「ん・・」 咲耶は澱んだ意識の下、気怠い身体を捩りながら無意識に声を漏らした。 身体が重い。 そして身体中が少し痛む。 寝苦しい夜のように身じろぎするが、それらが解消されることは無かった。 (最近の気温差で風邪を拗らせてしまったせい?) (昨日のレッスンを少し頑張り過ぎたかな?) 夢現の意識下で、自身の思い当たる節を羅列してみる。 閉じられたままの眼を上に向け思案してみるが、特段思い当たる節は無い。 それなのにじんじんとした軽い痛みが苦情のように身体中から上がってきている。 (今日はお休み?それより何日だっけ?今日の予定は・・) 不意に咲耶の注意は現状の把握に向けられた。 今日が休みならばいいが、平日や仕事ならばこうはしていられない。 (取り敢えず・・起きなきゃ・・) 咲耶は起きようと意識した時、初めて妙な違和感をおぼえた。 意識は寝起き前のそれなのに、重力が下に向いている。 それなのに、身体は眠っているかのようなぼんやりとした感覚が残っている。 (・・私・・寝てたんだよね・・?) 咲耶は一抹の不安を感じ、身体の自由を確かめるように手足を動かそうと試みた。 (・・!!・・あ、あれ?) 自己の想像とは裏腹に、咲耶の身体は鈍く動くのみだった。 それどころか容易に眼を開く事も出来ない。 (・・これは・・金縛り?) 咲耶は異質な現状に、過去の経験から予測を立てた。 咲耶は日々のハードなスケジュールに圧されてしまい、覚醒したままの頭と休眠した身体が引きおこす所謂「金縛り」を経験した事が有った。この感覚はそれに似ていた。だが何かが違う。 (手が・・両手が下がらない。縛られてる?) 咲耶の両手は頭の後ろに回ったまま、動かせなくなっていた。 振り解こうと拳に力を込めるも、伝わってくるのは両手首に回された拘束具のようなものの感覚だけだった。 (私・・縛られてる。そして・・吊るされてる?) 咲耶は漸く現状を把握する事が出来た。 自身は寝ているのではなく、両手首を縛られている。そしてそこから吊り上げられている。白瀬咲耶は囚われの身だったのだ。 置かれた環境を悟り、咲耶の脳が少し覚醒する。 だが身体の感覚は依然として鈍いままだった。 そして両目は変わらず閉じられたまま開かない。 異常な状況下にも関わらず、咲耶の危機意識はどこかまだ緩いままだった。それはまるで「これは夢だ」と悟った明晰夢のように。 (取り敢えず・・眼を開こう) 咲耶は己の眼にぐっと力を込め、精一杯の力でゆっくりと瞼をこじ開けた。 そして開かれた視界に飛び込んできた光景は、咲耶の意識を酷く混乱させた。 「・・え・・?」 咲耶は飛び込んできた光景と、不意に己の口から漏れ出た声に二度驚いた。 咲耶の周りは暗い地下牢のような石造りの部屋だった。出入口と思しき壁の一面には鉄格子の仕切りが嵌っている。部屋の片隅の粗末なテーブルに置かれた燭台の蝋燭が僅かな光となって、室内を漂う生暖かい空気にゆらゆらと踊らされている。 室内を漂う風を受けて、咲耶は新しい違和感をおぼえた。 不思議と身体全体に風を感じる。 咲耶は不安になって己の身体を見下ろした。その不安は的中する。 「え?私・・裸にされてる?」 咲耶の身体は一糸纏わぬ生まれたままの姿となっていた。 それだけでも動搖を誘うのだが、現実はその上を行っていた。 咲耶の全身は謎の紋様に覆われていたのだ。 そしてその肌はいつも以上に色濃くなっている。 咲耶の脳内で、先ほどの痛みが記憶の割符のように厭な合致を見せた。 「まさか・・これ・・ボディペイント・・まさか・・え・・」 咲耶の脚が小刻みに震える。 (大丈夫・・これは夢。夢だから・・) 咲耶が頭の中で必死に弁解するも、その震えは止まらない。 (一体いつの間に?これは夢だから。どうしてこんなところに?一体誰の仕業?) 咲耶の思考はぐるぐると巡りつづけ混乱していった。 そしてそのまま消えてしまいそうになる。 ガタリ 不意に暗い部屋の奧から物音がした。 それと共に闇の中で蠢く大きな影。 咲耶の混濁しつつあった意識は再び覚醒し、一気に其方へ注がれる。 影はのそりのそりと咲耶の方に近付いてきた。 それと共に蝋燭の炎が影をゆっくり取り去っていく。 闇から姿を現したのは、全身を黒衣で包んだ大柄の鬼だった。 鬼というのは咲耶の直感的な形容だったが、それは強ち間違いではなかった。大柄な身体、黒衣から覗く赤黒い肌、明かりに照らされた顔には長く突き出た牙、金色に光る異質な眼、尖った耳など、咲耶が想像し得る鬼の姿そのものだったのだ。 鬼は咲耶の眼前まで来ると立ち止まった。そして咲耶の身体中をまじまじと値踏みするように眺め始めた。 鬼は「ふん」と低く鼻を鳴らすと、徐に無言のまま咲耶の乳房に手を触れた。 「んあ!」 不意の行為に、咲耶は動搖と形容し難い感覚の嬌声を上げた。 鬼の赤黒く固い手に触れられた途端、全身を未知の快感が駆け巡った。 (なにこれ・・?私、いったい・・?) 咲耶は動搖した。身体の芯がじんわりと熱くなる。妙な身体の昂りを感じる。自身の身体に起こった反応に狼狽えた。 鬼は咲耶の乳房を自身の大きく岩のような手でやんわりと弄んだ。 咲耶の乳房を鬼が弄ぶたびに、咲耶はびくんびくんと短く反応した。 咲耶の呼吸が荒くなる。鬼の乳房を撫でまわす感覚が心地よい。 「ん・・は・・あ」 咲耶の口から無意識の声が漏れ出始める。 すると鬼はその声を聞くや否や、咲耶の乳房を弄ぶことを止めてその手を引き離した。 「・・あ」 咲耶は名残惜しそうに声を上げた。 そしてそんな自身の反応に酷く赤面した。 これは明らかに性行為である。 咲耶とて年相応にそれくらいの知識は有った。 年頃の娘が恋と共に憧れる行為である事も知っている。 だが日々学業やアイドルとしての仕事に追われる身の咲耶としては、 そんなことは遠い未来の話だと思っていた。 それがまさかこんな形で突き付けられるとは思ってもいなかった。 そんな咲耶をよそに、鬼は徐に腕を組んだまま思案に耽っていた。 その体勢のまま低く唸り続けている。 そんな鬼に対して、咲耶は思い切って声を掛けてみる事にした。 「・・や、やあお兄さん。すまないが、ここが何處だか知らないかい?」 咲耶は半ば狼狽えたような声で鬼に問うた。 言葉を発した後、咲耶は何とも情けない詰問をしたものだと少し恥じた。 だが鬼はそんな咲耶をまるで相手にしていなかった。 そして何かしら思いついたのか、その赤黒い手を再び咲耶の乳房へと伸ばした。 咲耶はまた乳房を触られるのかと思い、心の奥底に過る期待を押し殺して先ほどのような快感に備えた。 しかし鬼の手は咲耶の乳房の手前で止まった。 そしてそのままの体勢で何かしら低い声で呟き始めた。 初めて聞く鬼の声と謎の言葉に咲耶は呆気にとられたかのようにその手を見つめ続けた。 すると不思議な事が起こった。 鬼の手からやんわりと赤い光が鼻垂れ始めたのだ。 最初スマートフォンのバックライトくらいだったその光量は次第に強さを増して、光の球のように明るくなった。 咲耶がその光球を呆然と見つめていると、やがてその中に何かの模様が浮かび始めた。それは次第にくっきりと浮かび上がり、光球の光はその大半が模樣に吸収されていった。 まるで魔法のようなその光景に、咲耶は心を摑まれたかの様に うっとりと見つめているだけだった。 まるで呪文のような鬼の長い謎の言葉が終わった。 すると咲耶の身体の奥底に変化が生じ始めた。 胸の奥底がじんわりと熱くなってきたのだ。 「・・え?」 咲耶は自身の変化に無意識の声を漏らした。 光の模様が照らす咲耶の乳房がだんだんと熱くなってきたのだ。 しかしそれは不思議と心地よい熱さだった。 何かに心の奥をぎゅっと抱き締められている感覚。 暫しその心地よさに身を委ねていると、 不思議な違和感が咲耶を襲った。 (え・・眼の錯覚?胸が・・何だか・・) 咲耶が己の乳房を見やると、その大きさに変化が生じていた。 自身の乳房がだんだんと大きくなってきている。 咲耶のただでさえ豊満な乳房が、明らかに度を越して肥大化してきていた。その大きさが増すごとに、咲耶の熱い感覚は強さを増していた。 咲耶はその変化をどうする事も出来ないまま唯々見つめていた。 「mgooknrntmr」 鬼が何かしら一言言葉を発すると、咲耶の胸の奥にあった不思議な熱さがすうっと引いていった。そして乳房も肥大するのをやめた。しかしその大きさは明らかに度を越していた。少なくともアイドルとしてその身を売りとしている咲耶にとってはその大きさは深刻そのものだった。 「ああ・・私の胸・・・」 突然その身に訪れた変化に、咲耶は動搖するばかりだった。 しかし動搖はそれだけでは止まらなかった。 再び胸が熱くなり始めたのだ。だが今度は身体の奥底ではなくもっと浅部、乳房のほうから発せられていた。 「ん・・うぁ」 何かが内部で抑圧されている感覚に、咲耶は溜まらず呻いた。 何かが詰まっている感じがする。 早く押し出してしまいたい。 謎の欲求が咲耶に押し寄せた。 「・・ん!」 咲耶は無意識に胸部へと力を込めた。すると咲耶の乳首からじんわりと何かが溢れ、ぽたぽたと滴り落ち始めた。 「え?・・」 咲耶はその光景に目を疑った。自身の両乳房から白い液体が流れ出ていたのだ。その正体については、咲耶でもすぐに察しがついた。 短時間で起こった自身の身体的変化に、咲耶は驚きと恐怖で脚ががくがくと震え始めた。 そんな咲耶を気に掛ける事も無く、鬼は両手を咲耶へと伸ばした。そして咲耶の乳房を両手でぎゅっと握りしめた。 「んぎ!」 咲耶の激しい嬌声と共に、その両乳房から激しく母乳が噴き出した。 鬼は己に降りかかる咲耶の母乳を気にすることも無く、何度も乳房を揉みしだいた。その度に咲耶は脳を焼かれるような有り得ない快感を享受した。揉みしだかれる度にぶしゅぶしゅと咲耶の母乳が噴き出していく。揉まれる快感と母乳を排出する快感、咲耶は二つの快感を同時に味わい、意識が薄れていくのを感じていた。 (大丈夫、これは夢、そう、夢。目が覚めれば、私は・・でももう少しだけ・・) 咲耶は自身に言い聞かせながら、何か一際大きなモノが押し寄せる快感に備えて想いを巡らせた。 鬼は何かを察したのか、一層の力で咲耶の乳房をぎゅっと握りしめた。固い鬼の肌が咲耶の乳房に深く食い込む。 それを合図に咲耶の乳房は今までとは違った勢いで大量の母乳を噴出した。 「あぎぎいいいいいいい!!」 それと共に咲耶は激しく仰け反りながら大きく絶頂の声を上げた。 そしてしばらく母乳を噴出させた後、余韻に浸る暇もなく搾りつくされた残り滓のように吊るされた状態でぐったりと意識を失った。 (すごい・・夢・・またいつか・・でも・・本当に・・ゆm) 暗く澱んだ意識の淵を滑り落ちながら、咲耶は一抹の不安を感じていた。だがそれも遅れてきた余韻と共に薄れ、徐々に消えていった。 いままで脳内妄想イラストでちょいちょい描いていた咲耶の物語です。まだ色々と語られていない事が多いですが、気分次第の連作予定なので気長に待っていて下さい。