扉の向こうに居たのは、神父でも村人でもなかった。 クラムは不用意にドアを開けてしまった事を後悔する。 「こんばんは~♥」と言いながら室内に踏み込んで来るブーツ、ブーツ、ブーツ。 認識のまったく外側から、続々と美しい女性達が玄関ホールに侵入してくる。 全部で15人程はいるだろうか。 「ち、ちょっと!誰ですかあなた達は!!」 遅ればせて、ようやくクラムの口から言葉が発せられた。 よりにもよって、今日この日にやって来るとは。 いや、奴らは狙ってきたのだ。1年で最も警備が手薄なこの日を。 それが敵意を持った集団であることはクラムにも一目にわかった。 良からぬ考えに双眸をしっとり夜闇に輝かせた彼女達は、見るからに魔族だったからだ──。 ───。 ──。 ─。 「では、よろしくねクラム」 神父はそう言うと、王都へと発った。まだ日も登っていない早朝だった。 大きな革製のバッグを手に、神父は迎えの馬車に乗り込む。 「お気をつけて、神父様」 半分寝ぼけた様な眠い目を擦りながら、神父補佐のクラムは玄関先の道で馬車の後姿を見送った。 明日は年に一度の祝祭の日だ。 国中の聖職者たちが王都に集まり、神と聖教府への忠誠を誓う大事な日。 国境付近の寒村に佇むこの小さな修道院からも、神父が遠路はるばる出席することになっていた。 神父が言うには「ただのお飾りの儀式」とのことだったが、それでも毎年のように出席している所を見ると彼の律義さが伺える。 神父の乗った馬車が、山の陰に隠れて見えなくなると、クラムはくるりと踵を返し修道院の中へと戻っていく。 そして彼の一日が始まる。 昨日の残りのスープを温め、市場で買ったパンを切る。 日が昇り空気が温んでくる頃、クラムは2階で眠っている子供たちを起こす。 美しい朝だった。 東方から登った夏の朝日は、朝露の湿気を含んだ大気に反射する。 陽光の軌跡は白っぽい絹帯の様に映り、木々や家並みを照らした。 起き抜けの子供達は、顔を洗い、口を濯ぎ、朝の身支度を済ませ1階へと下りる。 全員が起きてきたのを確認し、クラムは連絡事項を話し始める。 「みんな、おはよう。前々から言っていた通り、今日から4日間、神父様は王都での『祝祭』に出席するため不在にしています。 その間の留守は私が対応することになっていますが、規律を守って家事や神事をこなしてくださいね」 子供達はうなづき「は~い」と返事をする。 その後は全員で朝食をとり、片付けを済ませた後で朝のミサを行う。 聖書を手に短い説話を説いた後で、神への祈りを捧げた。 普段は神父が行う業務でも、今日だけはクラムの領分になる。 クラムは修道院で神父の補助を行う「補佐」という立場であり、神父の不在時にはこうして修道院の留守を任されることになっていた。 体付きこそ小柄でヒョロヒョロと頼りないが、勉学に秀でた頭脳と真面目な性格を認められ、来年には神父として職を得られることになっていた。 一通りの業務はこなせるようになっていたクラムにとって、神父の留守も大きな問題ではなかった。 クラムの大きな仕事は修道院の実質的な運営と、子供達の教育だ。 修道院の運営としては、金銭面のやりくりや、年に数回ある祭典の開催、周辺の住民への布教などを行う。 また、子供達の教育も、クラムの重要な役目だ。 修道院は聖職者の教育機関を兼ねており、神父を志す子供たちが共同生活を送っている。 子供達は修道院で日々の生活を送りながら、読み書き・教養・神学・家事まで、やがて独り立ちした聖職者として必要になる知識を身に着けていく。 クラムも幼い頃より修道院に預けられ、勉学に励むと共に信仰心を涵養してきた。 現在、この辺境の修道院に子供達は全部で5人おり、クラムと神父を合わせた合計7人で共同生活を送っている。 この日の午後は、講堂に集まって神学の講義だ。 講堂と言っても小さな修道院ゆえ、そんな立派な施設など無い。 普段食堂に使っている区画に椅子と机を並べた簡素なスペースが講堂になるのだ。 講義では子供達に聖書の精読を通して、神学的な議論や信仰の大切さを説いていく。 クラムが子供達の教育を任され始めてからもう3年が経過しており、すっかり教師も板に付いてきたものだ。 熱心に授業は進み、あっという間に夕方を迎える。 その後は夕食を皆で作り、人数が少ない分いつもより静かな夕餉を済ませる。 シャワーを浴びた後は、庭に出て夜の祈りを捧げる。 晴れた夜半には、こうして外で祈りを捧げることが通常だった。 新月の美しい暗夜で、夜の澄んだ空気が肺を満たした。 その後は就寝となる。 子供達が2階の自室に戻ったのを確認して、クラムも自室に戻る。 と言っても、補佐であるクラムはまだ床には就かない。 今日の日報を書かなくてはならないのだ。 風のない静かな夜だ。 修道院があるのは辺境の村のこれまた奥地で、夜には人はまず近寄らない。 静かで作業には向いていたが、クラムに都会への憧れがないと言えば嘘になる。 来年には神父として洗礼を受ける。 この修道院ともお別れで、次の任地へと向かうだろう。 新天地への期待と、漠然とした寂しさのような感情がクラムの胸に溢れていた。 だが今は静かに、机に向かいペンを走らせる。 壁の時計に目を向けると22時を回っていた。 日報を書き終えたクラムがそろそろ寝ようかとしたその時。 「コンコン」と木を叩くような乾いた軽い音が聞こえて来た。 風の音かと思ったが、どうやら違うらしい。 「コンコン」 木を打つような音がクラムの部屋が面した廊下に響いているのだ。 クラムは不審に思い、部屋のドアを開けて顔を出す。 真暗な闇が廊下を包み、人の気配どころか壁や天井の境界さえ見えない。 「コンコン」 なおも音が聞こえてくる。 やがてそれは玄関の扉がノックされる音だという事に気が付いた。 玄関はクラムの部屋を出たすぐ左側にある。 木製の両開きの扉で、寝る前には施錠をしていた。 誰だろう、神父様?──。 クラムがまず思い当たったのはその可能性だった。 だがそれは考えにくい。 神父の帰りはどれだけ早くても3日後のはずだったからだ。 「コンコン」尚もドアをノックする音が響く。 特段逼迫したような激しい打叩ではなかったため、恐怖や不審なところは感じなかった。 「村人にちょっと困ったことでもあり訪ねて来たのだろう」 やがてクラムは妥当な帰結を得る。 であれば、扉を開けてやろうと廊下に出る。 ランプに火を灯すと何不自由ない明るさが廊下を照らした。 そのままドアに向かうと、確かに人の気配がしている。 「コンコン」「コンコン」と鳴るドア。 そのドアノブにクラムが手を掛けた。 ──瞬間、クラムは何か嫌なものを感じ取ったが、勢いに任せドアを押し開けた。 ───。 ──。 ─。 玄関から修道院の内側へ、容易く侵入した魔族の大軍。 クラムが押し開けたドアから、濁流の様に流れ込んだ淫靡な女体の大波。 蠱惑的な甘酸っぱい芳香を存分に漂わせ、闇夜に輝く目は明らかに捕食者の色を滾らせている。 クラムは眼前で繰り広げられている光景が信じられなかった。 彼女達が意気揚々と修道院の内部へと流れ込んできたとき。クラムの前に並び立ったとき。厭らしく光らせた眼を携え何事かを話しかけてきたとき。 まるで夢でも見ているかのように、呆然と立ちすくんでいた。 突然始まった余りにも突飛な出来事に、もはや傍観者の視点に立つことしか出来なかったのだ。 そのため、思ったよりも目の前の状況が悪いことを理解するのに10秒程はかかった。 魔族──、人間界とは別の次元にある魔界に住み着く忌々しい種族。 姦淫の血を宿し、人間を堕落させる者達。 クラムは魔族を見たことが無かった。 教養として知ってはいたが、実際に目の当たりにするのはこれが初めてだったし、まして数十の魔を秘めた瞳に一斉にまなざしを向けられる経験など当然ない。 しかも、全員がサキュバスと呼ばれる種族だ。 頭に生えた硬い牡牛のような角、背中から伸びる小振りな蝙蝠様の翼。どれもがその特徴に合致する。 誰もが振り向くような美しい女性の姿をしており、知性があり魔法を使う。 魔族の中でも殊更に最も恐ろしい種族の1つとして記憶していた。 人間とは対立関係にあり、古くより度々戦争を繰り返してきた。 彼らは玄関へ入るや否や、最後尾のサキュバスが両開きのドアを閉ざし、計画的な手付きで鍵を掛けた。 「ハ~イ♥こんばんは♪神父さんいる~?」 クラムの眼前で整列した魔族達。 その1人、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら問いかけて来た彼女は少女のような外見をしていた。 周りの魔族達が軒並み高身長の体躯を誇っているのと対照的に、彼女の背丈はクラムと同じくらいだ。 彼女の見た目は、クラムと同じくらいの年齢に見える。 発育途上の細い肢体に、少女の可憐さと魔族の妖艶さが同居している。 「い、いきなり何なんですか! 誰ですかあなた達は!」 あっけに取られていたクラムも遂に言葉を発する。 「あたし~? 私はアクリラって言うんだ~♥ 魔族やってま~す。よろしくね♪」 アクリラと名乗ったそのサキュバスは1級の美術品のような造形をしている。 腰まで伸ばした白っぽい金色の髪をサラサラと掻き上げると、その一本一本がランプの光を反射し、光の筋が壁に浮かぶ。 パッチリと大きい二重の妖艶な目の奥には紫色の瞳が潤み、その上下を白金の睫毛が装飾している。 体へ視線を向ければ、彼女の少女性を一層感じることが出来た。 小さなローファーから伸びる脚部の流線がスリットの隙間から覗き、白磁の様に滑らかな腿が不相応な程に高いウエストの位置まで伸びあがっている。 簡単に折れてしまいそうな細い腰は継ぎ目なしで上半身を支え、腰骨をクッキリと浮かせている。 シスター服に隠された胸部は控えめに膨らみ、クッキリと浮き出た鎖骨は、これまた壊れ物のような危うさを秘めている。 クラムに観察の時間を与えた後、小さな花弁のような唇を開き、同じ質問を繰り返す。 「神父さんいますか~♪」 「あ、あいにくですが、神父様はもうお休みなっております」 クラムは嘘を付いた。真実を告げる必要はない。 神父がいないと知れれば何か良くないことが起こると直感的に悟った。 「ふ~ん… キミ名前は~?若いね♪」 友達に話しかけるかのような口振りでアクリラは続ける。 目の下、頬の当たりには小さくハートマークのようなペイントが描かれ、まるで泣きボクロのようだ。 「…クラム。神父見習いをやっている者です」 「へ~♥ クラムくんね~」 アクリラの両目がクラムを舐めるように観察する。 「クラム君さ~嘘ついたでしょ…♪ ホントは、いないんでしょ神父様♥」 確信を持った問いかけに動揺する心を押さえながら、クラムは同じ返答を繰り返す。 「今日はもうお休みになっています。神父様にご用事でしたらまた後日お越しください」 相手の出方をうかがう様に、クラムは慎重に言葉を選ぶ。 「ううん…♥いいのいいの~、別にいなくても♪ だってね~…♪」 夜の闇に一際映える金色の瞳は、少しの間キョロキョロと修道院の内部を見渡していたが、隙を見せまいと硬く対峙するクラムと目が合うとニッコリと微笑む。 「その方が『好都合』だもん…♥」 瞬間、『ギラリ』と見開いたアクリラの紫眼から、敵意を込めた魔力が放たれる。 明確な攻撃の意思。クラムはその場に射竦められてしまう。 間髪入れずに魔を秘めた瞳からチカチカと点滅する光彩が流れ込んでくる。 瞬間的にクラムの動悸が『ドクドク』と止まらなくなる。度数の高い酒を飲み干したかの様に内臓が熱い。 「はぁはぁ」と弾む息を抑えるのに必死だ。 「あぁっ…な、何をした!」 「ちょっと視神経から魔法をね…☆」 クラムはその場から動けなくなる。 そして、すぐにこれが魔族が得意とする精神操作の魔法によるものだと判った。 「んクッ…、も、目的は何だ…」 「勧誘♥ ウチらの神様に乗り換えないかな~って♪ クラム先生も改宗してみない?」 クラムは確信する。 彼女達は近年急速にその勢力を伸ばしている、邪教徒の者達だと。 噂には聞いたことがあった。 ここ数年の間に小規模な修道院がいくつも閉鎖されており、その原因は邪教徒の者達による襲撃めいた勧誘だというのだ。 与太話に過ぎないと踏んでいたが、どうやらその噂は本当だったらしい。 「帰れ!! 貴様らのような穢らわしい者共には一切屈しない」 ふわふわと落ち着かない心を硬化させ、気丈にクラムが叫ぶ。 「『穢らわしい』なんてひどいなぁ…♪ 同じ聖職者同士仲良くやりましょ♪」 だが、クラムが精一杯荒げた語気も暖簾に腕押し。まるで響かない。 「この修道院には、クラム先生を含めて全部で何人いるんですか?」 冷汗がクラムの背中を伝った。どうやら彼女たちの目的はクラムだけではないようだ。 「…いない。今は私一人だ」 「ホント~?普通は何人か子供達がいることが多いんだけど」 相手は魔法を使う。 耐性の無い子供達をその危険に曝すことだけは避けなければならない。 クラムの脳裏にはそれだけが浮かんでいた。 ただ希望的観測はあった。 人間と魔族が停戦時に取り決めた太古の誓約はまだ有効で、人間に向けての攻撃魔法の使用は出来ない事になっていたからだ。 それは単なる約束などではなく、物理法則と同様「世界の理」として作用している。 従って、こちらに明確に危害を加えることは出来ない。 「子供たちがいるなら挨拶させて欲しかったんだけどな~♪」 幸い彼女達はまだ子供達の存在には気付いていないようだった。 「ハァハァ…残念だったな、お引き取り願おうか。それに勧誘は無駄だ、我々聖教の者が邪教に改宗することなど一切あり得ない」 「う~ん、じゃあ帰るか~。残念だけど」 アクリラがそう言った時、クラムは安堵した。 ──のも束の間。 「な~んていう訳ないじゃん♥ バ~カ♪」 アクリラの美貌が邪悪な笑みに歪む。 クラムを嘲り蔑むように、その瞳に満ちる魔力の色は濃くなっていく。 「こんな幼いオスの匂いさせて、言い逃れがヘタだね♪せ~んせっ♥」 魔族は狡猾で残忍という事は重々承知していたつもりだが、いざ相対すると、そのことが身に染みて理解る。 緩めかけていた警戒心をクラムが締め直したその時──。 目の前でニヤニヤと笑っていたアクリラ。──その顔面に突如木刀で殴打の一撃がなされた。 『めき』と骨が折れるような音。 硬い木材で出来た護身用の木刀が少女の顔を捉え、クリーンヒットする。 「ウオリャーー!!」と玄関に響く勝鬨の声。 廊下の奥から突如姿を現し、彼女に剣戟を浴びせかけたのは、子供の内の1人であるキリだった。 キリ。 子供の中では最年長で、しっかり者の少年だった。 背丈も大きく、騎士の家系の出身という事もあり、修道院の中では最も武芸に長けていた。 大挙して攻めて来た異教徒に居ても立ってもいられず、2階から駆け下りてきたのだろう。 「キリ! よせ!やめろ!!」 悲痛なクラムの絶叫が廊下に木霊する。 クラムの静止を無視して、キリはバランスを崩したアクリラに木刀で2撃目、3撃目を加えていく。 『ドゴッ』『バギッ』と鈍い音が続けざまに玄関に響く。 玄関のタイルの上で仰向けに倒れたアクリラは動かない。 その体を見下ろす様に撃ち疲れたキリは肩で息をしながら呆然とその場に立ち尽くしていた。 沈黙。 瞬間的な出来事に無音の時間は実際よりも何倍にも長く感じられた。 「アハ♥元気だね~♪ お姉さんちょっと興奮しちゃった♥」 玄関に伏したアクリラは何事もなかったかのように半身を起こし、周りの魔族達に支えられて起き上がった。 「ほら、やっぱり居るじゃん…ガキ♥」 衣服に付いたホコリをパラパラと払いながら、アクリラは声色一つ変えずにスクッと元の姿勢に立ち上がる。 「なっ…!どうして…」 キリの顔から血の気が引く。 彼の振るった木刀は、確かにアクリラの頭部に有効打を与えた手ごたえがあった。 それなのにその魔族の女はピンピンとしている。 「ふふん…♥そんな木刀程度じゃ、魔族には傷一つ付かねーんだな~♥」 ニコっと不自然な程に整った笑みを浮かべて、アクリラが自らの顔前で人差し指を立てた。 「こいつはオワリ♥」 指を舌先でチロと舐め上げフウと息を吹きかけると、綿飴のような魔力の渦が出来上がる。 何百本もの蛍光ピンクの糸が球形に渦巻いているような形状だ。 アクリラが瞬時に練り上げた魔力の塊は、雲の様にフワフワと宙を漂いながらキリの方向へ飛んでいく。 呆気に取られ動けなくなっていたキリの腹部に命中した魔力は、スウ…と音もなくキリの体内に染み込んだ。 「くそっ!」というクラムの声も空しく、魔力を受けたキリは膝からガクッと崩れ落ちた。 ペタリと廊下に座り込んだキリの肢体。ドサリと玄関に伏したキリは筋肉を痙攣させ、瞳孔の開いた虚ろな瞳が天井を見つめる。 「脱力の魔法…♥ぐったりする程度だから安心していいよ…♥」 高身長の魔族達が動けなくなったキリをひょいと抱え上げた。 「アクリラ様に殴りかかってるなんて、キミよっぽど死にたいんだね♡」 「突然殴り掛かってはダメ、と聖教では教わらないのかしら…?」 弛緩しきったキリに聴かせるようにゆっくりと魔族達が言葉を投げ掛ける。 脱力、と言うよりもキリは失神しているように見えた。 目は虚ろで、何の光も映していない。だらしなく開いた口の端から漏れ出た唾液が頬を伝っている。 「ガキもいるってわかったし、全員集めなさい」 アクリラの冷たく発した命令に、魔族の女性達が次々と修道院の中に踏み込む。 ───。 ──。 ─。 ──食堂 修道院の中央のそのスペースに子供達が並んでいた。 ある時は食堂、ある時は講堂に、時には祈りを捧げる場として、普段いくつもの用途に使われる広い部屋が、今夜に関しては恐怖と支配で充ちていた。 皆カタカタと震え、怯えている。 無理もない。停戦中とはいえ潜在敵である魔族と対峙するのは大人でさえ肝が冷える。 しかも彼らが大挙して修道院の中に侵入しているとなれば、その恐怖は想像に難くない。 この国の大多数の国民が信仰する「聖教」は、禁欲と清貧を教義とする。 物欲や食欲など全ての過剰な欲望は悪しきものとされ、慎むこととされている。 特に性欲については厳しく制限されており、異性との不純な交わりは禁じられている。 とりわけ聖職者ともなれば生涯独身を貫く旨の妻帯禁止の定めがあり、色に乱れるようなことがあれば即座に破門となる。 「みんな、こんばんは~♪突然驚いたよね。お姉ちゃん達はクラム先生のお友達だから心配しなくてもいいのよ…♥」 アクリラが努めて陽気に語りかける。 もちろん額面通りにその言葉を受け止めるものはいない。 「今日はみんなにいい提案をもって来たの…♥」 アクリラはまるで所有物の様に、傍らで放心状態のキリの肩に手を置き、「宗教勧誘にね…♥」とポツリと呟いた。 その目は虚無の中空を映し、放り出されたままだ。 「あ、そっか。魔法といてあげなきゃ」 アクリラが掌をキリの顔の前で左右に振ると、キリは正常な意識を取り戻した。 キリは「はぁ…はァ」と喘ぐように呼吸を整える。 「… クソ淫魔どもめ…!!」 意識の回復と同時に悪態を付くキリの姿を見てクラムは少し安心した。 「うんうん♪ 元気でよかった♥」 しかし、まだ体は本調子ではないらしく、アクリラの傍らで膝をついたまま離れることはできない。 「でも…♥」と、アクリラは本題を切り出す。 「キリ君は見ず知らずの女の子にいきなり殴りかかっちゃう悪い子なんだよね~♥ ねぇキリ君…♥」 信じられないとばかりに、子供たちの間にザワザワと動揺が走る。 苦痛に歪み泣きそうなキリの表情が、アクリラの言葉が事実である事を証明してしまう。 非暴力の教えを学ぶ彼が、積極的に暴力を働いたとなれば問題である。たとえそれが魔族に対するものであっても──。 「なので…♥キリ君は聖教の教えに背く異端者となっちゃいました~♥」 確かにアクリラのいう事は正しかった。実際、聖教の内規においても、キリのように自発的な暴力を働いたものは即座に破門となる決まりだ。 キリは聖教の教えを順守する。と言うよりも、自らの正義心で突発的に行動する傾向があった。 クラムはそんなキリの性格に信頼をおいている一方で、気質としてはあまり聖職者には向いていないと感じる側面があった。 「ね♪クラム先生…♥」 アクリラが確認する様にクラムの顔を覗き込む。 苦虫を嚙み潰したような面持ちのままクラムは微動だにしなかった。 『ポンっ』と軽く手を打ちながらアクリラが満面の笑みで続ける。 「破門になっちゃったキリ君に早速提案なんだけどぉ…♥私達の宗教に改宗しない?」 「ふ、ふざけるな!!」 キリは血管を浮き立たせ怒声を張り上げる。 愚弄にも取れるようなアクリラの言葉は、彼のプライドを毀損したにも等しい。 「あら勇ましい…♥ いい宗教だと思うんだけどな~♥」 「ルールは守る…。俺がここを去るが、お前達に靡くつもりも毛頭ない」 即答。にべもなくキリは突っぱねた。 「ふ~ん♥」と含みを持たせるアクリラ。 「結論は『魔族流』の勧誘してからでもいいかしら♥ キリ君みたいに強い子なら、勧誘を突っぱねる事なんて簡単だもんね~」 「魔族流」それが何を意味するのか、クラムには心当たりがあった。 「それとも~、無防備な女の子にいきなり手を上げるような卑怯者は、誘惑にも耐えられないざっこ~い精神しか持ち合わせていないのかしら…♥」 勝気なキリの性格を把握しているのか、アクリラは露骨に挑発する。 キリはアクリラの煽るような笑みを睨みつけたまま、その拳をギリギリと握りしめていた。 「いけませんキリ。やめなさい…!」 「クラム先生は静かにしてて♪」 アクリラの指先が、宙に水平な線を引く。その軌跡に合わせ、クラムの口は端からチャックの様に閉じて開かなくなる。 何かを訴えようとしても、上下の唇がピタリと貼り付きモゴモゴとした呻きにしかならない。 「その代わり、勧誘に耐えられたら今日の事は水に流してあげる♥ キミは今までどおりここに居られるし、私達も大人しく帰ってあげる♪」 アクリラは巧みな言葉使いでアメを提示し始め、修道院にとってのメリットを示した。 「キリ君が頑張れば…クラム先生も本部からのお咎めなしになるってわけ♥」 「…」 実際キリはクラムや修道院に迷惑を掛けてしまうことを何よりも気に病んでいた。 自分が破門となることで、監督責任のあるクラムまで何らかの処分を受けることは自明だったからだ。 「…いいだろう。お前達の邪教のために俺が信仰を捨てる事などあり得ない」 キリは少しの間迷っていたが、勝負を飲むことにしたようだ。 「んっ!むーっ!!」 口の内側で発せられたクラムの呻くような言葉はもはや意味をなさない。 「おっけー♥ じゃあ決定♪」 アクリラは見た目通りの少女のように声を弾ませる。 「早速キリ君の『勧誘』はじめるね♥」 アクリラはそう言いながら、後方へ目配せをする。 交代で、イヤらしく笑う3人の魔族シスターが進み出る。 キリの前に横一列に並ぶ魔族のシスターたち。全員お揃いのモノトーンのシスター服を身に纏っている。 後頭部を隠すフードのような衣装は人間のシスターのものとよく似ているが、その頭部には硬い牡牛のような角が見え隠れしている。 流水の様に涼しい顔を崩さない者、大きな垂れ目でウットリと見詰めてくる者、瞳を下に向けキリを見下ろしニヤニヤと嗤う者──。 タイプは様々であったが、3人とも絶世の美女揃いだった。 体のラインが出るように細身に設えた黒いシスター服の内側で、サキュバスらしい豊満な体が肉欲のカタチを象っている。 女性らしく華奢ななで肩から、柔らかそうなバストの膨らみが服の胸の部分をパツパツに張らせている。 体の輪郭は下へ向かうに連れて自然な凹型を描き、たおやかな腹部を経る。 柳の如きしなやかなクビレを通過したかと思えば、その下方には、はち切れそうなほどの臀部が座している。 華美で艶やかな上半身をしっかりと支える下半身の厚みこそが、魔族を『犯すもの』たらしめている。 仮にその肉体でのし掛かられたら、腕っぷしの戦いであっても勝負は一瞬だろう。 あらぬ想像を巡らせ、キリはゴクリと生唾を飲んだ。 180cmはあろうかという彼女達の高身長がキリを見下ろす。 圧倒的な肉量が、その内側に少年を閉じ込めようと近づいてくるのだ。 「や、やめろ…寄るな!」 不穏な気配を感じ取った絶体絶命の少年から放たれる懇願や虚勢は、耳触りの良い音色として魔族を昂らせ逆効果となる。 シスター達は舌なめずりをしながら床にへたっているキリを3方から取り囲む。 魔族の皮膚や瞳、呼気からは絶えず催淫の魔力が流れ出している。 触れるだけで、見詰められるだけで、囁かれるだけで──。それは耐え難い性衝動として精神を蝕んでいく。 3人に相対すれば、自然と下腹部に送り出された血流がペニスに集まっていく。 泣きそうな顔で「来るな!くるな!」と叫びながらキリは後ずさったが、やがてその背中に室内の壁が触れた。 端に追い込んだ獲物の逃げ道を塞ぐように3人のシスターは正面、左右からキリの視界を覆う。 テントの様に張りだしたズボンを目の端に捉え、正面に跪いた金髪碧眼のシスターが「ふーっ♡」とキリの顔に吐息を吹きかけた。 一瞬でキリの体がドサッと崩れ落ちる。 「ふーっ♡」「ふう~♥」続けて左右のシスターから同時に放たれた呼気が顔を包む。 「ビクンッ…、ンあ♡…や、やめ…、」 シナモンをたっぷり含んだ焼き菓子のような甘く陶酔するような吐息が鼻孔をくすぐる。 「ふー…♡」「ふーっ」と甘い呼気が連続して顔に吹きかけられる度に、キリの思考は曖昧になっていく。 『ぴちゃ…♥ぴちゃ…♥』 『べろん…♡れろん…♡』 キリの瞳がカタカタと小刻みな振動を示したのを合図に、両側に座ったシスターが両耳を舐め上げる。 『ぴちゃ…♥れろ…♥』 『じゅるり…♡じゅるる…♡』 「や…めへぇ、ら…めェ…♡」 言葉から力が抜け落ちていく。 感覚が研ぎ澄まされているのか、シスターの舌先のザラザラとした表面の一粒、舐め上げ合間の「ハァ…♡」という熱い呼吸音などが明瞭に感ぜられる。 やがて表面だけでは飽き足らず、濡れた魔族の舌先は両耳の奥の方にまで侵入した。 『ぐっぽ…』『じゅっぽ…♡』と容易く内耳を犯し始めた舌肉は、粘性のある液体の様に熱くとろとろに蕩けていた。 湯を流し込まれる様な両耳への刺激がキリの全身から余計な力を奪い去る。 「ハァハァ…♡」と持ちこたえるキリの理性。 だが、その焦点は既に定まらない。 即効性の毒のような淫気が全身に回るに連れ、理性ある思考も失われていく。 「視覚・聴覚・嗅覚の全てに催淫の魔力を流し込まれる感覚はいかがですか…♡」 「もうココもすっかり切なくなってしまいましたね…♥フフ」 シスター達の視線はキリの膨らんだ下半身へと移る。 正面に跪いたシスターがキリのズボンをまるで紙を裂くかのように破った。 『ビリビリッ』と音を上げて千切れた布の切れ目から、キリの隆々とした男性のシンボルが零れ落ちた。ペニスは怒張し、先端を濡らしていた。 それまで目の前の光景に釘付けになっていた子供たちも「ハッ」と息を吞み目を背ける。 勃起するという行為は、それだけで聖教の教えに反した邪なものからだ。 まして人前でそれを晒すことなどあり得ない。 「キリ君のおちんちん…♡みつけた♡」 「かわいい~♥ 犯したくなってきちゃった♥ゾクッ」 キリの黒目は上まぶたの淵に隠れ、半ば白目を剥くような格好でヒクヒクと痙攣している。 口角は持ち上がり、満面の笑みを湛えている。 とても人前で見せられるようなものではない。 「あれ、もう失神寸前なんだ…♪」 「修道院では対魔術の訓練はしてなかったみたい♡」 「あ~、ダメダメ♥ アンタ達初めから強くし過ぎ。これじゃ合意も取れないって」 後ろで見ていたアクリラはそう言うと、アへ顔のまま醜態を晒しているキリに近づき、キリの顔前に手をかざし『ひゅいっ』と振る。 直後、飛び跳ねるようにして目覚めたキリは「はっ…♥はっ…♥」と犬の様に息を上擦らせて喘ぐ。 すっかり淫気に当てられてしまったキリの意識にアクリラがゆっくりと言葉を吹き込んでいく。 「やっほーキリ君♪ このお姉ちゃん達、み~んなキリ君のお嫁さんになりたいって立候補してくれたんだよ♥」 「セーラお姉ちゃん♥、クセルお姉ちゃん♥、ジナお姉ちゃん♥」 アクリラが3シスターの名前を明かす。 「み~んなキミの事が大好きなの…♥ キミとエッチなこと一杯したいんだってさ♥」 防御力ゼロの裸の脳裏に一際クッキリと言葉が届いた。 「どうかな?結婚してあげてくれる?」 「する…♥ けっこんするゥ♥♥」 完堕ち。 全身を巡った淫気は、ものの10分程度でキリの隅々までを支配した。 「でも、それには一つ条件があってね、私達の宗教に『改宗』してくれなきゃダメなの…♥」 ──これが、魔族のやり方。 傍で見守ることしかできないクラムは絶望の表情を浮かべる。クラムが信頼したかつての勇敢なキリの姿はどこにもなかった。 「どう?♥」と言わんばかりにこちらを見やるアクリラと目が合う。 「別にもう破門になったんだから、私たちの宗教に『書き換え』ちゃってもいいよね…♥」 ブンブンと首を大きく縦に振るキリ。 肉の欲望に完膚なきまでに堕ち、聖職者はおろか人間としての尊厳さえ投げ出した。 アクリラが「ニタァ♥」と少女らしからぬ邪悪な笑みを浮かべた。 「おっけー♪ はい♥みんな結婚していいよ♥」 目的を果たしたアクリラはくるっと踵を返し、元の位置に戻っていく。 合意を取り付けた3人のシスターは、キリの身体を仰向けに寝かせる。 痛いくらいに勃起したペニスは外気に触れヒクヒクと悶え続けていた。 催淫の魔法の効果は、魔族がキリを求め続ける限りいつまでも続く。 「じゃあ早速…♥結婚セックスして旦那様になってもらいましょうね…♥」 「聖教では死んでも味わうことのできない、悪~いサキュバスとの濃厚セックス…♡」 「私達3人に愛されて、立派な旦那様になってよね♥」 3人のうちの1人がキリの正面に正座をし、目線の高さを近付ける。 「セーラといいます…♥ 今宵はあなた様と結婚出来て光栄です♥」 沈む直前の夕日の様な美しい赤橙色の髪が、シスター服のフードから伸びている。 大人の包容力を感じさせる同色の柔和な目元がにっこり微笑む。 肩口を起点とする胸元の大きな膨らみは、明らかにサイズ不足なシスター服に捻じ込まれている。 挨拶を終えたセーラは、キリの目の前で立ち上がると腰布をはだけさせた。 足元から続くスリットのチャックを『ジーッ』と持ち上げその隙間を広げていく。 チャックが腰骨まで上がりきると、セーラは着脱式の腰布を取り外して傍らに置いた。 スカートの様にはためく布地──、その奥がいま初めて明らかになった。 毛の生えていない濡れた秘部は艶めかしい鮮やかな朱に染まり、トロトロの内側を露わにしている。 女性器の入口は肉付き良く盛り上がっており、その存在を主張する。 「まずは最初に私と結婚いたしましょうね♥」 セーラは昂った様子で表情を赤らめた。 「年齢順だからね、しょーがないか♡」 「セーラちゃん、私達と結婚する分の体力も残しといてよ~」 セーラ以外のシスター2人は少年の両脇に座り、結婚を補助する。 「仰向けになって、脚を、こう♥」 「そうそう、カエルみたいに膝曲げて、おちんちん挿れやすいように…」 キリは彼女達の導きに従い、あられもない体勢になる。 仰向けのまま膝をM字に曲げた服従の姿勢。 通常女性がする様な──逆正常位とも言うべき姿勢を取る。 「あー、カワイイ格好…♥」 「おちんちんが『早く食べて』って言ってるみたい…♡」 事実、陶酔状態のキリのペニスからは大粒の先走りが情けなく床へ落ち、その光景が一層魔族の嗜虐心を煽る。 セーラの両手がキリの膝裏を掴み、脚をM字のまま閉じられない様に固定した。 「じゃあ挿れちゃいますね…♥キリ君…♥」 セーラはキリの両手を恋人の様に握り、ゆっくりと腰を沈めていく。 仰向けの体勢で床にへたり込むキリは為す術なく腰肉の下降を眺める事しかできない。 やがて『ぴちゃ♥』と粘液がはじける音を鳴らし、セーラの女性器とキリのペニスの先端が触れる。 「あはッ♡ 入っちゃうよ~♡」 「セーラちゃん、キリ君おめでとう~♥♪」 セーラはペニスの硬度を確かめた後、そのまま腰を下ろしていく。 『ずぷ…♡ズプズプ…♡』と柔肉にペニスが突き立つ音が室内に満ちる。 「あっ…んくっ…ダメぇ…♥」 体をヘビのようにくねらせながらキリが喘いだ。 「あれ?だめだった…?ヤだった?」 「セーラお姉ちゃんとエッチ嫌だった?」 「え~♥ショックです…せっかく甘々セックスできると思ったのに…♥」 「キリ君が嫌って言うならやめちゃおっか♡」 「う~ん残念ね…♥」 「ちが、ちがうぅ♡エッチ…えっちするぅ…」 必死に性の交わりを嘆願し、中断されると見るや泣きそうに顔を歪めるキリ。 イニシアチブを取った淫魔になすが儘に翻弄され、からかわれさえする。 数刻前までの威勢は影もない。 「クスクス…♡はいはい…♡お姉ちゃん達といっぱいエッチしましょうね~♡」 「た~くさんピュッピュして、ダメになるまで喘いでよね~♥」 「ねぇ見て…。ほら…♡どんどん入っちゃいますよ♥」 『ズプズプ…♥』と卑猥な水音を立てながら、魔族のシスターの秘部に呑み込まれていくペニス。 床に押さえつけたキリの骨盤めがけて、2人の腰はゆっくりと重なり溶け合っていく。 「んく…♡あぁっ…」気持ちよさそうに善がるキリの声は傍で見ている子供達の聴神経を震わせる。 『どぷっ…♥』と水底に重いものが沈みきったような音を上げ、キリとセーラの骨盤が一つになる。 「はぁはぁはぁ…♡あぁ、はぁはぁ…♡」 ペニスがセーラの女性器に丸呑みされると、キリの震えた吐息が止まらない。 「あ~、いいな~キリ君のおちんちんお姉ちゃんのイケない所に呑み込まれちゃったねぇ…♡」 「このまま結婚しちゃうんだ~♪ いいな~♥」 「うふふ…これで一つになれました…♥ あとは…射精を残すだけ…♥」 「うごきますね…♥」 セーラが腰を前後にスライドさせていく。 『ずぷ…♥ずぷ…♥』 振り子が振れるようなスピードでセーラの腰がキリの腰に衝突する。 彼女の内側は温かく、きつく締まっている。 亀頭を最初に迎える淫靡な入口は、そう簡単にはキリを歓迎してはくれない。 セーラが腰を前方へ押し込むと、突き立てられたキリのペニスを濡れたグミの様な感触で押し返す。 グニグニと弾力のある肉が亀頭との接地点に反発力を加え、それでもセーラが腰を沈めていくと『じゅぷじゅぷ…♥』と抵抗の摩擦音を鳴らしながらペニスを呑み込んでいく。 亀頭をサディスティックに押し返す入口の弾力を超えると、ようやくセーラの内側へと入ることを許される。 内側では大小様々なヒダや、肉団子のようなイボがペニスに触れ、その表面を撫でていく。 『ゾクゾク』と深部から沸き起こるような官能と共に、淫膜の一枚一枚がその圧力でカリ首にマフラーの様に待機していた包皮を下方にズル剥いていく。 ペニスにとって最も性感の強い弱点たる亀頭の下端は、あっという間に晒し者にされ、女性器の内側で孤立する。 ──あとはペニスの先端から根本までを、セーラの内部構造が順番にいたぶる弱肉強食のワンサイドゲームになる。 単に「名器」と人間の一言で片付けるには失礼なほどのサキュバスの女性器に、ペニスの一片までが弄ばれ、吸い付かれ、咀嚼されていく。 「あっ…!、あっ…♡」と言葉足らずな嬌声を奏で仰け反るキリ。 『ずぷ…♥ずぷ…♥』『クチュ…♡クチュ…♡』と静かに始まったセーラとの性交。 セーラの中はトロけるように温かく、多様な内部構造を1つ1つ紹介するかのように順番に際立たせる。 『ずぷぅ…♥ずぷぷ…♥』 「ウフフ…♥ここが入口の肉厚なゲート…♡この時点でイッちゃう人も多いんですよ…♡」 「んくぅ…♡あ、あぁぁ…♡きもちいい、…ですぅ♡」 『ずぷ…♥ずぷ…♥』 「次はプリプリと弾けるナカのヒダを…♡ズル剥け亀頭の上から1枚1枚かぶせるように…♡」 「うぅぅ♡ おちんちん溶けるぅぅ…♡とけひゃうぅ…♡」 『くりゅ…♥コリュ…♥』 「さらに奥にはイボの密集地帯があって…♥ 男の子でも綺麗なソプラノで鳴いちゃうんです…♥」 「ひゃぁ…♡いくぅ…♡ いっく…♡ひぃぃ…♡」 キリが余りにも早く射精の兆候を口にした。 優しくゆっくりとしたピストンにも関わらず、挿入開始からわずか3分程度で、キリのペニスは射精の準備を終えた。 キリにとっては初めての女性の内部、しかもそれがサキュバスの想像を絶する程の肉壺ともなれば当然の帰結である。 『ぐっぷ…♥ぐっぽ、ぐっぽ♥ ぐっぽ♥ ぐっぷ♥』 次第に、速さと正確さを上げて打ち付けられるセーラの腰。 「あ゛っ、あぁあ! いっく!いく!いくぅ!」 「イッて、出してください…♥ 幸せになりましょうね…♥」 「新婚確定膣内射精(なかだし)しちゃおうね~♡」 「足先をピンと伸ばして、沢山喘ぐんだよ…♪」 『ぐちゅ…♥くちゅ…♥ぶにゅん♥』 「あぁぁ、でるぅぅ…♡」 腰を撃ち付けるセーラとそれに身悶えするキリ。 『ぐちゅぐちゅ』と淫靡で粘り気のある性交の音と、その1回1回に律義に応えるキリの嬌声。 そのデュエットは2人の初めての共同作業として申し分ない。 ──そして、ゴールインの時が訪れる。 「はーい♥、今からあと3回のピストンでイケますからね~♥♥」 セーラは心底嬉しそうな笑みを浮かべながら、カウントダウンを始めた。 ブリンとしたヒダ、コリコリとしたイボが相変わらずペニスを追い詰めていく。 「3…♥『ぐちゅん…♡』」 「2…♡『とぷん♡』」 「1…♡♥『ぶちゅん♡』」 「イックぅ!!! あ゛ でるッ!!」 「イってください…♥あ・な・た…♥♥」 プルプルと震える足先は、腱の形をクッキリ浮かせて伸び切る。 「はい、ゼロ…♥」 キュウと握り締められたセーラの膣肉が亀頭から骨盤までを『ずりゅりゅ♥』と咀嚼する。 ──そして 『びゅ! ビュルルルグッ…♡びゅびゅう!!』 『びゅっぐ♡びゅっぐ! びゅりゅ!ビュグ!!』 キリの白濁がセーラの奥底に放たれた。 「ん゛グッ! はっ…♡ふぅぐ…♡うくっ…♡」 射精にあえぐキリを見下ろしながら『ぐちゅん…♥ぐちゅん…♥』とセーラは肉壺の内側を蠢かせ続ける。 ペニスの脈動に合わせ、女性器はキュウキュウとペニスをしゃぶり、まるで子宮が直接亀頭を吸い上げるかのごとくに尿道に残存する粘液を催促する。 「イっ♡てる!いってるから! ふあぁぁ…♡」 「最後まで一滴残らずどうぞ…♥♥」 一向に動きの止まる気配のないセーラの女性器はコリコリと粒立ち、吐精中のペニスを挟んで、包んで、磨り潰した。 『じゅるじゅる』『コリュコリュ』とサディスティックな音色が鳴る。 「──ぅッ!!──はぁ…♡」 仰け反ったキリの肢体は、射精の脈動ごとにバネの様に緊張と緩和を往復する。 『ぐちゅ…♡ぐちゅ…♥』 『ビュル…ビュグル…♡』 ───。 ──。 ─。 「うふふ…♥いっぱいキリ君のせーし溜まっちゃった…♥」 射精後も散々な可愛がりを受けたキリのオーガズムの脈拍が、ようやく平坦になる頃、腰を振り続けたセーラは満足そうに下腹部を撫でる。 セーラの臍下には先程まで無かったハートを複雑にしたような紋様──「淫紋」が蛍光ピンクの輝きを放ち、魔力の充実を告げていた。 セーラの分厚い腰部に組み敷かれたまま、キリは「ひゅーひゅー」と息を繋ぐ。 魔族の暴力的な膣肉に精を捧げる快楽は、代償に彼の体力と生気を奪ったようだ。 弛緩するキリの全身は、時折駆け抜ける予後の官能にピクピク震えている。 「セーラちゃんいいな~♡バッチリ結婚しちゃたね♪」 「次は私…♥ 早くキリ君の子供欲しいな…♥」 「後も詰まっていることだし…♥ おちんちん抜いてあげましょうね~♥」 セーラがいまだグリグリと押し付けていた腰を止めた。 そのまま、セーラの女性器からペニスが上方に『じゅぷじゅぷ♥』と引き抜かれていく。 「あっ、あっ…♡あっ!」 伸び切っていたキリは再び嬌声を漏らし始める。 ペニスを360度全方位からホールドした魔族の女性器は、一度咥えこんだペニスを簡単には離してくれない。 持ち前の弾力と狭隘さでもって、セーラの肉壺は引き抜かれようとする肉棒を執拗に引き留める。 「ん…♡アッ…くぅぅ…♡」 それでもセーラの腰はゆっくりと少しずつ浮き『じゅちゅ…♥じゅちゅる…♥』と、その度にペニスに絡み執着する淫肉の音が響いた。 キリのペニスが引き抜かれようとする程、吸盤で吸い付くように獲物を奥へ強く咥えこもうとする。 「あ~♡、あっ…あっ♡あっ♡♡」 「あ~♪善がってる~♡ 引き抜くときもしっかりおちんちんしゃぶり続けられちゃってるね~♡」 「サキュバスのおマンコはしつこ~いからね…♥」 万力のような女性器の咥えこみに、キリの腰も連動して浮いてしまう。 セーラの膣内(なか)にしまわれていたペニスも次第にその姿を現していく。 『ぶぷっ…♥ぶぽ…♥』と膣壁とペニス間のわずかな隙間に空気が入り込む音が生々しく鼓膜を揺らす。 「うふふ…♥キリ君の腰も一緒に持ち上がっちゃってる♥♥引き抜くときもおちんちん愛され続けて嬉しくなっちゃったんですよね~♥」 「フフ、おちんちん抜けて抜けて…あ~抜けちゃう抜けちゃう…♡クスクス」 ゆっくりと持ち上がる膣内から竿が見え、やがて亀頭までが姿を見せた。 テラテラと淫らな液体を纏って輝くペニスが、まさに引き抜かれようとする。 ──その瞬間。 「は~い♥ダ・メ♥」 『ぐじゅぷん!!』と大きな水音を立て、セーラの大質量の腰がキリのペニスに真っ直ぐ振り落ちた。 ペニスを中央に据えたまま、コリコリ・ぷるぷるの内部構造にペニスが根元まで一息に嚥下される。 これまで苦労して登った道のりを、一瞬で無に帰すような腰の振り幅。 『じゅぷんッ♥』と投棄されたセーラの臀部は重力のままに落下し、再びキリの骨盤と癒合を果たす。 濡れた肉ヒダ・肉イボが一息でペニスを舐め落ち、終点に待つセーラの子宮口に『コツン』と衝突した。 「ア゛!ああ゛!! いく! またイ゛グ゛っっ!!」 キリの臨界点を軽々超える官能の大波が、腰の奥深くから一瞬で湧き上がる。 「い゛っく゛うう!! イっぢゃう゛!!でるゅっ!!」 「イケ…♥ もっかいイケな?」 「遠慮なく出しな~、パ・パ♡」 解放されるものと油断していたキリは、無情にも再投下された女尻のギロチンに精を迸らせた。 『ビュグむ…ビュッグ…!びゅっぐ…』 『どぴゅ…♡ぴゅるッ…♡びゅりゅ…♡』 「あ~イってるイってる~♡放してくれると思った~?クスッ♡」 「腰付き上げてセーラちゃんの膣内に連続射精してね~♪ タマの中全部ひっくり返すまでおわんねーからな♥」 『びゅるっ!! びゅぐっ! びゅぐう~~!!』 セーラの中に精液を注ぐ度、キリの肢体は縦波の如く仰け反り──屈折する。 真っ直ぐに伸びたキリの足先はセーラの内側から聞こえる吐精音に合わせ、死にかけのバッタの様にプルプルと戦慄いた。 「騙してごめんね~♥♥ お詫びにピストンの周期ピュッピュと合わせてあげる♥ だ・か・ら♥ 良いって言うまで射精しろ…♥」 「あ゛っ…♡、オ゛ぉ、オ゛っ」 濁音交じりの重たい嬌声がセーラの小刻みな腰の打ち付けに応じて引き絞られた。 セーラはキリの細腰を鷲掴みにしたまま、腰を最小のストロークで前後させる。 『コン…♡コンッ…♡』と最奥部に構えた子宮口は瑞々しい弾力を口移しで亀頭に浴びせ、最後の一滴までを『とぷり…♡』と膣奥に放出させた。 ───。 ──。 ─。 全てが終わったのは、キリが2回目の射精を終えてから5分以上も後のことだった。 今度こそ膣から引き抜かれたペニスは赤黒く濡れ、官能の余韻を小刻みな振動で示していた。 ヒクヒクと脈打つ男性器は、精を放ち切ったというよりも奪われ尽くしたというのが正しい。 凄惨な搾精がキリの表情を恍惚に染めていた。 『書き換え』が完了したのだ。 そこにはかつての様に、神への帰依を誓った精悍なキリの姿はなかった。 身を放り投げ、瀕死の病人の様に喘ぎ続けるキリ。その融け落ちた表情を見下ろし、魔族は満足げに笑った。 「これからよろしくねアナタ…♥」 「すっかりサキュバスの膣内(ナカ)の虜になっちゃたみたいね…♥」 「じゃあキリ君♡お姉ちゃん達と一緒に2階に行こっかぁ…♡」 「ウチらとの結婚がまだ残ってるかんね…♡」 「ぜ~んぶ奪って…♥それから全部を与えてあげる…♥」 「…はぁい♡」 すっかり赤く上気した表情のまま、『書き換え』の終わったキリが虚ろに呟く。 3人の魔族に抱えられ、キリは部屋を出ていった。 魔法の影響で話すことさえ封じられたクラムは、かつての教え子に向かって必死にモゴモゴと叫び続けた。 だが、声にいくら悲痛さを滲ませようと、もはやキリには届かない。 階段を上がるキリの足音が遠ざかり、一拍おいてバタンとドアの閉まる音がした。 後に残されたのは噎せ返るような精液と女の芳香だった。 相変わらずニタニタと嗤うサキュバス達と、放心状態で怯える修道院の面々達。 キリが欠け、彼の妻となる3人のサキュバスは退出したが、室内のパワーバランスは未だ変わらない。 いや、むしろ精神的な面では状況は悪化していた。 目の前で見せつけられた光景。 惨たらしいほどの姦淫の罪を年長の兄弟子であるキリが犯したという事実に、子供たちは多かれ少なかれショックを受けていた。 同時に、彼らの胸の内には焼けるように熱い渦の如き潮流が姿を現した。 これまでの清貧な生活の中には決して存在しなかった、湯気立つ程のうねり。 動悸は激しく、体内に積み重なったリビドーは行き場を求め錯綜する。 その正体が何であるのか、まだ彼らにはわかっていなかった。 「羨ましい…?」 アクリラが畳み掛ける。 紫色に輝くアクリラの瞳が子供達を舐めるように見回す。 「…」 子供達は無言を貫く。 だが、クラムには彼らの心の動揺が痛いくらいに伝わってきた。 聖教を捨て、邪教へと堕ちた兄弟子。 その末路をまざまざと見せつけられた事により、これまで陰に潜んでいた感情が形を取って顕現しようとしている。 あれほどの悦楽を全身に刻まれ、堕落の限りを尽くしたキリは今夜3人の魅力的な妻まで娶るのだ。 子供達には、その姿が単純に幸せそうに映った。 聖教では決して得られないものとして──。 「でもダ~メ♥ 聖教の敬虔な信者の君たちは誘惑なんかに負けっこないよね…♥」 アクリラはイタズラに呟くと、クラムの方向へと向き直る。 「キリ君とは違ってクラム先生なら…♥きちんと私達の誘惑を振り切って子供達を守れますよね…♥」 一際邪悪な視線をこちらに向け、アクリラが唇を開いた。 「あなた達の信じる神と、私たちの神様…♥ どっちがイイのか…♥勝負しましょ…♥」 新月の夜更けに、一層よからぬ事が始まろうとしていた。 (続く)