XaiJu
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覆水の月

熱く照らす太陽。 心地よく響き続ける波の音。 身体全体を包むように靡く海風。 「ん・・ぅん・・はぁ・・♡」 他に誰一人居ない浜辺でにちかは木陰の大きな岩に腰を下ろし、蹲りながら小さく淫猥に満ちた声を上げていた。 にちかの陰部に潜ませた指が動くたび、ぬちゃり、にちゃりと粘液に塗れた音が響く。 その度にびくんびくんと、小刻みに焼けた肌を震わせた。 「ん・・い♡・・んぃ!!」 止め処なく押し寄せる快楽に、にちかはびくんと大きめに身体を震わせ軽い絶頂を迎えた。 するとすっかり大きく張った二つの乳房から、 小さく熱いモノがぴゅっと噴き出した。 にちかが絶頂に身体を震わせると、 噴き出した母乳もそれに併せて小刻みに噴き出す。 そしてそれはすっかり大きく育ったにちかの腹部に降りかかった。 ぱたぱたと自身の母乳が腹部に触れる。 にちかは絶頂で荒れた呼吸と共に、それを虚ろな目で眺めていた。 ゆっくりと腹部を流れ落ちる雫。 自身から噴き出た液体の温かさを肌で感じながら、 にちかは自身の大きく膨らんだ腹部を、少し澱んだ目でじっと見つめた。 やがて絶頂の余韻がゆっくりと引いていくのを感じると、 にちかは自身の粘液に塗れた手で腹部をそっと摩った。 温かい粘液と母乳が腹部に擦り込まれるのを感じると、 にちかはぽつりと小さく漏らした。 「とうとう・・ちゃったなあ・・」 誰の為でもない、誰に聞かせる為でもない、何気ない言葉。 嘗てアイドルとして日々研鑽したとは思えない程膨らんだその身体を見つめながら、にちかは無意識に紡がれた自身の言葉に心を揺蕩わせた。 夫との営みに、快楽に身を委ねた日々を過ごした代償か報いか、 にちかは或る日自身の変化に気が付いた。 月の物が終りを告げ、代わるように訪れた身体の不調。 当初は認めたく無かったが、現実は無情だった。 頭では覚悟をしていた。 しかし直面した現実はそれを容易く払いのけた。 (今度こそもう戻れない) そんな言葉がにちかの脳裏を駆け回った。 夫であるイディはにちかの変化に甚く喜んだが、 当のにちかは夫と共に喜びを分かつ気には到底なれないでいた。 自分は母になる。 その言葉はやっと今の環境に慣れ始めてきたにちかにとって、 辛うじて保たれていた自身が粉々に打ち砕かれるようだった。 それからにちかは酷く動搖した日々を送っていた。 そうしている間も小さな村の営みは続いていく。 にちかの懐妊を村の女性たちは自分の事のように喜んだ。 そして甲斐甲斐しくにちかの仕事を負担しようと申し出てくれもした。 だがにちかはそれを丁重に辞退した。 正直悪阻と格闘する日々はとても辛く、 確かに他者の扶助は有難かった。 だがそれに甘んじて、代わり行く自身の身体をただ只管じっと見つめ続ける気には到底なれないでいた。 何かをして気を紛らわせたい。 日本での日々がそうであったように、 にちかはいまの自分を日々を忙しくしていたかった。 迫る現実から出来るだけ目を背けていられるように。 にちかの辛い日々はもう一つ理由が有った。 夫イディが夜の相手をしてくれなくなったのだ。 理由は単純明快、にちかの身体を気遣っている為だ。 夫婦の営みには当然それなりの負担が身体に掛かる。 身重になりつつあるにちかは、当然その理由を理解していた。 だが日々繰り返す営みは、既ににちかの日常に組み込まれていた。 当初は頑なに拒否していたそれは、 今となっては何も拠り所の無い、 にちかの日々を潤す貴重な糧となっていたのだ。 夫イディはにちかに世話を焼く一方、一切の性交渉を断っていた。 それだけにちかの事を想っていたらしく、 にちかはすこしだけその事に心が揺さぶられた。 しかし毎夜のように激しく交わされた営みを突然断たれたにちかは、心身ともに溜まらなくなっていた。 日を追う毎に疼く身体。 未通の頃が懐かしい程に夫の大きさへと拡張されてしまった秘所からは、常に垂涎の如く愛液が垂れ始めていた。 (このままではおかしくなってしまう。) 悩んだ結果としてにちかは、 自分の事は自分でするしか無くなっていたのだ。 然し村の掟としても、身重の者の性行為は慎まれるべきという概念が存在していた。それも未開文明ならではの自衛策であろう。子を成すという事は文明レベルによってかなりの危険を伴う。当然の帰結であろう。 しかしにちかにとって、そんな事はどうでも良かった。 今すぐこの火照りを何とかしたい。 生きていく活力を奪わないで欲しい。 そんな追い詰められたにちかの取った策は、 誰もいない場所での自慰行為であった。 軽い雑務を申し出て、 同伴を丁重に辞退し一人人気の無い場所へと姿を隠す。 何とも単純明快且つ浅はかな企みでは有ったが、 外敵不在の島で人を疑うという事を知らない御人好しな民族というのが功を奏した。 それからにちかは一人になる機会が有る度、こうして溜まった情欲を一人発散させていたのだ。 絶頂を迎えて落ち着きを取り戻したが、にちかは少しだけ焦りを感じていた。 一人で何とか発散させることを覚えてから幾日。 暫くは凌げていたこの手にも、日を追う毎に刺激が薄らぎ始めていたのだ。 「なんか・・ちょっと足りないんだけど。なんなのもー・・。」 嘗ての刺激を求め、にちかは再び乳房と秘所を愛撫してみた。 ぴくりぴくりと再び身体を駆け巡る刺激。 だがやはり物足りない。 にちかの身体は、自慰で得られる刺激にすっかり慣れてしまっていた。 「・・はあ」 にちかは落胆の溜息を漏らし、だらりと腕を下ろして行為を中断した。 欲求不満で満たされた重たい頭を擡げ、ぼんやりとした眼で空を仰いだ。 青く輝く南国の空。 そこから降り注ぐ光がにちかの眼を眩ませる。 溜まらず目を閉じたにちかの脳裏に、 今の自分が客観的に映し出される。 灼けた肌、刻まれた刺青、すっかり肥大化した乳房と腹部、 日々夫の巨根を咥え込んだ事ですっかり黒く弛緩してしまった秘所、 緩んだ秘所から事ある毎に漏れだす愛液、そして絶えず押し寄せる愛欲。 「なんなの、これ。」 にちかは己の置かれた状況に、冷たい声が無意識に漏れだした。 折り合いをつけた筈のこの生活。 もう戻れないのだから仕方がない。 過去はもう忘れよう。 そう誓った筈だった。 だがその決意は眩い日差しと共に全て透かされてしまった。 眩しい太陽。 強い光。 嘗て私はあそこに居た。 苦労して掴み取った居場所。 憧れの人と共に。 これからだった。 そう、それなのに。 それなのに、どうして。 どうしてこんなことに。 「・・う・・うあ・・ああああ!」 にちかは溢れる何かを抑える間もなく、声を上げて激しく子供の様に泣き出した。 そしてそのまま力無く砂浜に膝から崩れ落ち、 四つん這いのまま両手で砂を握りしめる。 自重で重く垂れさがる己の乳房と腹部。 それがにちかの涙を一層引き出した。 にちかは砂浜に顔をうずめ、零れる涙をそこに吸わせた。 そして心が落ち着くまでの間、一頻り泣き続けた。 心がこれ以上壊れてしまわないように。

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