XaiJu
小梅
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女軍人くすぐり拷問白書 2

 もう頭に入ってはいるが、手持無沙汰のため資料を見返す。

 ……一人目は、911のテロ首謀者殺害任務にも携わったNavySEALsの元隊員。

 ……二人目は、露店で商う霊視占いから、年商800億ドルの証券会社に成り上がらせたドバイの青年。

 そして三人目が……私というわけか。


「…………」


 なんというか……前者の二方と比べ、プレミアリーグから国内リーグに格落ちした感が強く残るが……その自虐心が芽生えを頭振る。

 自身の持ち得る知識、経験。それら清濁を全て余すことなく目の前に広げ、子供たちの視野という選択肢を数多と広げること――

 そんな丸岡氏の教育論には居たく賛同しているし、何より彼には個人的な恩義がいくつかある。

 まぁ、もっとも――


「あのぉ……そろそろご準備、よろしいでしょうか」


 40……30代……大学出たて――

 アジア人特有の年齢が極めて分かり難い、副担任である伊藤史佳教諭がノックの後、おずおずと扉を開き腰低く聞いてくる。


「はい、準備は出来てます」

「あ、はい……ではこちらへ――」


 出来得る限り柔らかく受け答えたつもりだが……軍属である自分にひどく怯えているのか、少しの弾みで泣き出してしまいそうな、ひどく怯えた様相だ。


 なんというか……新兵時代のアイシャ伍長を思いだす。


「す、すみません。今日は及び立てしておいて……丸岡先生が……」

「いえ、彼の自由奔放さには慣れていますので、もっとも――」


 自国の学び舎ではありえない、ヒビ一つとない廊下の綺麗な窓ガラスを横目に、意図的と表情を和らげる。

 

「常に顔を合わせなければならない同僚なら、平手打ちの一つでもかましたくなりそうですが……」

「えぇ、もうほんとっ――」


 正解だったらしい私の合いの手に思わず本音が吹き出すも、我に返った伊藤教諭は赤面し、慌てて乗り出した身を引っ込め畏まる。

 まぁ私も男権社会に身を置く女として、色々同情するところはあるが……

 それにしても、よくもここまで水と油な組み合わせが出来上がったものだ。


「取材と執筆活動が忙しいらしくて……ほんと作家とか政治家にでもなったほうがいいんじゃないですかね……学校休み過ぎですよ、あの人……」


 ――別に二人いるからいいだろ、なんのための副担任だ?


 恐らく……そんなことを悪意なく言い放ち、彼女のストレスを蓄積させているのだろう……。

 とりあえず、愚痴を言ってくれるほどには心開いてくれたようなので、今後丸岡氏の円滑な人間関係の助勢のため、この講義が終わったら、アイシャ伍長も連れ、女三人で飲みに誘ってみるのもいいだろう。

 それに……これから懇意になるであろう、日本国の女性教師と交友関係を持つのも悪くはない。

 そんなことを思いながら、伊藤氏の愚痴に相槌を打っていると、目的地の教室へたどり着く。


「あっ……えっとでは――」

「はい」


 まだ愚痴が言い足りなさそうな伊藤を尻目に、持ってきた資料を再度確認する。


「日本語のニュアンスは難しいところが多いので、なにかありましたらフォローよろしくお願いいたします」


 慇懃にならぬよう伊藤教諭に頭を下げると、引き戸の扉を開き、幼い好奇の視線を一身に浴びながら、教壇の前に立つ。

 そして、息を軽く吸い込み腹筋に力を入れ――


「〇〇小の皆さん初めまして、私の名前はマリア・レミングと申します」



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