「ハッ・・ハッ・・ハ・・」 この日度重なる王との営みを経て、円香は肩で息をしながらぐったりとベッドに倒れ込み心地よい疲労感に身を委ねていた。 「フ・・フ・・ドウシタ・・マドカ、ヨハマダ・・マンゾクシテオラヌゾ。」 王は上がる息を堪えながら虚勢を張った。寝所で女と相討ちとあっては王のプライドが許さないのであろう。円香は心の中で呆れたと言わんばかりの深い溜息を吐いた。 「アキレタ。アナタノコドモガドウナッテモイインデスカ?スコシハイタワッテクダサイ。」 そう言うと円香は大きく膨らんだ己の腹部をそっと撫でた。 円香は王の子を孕んでいた。連日連夜、王の寵愛を受ければ当然の成り行きと言えた。改めて己の身体を見つめ、円香は複雑な心境になった。妊娠が発覚してから円香の身体は日に日に変貌を遂げていった。 乳房は腹部に負けじとばかりに大きく育ち、大きくなった乳輪の先端からは子の誕生を今や遅しとばかりに母乳が頻繁に噴き出ていた。腹部が大きくなるにつれ臍が肥大化し、自己主張せんばかりに外へと張り出していた。肉付きも極端に増え、迫る出産に備えているかのようだった。嘗てアイドルとして舞台を彩った軽やかな肢体は見る影も無くなっていた。 「まるでカエル・・最低。」 自身が想像していた妊娠とはかけ離れたその姿に、 円香は日本語で自虐の言葉を漏らした。 肌の色も相俟って、その姿はまさにカエルのそれだった。 そうは言いながらも、円香の心の底は不思議と幸せに満ちていた。 王の伴侶として生きていくこと、 生まれてくる子の母になる事が待ち遠しくて仕方が無くなっている。当初の置かれた境遇への絶望や帰還という目的への焦燥、 懐かしい仲間たちへの想い、忘れてはいけないモノが雪解けの如くゆっくりと溶け出してしまっている。 トロルとしての遺伝子がそう認識させているのか、 母となる者の母性がそう思わせているのかは分からない。 失われていく心への恐怖や焦りよりも、これからの幸せに対する期待感が遥に勝っていた。 すると腹部を撫でる円香の手を大柄な王の手が優しく包んだ。 「モチロンダ。オマエモコモショウガイタイセツニスル。コンナココロモチニサセタノハ、オマエガハジメテダ。アイシテオルゾ、マドカ。ヨノツマ、ヨノキサキヨ。」 王はいつもの野蛮な言動とはかけ離れた、 穏やかな声で円香に優しく囁きかけた。 そしてそっと円香を抱き起し、武骨な腕で優しく抱きしめた。 一層の幸せと満足感が円香の心身を満たす。しかしその片隅で一抹の不安も残る。 「ホントウニイインデスカ?ワタシミタイナヨソモノヲツマニムカエルナド。ソッキンノカタヤ、チカシイジョセイタチハダマッテイナイハズデスガ。」 突然現れたよそ者が王の妻に収まるなど、どう考えたって満場一致とはいかない筈である。長らく仕えた側近や女性たちからは反対の意見が出るのは容易に想像できる。ましてや元人間という異物であるならば当然である。 そんな円香の憂いを聞き、王は一瞬きょとんとした顔をしたのち室内に響き渡るほどの高笑いを上げ円香の頭を撫でた。 「アンズルナ、ヨヲダレダトオモッテイル。ヨケイナシンパイハムヨウダ。ヨハココニチカウ。オマエイガイノモノトノハ、ニドトトコヲトモニシナイ。オマエイガイノモノヲ、ツマトハシナイ。オマエハヨノモノダ。アンシンシテヨノツマトナレ。」 不意を突いた王の突然の誓いに、円香は心を鷲摑みにされた気分になり感極まった。心が熱くなり不意に涙が溢れ出す。そして素早く身体も反応する。秘所からは愛液が溢れ出し、乳房からは母乳が一層垂れ始める。胎内の子供は母体の変化に反応したのか、胎動が盛んになる。戦闘民族トロルの特徴でもある興奮状態からの爪麻痺毒分泌も激しくなり、紫色の液体が円香の指先を濡らした。 「ナンテツキナミナセリフ・・。ソンナコトバデワタシガナクトデモオモッテイルンデスカ?」 円香はあわてて強がってみせた。だが隠しようもない己の変化を客観的に想像してしまい、恥ずかしくなって顔をそむけた。 王は優しく微笑み、そっと円香に覆いかぶさった。 「ヨイナ?」 王の言葉に円香は黙って頷いた。 「・・オテナミ、ハイケンデス・・ミスターキング・・」