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【全体公開版】スケベスキルで世界最強~やっぱ最強はちんぽっしょ!!~ 番外編3おまけ

【依頼内容】


・忠犬リブラの白タイツ衣装と、足臭性癖セックス


【本編】


 おれには今、ひそかな楽しみがある。

 自分の部屋にある棚を見て、ニマニマと頬を緩めた。そこには白い粉を詰めた小瓶がいくつも並んでいて、ある程度分類されている。

 ラベルには『忠犬』や『腰振り射精』など、今まで集めてきた性癖を収集してあるんだ。こういうコレクション的なのは異世界に来てからしてこなかったけど、案外満たされるものなんだな。


「まあこれ、完全に劇物なんだけど……」


 何せ食らったらほぼ変態化する毒だし。万が一ジェルが間違って吸ったら嫌なので、絶対部屋には入らない様に忠告してるし、メイドとかにも注意はしてる。


「ファンダルから『純愛』の性癖も取れたし、これは大事に保管しないと……」


 汚染するのは一瞬だけど、清らかな水には戻れない。ファンダルとグランドにはこのままでいてほしいものだ。あのサイの初心さはファンダル以上なので、毎回爆発しそうなほど顔を赤らめている。

 あのゴツムチとしたこげ茶の犬と太鼓腹のサイは性癖の良心だ。乱の後始末をしている身としては、こういうピュアな性癖を上書きすることで治せるのではないかと画策中だったりする。


「だからあの二人から性癖をたくさん抽出したいんだよなあ」


 フォグが『華炎』に性癖を二つ与えたら混ざっただけだったことを考えると、『純愛腰振り射精』とかいう怪物が生まれる可能性もあるんだけどさ……。


「いやでも、あれは量が少なかったからで、大量に与えれば比重が偏るかも……」


 とはいえあくまで可能性。かといって人体実験するのもどうかと思うし、難しいな。


「うーん、リンドンに相談するのもなあ……」


 あいつ、この前自分の『ばぶみ』を研究所の中でばらまこうとしてたのを止められたばかりだし、接触を控えるように言われてたりする。ママハーレム建設のための味方作りにしてもさ、もっと人道的な方法取りなよ、とは思う。

 おかげでフォグからめちゃくちゃ怒られて性癖も取り上げられたからな。相談するのは無理そうだ。『疑似人格』しかり、スキルに関しては本当に頼りになるんだけど、いかんせん性格が終わっている。リブラ枠だと思う。


「……うちの部隊で何とかならないか考えるしかないかあ」


 『華炎』もうちにいるし、フォグに聞いてみよっと。


****


「いいアイデアだと思うが……確かに難しいな」


 翌日、職場にいたフォグに話をしてみると、案の定悩みこまれてしまった。

 おれは定位置のベッドで寝転んだトリドスを背もたれにしていたが、引っ張られて胸に抱きこまれている。この牛は制服の胸がきついからってたいてい裸なので、柔らかさが直に脳に染みこんできた。なんでだよ、特注だろそれ。

 でかい熊と牛に挟まれるのもいつものことで、朝礼みたいなものだ。大きめのサイドチェストには、おれが読まなければならない書類が塔になっている。だけど本当に必要なものはフォグがくれるので、今は審査待ちというわけ。


「どうなるのかわからない以上、ゴーサインを出すのもなあ」

「だよねえ。悪化する可能性もないとは言えないし……」

「そもそも純愛好きになったからって、恋人とかがいねえと結局意味ない可能性もあるだろ」

「それはそう……」


 やっぱりそんな簡単にいくわけないか。そう思っていた時、上からトリドスの言葉が降ってきた。


「だったら、元老院の手先に使えばいいんじゃないかい?」

「そういえば、そもそも最強の四席目を選ぶのに外部からの人を誘ってるんだったね」

「そいつを篭絡するのに『純愛』の性癖は便利に使えるはずだ。コハク王子が元老院に影響力を出せれば、君のファンダルへの肩入れも少しは許されるだろうね」


 うっ、それを言われると弱い。いくら言葉上での違反はないとはいえ、コハクの負担になったのは事実だし。怒るでもなく悲しそうにしたコハクを思うと、これ以上心労をかけたくはない。


「ふふ、君は優しいね。だが、最も後ろ盾の弱いファンダルを四席目に押し上げることができたなら。私たちの有用性を示すにはもってこいではないかな?」

「そうかもだけどさあ。コハクには悪いことしたよ」

「リブラ君のフォローもあったから、そこまで気にすることでもないと思うがね。それに、グランド君の可能性が潰えたわけじゃないし、元老院から見ても好機になっただろうから、実際の計画に支障はないよ」

「そう言うことだな」フォグが書類を分類しながら。「いくらファンダルがグランドに勝利したとはいえ、ジェル様が出たら話は変わる。ジェル様がグランドを認めたら、その時点で話は終わりだからな」


 そう、おれらがひっかきまわしたせいで、ついにジェルが立ち上がったのだ。

 戦って最も強いと思ったものを推薦するとか言ったせいで、もう大騒ぎ。今いる候補の中で誰が勝てるのか、なんて宮中はその話題で持ちきり。最強談義っていくつになっても楽しいよね。

 それはつまり、いったん引き下がったこの熊と牛にもチャンスがあるってことなんだけど、当の二人は素知らぬ顔だ。


「おれは別に。おれまでコハク王子の意に逆らうのは得策じゃねえだろ。それにまだまだ力不足なのは実感してるしな」

「私は娼館運営組織のトップに推薦してもらった上に、カルハバのポジションも融通を利かせてくれたんだ。今回はおとなしくしておくよ」

「ごめん……多分おれのせいでおとなしくしてるんだよね?」

「気にするな。最強の名声に興味はあるが、これ以上仕事を増やすのも難しいからな」

「私もそうだよ。リブラ君の監視も兼ねているせいで結構大変でね。君が気にすることもないさ」


 なんて言ってくれると嬉しいけど申し訳ない。でもファンダルとヤードと同盟を組んだからにはちゃんとやるよ。ジェルからも、最後まで貫くようにと激励をかけられたしね。


「だったら、いい案がある」


 それは傲慢な、いかにも偉ぶった声音だった。こんなしゃべり方をする奴、一人しかいない。


「リブラか。どうした?」


 書類から顔を上げたフォグが来客に向かって眉を顰めた。元帥で王位継承者への態度ではないんだけど、元『竜の爪』の同僚だし関係性は気さくだ。

 美丈夫の獅子は簡素だが高そうな軍服を着ており、たてがみと合わさってものすごい華やかだ。顔がいいのもあるとはいえ、存在感が光り輝いている。

 これで表情とか性格が良ければなあ……ちょっとおとなしくなったとはいえ、依然として性悪は健在だ。


「おれ様の娼館運営に力を貸せ。王都に三号店を作ろうと思っているのだが、どうにもいい雄がいなくてな」


 我が物顔でベッドまで近寄る所作の端々から傲慢がにじみ出ている。お母さんの話のときはしおらしくてかっこよかったのに、もう元通りだよ。


「まあ別に娼館に送る人員の教育はおれらの担当だからいいんだが……」


 熊がジト目で睨み返す。


「多分お前の言ってることはそういうことじゃねえんだよな?」

「当然のことをぬかすな。せっかく娼館運営を任されたというのにおれ様のお眼鏡にかなう雄がいないから、何とか調達しろと言っているんだ」


 あまりの暴論だけど平常運転だ。でも言い方が悪いだけで目玉になる人員がいないというのは、ちょっと大変かもしれない。

 傭兵街の時はフォグとかヤードとか、とにかく見た目もエロさも極上な雄がいたからなあ。さすがに三号店ともなると、人員が足りないのだろう。


「あれ、でも王都にある娼館は前の戦いで性癖がねじ曲がった雄たちの救済って側面があるから、軍の兵が多いおかげで質は保障されてない?」

「だが同じものばかりでは客が飽きる。被害者救済の側面を維持するためにも、ある程度の売り上げは必要だろう?」

「はあ、そうなんだよなあ……収支報告書を見る限り、何らかのイベントなどをした方がいいだろうなとはおれも思っていた」


 娼館の運営はリブラやトリドスに移ったけど、まだ過渡期だからフォグも内情は知っている。話を聞く限り、みんないい雄に慣れてきたのか。


「というよりかは」牛が優しく説明してくれて。「人材の均一化だね。さすがに娼館一棟だけで全員を救済できるわけじゃない。私たちが慎重に動いている間に、ライバル店に就職した人たちもいるんだよ」

「ああ……なるほどね」


 それで希少性が薄れているってわけだ。さすがに顔が売れてきたヤードらを投入するのはもう難しいし、これからの課題になってるのか。


「それについては私とフォグ君もいろいろ話し合ってきたが、ここに来てリブラ君が管理することになったからね。手腕に期待していたところだよ」

「面倒事ばかり渡されて、辟易する限りだな」


 自分から提案したくせに……。


「ともあれ、それで有能な雄の調達をしたいと思っていたところだ。娼館が潤えばコハクへの媚びになるし、そちらとしても文句はあるまい?」

「とはいってもなあ、元老院からの接触はまだねえよ。多分向こうは向こうで牽制し合ってんだろうな。こちらからアプローチをかけてもいいんじゃねえかと思ってるくらいだ」

「そんなことは知っている。だからおれ様はお前らのところのモウダンを貸せばいい」

「あいつを……? なんでまた。確かにあいつはこういうのに向いてるとは思うが……」


 うちの部隊にいるもう一人の牛は確かに向いてるとは思う。緩い雰囲気だけど体は豊満だし、人目は引けるはず。


「調べたところ、この前の模擬戦で賭けに負けて金銭面で苦しいらしいな。臨時収入をちらつかせたらすぐに食いついてきたぞ」

「はあ、そうだった……それにあいつは二つ名がないから顔も売れてるわけじゃない。確かにうってつけではあるか……」

「本当なら『華炎』も借りたいところだが、今はジェルによる訓練予定があるせいで難しい。娼館のことはまだ黙っておきたいからな。そうでないとおれ様が思いっきり遊べなくなってしまう」

「確かにな。元老院の手先を篭絡する予定もある、ジェル様にバレるのはおれも避けたい。ならノインも派遣しよう。あいつのスキルは人によってはかなり刺さる。『刷り込み』の使用は控えてほしいが……まあ、あいつならそこまではめを外さないだろう」

「ふむ、悪くない。だがその場合ここの人数がかなり減ると思うが、それは問題ないのか?」


 まあうちは新設部隊でやってることも特殊だから、人がかなり少ない。二人もいなくなれば結構穴が開くのはそう。

 だけどフォグはおれを親指で差して、言葉を続けた。


「今の四席目騒動でこいつが引っ張りだこなことは知ってるだろ。おかげでうちの部隊を強化する時間があまり取れてねえんだ。だからあいつらも暇を持て余してるし、少し貸し出すくらいなら問題ねえよ」

「そうか、だったら人員は何とかなるか。一時しのぎではあるがな。お前らはその間に元老院の手先を篭絡しろ」

「無理言うなよ。向こうが来てくれるかどうかだ。来てくれたら恩恵はでかいが、こればっかりは待つしかねえよ」


 おれも単独行動(隠密フォグ付き)で隙をわざと見せているんだけど、なかなか釣れないんだよね。でも、ファンダルの時に勝手な行動をしたのが広まったし、そろそろだろうとは言われてる。


「おれ様も楽しく遊べるおもちゃが欲しいのだがな。早くホスタットと戦争でもして、優秀な雄をたくさん仕入れたいものだ」


 言葉が不穏すぎるって……戦争なんてもうない方が良いよ。傭兵街で雄を堕として遊ぶ楽しさを覚えた結果、新たな獲物を求めすぎてる。

 傭兵街という緩衝地帯を挟んでにらみ合っていた国なんて、リブラからしたら肉汁滴るステーキみたいなもんだもんなあ。


「ジェイルラル以外の戦力が増え、グリッジが消えて軍部も堅牢になった。今こそ仕掛ける好機だというのに、コハクは内政の安定ばかり考えている。そんなものは、仮想敵を作ってとっとと実権を握れば簡単だというのに……」

「お前、それコハク王子の前で言うなよ……ただでさえいろんなことに辟易してるのに」

「だが、お前ならわかるだろう。ホスタットからすれば、ここは歴史上でも類を見ないほど最強の布陣を持っている。とすれば、内部から腐らせるにはコハクの政権が不安定な今が最も好機だということ」

「はいはい、言いたいことはわかってるよ。大体、コハク王子もそれをわかってる。だから元老院の掌握を進めてるんだろ。多分『影に満ちた鏡』とかもそれで忙しいんだと思うぞ」


 相変わらずおれにはわからないところで話が早い。特にフォグとリブラはおれとは見えてるものが違うのでさっさと進めがちだ。

 こういう時は誰かに聞くのが一番。解説を求めて牛を見上げると、待ってましたと言わんばかりに目が合った。完全に待ち構えられてたわ。


「グリッジ君が失脚したおかげで、第二王子を推していた人らの立場は弱くなっただろう? そこにホスタットが交渉を持ち掛ければ、なびく確率が高くなるのはわかるね?」

「あー……つまり、元老院に敵国と通じてる人らがいる可能性があるってことね」


 だからコハクが元老院に食い込もうとしてるのか。本人も軍部にしか影響力がないと言っていたから、裏切り者を見つけ出すためにこの騒動を利用してると。

 

「今戦争を仕掛けるほど向こうも馬鹿じゃないし、仕掛けられたら困るのも向こうだ。だから今の間に、何とかスパイやらを仕込ませようと必死なんじゃないかな」

「それで」次はフォグが。「軍部にはジェル様やウィザロン様がいて、傭兵街連中はゴライザが完全に掌握しているから、忍ばせるのは難しい。暗殺しようと思ってもまず無理なメンツだし、性格的に篭絡も不可能だ」


 まあ忠誠心の塊である狼と虎に、対象はおれだが忠犬もいる。お金で動く人たちじゃないし、寝返らせるのは無理だろうね。


「ってなると最も可能性が高いのが元老院、それも第二王子を推してたやつらってわけだ」

「そう言われると、四席目に誰が座るかってかなり大事な気がする……」

「ようやくわかってくれて何よりだ。だからおれらは元老院の手先を待ってるんだってこと、胸に刻んどけよ」


 想像より大事だな四天王……。まさかおれの言葉がこんな大事になるとは全く思ってなかった。


「そして、おれ様は来る戦争に備え、娼館を拡大していきたいというわけだ。向こうにも高名な雄が沢山いる。そいつらを無様に貶めるのが今から楽しみでしょうがない、くふふっ」

「トリドス、こいつの独裁を止めるのはお前の仕事だぞ」

「わかっているよ。カルハバ君も問題児には慣れているから協力すれば何とか……まあ、騒がしくはなると思うが」


 カルハバも魔術師師ギルドから娼館運営って、キャリア的に大丈夫なのかな。トリドスの下に付けられたから、便宜上今はうちの隊所属になってる。

 でもそういえば、今日はまだ姿を見てない。娼館運営がメインだからここに来る必要はないとはいえ、挨拶はきちんとするタイプなのに。


「ああ、カルハバならおれ様のところだ。少し頼みごとがあってな」


 うわ、獅子がいやらしい顔で笑ってるよ。絶対ろくでもないことだ。

 トリドスが苦笑してるところから話は通しているのだろう。そして、今の流れから三号店のことなのもわかった。


 カルハバも大変そうだ、なんて他人事のように思っていたら、獅子がひょいとおれを担ぎ上げた。え、何急に?


「それではこいつを借りるぞ」

「はあ?!」熊が目を丸くして。「この馬鹿猫! おれらにも予定ってもんがあるんだぞ!」

「知らん。目的の奴が来てないならどんな仕事も誤差だろ。娼館運営はおれ様がコハク直々に命じられたこと、優先順位はどちらの方が高いか、お前ならわかるよなあ?」

「はあ……お前が権力を使って遊ぶと、本当にろくなことにならねえな。今はまだいいが、やりすぎたら本気で潰すからな」

「くふふ、そうしたら少しは楽しめそうだ❤」


 賢いが穏健派のフォグを怒らせたらどうなるのかおれもわからない。でも端々からグリッジ並みのことはできるんだろうと当たりはついている。なのであんまり刺激しないで欲しいなあ……。


「仕方ないね」


 剣呑な目つきの熊を抑えるために、どっしりした牛が立ちあがる。重力に引かれた巨乳がなぜか張りよく飛び出しているの、いつ見ても不思議。


「娼館のことなら、私もついていこう。フォグ君、モウダン君とノイン君に通達を頼むよ」

「しょうがねえ。こいつのこと頼んだぞ」

「もちろん。私のかわいい子に不便などかけさせないとも」


 包容力が増した牛は雄臭い顔を柔らかくほころばせ、傍に畳んであったうちらの制服である黒い軍服を着こみだす。

 そうすると恰幅の良さから威厳が生まれ、巨大な角と相まって女性下着をつけているとは思えないほど凛々しい立ち姿になるんだ。もうこれ別人だって。


「さて、それでは行こうか。詳しい話は着いてから聞くよ」

「くふふ、任せておけ。三号店はより面白くなるぞ」


 そんな心配誰もしてない、というかすでに嫌な予感しかしないんだよなあ。

 とにかく、フォグに見送られて、おれらは部屋を出ていくのだった。

 でも……ひとまず下ろしてくれないかなあ……。


****


「こっのぉ……ば~~~~かっ!」


 目当ての部屋らしい場所に着いたとたん、罵詈雑言を浴びせられてビビった。

 王宮にあるリブラ所有の宮、そこにあるなんだか研究室らしいところには、肩を怒らせる狸がいた。

 リンドンと似たような白衣を着た狸は横幅も奥行きもでかい。あの太鼓腹猫であるランドといい勝負をするほど膨らんだ腹が、シャツ下の隙間からちらりと覗いている。おへそを見せてるのセックスアピールを疑うけど、この人に限ってそれはない。単なる天然。

 小さな丸レンズの眼鏡がマズルにちょこんと乗ってるかわいらしさもあって、怒っててもあんまり怖くない。身長もおれより高いんだけど、愛嬌が抜けきらない感じ。

 顎下にちょっとだけある無精ひげらしき色の濃いところが、おっさん感もあってかわいいという評価になる。盛り上がった体なんだけど、ゴライザとかを見慣れすぎてるから余計にそう思う。


 最近配属されたカルハバは、入ってきたリブラを見るなり尻尾をさらに膨らませている。いったいなにしたのさ……。


「まあカルハバ君はいつもこんな感じだよ。傭兵街にいた時も、怒ってない時がなかった」

「当たり前だろうがよおぉ! あの性癖幼児のリンドンと社会規範幼児のヤカブと一緒にされて、その尻ぬぐいはぜーんぶこっちがしてたんだからなあ!」

「うんうん、そうだね。正直傭兵街の魔術師ギルドは君一人でもっていたようなものだった」

「ヤカブも旅立って、リンドンとは配属が別になって、ようやくおじさんも楽ができると思ったら……」


 そこで狸は獅子を指さして、きしゃーと毛を逆立てる。すごい、仮にも王族を相手にしているとは思えない態度だ。


「今度はこいつの尻ぬぐいだぁ?! 勘弁しろよまじでさああぁ!! トリドスはいっつもくそみてえな仕事を回してきやがる!」

「だけど、待遇は悪くないだろう? 結構破格だと思っているのだが」

「そうだろうよ! たかだか傭兵街の一ギルドで頭張ってただけのおじさんに、王子直属組織の副官とか破格なこともわかってる! でも労働環境がさあ! 終わってんだわ! おじさんはただの研究員なんだぞ!」


 まあリブラの下って時点でね……でも逆に言えばリンドンとヤカブを抑えてきたこの人にしかできない気もするので、頑張ってほしいところだ。


「くふふ、その様子だと仕事は終えたらしいな。褒めてやる」

「終えたさ! 終えたとも! 何が悲しくて娼館に就職希望者たちの性癖をことさら細かく聴取しなけりゃならんのか……おじさんはこんな、こんな仕事がしたくて王都に来たわけじゃねえのに……」


 でも大丈夫かなこの人……配属時に挨拶した時より情緒が終わってない?


「カルハバ君はまあ……大体こんな感じだよ。怒りながら大抵の仕事を完璧に仕上げてくれるんだ」

「根が真面目なんだな、かわいそうになってきた」

「そう思うんなら、おじさんも今すぐリンドンと同じ研究職にしてくんねえかな……」


 哀愁漂ってるなあ。でも、トリドスも何も考えずに呼んだわけじゃないと思うんだけど。


「もちろん。そもそもカルハバ君は自称研究職だけど、教育者と言った方が正しいね。傭兵街では教育水準の向上を一緒にやっていたんだよ」

「そりゃ知識の普及は研究者にとって当然のことだろ。おじさんたちは最先端を切り開きそれを共有する。そうやって世界に貢献するのが研究者の使命だろうが」


 ま、真面目だ……それにすごくいい人すぎる。これは完全に貧乏くじを引くタイプだ。

 とはいえ、リブラと相性はいいんだろうな。前回の話から、善性を失わない人が大好きなのはわかってる。しかも仕事ができるとなれば、この狸のことも嫌いじゃないはずだ。

 聞いた話、傭兵街の魔術師ギルドの頭が三人いたのは、研究者としてリンドン、戦闘スキルの師としてヤカブ、そして教育者としてカルハバと、住み分けができていたかららしい。そりゃトリドスからも自称研究者とか言われるわ。


「私としては、カルハバは教育を司る所にいるのが最も輝けると思っているよ。ここで手柄を立てて、羽ばたいていってほしいものだね」

「おじさんが心労で死ななかったらな」


 とはいえ、むすっとしたカルハバは何やら仕事を終えたらしいけど、性癖がどうとか……。


「その通りだ」


 リブラが書類の束を持っておれに渡してきた。


「三号店を作るために、候補者から性癖を聞いてリストアップしたものだ」

「……何に使うのか、もう嫌な予感しかしないなあ」

「貴様にはこの中から面白そうな性癖を見繕い、『性癖抽出』で集めて献上しろ。その性癖を肥大化させ、娼館で使おうと思っている」


 まあそうだよねえ。リブラが考えそうなことだわ。

 紙束をめくりながら少し読んでみると、いろんな性癖があるのがわかる。

 『壁尻』『入れ替わり』『スパンキング』などなど……人の業が煮詰まってる感じするねえ。


「ふむ……」おれの肩越しに覗き込んだ獅子が詰まらなさそうに。「こんなものか、あの腰振りみたいな面白いものがないな。おれ様が求めるのはもっと派手で無様で客寄せにできそうなものなんだが……」

「さすがにそんな性癖そうそうないでしょ……そもそもあれだってリブラが勝手に生み出したのが元なんだし……」

「なら作るしかないな」


 声音だけで口角を歪めたのがわかるほど、獅子の言葉は愉悦に富んでいた。顔を見なくてもわかる、こいつは今すごく性悪な顔で微笑んでいると。


「よし、ひとまずめぼしい性癖を集めるぞ。それを組み合わせれば、何か面白いことが起こるだろう」

「いや、さすがにそれはちょっと……どうなるのかわかんないし」

「『純愛』の性癖を大量に摂取させてみれば、お前の知りたかったこともわかるかもしれんぞ?」

「聞いてたんだ……」


 それはそれで興味があるとはいえ、性癖をばらまくのに躊躇してしまう。

 傭兵街の時みたいに、リブラに付き合ったらおれも結構やっちゃうのが目に見えてるんだよなあ。歯止めがかからないなんてこと、自分が一番わかっている。


「だから悪いことではあるまい? おれ様に『従え』」

「……っ?!」


 ん、なんか変な感じが……? 耳元で囁かれたせいで、ぞくっと来ただけかな?

 でもまあ、確かに性癖を摂取させた時のデータは欲しいし、娼館運営も手伝わないといけないし。ある程度は付き合うべきか。


 なんて話をしていると、聞いていた狸はがっくりと肩を落とし、耳と尻尾をしおれさせた。今の違和感らしいものを感じていないようだ。


「はあぁ~そうなるだろうと思って候補者たちとの面談予定を取り付けてある。そっちは適当に性癖で選ぶといいさ。おじさんは家庭環境や能力、キャリアの積み立て希望などから選ぶからさあ」


 本当に有能だなこの狸……。


「ふふ、だろう? カルハバは人もいいから面接にうってつけだよ。傭兵街の時は立場が違ったからある程度の協力しかできなかったが、今なら心底頼もしいと思うね」

「はいはい、お世辞はいいからとっととやる。おじさんはきちんと終わらせて家を探さないといけないんだ、いつまでも白竜宮でお世話になるわけにもいかんだろ」


 急な赴任だったから準備が整ってるとは言えないカルハバだ。今は職場でもあり妃のための宮である白竜宮で貴賓として暮らしている。

 傭兵街では独り暮らしだったようで、事あるごとにメイドとかにお世話されるのが慣れないってぼやいていた。トリドス曰く、意外に人見知りするらしい。気持ちはわかるよ。


「家なら私のところで良いだろうに。一人増えても変わらないよ」

「断る。ゴライザと一緒とか無理だろ。おじさん、あいつ苦手なんだよ。話通じねえし」

「相変わらず嫌っているね。今の彼はまだとっつきやすいと思うから、今度話してみるといいよ。では、私もそっちを手伝おうか。大事な娼館のスタッフになる人たちだからね」


 牛もいてくれるならと狸がほっと胸を撫でおろす。付き合いがあるだけあって、ある程度は信用されているようだ。じゃなきゃ誘っても来ないか。

 カルハバの手際のおかげで、性癖を集めるのに苦労はなさそうだ。

 問題は集めた性癖をどうするのかってことなんだけど……。


「くふふ❤」


 それはリブラ次第かなあ……。


****


 性癖を集めるにはその雄を射精させる必要がある。なので、めぼしいものを絞ったとはいえ、全員の面接が終わった頃には完全に日が暮れていた。


「つ、疲れた……」


 客間らしい豪華な部屋のテーブルに突っ伏して、体の奥底から弱々しい溜息を吐いた。

 射精させるのは簡単なんだけど、大量に集めないとリブラが満足してくれないんだ。おかげでかなりスキルを使ったよ。

 そのかいあってか、テーブルにはいくつものビンが並び、その中には白い粉がたっぷりと入っていた。


 これ全部人の性癖だと思うと圧巻だ。一応ラベリングしたから誤飲することはないと思うけど……リブラは一本一本手に取って眺め、ニマニマと意地の悪い笑みを浮かべている。


「これだけあれば足りるだろう。さて、どの組み合わせが面白いのか……」


 なんて言いながらビンを並べて遊んでいると、尻尾も踊って弾む。これから人の性癖歪めようとしてるとは思えないほど嬉々としているな。


「くふふ、めぼしいものから試してみようじゃないか❤どうせ時間は余っているんだからな❤」

「試すって、どうやって?」

「さっきまで面接してた奴らを実験体とするに決まっているだろうが。こういうのは実際に見てみないことにはわからん」


 相変わらず他人を巻き込むのに躊躇がなさすぎ。でもまあ、今回は従ってやるとしますか。


 特に反論のないおれを見る獅子の目は、愉悦に弧を描いている。何がそんなに面白いのかわからないが、どうせろくでもないことだろう。


「おれ様程度の『暗示』でも案外何とかなるようだ。お前の防御力の無さはなんとかしたほうがいいとは思うぞ」

「は? 『暗示』っていつのまに……お前さあ……」

「お前も知っての通り、おれ様は単純戦闘よりこういう絡め手が得意だからな。本家のお前に比べたら見劣りするが、そこらの雑魚なら問題ない」


 今、しれっとおれのことも防御力雑魚に含めた。絶対そう。

 だけどそれにしても、スキル習得の速度が速い。フォグとかヤードみたいなユニークスキルだけじゃなくて、一般的なスキルも強化してくるとは。

 もともと何でもできる天才肌だったんだし、見せられたら普通に納得するけどさ。


 見た目も能力も地位も、リブラは全部持っている。ないのは良心くらい。


「ふむ……今少し思ったのだが」

「どうせろくでもないことでしょ、どうぞ」

「お前は自他共に認めるひ弱さの持ち主だろう? だから……」


 すっと手が横切って消えたと思ったら、ビンがおれに向かって飛んでいた。


「お前がこれを浴びたらどうなるのか、おれ様は興味がわいた。食らってみろ」

「だからお前さあああぁ~!」


 興味関心の天秤が良識より重すぎるんだって。思い立ったが即行動で、人に性癖を投げつけてくるのなんなんだよ!

 普通に考えたらガラス投げてんだぞ?! 危ないだろ! そりゃいつものメンツはこんんなビン程度じゃかすり傷ひとつ追わないだろうけど、おれなんだって!


 と思ったら蓋が開いていて、回転の勢いで粉が舞い始めた。一応そこは気遣ってくれたらしい、いやよくねえけど!


 なんの性癖かもわからないものがおれを包み込んで、霧の中に隠しているみたいだ。自分で食らったのは初めてだけど、全然精液の匂いとかしないんだな。

 顔のすぐ横をガラスが白煙を打ち上げながら爆速で駆け抜ける。おれは頬をかきながら、なんて言ったものか少し考えあぐねてしまった。


「いやー……楽しそうにしてくれてるところ、悪いんだけど……」

「なんだ、やはり効かんのか」

「そりゃおれの能力だし、さすがにね」

「大体想像通りでつまらんな。お前なら大したことにならんとは思っていた」

「完全に隙を突いた投げ方したくせに……」


 しかもこいつらにとっての軽くはおれにとっての全力以上なので、顔に当たってたら大怪我してたよ。リブラなら失敗しないだろうけど、もしもを考えると肝が冷える。


 後ろを振り返って確認すると、床に転がっているビンにはヒビひとつない。頑丈なんだな。でもだから投げていいとはならねえんだわ。普通に痛いだろ。


「なんの性癖これ……『足の匂い』って、ああ、そういえば一人いたね。リブラの足嗅ぎたそうにしてた人」

「思い出すだけで不愉快だったから、つい投げてしまった。ショーには使えない性癖だ。躾けるにはいいかもしれんが、さすがにおれ様も足を嗅がれて喜ぶことはない」

「まあおれもねえ……フォグが『華炎』にやりすぎて大変なの見てるし、こういうのは使わなくていいよ」


 なんて言ったけど、『精液操作』発動。漂う霧を濃くして、安全圏に移動していた獅子に向かって奔流を描く。


「……なんの真似だ」

「おれさ、だいぶ前からやりすぎは良くないよって言ってたじゃん」

「何を今更。他の誰に言われても、お前が一番説得力などないだろうが」

「否定できないけどお……ほら、おれは最近抑えてるから……」

「それがつまらんと言っている。昔のお前はこの世界になじめず、威嚇する小動物のようだったというのに。少し手を出すだけで噛みつき、性癖を歪め、篭絡しては不安を紛らわせていた」

「……なんで君、おれよりおれを見る目があるんだよ」

「くふふ❤宮中にいれば対人観察は困らんからな。コハクもそうだろう?」


 顎下部分のたてがみを撫でながら、おれが異世界に来たばかりでビビってたのを見透かして意地悪く笑う。この状況でイニチアチブを取ろうとするの、リブラって感じ。


「いいから、他の人にやらせるくらいなら、自分でやりなよ。おれもちょっと付き合うからさ」

「くふふ❤牙を抜かれたわけではなかったか。二人っきりになると、お前の本性がよくわかるな❤」


 性癖を向けられながらも、獅子は余裕ぶって口角を上げている。脅しだと思ってるのかな。『忠犬』の性癖をリブラに降らせたのはおれなのに。

 なんか素直で怖いけど、やるなら今だね。トリドスたちが帰ってきたら、絶対面倒になる。カルハバからごみを見るような眼を向けられそうで怖いんだよ……。

 

「リブラがどんな娼館にしたいのかはわからないけど、変わった性癖ばかりじゃなくて、単純なものを突き詰めてもいいと思うよ」

「人を足の匂いに興奮させようとしながら言うセリフではないな」

「それはそう……」


 なので、このまま一気にやろう。リブラなら意思も強いし、最悪コハクに頼みやすいから悪化もしないだろう。コハクも『性癖』というスキルへの理解度を深めたから、だいぶ処理が正確になっている。


 指を曲げると、性癖の嵐が渦巻いていく。勢いよく回しただけなんだけど、ちょっとやりすぎたかも。

 リブラのスキルじゃ突破は難しそうだし、おとなしく食らってよ。


 それから白い粉塵を消すと、見た目だけは変わりないリブラが立っている。

 けど、性癖は確実にしみ込んだ……はずだよね。対策してきたって言われても驚かないけど、どうかな。


「リブラ、質問なんだけど、今の君は忠犬? それとも匂いフェチ?」


 二つの性癖を摂取した場合、混ざることが『華炎』でわかっている。けどゴライザの『忠犬』発露みたいに、自分の中に眠る欲求が強い場合は打ち消せることもわかっている。

 だから結局何を摂取させたとしても、本人次第としか言えないわけだ。


「くふっ❤何を馬鹿なことを聞く」


 獅子はどうなのかと問うと、見下したような笑みが返ってきた。

 元帥という地位に合わせて作られた豪奢な軍服すら引き立て役にできるほど整った顔に、とろけるような微笑を浮かべれば誰であれ第一印象は騙されるに違いない。

 だけどそれは段々崩れ、発情を押し出したものへと変わる。


 リブラは息を荒げて、食いつかんばかりの勢いで答えを教えてくれた。


「両方に決まっているではないか、おれ様の暗愚なるご主人?❤」


 どうやら今の言葉を聞くに、性癖は混ざったらしい。

 そしてこうなったらもうやることは決まっていた。


「結局またリブラに流されちゃったかあ……責任は取ると言いましたけどぉ」


 リブラはゴライザと違って、構ってほしい時に飛び掛かってこない。今みたいにわざと怒らせるようなことをして、なし崩しにやることが多かった。

 たまにどMなんじゃないかって思うんだけど、こいつの性癖を抽出してもどM成分一つもないんだよな。本当にただ素直じゃないツン。デレなんてものはない。

 だからカルハバたちが帰ってくる前にしたかったんだ。


「毎回毎回さあ、普通に頼めばいいのに」

「くふふっ❤そんな馬鹿犬のような真似、できるわけがないだろう❤それにこうした方がお前も喜んでくれている❤おれ様は自分の愛玩願望を満たすためことしか考えていないあの馬鹿犬とは違うのでな❤」


 なんだかんだライバル視してるんだよねえ。仲良く一緒に飛び掛かってこられたら普通に死ぬからいいんだけど。


 ソファに腰かけて服を脱ごうとしたら、金色の手が押しとどめてきた。こいつはやんわりとかしないので、はっきり爪を立てるくらいの強さなんだよ。そういうところはゴライザを見習ってほしい。


「お前の忠犬が健気に性癖をくらってやったんだぞ❤飼い主としてムードを守るぐらいはしたらどうだ?❤」


 声音は甘いのに、字面は全然厳しい。これでもデレなんだよなこいつ……。


 屈強な美丈夫はスラックスをじらすように脱ぎ去ると、その下には白いタイツがあった。

 おれの世界だと、そういう下着はバレエとかでしか見ないから新鮮味がある。まじまじと見ている間にテーブルに腰かけたリブラは、ゆっくりとブーツを脱いでいく。

 ただの着替えを見るよりなぜか背徳感が強い。出てくるのはどこまでも白く、たくましいのに色気のある脚だ。脚線美というのはもっと女性的な場合に使うと思っていたけど、こんな凹凸の強い脚にも適応できるんだ……。


「くふ、どうしたご主人?❤ただの足にえらくご執心ではないか❤❤」


 こいつ、パンツを脱ぐのは見慣れたとわかってるから、普段と違うことをわざとやってやがる。だからこんなタイツを履いてきたのかよ。

 匂いも完全に男なのに、エロさを感じているおれがいる。香料と汗の混ざったそれは脳を混乱させ、興奮を想起させてやまない。おかしいな、性癖は効かないはずなのに。


「その様子だとお前の方が嗅ぎたいみたいではないか❤これではどちらがご主人かわからんな❤」


 やがてどちらのブーツも脱ぎ去ると、隆々としたシルエットがはっきりと浮かび上がる。

 毛皮を押さえつけているおかげで、筋肉の盛り上がりが一目でわかる。ただでさえ逞しいと思っていたのに、こうしてみると想像を超えていた。

 おかげで白い部位から視線が離せなくて、馬鹿みたいに見入ってしまった。


 注視されていることにご満悦の獅子は、足先でおれの顎を持ち上げて牙をむく。

 忠犬になっても根幹は全く変わってない。おれ様リブラ様だ。


「あえて変わり種を持ってきたが、いい反応だ❤昔の正装で使う機会もないと思っていたが、案外悪くない❤」

「こっちの性癖も広げるつもりじゃん……」

「くふふっ❤こういう衣装はあの馬鹿犬には似合わないからな、おれ様だけの特権だ❤あいつの膨れすぎた足では歪にしか見えん❤」


 上半身は色の濃い群青の軍服に、下半身は白一色で脚線美がよくわかるタイツ。ゴライザほどではないとはいえ、そもそもの造形が整っているから筋肉の凹凸も芸術品じみている。

 獣人がいる世界のタイツだから毛皮もはみ出ない様に工夫されているようで、まさに大理石で作られた石像と言われても信じてしまうくらいだ。


「おれ様が元帥になったせいで忙しくしている間に、ずいぶん他の雄をたらし込んでいるみたいではないか❤」


 足の指で顎下をくすぐりながら、獅子は妖艶に目を光らせる。

 普通に座っているもう片足の腿がテーブルにつぶされて筋肉を浮かび上がらせるのも鮮明で、さらに挟まれた股間の盛り上がりがぐにぐにと動くのも見せつけられる。絶対わざとだ。


「ファンダルの初心さはお前好みだろう。あれはおれ様が手ひどく抱いていも善性を失わず、純粋さも失わなかった。なのに恋人ごっこの生ぬるいセックスばかりとは、呆れて言葉も出ん」

「いや、別に……仕事でやってるから調教してるわけじゃないし……」

「あれは躾ければいい忠犬になるぞ❤ゴライザと競わせるのも悪くないだろうな❤❤」


 上ってきた足先がおれの頬をくすぐる。向こうがおねだりしてきたはずなのに、主導権は完全に奪われていた。まあ、いつも通りなんだけどさ。


「それにトリドスも一時の性癖による気の迷いではなく、本当に味方につけたな❤偉ぶったしゃべり方しかしなかった奴が、今ではおしとやかに変わり果てている❤さぞすっきりしただろう?❤」

「あれは、すぐ後に飛ばされちゃったから、そんなこと確認する暇もなかったし……」

「元々持っていた庇護欲と雄好きが嚙み合うとああなるのかと、わかったのは面白かったぞ❤」


 言外にファンダルもああしてはどうだと提案されている。トリドスの性癖はおれが催眠とかいろいろかけた結果なので、再現性もある程度保証されてるはずだし、できなくはない。やりたくはないけど。


「今になって思うと、傭兵街の時はやりすぎてたんだよ。それに関しては言い訳のしようもない」

「くふふ❤何勝手に大人ぶっているんだ❤ここにはおれ様しかいない、本性を出せばいいじゃないか❤」

「うう……」


 リブラには言ってないけど、前に見た悪夢が本当に嫌すぎて抑えないとって思ってるんだ。おれならジェルをあそこまで壊せるんだってわかっちゃったから、なおさらさあ。

 客観性は大事なんだなって、改めて思う。フォグが助けてくれなかったら、トラウマになってたかも。


「おまえが何におびえているのかは知らん❤だがおれ様は立派な忠犬だ❤お前が恐怖を克服できるよう、一肌脱ごうじゃないか❤」


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