよりも太く、脚はもはや人間が比較対象にすらなりえない。上から下まで筋肉がこれでもかとついた身体だ。
(ったく……)
篠田の心にちりっとした熱がともる。男として軍人として、強さへの憧れは少なからずあった。目の前の育人は、年下ながらその最もたるところだろう。というか、今世界中探しても彼以上の男などいるわけがない。ごくり、と篠田が唾をのむ。
(じゃなくて、なんで俺は……)
ギシッ……
突然何かがきしむような音がして篠田は頭を切り替える。「おい」と隣の隊員に声をかけると、気づいている隊員もこくりと頷く。ギシ、ミシ、という音は、明らかに体育館の床に寝ている育人から響いていた。
「……でかく……なってる……」
隊員の口からポロリと漏れた言葉。信じられないことに、そもそも育人に関しては信じられないことだらけなのだが、隊員たちの目の前で育人は目で見えるほどの速度での巨大化をしていた。ググッ、ミシミシギシギシと不穏な音とともに育人の身体が膨れ上がっていく。呼吸とともに大胸筋が上へ上へと持ち上がり、脚はさらに太さを増しながらその長さを伸ばし、踵が運動マットの外に出ても体育館の床を擦りながらさらに遠くへと伸びていく。
肩幅も僧帽筋をさらに発達させながらメリメリと広がっていき、肩から繋がる腕はマットからはみ出したときに重そうな音を立てて床にぶつかった。それでも成長は止まらない。5メートル半だった身長が、6メートル、7メートルと巨大化し、それとともにミシギシという音も大きくなっていく。
「昨日の成長量、もう超えてます……」
隊員の声ももう篠田の耳に入らない。心臓はバクバクと早鐘のように鳴っていた。もう敷き詰められていた運動マットが育人の体に覆われて見えなくなる。それどころか、体育館の床自体が沈んでいく。巨大化する育人の質量に悲鳴を上げているのだ。篠田はインカムで通信を入れる。
「1階の監視班は機材を持ってターゲットから退避。すぐ体育館から脱出できる体制を取れ」
この巨大化は篠田の想像を超えている。このまま巨大化を続けて体育館をぶち破ることさえあるかもしれない。そうなってしまえば――と、篠田が最悪のケースに想像をめぐらせたとき、今まで響いていた轟音がゆっくりと小さくなっていく。
「あっ……巨大化、緩やかになってます……」
ピークを越えたのか、育人の成長スピードはだんだんと落ちていき、ついにはその巨大化を止めた。それを確認して篠田は大きく息を吐いた。大地震の災害出動で、大きな余震にあったかのような緊張感。それが延々と続いているような感じだった。時計を見れば巨大化開始からほぼ1時間ほどである。
「今のデカさわかるか」
「計測しないとですけど……カメラ画面の目測だと多分…………10メートルぐらいでは……」
「もはや倍じゃねえかよ」
一日、いやたった一時間で倍である。もし明日もこのように倍になったら……明日、明後日と倍、倍、倍になったら、あっという間に……
「あっ」
「何だっ……っ……!」
隊員の声に篠田は育人に目を向けたが、すぐに声を詰まらせた。見ればわかる。育人の身体の中心部分、かけられていた腰布代わりのカーテンは巨大化によりはだけ、そこに見えているのは、育人の巨大なチンコだ。巨大化によって萎えてても抱き枕のようなサイズでよこたわるそれは、昨日夜までさんざん抜いたのにもかかわらず、むくむくと膨らみ始めている。
「すげ……」
ぼそ、と隊員から声が漏れる。ずるり、ずるりと膝を這うように持ち上がるチンコは、その質量だけで50㎏はあるはずだ。それがただの勃起現象によって上へ上へと持ち上がっていく。膝を超え、腰骨を左回りに超えたそれは、当然のように臍を超え、育人の腹筋に張り付き、びくびくと震えている。完全勃起したチンコはもはやそれが子供くらいの大きさがあった。篠田の心臓が早鐘のように鳴る。ただ――先ほどの緊張とは異なる、少しの違和感。
「んん……?」
股間に違和感を覚えたのか、育人がむにゃむにゃと身じろぎをする。それだけで今やもう軽トラックよりも重い体重が、体育館の床を限界まできしませる。薙ぐだけで人どころか車すら吹っ飛ばせそうな右腕が筋肉を躍動させながら動き、腹筋に張り付く逸物へと添えられる。その手のでかさをもってしても覆いきれない超大な巨根。先端からは早くもだらだらと我慢汁が吹き出ている。腕を動かす度、床が揺れ沈み、2階にまで振動が伝わる。やばいな、と篠田が思ったの同時にバギバギバギッ!と木が裂け折れる致命的な音がした。
「あっ!」
ズッッッドォォォン!! というとんでもない轟音とともに体育館が丸ごと揺れる。2階にいる篠田も横の隊員も一瞬宙に浮いた。グラグラと揺れが続く中、篠田は「照明をつけろ!」とインカムに叫ぶ。
「うあ……なんだ……?」
体育館の中心から響く声と地鳴り。それとともに照明が付き、その明るさに篠田たちは一瞬目を細める。目が慣れて、育人のいたところを見下ろし、そして視線を上げていく――
「あー…………篠田さん、おれ、またデカくなった?」
ここの体育館の2階は、バスケットゴールと同じほぼ3メートルの高さにある。昨日の時点で身長5メートル半あった育人は当然、1階からでも2階を見下ろせていたが、今の育人は床が抜けた下の地面に尻を付けた状態なのだ。その状態で、2階にいる篠田と、ほぼ同じ高さで目が合う。
(これは……マジでやばいぞ……)
もう囲っておけない。秘密にしておけない。そしてどこまででかくなるかもわからない。
(早く、早くしないと……)
「あの、篠田さん、早々で悪いんだけどさ……これ、抜いていいっすか? ここで」
冷や汗がだくだくの篠田と裏腹に、育人は少し口角を上げた表情で、自らの丸太のようなイチモツを指さした。
ichiya
2024-10-18 15:27:00 +0000 UTCあかいろ
2024-10-17 11:08:09 +0000 UTCichiya
2024-09-30 12:15:53 +0000 UTC曹達(ソーダ)
2024-09-29 12:31:21 +0000 UTC