「次のニュースです。人気アイドルグループ、ストレイライトの黛冬優子さんが取材先の○○国で行方不明になったと所属事務所から発表がありました。冬優子さんは番組取材のため番組制作スタッフやガイドと現地の川をボートで出発しましたが、定期連絡が途絶えたので現地の警察が確認に向かうと、一行の乗っていたボートが破壞された状態で見つかったとの事です。冬優子さんやスタッフの行方はいまだ分かっておらず・・」 あの忌まわしいニュースから半年が過ぎた。 冬優子の消息は依然として不明だが、 地元住民たちの見立てでは生存は絶望的だという。 様々な海外の田舍に滞在し、 そこの人々と生活を共にし友情を育むという短期滞在型の企画。 長寿の有名番組だ。 出演するのは毎回違うタレントで、どれも有名人ばかり。 ウチのような弱小事務所には生涯縁の無い仕事とばかり思っていた。 しかしどういうわけか、 突如うちの事務所の冬優子に白羽の矢が立った。 どうもスポンサーの強い意向が有ったらしい。 自分としては飛びつきたい仕事だったが、 流石に本人を無視して話は進められない。 何より無理強いはしたくない。 短期滞在とはいえ、海外のそれも慣れない土地での仕事だ。 他の子たちの事も有るので自分は付いてはいけない。 周りは番組スタッフ一行と現地ガイド。 気丈とはいえ、冬優子も年端もいかない女の子だ。 不安でないはずがない。 本人が拒否すれば当然辞退するつもりでいた。 後日プロデューサーとして冬優子に話を持ち掛けた。 冬優子突然のオファーに冬優子も戸惑ってはいたが、 彼女持ち前のプロ意識で、半ば乗り気でないながら了承してくれた。 あさひと愛依は自分の事のように喜んでいた。 それは自分も同じだった。 それがまさかあんな事になるとは・・。 「冬優子さんの消息が判明しました。」 現地スタッフから携帯に連絡が入った。 その報せに我を忘れ、電話に向かって大声で叫びかけた。 すぐにはっとなり、相手に謝罪する。 「いえ、気にしないでクダサイ」 しかし現地スタッフの声は重い。 彼は淡々と暗い声で事実だけを語り始めた。 冬優子は生きている。 いや、彼女だけが生きている。 あの日冬優子とスタッフ一行とガイドは、 訪問先である熱帯〇〇国の奥地に住む部族のもとへと向かっていた。 当初、訪問先は熱帯○○国の普通の田舍街のハズだった。 しかし番組スタッフが寸前で、 奥地に住む原始的な生活を営む部族の話を聞きつけた。 それに興味を持った彼らは急遽当初の訪問先をキャンセルし、 部族訪問にシフトしたらしいのだ。 そっちのほうが只の田舎町訪問より視聴率をはるかに稼げる。 そう踏んでの行為だろう。 とんでもない場当たり主義。 それを聞いて混乱と怒りがこみ上げ 再び現地スタッフに怒鳴ってしまった。 あのテレビ局は世間と感覚がズレている そんな事も大なり小なり囁かれてはいたが、 まさかこれほどとは。 混乱と怒りが巨大なストレスとなって鼓動を押し上げる。 その後も彼は淡々と話を続けた。 部族は確かに存在するが、基本的に排他的であまり交流を望まない。 「危険すぎる。やめたほうがいい」 現地スタッフはそういって制止しようとしたらしい。 しかし番組スタッフたちの頭はもう其方に傾いていた。 半ば強引にガイドを大金で叩いて案内させたという。 あのときの去り行くボートの片隅に座る冬優子の不安そうな顔が 今でも脳裏から離れない。 現地スタッフはそう嗚咽混じりに語った。 消息不明になり半年ちかくが経過した頃、漸く真相が判明した。 部族と細やかながら交易をおこなっている現地商人が、 部族を訪問した時に村内で見慣れない外国の女性を見つけたという。 商人が族長にあれは誰かと尋ねると、息子の嫁だと答えたらしい。 なんでも突然村にやってきた一行があまりにも不遜な行為をはたらくので全て処分したとのこと。 しかしその女性は息子がいたく気に入ったらしく、 自分の嫁とする為に生かしたらしい。 後はもう最悪の想像通りだった。 冬優子は激しく連日抵抗したため、 族長の息子は呪術師から貰った秘薬を冬優子に投与したらしい。 それは精神を激しく冐かす麻薬のようなもので、 投与された人間は運が悪いと廃人同然になる危険な代物だという。 「冬優子サンは元気デス。運がよかったのでショウ。ですが・・」 その後、冬優子は族長の嫁となり、幸せに暮らしているらしい。 薬の影響からか、日本語はおろか過去の記憶を失くしてしまっているという。 「電話の後、商人から転送してもらった彼女の写真をメールでオクリマス」 彼はそういって電話を終えた後に写真を送ってきた。 そこに写った、冬優子であった女性を見やる。 色々な感情が御他混ぜになり溢れ出す。 膝から崩れ落ち、目から涙が止めどなく流れる。 これは夢だ。 そうだろ冬優子。 そうであってくれ。 画面に写った冬優子はとても幸せそうに笑っていた。