ゆらゆら ゆらゆら (・・プロデューサー・・) 夏葉は一定のリズムで揺れる己を暗闇の中で漂わせていた。 いま自分はどうしているのか。 どうしてこうなっているのか。 泥のように澱んだ頭で考えていた。 (プロデューサー・・どこ・・?) 自分の半ば無理な提案でみんなと繰り出した南国の海。 そんな提案も予定を苦労しながら調整して付き合ってくれたプロデューサー。 (私は・・失ってしまった・・) 自家用のクルーザーで大海原を飛ばしていた時にそれはおきてしまった。 放クラとして久し振りにまとまった休暇が取れた事で、 夏葉の提案で訪れたみんなとの南国ツアー。 楽しいみんなとの時間は夏葉のテンションを非日常なものにしてしまっていた。それは皆も同じだった。プロデューサーを除いて。 「プロデューサー!せっかくなんだからアナタも楽しまないと!」 夏葉はクルーザーの傍らに座るプロデューサーの手を強引に引き寄せた。 「お、おい夏葉!あんまりはしゃぐと危ないぞ。」 夏葉に腕を取られながら、プロデューサーは揺れる船上を覚束ない足取りで立ち上がった。 二人してクルーザーの手すりに捕まりながら眺める海と空。 困り顔をしながらも、プロデューサーは非日常な景色に笑みを浮かべていた。 そんなプロデューサーの横顔を眺めていると、 自然と夏葉の顔からも笑みがこぼれた。 ドスリ 突如二人の間を切り裂くように、鈍い音と共に鋭い何かが過った。 「何!?」 夏葉は声を上げ、音の方を見遣った。 するとそこには更なる非日常を象徴するようなモノが船体に突き刺さっていた。 「弓矢!?」 夏葉は咄嗟に矢の放たれた方向を確認した。 するといつの間にか島が迫っているのが見えた。 「島!?いつの間に!?」 夏葉がそう叫ぶと同時に、さらに数本の矢が船体に突き刺さった。 夏葉は目を凝らし島を確認すると、島の岩場から数人が弓を此方に構えているのが見えた。 「みんな!早く船内に避難して!それから船を早く港へ!」 夏葉は素早くみんなとクルーザーの操舵手に告げた。 そして自身たちも避難すべくプロデューサーに顔を向けたその時だった。 「夏葉!危ない!!」 プロデューサーの手が夏葉の腕を摑んだかと思うと、夏葉は思い切りプロデューサーの方へと引き寄せられた。 その反動でプロデューサーの身体は夏葉が居たあたりへと入れ替わる形で移動した。 すると鋭い切り裂き音と共に、夏葉の鼻先を空気が揺らした。 それは夏葉の側をかすめ、鈍い音と共にプロデューサーの身体へと突き刺さった。 ゆっくりと身を仰け反らせるプロデューサー。 そのまま突き刺さった矢の勢いで、手すりの無い部分から海中へと姿を消すプロデューサー。 音ズレのように遅れて聞こえる海没の音。 夏葉の視界の全てがスローモーションのように映った。 「プ、プロデューサー!!」 数刻遅れて我に返った夏葉の悲痛な声が響いた。 なおも飛んでくる弓矢に臆することなく、夏葉は手すり越しに海中を覗き込んだ。 そこには泡飛沫とどす黒い液体が漂うのみで、プロデューサーの姿は無かった。 「!」 夏葉は咄嗟にプロデューサーを追って飛び込もうとした。 それと同時にクルーザーががくんと揺れ、 勢いよく島を離脱するように走り出した。 「ちょっと!船を止めて!プロデューサーが!!」 夏葉は半ば取り乱しがちに操舵手に叫んだ。 そして船の後方へと走り出した。 しかし傍らに居た樹里に身体を摑まれ抑えられてしまった。 「やめろ夏葉!死んじまうぞ!」 夏葉は樹里の制止も振り切る勢いで樹里に向かって叫んだ。 「プロデューサーが矢を受けて落ちたのよ!早く助けないと!!」 夏葉が必至に藻掻くも、樹里の手は緩まない。 「今行っても夏葉がやられるだけだぞ!今はいったん帰って現地の警察を仰いだ方がいいって!」 樹里の言葉と共に、他のみんなの心配する顔が夏葉に注がれた。 そのおかげか、夏葉は少し冷静になれた。 暫しの沈黙の後、夏葉は抵抗を止めゆっくりと口を開いた。 「・・わかったわ・・。ごめんなさい。ありがとう、樹里・・。」 夏葉はゆっくりとその場に立ち尽くし、 遠くなっていく島と海をじっとみつめていた。 失意のうちに帰国してから数か月後、 夏葉は再び単身あの島へと船を出していた。 唯一のプロデューサーを失い体制を崩された事務所の面々は、 一時休養という事で活動を休止していた。 その間夏葉はプロデューサーの事ばかりを考えていた。 自分を犠牲にしてまで救ってくれた大切な人。 絶対に探し出して日本に連れて帰らなければ。 その想いをむねに秘め、夏葉はあの島に就いて調査を開始した。 その結果、あの島は外部との接触を酷く嫌う部族の島だという事が分かった。規模が小さすぎて現地の人間しか知らない情報だった為、クルーザーの操舵手も理解していなかったらしい。 そんな島なので、万が一にプロデューサーが島に漂着したとしても、生存は全く保証できない。 島の情報をくれた現地の人間はそう言っていた。 だが夏葉は諦めきれなかった。 なんとしてもプロデューサーを助け出したい。 その想いで準備をし、再びあの島へと向かっていたのだった。 小型のモーターボートを操舵し、島へと向かう夏葉。 島へと向かう準備はしたものの、交渉材料は無きに等しかった。 一応食糧や生活用品、その他諸々の贈答品を積み込んでの単独行だが、正直勝算は見込み薄だった。 持ち前の語学や掌握術、最終手段の体力で何とかしてみせる。 その程度の自信ではあったが、不思議と夏葉の気分は高揚していた。 (プロデューサー・・生きてて。必ず、アナタを助けて見せるから!) ドスン! 夏葉の決意を碎くかのように、激しい衝撃と破壊音が響き渡った。 そして夏葉の身体はあの時と同じくスローモーションで宙を舞った。 (まさか・・岩礁!?) ゆっくりと宙を漂いながら夏葉は思った。 視界にはボートと破片、積載物が同じく宙を舞っていた。 その光景に様々な事が脳裏を過った。 性急な行動、焦燥、後悔、未練。 自身を顧みながら、夏葉は様々な事を走馬灯のように想い描いた。 そして最後にプロデューサーの顔が浮かんできた。 (ごめんなさいプロデューサー・・私、またアナタに・・) 夏葉の思考は、海面に叩きつけられた衝撃により終わった。 そして夏葉の意識は水の底とも闇の底ともつかぬ深い場所へとゆっくり滑り落ちていった。 「ん・・」 夏葉は周囲の熱気と振動に魘されながら、ゆっくりと眼を開けた。 一体どれくらい経っただろうか。 夏葉が意識を取り戻すと、その身体はまるで人攫いにでも拐かされたが如く、何者かの肩に身体ごと抱えられながら移動していた。 夏葉は身を捩り、状況を確認した。 どうやら夏葉を抱えているのは男らしかった。 それもかなり逞しい。 そして夏葉はその男の風貌に驚愕した。 男は装飾品以外の衣類と思しきものを一切身に付けておらず、男性器に至るまで裸の状態だった。その肌は鍛え上げられた上に浅黒く灼け、刺青と思しきものが全身に彫り込まれている。その出で立ちから、夏葉はこの男が例の島の部族の一員ではと察した。 「ちょっとアナタ!」 夏葉は早速交渉を持ち掛けようと、抱えられたままの状態で男の顔を見上げた。そこで夏葉の言葉は二の句が出ないまま止まってしまった。 「ぷ、プロデューサー!!」 夏葉は再び驚愕した。 男の顔は、かなり野性味を帯びて刺青だらけになってはいたが、紛れもなくプロデューサーのそれだったのだ。 「そ、そんな・・でも・・あっ!」 狼狽する夏葉の目に、男の首につけられたネックレスが目に付いた。 それは夏葉が昔プロデューサーへ贈ったもので、 付けることに難色を示すプロデューサーに、シャツの下に付ければ目立たないからと強引にプレゼントしたものだった。 その存在に、嬉しさと驚きが入り混じった複雑な感情が夏葉の言葉を塞いだ。 プロデューサーは夏葉の呼びかけに顔を向けるも、特段表情を作らず黙々と歩き続けるのみだった。 「プロデューサー!どうしたの!?私よ!夏葉よ!」 夏葉の必死の呼びかけにも関わらず、プロデューサーは無反応のままだった。 「ちょっと!わからないの!?早く下して!」 無反応なプロデューサーに業を煮やし、夏葉は強引に下りようとした。するとプロデューサーは凄い力で夏葉をがっしりと固める様に抱え込んだ。 「ぐっ・・」 夏葉は成す術も無く、唯々無反応なプロデューサーに抱えられ、島の森と思われる中を只管歩み続けた。 (プロデューサー・・どうしちゃったの?) 暫く進むと、何やら喧騒が聞こえてきた。 人の声、煙の匂い、何かの香料。 様々なモノが夏葉の感覚を刺激した。 夏葉が周囲を見渡すと、そこは部族の村らしかった。 村の男女が皆、物珍しそうに夏葉を見つめている。 彼らの姿はやはりプロデューサーと同じくほぼ全裸で、その浅黒い肌には全身に奇異な刺青が施されていた。 夏葉が警戒の目であたりを観察していると、やがて村の中央に鎮座する老人たちの元へと連れて行かれた。 そして夏葉はどすりと無雜作に眼前へと下された。 「長老。」 ここで初めてプロデューサーが口を開いた。 重く無感情のようではあるが、それはあの聞き覚えのあるプロデューサーの親しみ深い声だった。 その声を聞いて夏葉は少し安堵した。 しかしプロデューサーの二言目に我が耳を疑った。 「この女。俺の奴隷にする。いいか。」 プロデューサーの言葉を受け、長老と呼ばれた男と傍らの男はひそひそと話し合っていた。そして話を終えると長老はゆっくり口を開いた。 「よかろう。認める。早速儀式を執り行おう。」 長老と呼ばれた男の口から聞こえてきたのは日本語だった。 「日本語?・・どうして・・」 夏葉は唖然とした顔で無意識に言葉を漏らした。 すると長老はほうという顔で夏葉を見遣った。 「其方、我らが言葉を理解するか。我らの言葉はその昔、この島を救った英雄から齎された物。其方、この選ばれし者と同じ民か?」 夏葉は訳がわからなかったが、凡その状況は理解できた。 どうやらこの島を救った英雄とやらは日本人だったらしい。 その言葉がこの部族に根付いていたという訳らしかった。 プロデューサーが殺されず助けられたのは、英雄と同じ民だったからといったところらしい。 「そ、そうです。プロデュ・・この人は、どうしてしまったんですか?」 夏葉はおそるおそる長老に向かって問うた。 しかし長老は意外にも優しい口調で夏葉に語り掛けた。 「選ばれし者は、この島に流れ着いた時既に過去を失っておった。しかし我らと同じ言葉を話す以上、我々も無碍には出来ぬ。よって我らの仲間へと迎え入れたのだ。」 どうやらプロデューサーは奇しくも日本人であることを理由に生かされたようだった。夏葉はそれには安堵した。しかし・・。 「あの、この模様は・・刺青なんでしょうか?」 夏葉が一縷の希望を以て長老に問うた。 この模様が刺青ではなくペイントなら社会復帰は可能だ。 夏葉はペイントであってくれと願った。然し現実は無情だった。 「如何にも。この島で生きていく者には証が必要だ。それを施しただけの事。」 夏葉は愕然とした。 刺青は昨今の情勢から若干迎合意識は生まれてはいる。 然しそれはごく一部の話だ。 一般社会で生きていく上で、刺青がタブーには変わりない。 それが全身、果ては顏にまで及んでいる。 刺青を消す事は可能だ。だがそれがどこまで完全に出来るか。 夏葉はこれからの事を危惧していた。 だが重要な一言を思い出した。 「奴隷・・って・・どういう事ですか?・・」 夏葉は自分に向けられた扱いを再認識した。 すると長老は変わらない表情で夏葉に語り掛けた。 「知れた事。お主がこの選ばれし者、スイの物となるのだ。だが安堵せよ。お主もこの村の一員となる事には変わりない。」 夏葉はその言葉にサッと血の気が引くのを感じた。 (それはつまり、プロデューサーと同じく・・) 夏葉は持ち前の瞬発力で飛び上がり、脱兎の如く駆け出した。 しかしそれと同時にプロデューサーが夏葉にタックルをけしかけた。 「あう!」 夏葉は溜まらず地面に倒れ込んだ。そして間髪入れずにプロデューサーが上から抑え込んできた。 「長老。」 プロデューサーが長老に語り掛けると、長老は無言でうなずいた。 そして傍らの男に目配せで合図した。 すると男はむんと掛け声を上げ、眼前で手を合わせ何やら呪文めいた言葉を紡ぎ始めた。すると男の手から黄色い煙のようなものが噴き出てきた。それを確認すると男は徐に立ち上がり。夏葉の方に歩みを進めて来た。 その様子に夏葉はイヤな予感を感じ取り、少しでも逃げようと身を捩った。しかしプロデューサーのがっしりとした肉体に阻まれ、身動きが取れずじまいだった。 やがて男の両手が夏葉の眼前に迫ってきた。 男の両手から無限とも思える量の煙が上がり、忽ち夏葉の顔を覆った。突然の出来事に対処する間もなく、夏葉はせき込みながらもその煙を吸い込んでしまった。 するとすぐさま夏葉の視界がぐわんと揺らいだ。同時に手足の感覚がじんわりと遠退いてゆく。 その特異な感覚に、夏葉の脳裏をある言葉が過った。 (コレは、ま・・ます・・い・・?) 夏葉は揺らぐ視界の中精一杯の力でそう考えた後、忽ち暗い意識の淵へと転がり落ちていった。 (ん・・う・・) どれくらいの時が経過しただろうか。 夏葉は不思議な肌の刺激に気怠く意識をもたげた。しかしその意識は、どこか夢の中のように朦朧としていた。 そして刺激とは認識したものの、それはどこか遠い別の出来事のように思えた。 腕を誰かに握られているような感覚。 何かを肌に押し込むような感覚。 それらは理解出来るものの、それはどこか自分の感覚でないような、意識に隔てられた磨り硝子越しに見るような世界の感覚。 夏葉は気怠く気を抜くとそのまま眠ってしまいそうな意識を何とか凝らして、目の前の光景を理解しようと注視した。 夏葉の腕を浅黒い男の手が掴み、何かしている。 片手で夏葉の腕を握り、もう片方の手で何か棒状の物を握り夏葉の肌に押し当てている。 ざくり。ざくり。 棒状の物が夏葉の肌に押し当てられる度、 不快な音が僅かに聞こえる。 よく見ると棒の先端は格子状の棘になっている。 男は棒の先端を傍らに置かれた黒い液体の入った瓶に浸し、 夏葉の肌にざくりざくりと突き刺していたのだ。 刺される度にそこから流れるどす黒い液体。 滴る液体には血液が含まれている。 しかし痛みや感覚、それらは一切無い。 そこに有るのは、己の肌が得体の知れない何かに侵されていくという不快感だけだった。 これは彼らに於ける刺青の施術だ。 今、彼らは自分に彼ら同様の刺青を施そうとしている。 其処まで理解すると、夏葉の意識は極度の恐怖と共にびくんと反応して覚醒した。 「あ!あう・・あう!あ・・!」 覚醒と共に激しい抵抗と拒絶の声を上げた夏葉だったが、 頭で思うように口も身体も殆ど動かなかった。 そうしている間にも、夏葉のアイドルとして磨き上げた身体はじわりじわりと黒い液体に浸蝕されていく。 「ああ!あううあ!」 夏葉は力の入らない声で必死に抵抗した。しかしどう足掻いても四肢はおろか舌を動かす事もままならない。 夏葉はそんな己の無力さと悔しさに、いつの間にかぼろぼろと大粒の涙をながしていた。 (プロデューサー!おねがい!この人を止めて!!) 夏葉は僅かに自由の利く眼を動かし、姿の見えぬプロデューサーを求めて縋るような声を上げた。だがやはりその声は、言葉として紡ぐには到底叶わなかった。 「うおううああ!!おあああ!おおいおおおええ!!」 夏葉は涙だけではなく鼻や口、穴という穴から体液を滴らせありったけの声で哀願した。 すると夏葉に施術していた男が動きを止めた。 夏葉は男の不意な行動に声を止め、男を凝視した。 その男はよく見ると、あの長老の傍らにいた男だった。 男は道具を置き、あの時見せた動きと謎の言葉を紡ぎ始めた。 夏葉はこれから起こる事を悟り、再び激しく声を上げた。 だが全て徒労に終わった。 夏葉は再び男の手から発せられた煙を吸い込んでしまい、再び絶望の淵へと落ちていった。 夏葉は絶望の淵からゆっくりと目を覚ました。 酷い悪夢を見た。 大切な人を失ってしまう夢。 もう戻れない場所に堕ちてしまう夢。 努力して掴み取った物が全て両手から零れ落ちていってしまう夢。 よかった。 全ては夢だ。 早くおきよう。 夏葉は微睡みを楽しみながら、 ゆっくりと起きながら意識を取り戻した。 (えっと・・昨日は何をしたんだったかしら・・) 夏葉は昨日を思い出そうと頭を巡らせた。 ずくん 不意に夏葉の身体が熱さに疼いた。 (何?・・もしかして肌を焼き過ぎたの?) 夏葉はみんなと南国ツアーに来ていたことを思い出した。 そこから手繰るように記憶を呼び起こす。 ずくん ずくん 夏葉の肌は尚も疼く。 次第に夏葉はそれが日焼けによるものではないと悟った。 ずくん ずくん 肌が疼く度に、夏葉の脳裏に現実が取り戻されていく。 不意に訪れる震え。 既に夏葉ははっきりとした意識を取り戻していた。 だが確認するのが怖い。 全て夢であって欲しい。 夏葉は暫し己と葛藤した。 そして現実を受け入れるべく、おそるおそる両目をゆっくりと開いた。 広く暗い木と蔦で組み上げられた小屋の中。 床に敷かれた粗末な麻状の敷物に寝かされた自分。 そして一糸まとわぬ姿。 その身体を彩るように全身へ彫り込まれた幾何学模様の刺青。 それを縁取るように紅く腫れ上がった肌。 「あ・・ああ・・いやあああああ!!」 夏葉は己の両腕で身体を抱き締め人目も憚らず取り乱した。 夢では無かった。 現実だった。 もう戻れない。 故郷。 華やかなステージ。 みんなとの楽しい時間。 努力して掴んだこれからの未来。 全て失くしてしまった。 どうして。 どうしてこんな事に。 プロデューサー。 お願い、助けて。 「目を覚ましたか。」 夏葉が身体を抱えて床で嗚咽していると、暗闇から声が聞こえた。 その声に反応して、夏葉は顔を上げた。 するとそこにはあの長老と刺青を施術した男、 そしてプロデューサーが小屋の奥に鎮座していた。 夏葉はその姿を認めるや否や、 自身の流れ出る涙を払いキッと溢れんばかりの憎惡で睨み付けた。 「あ、あなたたち!!どうしてこんな事を!!」 夏葉は自身の敵意を抑える事無く立ち上がり、素早く長老目掛けて駆け出した。 「xsじkvh!!」 すると刺青を施術した男が片手を夏葉に掲げ、何かしら理解出来ない言葉を発した。 途端に夏葉の首が熱くなった。 同時に身体中の力が抜け、夏葉は長老たちの目前で無様に倒れ込んだ。 「な、何なの・・?」 倒れ込んだ痛みよりも自身に起こった出来事が気になり、夏葉は首の辺りを確認した。 (なにこれ・・首輪?) すっかり力の入らなくなった指で、夏葉はそれに指を這わせた。 今まで気が付かなかったが、木製と思われる首輪が夏葉の首に嵌められていた。それは薄暗い小屋の中で仄かに光り、夏葉の眼下を照らしていた。 「喜ぶがいい。お主は正式にこの村へと迎え入れられた。そしてそれはスイの所有物である証よ。のうスイ。」 長老は満足げに微笑み、傍らのプロデューサーへと促した。 「四つん這いになれ。」 プロデューサーが無機質な声で夏葉に命令した。 すると夏葉の意思とは無関係に夏葉の身体が動き始めた。 夏葉は呆気に取られたように命令に従い犬の様に四つん這いになった。 「な、なんなのコレ!・・私、どうなってるの!?」 夏葉は自身に起こった事が理解できないといった感じで誰へともなく問うた。 その問いに答えたのは刺青を施術した男だった。 「その首輪は儂特製の品よ。お主はもうそれを外す事は出来ぬ。これからはスイの伴侶として、そして奴隷としてこの村で暮らすが良い。」 男は冷淡に夏葉へ言い放った。 夏葉の理解が及ぶ前に、プロデューサーが動いた。 プロデューサーは夏葉の首輪に手を廻し、 手にしたリードのような物を括り付けた。 「ぷ。プロデューサー・・。」 夏葉が力なく縋るような眼でプロデューサーを見上げた。 だがプロデューサーはそんな夏葉を気に留める事も無く、 長老に視線を向けた。 「礼を言う長老。俺はこれで満足だ。」 プロデューサーがそう礼を言うと、 長老たちは満足そうに無言で頷いた。 「行くぞ、来い。」 プロデューサーはそう言うと、小屋の外へと歩き出した。 すると夏葉の意思に関係無く、夏葉はのそのそとプロデューサーのあとを歩き始めた。 (プロデューサー・・) 夏葉の小さな呟きと共に、再び夏葉の目からゆっくりと涙が零れ落ちた。 そして夏葉の長い奴隷生活が幕を開けた。 「はむ・・あむ・・ん・・」 どれくらいの年月が流れたであろうか。 夏葉は今日も四つん這いのまま、愛するご主人様に奉仕していた。 プロデューサーのリードを引く力と頭を撫でる手がとても心地よい。 頭を撫でられる度、夏葉の身体を快感が駆け巡る。 その度に夏葉は嬉しくなり、物欲しそうに尻を振った。 「いくぞ。」 プロデューサーがそう言うと、夏葉の口腔を熱い液体が満たした。 夏葉は待ち焦がれたようにプロデューサーの精液をごくごくと喉を鳴らしながら飲み干した。 プロデューサーは己の憤りを吐き出した後、夏葉のリードを軽く引いた。 夏葉はいつもの合図を受け取ると、自身の口腔からプロデューサーの一物を抜き取った。 「あむ・・んちゅ♡・・ん・・」 そして自身の舌で、それの汚れを丁寧に舐めとり始めた。 奉仕の合間に、夏葉はプロデューサーの顔を横目で見た。 その顔はとても満足そうだった。 その表情を認めると、夏葉も心が満たされた。 愛する人の奴隷となり、奉仕する。 なんと心地よい時間だろうか。 何故私はあんなにも過去に執著していたのだろう。 夏葉は自身の過去を顧みながらそう思った。 恵まれた地位。 満ち足りた時間。 努力で進む輝く未来。 何故あんなにも縋りついていたのだろうか。 夏葉は愛する人の陰茎に帯びた熱を肌で感じながら思った。 噎せ返るような陰茎の匂いが雌の本能を刺激する。 夏葉はもう溜まらなくなっていた。 「あの、ご主人様・・その・・。」 夏葉がプロデューサーを見上げ、哀願するような眼で訴えかけた。 夏葉の尻はふるふると震え、秘所からは絶え間なく愛液が漏れ出ていた。 プロデューサーはその様を一瞥し、ふっと笑った。 その表情に夏葉はぱあっと笑顔を浮かべた。 お許しの合図だ。 夏葉は待ってましたとばかりに身体の向きを変え、 プロデューサーに向かって尻を突き上げた。 「お、お情け・・お願いします・・!」 夏葉が震える声でそう呟くと、プロデューサーは勢いよく夏葉の中に陰茎を深々と突き刺した。 「んひぃ♡」 夏葉は溜まらず情けない声を上げた。 先ほど果てたばかりとは思えないプロデューサーの一物は既に盛りを取り戻しており、夏葉の内部を激しく暴れた。 「んひ♡あ・・あひ♡・・んは!」 夏葉は内部を掻き回される度、獣のように喘いだ。 一突きされる度、一度交わる度、夏葉の心が、人間性が削られていく。後に残るのは、獣としての本能だけだった。 夏葉はいまの生活にとても感謝していた。 愛する人と共に、永遠の関係を築けた。 もう他には何も要らない。 ご主人様と共に在りたい。 地面に這いつくばり涎を垂らしながら、 突き上げられる度に恍惚とした表情で奉仕の言葉を反芻した。 「いくぞ!」 プロデューサーの声が聞こえると、夏葉はその時に備えた。 一滴もこぼすまいと膣に力を入れる。 「ん!!」 プロデューサーの声が今度は短く聞こえた。 すると先ほど出したとは思えぬ量の精液が夏葉を満たした。 同時に夏葉の身体を貫くように快感が駆け巡った。 「あひいいいいい!!」 忽ち夏葉の身体が痙攣して仰け反った。 夏葉は最大限の快感を膣で、脳で受け止めその場に倒れた。 満たされた心地で意識が遠のいていく。 (しあわせ♡・・しあわせ♡・・あいしてる♡・・アナタ・・♡) 夏葉は恍惚とした表情のまま、幸せの淵へと吸い込まれていった。