「美琴、もういいのか?」 「あ……うん、いいよ。」 プロデューサーの呼ぶ声に美琴が恥ずかしそうに応える。 付き添いの女性たちと共に小屋の中から現れた美琴は、自身の纏った舞踏装束に少し照れくさそうにうつむいて大きく膨らんだ自身の腹部を撫でた。 浅黒く焼けた肌、全身に刻まれた幾何学的な刺青、大きく育った乳房、そして新しい命を宿した証の腹部。美琴の身体はアイドル時代からは想像もつかない位に変わり果てていた。 プロデューサーは美琴の装いを眺め、改めて自身と美琴の置かれた境遇に想いを馳せた。 (あの時からどれくらい経ったか…色々あったな、俺も美琴も…) 海外ロケの為に搭乗した航空機が機材トラブルを起こし南国の小さな島に急遽着陸。乗客は航空会社があわてて手配した小型飛行機数機に分かれて目的地を目指すことになった。分乗は座席表で強制的に決められたらしく、運悪く美琴とプロデューサーだけにちかや他のスタッフと別れての搭乗となった。プロデューサーは何が気に入らないのか喚き散らすにちかを何とか宥め、機材に再搭乗。この束の間の別れが今生の別れになるとは誰も予測などしていなかったであろう。 混濁した意識を振り払いプロデューサーが目を開けると、何処かの海岸に打ち上げられていた。照りつける南国の日差しが熱く眩しい。プロデューサーは痛む節々を押さえながら起き上がり、夢と現実の境目を探りながら状況を整理した。 (ここは…そうだ!墜落!) 寝ぼけているのかと己で突っ込みたくなる結論だったが、 左右に振り払い次第に冴えてきた頭がそれを否定した。 がくんと機体が揺れる 機内に響く警報音 乗客の悲鳴 舞い散る荷物や乗客 急激に落ちていく厭な感覚 震える手でしっかりと握る美琴の手 「そうだ!美琴は!?」 プロデューサーは反射的に辺りを見回す。 そこには地獄絵図が拡がっていた。 散らばる機材の破片、 焼ける油や肉の匂い、 散乱する荷物や人だったモノ。 それらを目にしてプロデューサーの血の気が引いた。 最早安否どころの話ではないかも知れない。 そのあたりに転がっている肉片が美琴のものかも。 近しい者の死を考え、プロデューサーの身体ががくがくと震えた。 「…う…。」 すると後方からか細く呻き声が聞こえた。 反射的にプロデューサーが振り返るとそこには半身水に浸かり倒れ伏す美琴の姿が有った。 「美琴!大丈夫か!?」 プロデューサーはすかさず立ち上がって美琴に駆け寄り美琴の身体を抱き起した。 美琴は身体の彼方此方を怪我していたが、 一見すると命に別状はなさそうだった。 一先安堵したプロデューサーは美琴を抱き起し海岸から引き揚げた。 そして丁度いい気の木陰を見つけるとそこに美琴を横たわらせる。 すると突然緊張の糸が弛んだかのように、プロデューサーの身体に堆積した精神と肉体の疲労がのしかかってくる。 「ふう…」 自身の疲労を漸く認識したプロデューサーは、美琴の隣に腰を下ろし辺りを見回しながら一息吐いた。 見たところ他に動く人影は見当たらない。 救助は未だ来る様子はない。 今日中に見つけて貰えるだろうか。 早く美琴を病院に連れていかないと。 他のみんなは無事だろうか。 プロデューサーは辺りの現実離れした状況をぼんやりと眺めながら、膝を抱えて澱んでいく頭を巡らせる。 (熱帯の気候とはいえ、夜になると冷えるかも知れない。このままだと自分も美琴も風邪をひくな。救助が来るまでどうにかして火を起こさないと…火か…どうやって起こしたものか…) 現実性と非現実性の思考が入り混じりながら、プロデューサーはいつしか疲労からくる心地よい眠りに落ちていった。 (身体が暑い。いや、熱い?寝落ちして日焼けした?) (早く起きて身体を冷やさないと…身体が思うように動かない) (よく聞く疲れからの金縛りか?いや何かおかしい) (早く起きないと!) プロデューサーは夢現の身体を意識的に踏ん張り飛び起きた。 辺りは薄暗く御香のような臭いと煙が立ち込めるどこかの小屋だった。小屋といってもヤシの葉のようなモノを組み合わせて拵えた、どこかのマンガに出てくるような原住民の住居のようだった。外からはどこの言葉か解らないが人々の話声が聞こえてくる。 プロデューサーは状況を把握するために小屋を見回した。 すると傍らに美琴が寝かされていた。 胸が上下する様から生きている事を確認出来たが、 美琴の樣子がかなり奇異に感じられた。 まず美琴は一糸まとわぬ裸の状態で寝かされていた。 プロデューサーは一瞬反射的に目を背けたが、それよりも裸である以上の違和感を覚えて再度美琴を見やった。 美琴の身体に何かが描かれている。幾何学的な紋様のそれは全身のみならず顏にまで及んでいた。 (ボディペイント?…いや…まさか!?) プロデューサーは薄暗さにだんだんと眼が慣れていくにつれ、心の疑惑と懸念が驚愕と絶望に変わりつつあるのを感じた。 美琴の身体には全身に刺青が施されていた 「美琴!!おい!!起きろ!!」 プロデューサーは反射的に美琴を起こそうと揺さぶった。 するとその声を聞きつけたのか、外から数人の男たちが入ってきた。 いずれも筋肉質で浅黒い肌の男たちだ。男たちは各々美琴の身体に刻まれたものと同じような刺青を施しており、皆同じく殆ど裸の様相だった。 「dhfkbvoper,hgfu09」 男たちの中でも一際年老いた男がプロデューサーに未知の言語で話しかけてきた。プロデューサーは一瞬怯むも、美琴を取り返しのつかない身体にされた事を思い出し、激昂して男に怒鳴り返した。 「お前たちは何者だ!!美琴をこんな姿にしやがって!!」 プロデューサーはそう言い放つと男に摑みかかった。 するとプロデューサーよりも早く他の男たちが動き、プロデューサーをいとも容易く床に組み伏せた。 「ぐっ!!」 たまらずプロデューサーは呻き声を漏らす。然しその目はきっと年老いた男を睨み付けた。年老いた男はその樣子を見て眉一つ動かさず、プロデューサーに語り続ける。 「Dsdycuickdpgb;Usujckflgbn.srtdycufjg…」 年老いた男はプロデューサーが言葉を理解していない事を悟ったのか、少し考え再び口を開いた。 「Do you understand my language?」 その口から紡がれたのは英語だった。プロデューサーは頭を巡らせ何とか男と意思を疎通しようと努力した。 「…I can …understand a… little.」 プロデューサーが語り掛けると、年老いた男は「ふむ」という素振りを見せ、男たちにまた未知の言葉で語り掛けた。するとそれに応えるようにプロデューサーの束縛は解かれた。 プロデューサーは解放された事に一先ず安堵して組み伏せられて痛んだ腕をさする。そこで初めて己にも刺青が施されている事に気が付いた。それには美琴の時ほどではないが、さすがにプロデューサーも動搖を隠せなかった。 「I'll tell you everything. You decide everything.」 年老いた男はそんな事はお構いなしにプロデューサーに向かって話し始めた。プロデューサーは於かれた状況と情報で溢れかえりそうな自身の頭を総動員して会話の理解に努めた。 プロデューサーと美琴が流れ着いたのは、どうやら外界の世界からは隔絶されたどこかの小さな島らしかった。年老いた男はその島に形成された集落の部族長だという。彼らは長い間、至極原始的な自給自足生活を営んでおり、それで何不自由なく生活しているようだった。プロデューサーは、「何故隔絶された生活を営んでいるのに英語を話せるのか?」と問うたところ、部族長は「お前たちと同じ漂流者たちから学んだ」と答えた。どうもこの島は外界との接触は断っているが、時折プロデューサーたちのように事故などの理由で漂著する人間が居るらしかった。生存者がいた場合、彼等は基本的に島のコミュニティに迎え入れられ、部族の一員である証を身体に刻まれるのが習わしらしかった。どうもこの施術に本人の意思は尊重されないらしい。 プロデューサーは複雑な面持ちで、自身に刻まれ未だ腫れあがり気味の肌を撫でた。 (自分はまだいい。問題は美琴が…) プロデューサーは未だ傍らで眠り続ける美琴の将来を案じた。 このまま救助され日本に帰還したとしても、アイドルとしてやっていけなくなるだけではなく一生日常生活に問題が残り続ける。 プロデューサーの心は曇る一方だったが、今は現状の情報収集に重きを置くことにした。 「島に流れ着いた人たちはどこにいる?島から出られるのか?」 プロデューサーはたどたどしく英単語を並べ部族長に問うた。 「彼らは皆去った。海のむこう、そして神の下へと。島から出る選択は自由だ。我々は止はしない。だがこの島に外部の人間が意図的に来たことは無い。皆流されて来るだけだ。島から出て行った者たちも同様に流され再び戻ってくる。魂は神の下へ。身体だけが戻って来る。」 部族長は淡々と語った。それはプロデューサーにとって悲痛な回答だった。島に残って彼らと共に生活するか、自分たちで勝手に宛の無い危険な船出をするか選べということだ。そして信じられない事にこの島はどういう訳か、外界からも接触手段が無きに等しいという事らしい。 (今どきそんなバカな話が有るのか?携帯電話、人口衛星、GPS、未知の島など存在しない筈だ。いくらでも外界からの接触手段はあるだろう) 怪訝な表情をするプロデューサーをよそに、部族長はやや穏やかな表情で語った。 「この島に残るのならば我々一同皆歓迎する。我々が知る事が出来ない外界の知恵が対価だ。その代わりここでの生活は全て世話をする。村の者と所帯を持つのも自由だ。その娘と子をもうけてもよい。」 部族長の突飛な提案にプロデューサーは狼狽した。部族長の話はあまりに急だった。だが先方の良心的な提案を即断で拒絶し反感を買う理由も無い。 「少し美琴…そこの女性と話をさせてくれ。」 プロデューサーは何をするにも美琴とも情報共有をすることが先決だと判断し、部族長に告げた。 「…いいだろう。暫く二人きりで話せ。」 部族長は得心したらしく、傍らの男たちに合図すると小屋の外へと姿を消した。再び静かな小屋に戻る。プロデューサーは深い溜息を吐き、美琴に説明するべく頭の中で情報を整理し始めた。とはいえプロデューサーの心はもう決まっていた。故にこれは説明ではなく説得に近かった。 「…美琴…すまない。」 美琴に言うでなし、プロデューサーは一人呟いた。 目を覚ました美琴は、プロデューサーから共に於かれた状況と事態を丁寧に説明されるも、全身施術された刺青の状態に取り乱した。 普段は落ち着いている美琴にしては珍しく酷く泣きじゃくった。 「…噓…噓でしょプロデューサー…こんな…こんなの!!」 プロデューサーはその美琴の表情と声を生涯忘れられないだろうと思った。そんな美琴を、プロデューサーはお互い全裸である事を忘れてしっかりと抱き締めて美琴の震えを落ち着かせることに努めた。 美琴の動搖がひと段落したところで、プロデューサーは今後の指針を美琴に提案した。 それはこの村で暮らすという事。同じように漂著しながら外界に出て行った人間は皆遭難して亡骸だけが島に戻されている。外界に出ることは不可能に近い。そしてどういう訳か、外部からの意図的な接触も不可能という事。それはこの島に救助が来る可能性が無い事を示している。となればもう回答は一つしか無かった。 「勿論脱出の手段が見つかればそれも視野に入れて行動する。だからそれまでこの島で一緒に暮らそう。安心してくれ。美琴は自分が絶対に守る。」 プロデューサーは、そんな飾り気も説得力も無い月並みな言葉しか出て来ない自分に些か嫌惡した。しかし美琴はその言葉に微笑んだ。 「……うん、嬉しい。ありがとう…プロデューサー」 美琴はそっとプロデューサーを抱き締め返し、プロデューサーの胸で嗚咽した。 島での生活が始まってどれくらい経過しただろうか。 二人はすっかり島での生活に打ち解けていた。 美琴は島の女性たちから大層慕われ、暇を見つけては持ち前の歌とダンスを披露していた。美琴はほぼ全裸というスタイルに最初こと抵抗が有ったようだが、今ではすっかり適応していた。プロデューサーはスタイル以外はすっかり慣れ親しみ、村の男たちと日々の自給自足生活に勤しんでいた。部族長の言葉通り、自身の知恵(俄かキャンプ知識など)でも村の生活向上に寄与出来たらしく村民からの信頼は日々着実に高くなっていった。 美琴とプロデューサーは、部族長より二人で一つの小屋を新居として建築されあてがわれた。どうやら部族長からは最初からそういう目で見られていたらしい。二人は毎日裸同然で寝食を共にしていくうちに、やがてお互いを想い合う仲になっていった。 美琴のお腹が大きくなり始めた頃、美琴に部族長より村で神事の踊り子を選定する審査を執り行う旨が告げられた。それは島内の複数ある部族間で定期的に集まり、歌と踊りを神に奉納し合う儀式との事だった。その名譽有る努めは毎年の部族長や年長者たちの協議で村の女性たちの中から決められていて、今年は美琴も審査対象に選ばれていたらしい。部族長は美琴のお腹を鑑みて、本人の意思確認をしたようだ。 しかし美琴は二つ返事で引き受けた。島に来てから潜めていた元アイドルとしての身体がそれを欲したのかもしれない。 やがて審査の日となったが、それはもうやる前から決まっていたようなものだった。何人か村の女性が歌と踊りを披露した後、いよいよ美琴の番になった。審査が始まると、途端に美琴は激しく躍動した。その動きはまるで籠から解き放たれた鳥のようだった。身籠っている事など微塵も感じさせない完ぺきな舞踏。身重であることを一切感じさせない動き。そして村の人間からは未知のものであろう唄。端から見守っていたプロデューサーは、その動きが美琴のアイドル全盛期とまるで遜色無い事を感じ取り、心と目頭が熱くなった。熱帯の太陽に照らされきらきらと輝く汗と笑顔。観衆を魅了するその動き。状況が状況で無ければ今でも舞台に上がれるその姿を見てプロデューサーは感慨深いものを感じた。そして今一度美琴に心の中で謝罪した。 (ほんとうにすまない…美琴) 晴れて美琴はほぼ満場一致で踊り子として選定された。 喜びも束の間、すぐに儀式の用意が始まった。 演舞の練習、舞踏衣装の用意、部族間の日程調整。プロデューサーは(原始生活だが、やっている事は現代と変わらないな)と他人事みたいに外野から眺めていた。 「…プロデューサー…あ。あなた…ちょっと、いいかな。」 プロデューサーの背後から愛する妻の声が聞こえた。 振り返ると恥ずかしそうに佇む美琴が立っていた。 「美琴。もう練習はいいのか?そしてお腹の方も。何度も言うが無理はするなよ。」 プロデューサーはすっかり大きくなった美琴のお腹を気遣いそっと美琴の髪を撫でた。 「…うん。大丈夫。…それよりちょっと付き合ってほしいんだ。」 そう言うと美琴はプロデューサーの返事を待たず、手を引いて愛しの我が家へと向かった。 「…踊りで使う衣装が完成したんだ…。…それで…最初はあなたに見て欲しくて…」 家の前で立ち止まると、美琴は少し俯き恥ずかしそうに言った。 その様を見せられて、プロデューサーは自身が隆起するのを感じた。 「あ!ああ!うん!いいぞ!じゃあここで待ってるな!」 プロデューサーは慌てて身体を背けながら美琴に言った。 それに気付いたのか、美琴は若干顔を紅潮させ、そして嬉しそうに呟いた。 「…うん。待ってて…」 そう言うと美琴は小屋の中へと消えて行った。 小屋の中からは村の女性たちとの会話が聞こえる。年単位で過ごした甲斐あって、プロデューサーも美琴も部族の言葉には不自由は無くなっていた。その事にふと感傷めいたものが湧き上がり、プロデューサーは自虐気味に笑った。 暫くすると小屋の中から村の女性たちに付き添われ美琴が姿を現した。その姿はプロデューサーが想像していたのとは些か違っていた。フェイスベールに覆われた顏、全身を金や宝石の装飾で覆われた身体、服というには余りにも透けてしまっている布地、イメージの中の未開の部族が纏う衣装としてはだいぶ樣子が違う。それもそのはず。基本的に部族で手に入る服や衣装は漂流物に限られる。その中から彼らなりの美的感覚で誂られるのだから仕方がない。この姿が部族の中では神聖なものとして映るのだろう。 「…えっと…どう?」 見惚れていると、美琴が心配そうに俯きがちに問いかけてきた。 その声にプロデューサーは慌てて返事をする。 「ああ、きれいだ。すごく似合ってる。」 その言葉を聞き美琴は安堵したように微笑んだ。 「…うれしい。…えっと…それでね、ちょっとまた付き合って欲しいんだ。」 そういうと再び美琴はプロデューサーの手を引き、海岸の方に歩き始めた。美琴が衣装そのままの姿で歩き始めたので、プロデューサーは慌て驚き、後に残された女性たちに目配せで答えを求めた。 すると女性たちはくすくす笑いながら皆「いってらしゃい♪」と言わんばかりに手を振ってきた。 プロデューサーだけが合点がいかないまま、 美琴に手を引かれながらやがて森を抜け海岸に到着する。 海風が頬を撫で、潮の匂いがプロデューサーの鼻腔を擽る。 そこは二人にとって思い出の場所。 美琴とプロデューサーがこの島に漂著した場所だ。 踊り子の衣装を海風に乗せ靡かせながら、美琴は妊婦とは思えないほどの軽い足取りで砂浜に駆け寄った。打ち寄せる波が美琴の足を優しく濡らす。 そこで美琴は愛する夫の方へ向き直り、優しく微笑んだ。 「…最初は、どうしてもプロデューサーに見て貰いたかったんだ…。」 そう言うと少し恥ずかしそうに美琴が俯く。そして新しい命を宿した腹部を優しく撫でる。 「あの日から二人とも色々あって…私もこんな身体になっちゃって…色々取り乱したりもして…それでも、私を優しく守ってくれて…こんな私を愛してくれて…ありがとう、ぷろ…ううん、あなた。…だから、見ててね…。」 そういうと、美琴はゆっくりと舞い始めた。多くのファンのアイドルとしてではなく、部族の村の踊り子としてでもなく、愛する夫ただ一人の為に。その舞は未だ見ぬ我が子を気遣いながらゆったりと、そして軽やかなものだった。軽快で優しい舞に踊り子の衣装と腹部が揺れる。端から見れば奇妙な事この上無いが、プロデューサーはその姿に心を奪われていた。そして知らず知らずのうちに目から涙が零れ落ちていく。 「…美琴…」 出口の無い世界、元には戻れない姿、文明社会からの追放、異郷での原始生活、美琴の手前もあり、様々な状況下で気丈に保ってきたプロデューサーの緊張した心が美琴の舞で一気に解けていく。 「…ありがとう…」 涙と共に、プロデューサーの口からぽつりと漏れる。 その言葉を耳にしたのか、舞の中で美琴がプロデューサーの方を振り向く。そして踊りながら嬉しそうに笑った。 (生きていこう。この島で。愛する妻と子と共に) 陽の光に照らされた美琴の汗と波の飛沫が、 プロデューサーの両目に湛えられた涙で一層に煌めく。 煌めきの中で優しく舞う愛する妻、美琴。 その様はまるでステージで眩く輝くアイドルのようだった。 スケブにてご依頼頂いた「踊り子の衣装を身に纏った褐色刺青部族化妊婦美琴」です。ぼくの大好物ですありがとうございます! 今回は嬉しいことにぼくの駄文を御所望だったので書いてみました。 要点を限りなく盛り込んでみましたが、どうでしょうかね?