【全体公開版】露出狂幼馴染のストリップに感化されるだけの話
Added 2022-07-22 10:00:00 +0000 UTC幼馴染のリンは小さいころから強いと言われるのが好きだった。
僕をからかった友達を懲らしめた時も、強いねと褒めたら得意げに縞模様の目立つ腕を組んでいた。普段よりも力強く立つひげがとても分かりやすくて、僕もリンが喜んでくれるのがうれしいから、たくさんほめることにしたんだ。
……それが、こんなことになるとも知らずに。
****
「なあ、スズ。どうよこれ」
といいながら力こぶを作って見せつけてこられても困る。
夏の暑さに負けないくらい、この幼馴染は暑苦しい。
竹林 虎吾郎(たけばやし とらごろう)、昔から僕がリンと呼ぶ幼馴染は、今日も今日とて鍛えた肉体美を見せびらかすのに執心している。
太陽がさんさんと照りつける室内なのにエアコンが置物と化しているのは、この幼馴染が汗をかくのが好きだからだ。汗によって毛皮を湿らせ、筋肉の凹凸を際立たせるために、僕まで被害に合っている。
それでなくとも本人は被毛種に生まれたことが気に食わないらしく、素肌が見えないぎりぎりまで毛皮を深く刈り込んでいるというのに。触ってみればふわふわというより、ちくちくといったオノマトペのほうがふさわしい。
「ああ、前より太くなったんじゃない?」
リンの筋肉によって膨れた肉体を見慣れている僕は、些細な変化すら見逃さない。今日は早く終わるといいなと思いながら、顎に流れる汗をぬぐった。
それくらい、この幼馴染は僕に肉体を見せつけているのだ。
屈強な虎はビルパン一丁というあられもない姿で、さらに僕との距離も近い。暑さでにじむ自家製オイルによって筋肉同士の溝も明白で、視界も匂いも雄密度が高くなる。
常人なら一発で夏バテならぬ雄バテでノックアウトされそうなものだが、あいにくとこちらは日常的なオーバードーズによって最大耐容量が上昇している。慣れというのは本当に恐ろしいものだ。
「だろっ! やっぱ増量期がうまくいったんだな。この調子でもっと太くするぜ」
夏場の太陽に負けないくらい朗らかに笑う幼馴染だが、そもそも今現在ですら体が太すぎて服に難儀しているというのに。四肢の一本をとっても筋肉の塊で、生まれながらの長身もあって縮尺を間違えた巨体によく遠近感が狂ってしまう。
「別に、顔は悪くないんだけどなぁ……」
「なんだ?」
「いや何も。リンはかっこいいなって」
「そうだろ。へへ、そう言われちゃ、ポージングにも熱が入るってもんだ」
凛々しい眉毛の下にある鋭い目をほころばせ、リンの顔がにやける。
昔からそうだ。リンは褒められるとすぐ嬉しそうな感情を見せる。こうしていると親しみやすさが前面に出て、ハンサムな虎としての種の恩恵が存分に発揮されるのだ。
「そら、見てくれよ。トレ後だしいい感じにパンプアップしてんだぜ」
でも、体を膨らませる時になれば、そんなかわいらしさは吹き飛んでしまう。
リンはいつだって、体を見せびらかすときは真剣だから。
引き締まった肉食の相貌が、汗によって精悍さを増した。水も滴るいい男というが、リンを見ているとその意味が嫌でもよくわかる。眼光の合間を流れる水滴が、真剣な表情をまばゆく照り返すのだ。
体を傾けたサイドチェストの体勢で、リンは僕を見る。僕だけを見ている。
広いステージでも見劣りしないほどに分厚い肉体を、こんな間近で眺められるのは僕だけの特権だ。それをありがたいと思うかは人それぞれだが、少なくとも、僕はもう慣れてしまった。
「――――ふんぅ!」
一瞬呼吸を止めれば血管が浮かぶ。上腕三頭筋から手首へとつながる静脈が隆起し、筋肉の起伏をより明白に見せてくれる。そして側面からぼこっと山のように膨らむ二頭筋が力こぶとして発達した。
そして、下には僕の胴体ほどの大きさに膨らんだ太ももがパンパンに張っていて、ハンマーで殴ってもびくともしなさそうな頑丈さを訴えている。
全身これ筋肉ですと、見ただけで分かる鍛錬の証。リンが一生懸命育てた、自慢の肉体だ。
だから僕は褒める。ボディビル会場のヤジほど気の利いた言葉は出せないけれど、リンが喜んでくれるから。
「すごいよ、リン。リンはいつもかっこいいな。体もでかくて、たくましいし、本当にすごいよ」
「ありがとうな、お前がそうやってほめてくれるから、トレも頑張れるんだ」
そのままこちらを向いて、にかっと虎が笑みを浮かべた。細い尻尾がゆらりと動いているところを見るに、少し緊張を解いたみたいだ。
「触ってみるか?」
なんてありがたい申し出をもらったが、正直、汗まみれの体に触るのは遠慮したい。筋トレ後のリンは、近づくだけで雄臭さが肺を殴りつける劇物だ。最大耐容量を鍛えた僕でも、五分と持たない。
それでも、三回に一回は触ってあげないと満足しない猫なので、たまには触っている。が、今日はそういう日でもないのでパスしよう。
「そっか……スズはちょっと脂肪がついてた方がいいのか? 増量期中はよく触ってただろ」
それは季節が冬だったからで、夏場のエアコンもつけてない部屋ではさわりがあるというだけ。でも、さすがにそれを口に出すことはためらわれた。
「今だってまだ脂肪ついてるし力を抜けば、ほれ、胸も震えるぞ」
なんて言いながらポージングを解いて、こちらに向き直る。真っ白な毛に包まれた胸部を揺さぶれば、むちむちとした肉がたわむ。毛皮を短くしているせいで純白からのぞく乳輪もはっきりと見え、汗の光沢で突起がなまめかしく光っていた。
この幼馴染の意図は明白だったので、僕はむっとして視線を逸らす。感化されたくはないのに、エロいと感じてしまう自分が嫌いだ。
「そんなことばかりしてるから、ボディビルサークルから怒られるんだよ」
「んでもよ、やっぱこうしねえと終われないんだわ」
リンが浮かべた笑顔は弧が強い、下卑た顔。欲を隠そうともしない、あさましい獣の顔だった。これさえなければ、リンは気さくないいやつとして、僕の最高の幼馴染でいられたのに。
むわりと部屋に満ちた熱気がその色を変えたことを肌で感じて、この先のことを憂いた。
リンがビルパンを下せば、巨体に見合うだけの肉棒が勢いよく現れる。この幼馴染はパンツに引っ掛けて揺さぶることが大好きなのだ。実のところ、リンのパンツは先ほどからすでに巨根の存在を誇示していて、シミによって色を変えていた。
そんな雄汁付きビルパンを足の指で挟み、僕の顔に乗せる。ぼうっとしていた僕は不意を突かれ、一段と濃い雄に包まれてしまった。肺だけじゃなく脳までも、リンに満たされて溺れてしまいそうだ。
慌てて払いのければ、にやついた虎が恥骨部に手を当てている姿が目に入ってしまった。リンは陰毛を抑え、立ち上がったものを揺らして誇張している。
汗だか汁だかわからないもので濡れそぼった巨根は、凝縮された雄臭さを部屋中にまき散らし、自身が主役だとアピールしていた。怒張と表現して障りないほどにいきり立った一物から一筋の汁が零れ落ち、糸を引いて興奮の粘度を知らしめる。
「なあ、スズ」その粘度にも負けないくらいのねっとりとした声音で僕を呼ぶ。「こっちも見てくれよ。おれのちんぽはどうだぁ?」
興奮によってねばついた唾液の絡まった声が、僕の耳にしみこんでいく。見たくもないのに見てしまう。目が、雄々しさの権化に吸い寄せられてしまう。
その反応を見て、リンの鼻が興奮に開く。僕の欲情をたきつけたことで、触ってくれなかった不満を呑み込むことができて満足したようだ。
「ほら、いつものように言ってくれ。頼むよ。お前に褒めてもらうのが一番好きなんだ」
片腕を上げて後ろに回し、体をそらすことで腋を見せつけるリンは僕を挑発している。顔も腕に寄せて流し目で見下す視線はしっかりと欲で潤んでいて、頬では興奮の赤が薄い毛皮を貫通していた。
前に伸ばした腕は肉棒をゆすったり、ぶら下がった玉袋を揉んだりと、性器の強調をかかさない。このまま思いっきりしごき上げたいだろうに、リンは僕の言葉を待っている。
先ほどとはまるで違う、淫獣としてのリン。
僕の愛しい幼馴染は鍛えた体の隅々まで見せびらかし、他人を興奮させることに興奮する変態になってしまった。
腰を回してする淫靡な動きも慣れたもので、毛先に浮かばせた汗に夏場の太陽が反射する。でも太陽がどれだけまばゆくても、リンの輝きには勝てやしない。
サークルの誰よりも逞しくて、誰よりも雄々しい肉食獣のストリップショーは、本来なら大枚はたいてみることができる極上のエンターテイメントなのだろう。
だが、リンが求めるのは称賛だけ。お金なんかじゃない。努力に見合った賛辞を僕から受け取りたいだけなのだ。
鈴口に指をつければ、つぅーっと糸を引く。興奮を見せつけるように何度も糸を作り、亀頭を上下からつぶせば鈴口がぱっくりと開く。
ここから精液を出すのだと、鮮烈な光の下で内壁をさらして悦に浸る幼馴染。僕だけに視線を向けて、自身をより深く見てもらおうと踊り続ける淫乱な獣。
ステージにも出ず、ただ僕の前でだけショーを繰り広げる幼馴染の、育ってしまったいびつな欲望。
それを鎮火するすべを、僕はもたない。もっていたら、もっと早くにリンを真っ当な大学生にしていたはずだ。
どこでどう間違ってしまったのだろう。僕は、リンになんて言えばよかったのだろう。
その答えはまだ見つからない。
だから、僕はいつものように答えるのだ。
「リンは……ちんぽもかっこいいね。雄ならだれもが憧れる立派なちんぽだよ。僕も、リンみたいなちんぽが欲しかったなぁ」
自尊心が欲望へと置換され、下卑た顔で虎が笑う。
露出狂になった幼馴染は、満足そうに鼻息と先走りを存分に垂れ流すのだった。
****
あれからリンによるオナニーショーが開催され、終わったのはあたりが暗くなってからだった。最後の方は熱気に頭がやられたために記憶すら不明瞭で、このままだといつか熱中症で倒れてしまいそうだ。
それでも忘れられない映像が脳にこびりついている。鼻先にあてがわれたリンの根元から僕の眉間を横断する肉の塔のグロテスクさはどうしたって消えてくれない。額に汁を垂らしながら称賛を待つ淫靡な肉棒に、僕はなんと言ったのか覚えていなかった。
ただ、赤らんでにやけるリンの顔が、いつもよりずっと嬉しそうだったことは残っていた。
興奮したくはない。僕はリンを真っ当にしてあげたい。
だから、股間の湿り気が不愉快で、脳内から必死に映像を追い出すことに努めた。僕まで引っ張られては、リンを止める人がいなくなってしまうから。
「お、スズ起きたか。悪いな、ちょっと気分が乗ってやりすぎちまったわ。気持ち悪くはないか?」
エアコンの効いた室内でぼんやりしていると、ドアを開いたリンが気遣ってくれる。結露したコップを見るに、飲み物を持ってきてくれたようだ。
手渡されたそれに口を付けたとたん、中身はみるみる減ってすぐに空になってしまった。どうやら本当に熱中症一歩手前だったらしい。
だが、体にはびこる飢えを満たすには程遠く、お前のせいだと下からねめつけながらコップを差し出せば、リンは笑って受け取ってくれた。
「そんだけ元気があれば大丈夫そうだな。すぐ持ってくる」
踵を返す虎は豊満な尻を見せつけながら扉の向こうへと消えていく。減量期途中のためか、うっすらと脂肪が乗った尻は丸く、歩くたびにたわんでいて目に毒だ。
尻丸出しのジョグストラップと裂け目が深すぎて上半身を隠せないタンクトップ。これが露出狂と化した幼馴染の部屋着だ。
巨体が多い獣人種のLサイズでもカバーしきれないほどに膨らんだ筋肉は、部屋に入るだけで気温を上げてしまう。その熱気を叩きつけられたなら、たとえエアコンが効いていても熱中症になっていたかもしれない。
そんなとりとめのないことを考えていると、リンがもう一杯お水を持ってきてくれた。
「ほらよ。あ、シャワー浴びといたから、いつでも使ってくれ。飯も用意してあるから」
「……それはどうも。ちょっと今何も手につかなさそう」
「そういうと思って、レポートもやっといたぞ。明日までに写しとけよ」
「助かる……まあ君のせいでこんなことになってんだけどさ」
「だから埋め合わせは頑張っただろ。おれとしてはもうちょいやりたかったんだけど、スズが限界みたいだったからな」
そう、露出狂という欠点さえなければ、リンは顔もいいし性格もいいしかっこいい、最高の幼馴染なのだ。
だからこそ、毎回の露出にも付き合うし、ルームシェアだってする。リンは小さいころからの憧れだから。
まさかこうして大学までこの縁が続くとは思っていなかったけど、それでよかったかもしれない。リンは放っておいたら絶対逮捕されていた。
ようやっと落ち着きを取り戻した僕はリビングへと足を運び、食事をとることにした。
肉体改造に余念がないリンと、一般人である僕の食事は当然違う。リンがわざわざ用意してくれたご飯をかみしめていると、向かいに座った虎が耳を動かしながら聞いてきた。
「なあ、どうだ? おれに興奮するようになったか?」
「なってない。食事中だから、そういう話題はやめてよ」
「ちぇ、残念。いい線いってると思ったんだがな」
股間から漂う匂いを証拠にすれば絶対嘘だと分かるのに、リンは盛大にため息を吐いた。机に頬杖をつきながら僕を凝視して、本音を引き出そうと眼光を三日月にゆがめる。
僕の口から言わせたいという願望が透けて見えている。リンは小さいころから、ほめられると素直に喜ぶタイプだから。
だから、絶対に言ってなんてやらない。僕は食事をかっ食らうと、視線から逃れるようにシャワーへと向かった。
「背中流してやろうか?」
「君と二人で入れるほど広くないでしょうが」
「確かに。のぼせそうだったらすぐ言えよー」
僕は下着を脱衣室にある洗濯機にぶち込んで、ついでにカゴにたまったもの全部突っ込んで、興奮をなかったことにしようとスイッチを入れた。先ほど筋トレ中に着ていたであろうリンの服から匂いが芬々と飛んで、鼻をくすぐればいやでも先ほどの光景が目に浮かぶ。
屈強な胸筋にそれを支える僧帽筋が汗を滴らせて興奮に膨らむ様。毛皮の一本一本がつややかで、腹筋の割れ目すらきれいに反映させる隆起。
そして、恥骨から伸びる真っ赤な――――
思いっきり頭を振って打ち消して、そのまま浴室へ。
体に染みついた匂いも消したくて、少し熱めのお湯を頭からかぶる。
でも、いきり立った股間を見るに、何の効果もないようだった。このまま上がれば、リンは嬉しそうに第2ラウンドを開始するだろう。
収まれ。収まれ。
リンで抜いてしまうことだけは嫌だった。認めたくないという感情と、思い出を汚したくないという希望が僕を何とか踏みとどまらせてくれている。
「いやだな……」
いったいいつから、僕はリンに興奮するようになったんだろう。
よく抱き着いてくるようになった小学生のころからだろうか。
成長期を迎えてよくなってきた体格を自慢するようになった中学生だろうか。
オナニー動画を送り付けてくるようになった高校生からだろうか。
はっきりした境界線なんて定かではないけれど、僕はリンに興奮するようになった。
性の芽生えた時期にずっとそばにいたせいで、いつの間にか刷り込まれていたのかもしれない。
だけど、それを認めると、僕らは幼馴染でいられない。
そんな気がしてしまうから、僕は今日も嘘をつく。
本当はリンが誰よりもかっこよくてたくましくて素敵だなんて知ってるのに。
僕はもう、素直に言えなくなってしまった。
****
前回の反省を活かして、今日の室内はクーラーをしっかりと効かせることにした。夏真っ盛りの現在、黄昏時まで太陽が沈んだからといって、窓を開けたくらいで熱中症対策になるわけがない。
机の上には冷たいお茶も準備して、課題をするために開いたノートパソコンには音声通話の窓が開いていた。
『よっ、ちゃんと見えてるかースズ?』
「見えてるよ」
その窓ではリンの精悍な顔がでかでかと映し出されている。自撮りのためか、かなりアップに映っており、凛々しい目に吸い寄せられそうになってしまう。
こちらの返事に顔をほころばせた虎は、自身が今いる場所を撮影し始めた。どうやらワイアレスイヤホンの調子は問題ないようだ。問題があれば、帰ってきた欲求不満タイガーにさんざん見せつけられていたところだった。
リンのいる場所はここから少し離れた公園だ。ジョギングコースの折り返し地点であるここで、露出する心づもりなのだ。
『よし、なら始めるとするか。本当ならスズにも来てほしかったんだが、画面越しっていうのもたまにはあがるよなぁ』
すでに勝手知ったる場所であるため、リンの行動に迷いはない。歩道のそばには整えられた木が並び、あたりに人はいないようだった。
目当ての場所を見つけたようで、虎は外灯の下へと進み出る。
リンを照らすにはチープな明かりだが、夜を強める世界にはとてもよく映えていた。オリーブのホットパンツと赤地のTシャツという普段着より布面積の多い格好だが、脱ぐためのギャップを演出する以上の意味はない。
裾がちぎれそうなほど引き延ばされたホットパンツは、確か去年買ったものだったはずだ。増量期後とはいえ、この虎はどこまででかくなれば気が済むのか。
シャツも同じころに買ったものだったため、乳首の突起すら明瞭に浮かび上がっている。胸部がでかすぎて無残に引き延ばされたシャツは、もう露出以外に使い道がない。
そして、リンはそれらすべてを計算でやっている。
カメラを乳首に寄せてシャツの陰影にピントを合わせれば、下から揉み上げてその大きさを知らしめる。胸がでかすぎて下向きになっていた乳首が蛍光灯を一身に浴び、シャツに卑猥なテントを作っているのがよく見えた。
高解像度の情報が画面から洪水のようにあふれ出していく。このためだけに買った最新鋭のスマホは、その仕事ぶりをいかんなく発揮しているようだ。
そのまま映像は流れ、へそ下まで。
少しシャツをたくし上げた恥骨のあたりでは、汗によってへたった毛皮が筋肉を浮かび上がらせていた。そこを何度も嗅いだ僕の鼻腔に匂いがフラッシュバックして、自然と喉がなる。
股間の盛り上がりはもう隠しきれるものじゃなくて、ホットパンツを破って飛び出しても不思議じゃないほどに膨張している。表面の布地はまだきれいだが、その中では下着が我慢汁で濡れているのが容易に想像できた。
リンは股間の膨らみを揺らして、甘い声を響かせる。通話越しだというのに、それはとても煽情的だった。
『スズ、どこが見たい? お前が見たい場所、全部見せてやるぞ』
人に想像だけさせておいて、リンは決定権をこちらに投げてくる。
その間にもあたりを撮影して、ここが外だってことを改めて教えてきた。興奮に固唾をのんでいた僕は、今にも草むらから誰か来るんじゃないかという恐怖におびえてしまう。
こんなリンを誰かに見られたくなんかないけれど、帰ってきてほしいなんて言っても聞き入れられないのは明白だ。
『スズ』
でも、リンは僕の葛藤をあっけなく見透かして甘えてくる。僕らは互いのことを大体把握しているから、そのタイミングも完ぺきだった。
『帰ってきてほしいならもちろん帰るぞ。でも、その場合はお前も付き合ってくれるよな』
ねっとりと舐め上げるような言葉に、僕の股間部が急に熱を帯びてしまう。
リンが帰ってくれば、またこの前のようなことが起こるのだろう。
熱した部屋でちんぽを見せびらかして僕にぶっかける虎を思えば、口が妙に乾いた。飢えを満たしてくれるものが何なのかなんて、考えてはいけない。
僕はそばに置いたコップをあおることで自分を落ち着かせようとしたけれど、熱した体を冷ますことはできなかった。唾液が粘っこくなることにわずらわしさを覚えつつ、パソコンの画面に目を向けた。
すでに通話のウインドウは大画面になって、課題のことなんて後ろに追いやられている。
至近距離で牙をむいて笑みを作る幼馴染がかっこよくて、つい拡大してしまった。本当に、リンはいつだってかっこいい。
『お前が望めばどこだって見せてやるよ。だから、スズ。見たいと言ってくれ。おれの全部が見たいって求めてくれ』
この露出狂は求められることにとても弱い。きっと触りたいなんて言おうものならハグする勢いで突進してくるだろう。
虎の口から出る吐息に艶が混じり、甘やかな振動が耳を刺激する。
その刺激に押し出されて言葉が飛び出す。帰って続きをされるくらいならと、自分への言い訳を完備したうえで。
「見たい。見たいよリン。今日も僕に、リンの全部を見せて」
『任せろ』
短く言い切った虎は頼もしくもあり、危うくもあった。上気して蕩けた顔を見れば、この虎が正常な思考を持っていないことが誰の目にも明白だからだ。
リンがスマホを少し離れた場所に置くと、その屈強な肢体がすべて画面に収められた。蛍光灯の下に戻った虎は見栄えを確認したいとこちらに目線を送るので、大丈夫と答えておいた。
『よし』
リンの全身が見える。運動用のスニーカーから伸びる足腰はたくましいを通り越してもはや脅威だ。パテをくっつけて固めたってこうはならないだろうくらいに凹凸が浮かび上がっていて、分厚い胴体がそんな感想に拍車をかけている。
映像越しで見ればその思いが強くなる。画面の中のリンはなんて現実離れした巨体なのだろう。細く長い虎の尻尾だけが、リンのかわいらしさを示すアイコンのようだ。
でも、そんな僕の思いとは裏腹に、リンは腰を突き出すと尻尾を内またから前へと持ってきた。起立した縞模様の尻尾を前で振るだけで、性器の暗喩になってしまう。実物を見せることなく自身の淫乱性を際立たせる露出狂は、画面の向こうから僕に興奮しろとサインを送る。
ゆらゆらと尻尾が揺れて、合わせて腰も揺れる。恰好はさっきと変わらずのホットパンツとTシャツなのに、エロさが数段階跳ね上がっていくではないか。
「すごい……」
虎の淫靡な踊りに理性が焼かれ、つぶやきが零れ落ちた。
僕の声はイヤホンで聞こえているだろうが、スマホが離れているからリンの声はこちらに届かない。本当に、僕はステージを見るだけの観客になってしまった。
賛辞を受けた虎はここからだと腰のうねりを強くする。尻尾をはさんだままシャツの裾を両手で握り、ゆっくりと、じらすようにたくし上げる。
徐々に現れるへそ、腹筋……段差が強い胸筋。服に引っかかって持ち上がった胸が落ちる時に、バルンと擬音が脳内で鳴った気がした。
先ほど服越しに見た乳首はつんっとそそり立っているのだろうか。いつもなら間近で見れるというのに、距離をはさむだけでこんなにもじれったく思うのか。
気づけば僕は画面に顔を近づけ、リンの肢体を凝視していた。普段は向かい合っているから出せなかった欲求が、ばれないからとあらわになっている。冷房が効いているはずなのに、前と変わらず僕の顎を汗が伝った。
リンの下乳がさらけ出され、このままシャツを脱ぐのかと、期待したその時。
シャツをつかんでいた手が、少しだけ下に落ちた。
「なんで」
無意識に声が出た。期待していたなんて恥ずかしさで我に返っても、もう遅い。
リンは口角をにやりと上げ、股間で揺れる尻尾も嬉しそうにふり幅を広げている。完全に聞かれてしまった。
不意打ちで満足したのか、今度こそシャツをまくれば、待ってましたと言わんばかりに大ボリュームの胸筋が飛び出してきた。
ただでさえでかいリンの体の中で、一番前に膨れた場所だ。男性器を除けば、これほど前方に圧をかける筋肉もないだろう。
あまりにでかくて豊満で、力を入れていないとたるんでしまう胸。成長しすぎたために自由を求めて左右に広がった結果、むっちりした谷間を形成して見るものの視線を奪い取る視覚の暴力と化している。
シャツすら悠々と引っ掛けることができるから、胸部のでかさが主張されているではないか。肉に食い込んだシャツは落ちる気配すらなくて、豊満な胸を堪能するのに忙しいようだ。
このまま近づいてきてほしいと、願ってしまった。その胸のふくらみを大画面で見せてほしい。だけど、リンは次へと進む。僕の欲望を焚きつけるだけ焚きつけて、焦がれるようにしむけたまま。
むぎゅうっと腋を締めて胸を強調すれば、何カップあるんだと聞いてみたくなるほどにむちっと膨らんだ。空気でも入っているんじゃないか。そう疑われてもおかしくないくらいには、でかすぎるのだ。
こちらを挑発しながらも、リンの丸い耳が小刻みに震えている。巨体の掌からさえも零れ落ちそうな胸を揉みながら、虎の視線は僕を待っていた。
「す、すごいよリン」だから、取り繕う暇もなく本心を引きずり出されて。「すごい……リンの胸なんて見慣れてるのに、なんだか、いつもより、その、すごいよ……」
大事な幼馴染にエッチだというのは憚られた。けど、きっと、リンには伝わってしまったに違いない。
だって、にやついた顔がいっそう蕩けてしまったから。
夜の暗がりをバックに、黄色い星がなまめかしく欲望を灯してく。
胸部を完全にさらしたリンは腰の動きを変えた。大きく、ゆっくりと弧を描くように、今度はここに注目しろなんて、言葉は不要だ。
自由になった手で自らの腹筋をなぞる。汗を吸い込んだ毛皮を押し付け、凹凸を際立たせるリンの好きな動き。
やさしいタッチで脇腹をなぞり、淫らな踊りを蛍光灯の下で繰り広げる虎。空が暗くなった今、ここだけが非現実味を帯びていた。
やがて片方の手が掌を広げ、上から差し込むように指の隙間で尻尾をはさむ。
そしてもう片方で尻尾を握れば、もう何がしたいのかは一目瞭然だった。
「…………」
僕は言葉をなくしていた。見入っていた。唾をのむ音すら頭蓋に響くほど、ひたすら画面に集中している。
吐息はもう震えていて、口は閉じることを忘れてしまった。でも、どれだけ鼻先を近づけたとしても、リンの匂いはしない。ただ、夜半に踊る黄色い星が映るだけ。
リンの腰の動きが変わる。激しく前後に、カクカクと。それに合わせて握った手も上下に揺れる。
前回の時もそうだが、リンのオナニーなんて見慣れている。高校の時からリンの露出に付き合っているのだ。体つきが未熟だったころから、僕はリンのすべてを知っている。
それなのに、どうしてこんなことが卑猥に見えるのだろう。
性器の露出もなく、全裸ですらない。
ただ前に回した尻尾を握っているだけ。それでも、リンは僕を興奮させる。
欲に上気した相貌のまま、目線だけをこちらに向けて獣は口角を歪ませる。肉食獣の瞳がギラギラと輝いて、カメラ越しに僕を射抜いた。
密林の王者は人工的な明かりにあってもその威風に陰りはないようだ。雄々しい肉体は欲望を燃やし、徐々にヒートアップしていく。
ついに両手で尻尾を握れば、オナニーの真似事も佳境へと至る。
でかすぎる掌二つが激しくしごき、そこに遠慮などない。本物のオナニーを見ているような気にすらさせる。
熱を上げる星は燃えて、僕の体も熱くなる。刈り込んだ毛皮が揺らめくさまは、まさに炎を思わせた。
「リン……君は、とてもきれいだ。黄色い炎みたいだ。僕も、暑くなって、汗が止まらないよ。おかしいよね。こんな涼しい部屋にいるのに……」
素直な称賛に虎の口から舌が伸びて、上唇を舐め上げる。人工的な明かりを照り返す舌からは、糸を引いた唾液がこぼれていった。
もしいつも通り近くにいたならば、その唾液が毛皮に吸収される様すら鮮明に見えただろう。それをもどかしいと感じる自分を叱咤しようにも、頭の中はリンで一杯だった。
オナニーの真似事にいそしむ腕部は、僕が両手で握ってもなお余るほどに太い。リンゴだって片手で粉砕できるりょ力は雄々しさの詰まった圧倒的な造形美を持つ。だけど、細い尻尾をあさましくつかみしごく姿には、劣情しか感じられなかった。
起伏の強い肩を大きく揺らせば、絶頂が近いのだと知る。
尻尾を握って絶頂するわけがないという理性は、リンのショーを前にしては野暮でしかない。深い呼吸によって膨らんだ胸も、絶頂に向けて意識を集中させているようにしか見えないのだ。
もういく。リンはいく。背骨をそらした虎は大きくしごき上げそして――
――――そっと、両手を尻尾から離したのだった。
「ああ……」
落胆が喉を震わせることを、僕は止められなかった。先ほどのシャツの件でこりもせず、自分はその先をずっと期待し続けていたらしい。
それを恥ずかしいと思うだけの理性はまだ残っていたようだ。痛いほど張り詰めた股間から素直になれと言われているけれど、幼馴染としての自分が拮抗している。
リンに興奮なんてしたくない。だけど、そんな願いを最愛の幼馴染はあっけなく裏切っていく。
股間を隠した尻尾が緩慢に下りていけば、いやでも目に入る。
ホットパンツの前面はいつ破れても不思議じゃないほどに膨らんで、ちんぽの太さをはっきりと浮かび上がらせていた。それはパンツから飛び出すこともかなわず、苦しそうに横たわっている。まるで大蛇を隠しているかのような蛇行の先には、えらの張った亀頭に濡れた布地がくっついていた。
そう、濡れている。ショーの中とめどなく興奮したリンの先走りは下着を貫通し、ホットパンツに広大なシミを作っていた。射精したのかと思うほど前面すべてが濡れそぼり、オリーブ色から彩度を奪っている。
お前の本当に欲しいものはこれだろうと虎は突きつける。自分で焚きつけておいて、さらに求めるように仕向けていく手腕は悪魔のようだった。
これで興奮するなというほうが無理だ。そのすべてを知っている身からすれば、我慢が苦痛にしかならない。
もっと間近で見たい。もっと嗅ぎたい。もっと触りたい。
よくない欲望が身を焦がし、胸を苦しめる。ダメだと思っているのに、股間が痛くてたまらない。
絞れば淫乱な汁がとれそうなほどぐっしょりとした膨らみを突き出して、たくましい虎の腰はくねる。まだ目を離すなと、体で訴えている。
リンがズボンの中に手を入れて横たわっているちんぽを押せば、大蛇は活路を見出したようだ。
どうなるのか想像がついているのに、その一瞬が見たくて目をそらせない。
僕の予想通り、ちんぽは顔を下に向け、伸びていく。やがて、パンツの裾からのぞく赤い肉。毛皮など全くないむき出しの肉が、まもなく姿を現そうとしている。
リンが笑う。どこまでもいやらしく、どこまでも淫靡に。
カメラに向けて突き出した指をくいっと曲げて、悪魔は乞うた。もう一押しでちんぽが解放されるのに、虎はその権利を僕にゆだねたのだ。
一緒に落ちようと、言われた気がした。
「……リン」
呼吸がうまくできなくて、酸欠状態の脳がオーバーヒートしているようだ。
こんな野外で見せたらダメだという倫理と、幼馴染をこれ以上貶めたくないという道徳。
そしてそれをはるかに上回る、欲望。
理性の手綱を振り切った言葉が、乾いた喉から絞り出された。
「お願い、見せて……リンの……大事なところを……」
僕の言葉が終わるかどうかの間際。
――――ズルンとグロテスクな亀頭が飛び出した。
「……っ!」
同時に、僕の喉からもひきつった音が漏れる。たくましい太ももを後ろにしても見劣りしない巨根が裾から覗くという背徳感に、どうしようもなく焦がれてしまった。
もともと筋肉で引き延ばされていたところにさらに厚みが加わったせいで、圧迫されたちんぽは真っ赤に膨れ上がっている。先ほどから吐き出していた淫液でぬらぬらと輝きつつ、今も鈴口からとろとろと汁をこぼす。
むき出しになった幹は血管を浮かばせ、これ以上ないほどパンプアップしているのがわかる。拡大したくても近寄ることもできず、思わず画面に爪を立ててしまった。
リンはとろけた笑みを浮かべたまま足を上げ下げして、ちんぽに光源を当てる。亀頭周りの毛皮は遠めでもわかるほどべったりと倒れ伏し、先走りの川を作り始めていた。
今度は股間を強調するなどせず、ただポージングを繰り返す。
前もしたサイドチェストや、両手を頭の後ろに添えるアブリミナルアンドサイなど。自慢の肉体をこれでもかと誇示していく。
きれのある筋肉で行うポージングは絵になるほど美しい。それがリンのような巨体ならなおさら。だけど、パンツの裾からのぞくちんぽのせいですべて台無しだった。
隠れたとしても、ちんぽが出ていることを知ってしまえば、普通の目では見られない。どうしたって意識してしまう。させられてしまう。
一点だけの退廃を忍ばせて、リンは自身の行動すべてを淫乱なものへと貶めていたのだ。
「リン……リン……っ!」
胸をかきむしりたくなるような苦しさに耐えかねて、つい名前を呼んでしまった。
こんな欲望を認めたくないのに、リンを見ていると膨れ上がってつぶされてしまいそうだ。
僕の欲望を燃やしたのはリンなのに、どうして我慢なんてする必要がある。なんて声も聞こえてくるけれど、僕はどうしたって、リンには清く正しくいてもらいたい。
わがままだっていうのはわかっている。だけど、リンは、いつだって僕の憧れだから。
『どうしたスズ?』
気が付けばスマホに近寄っていたリンの顔が大きく映っている。画面いっぱいに映る上気した虎の相貌は、月明りに照らされて美しいとすら思えた。
それでもその美しさは一瞬のもの。次に口を開くときは、にたりとした淫靡なもの。
『さっきからすげえ息が聞こえててさ、たまんねえんだわ。ああ、スズがおれで興奮してるんだなって思うと、なんでもできそうになる。この格好のまま家までランニングだってできちまう。そしたらみんなおれのこと、変態だって思うよなぁ』
「だめだ、それは……絶対にダメっ!」
『……わかってるよ。おれの体はホモ専用じゃなくって、スズ専用だもんな。さっきから視線がちらちら来ててさ、さすがに戻らねえと誘われちまいそうだ』
「……え? 人が見てる?」
『まあここ結構有名な発展場だからな。おれみたいなやつがちらほらいるんだわ。だから露出するには最高の場所でもあるんだがなぁ』
「はってん、ば?」
リンが何を言ってるのかよくわからなかった。あんなひどい格好を誰かに見られているのに、騒ぎにもならないなんてことがあるのだろうか。
それに、リンの言い方が引っかかる。それは、つまり……。
『もう遅いし、そろそろ帰るわ。スズがたっくさん興奮してくれたし、大満足。スズもおれの体が見たくなったみたいだし、射精も帰ってからでいいかな』
「あ、リン……っ!」
タイミング悪く、僕が声をかけても返答もなく通話は切れてしまった。
早鐘のようにうつ心臓は、原動力を興奮から不安へと変えていく。
冷房がどれだけ気を利かせても、内部から湧き上がる猜疑を冷ましてはくれなかった。
大丈夫、たとえどんなリンでも、リンはリンだから。
なんて自分に言い聞かせているうちに、玄関から音がした。続いて巨体の足音が響けば、汗まみれの虎が満面の笑みで部屋に入ってくる。
「ただいまー。今日は本当に最高だったな。まさかスズが遠隔のほうに興奮してくれるなんて思わなかったわ。また今度しような」
雄が強いリンの香りはいつも通りだけど、僕を安心させてはくれない。うまく言葉をまとめられないまま、恐る恐る口を開いた。
「あのさ、リン……」
「ん、なんだ?」
聞いていいものかどうかわからない。いくら幼馴染とはいえ、線引きは重要だ。
だけど、ひょっとしてという気持ちがぬぐえない。もしそうなら、リンの行動の意味もわかるかもしれない。
「あの、言いにくかったら言わなくてもいいんだけど……」
「なんだよ改まって。今更そんなこと気にするような仲じゃねえだろ」
首と尻尾をかしげて、リンは頭に疑問符を浮かべている。その無邪気な目を直視できなくて、僕は顔を伏せた。
横目で見たコップはすでに空だ。潤滑油もないまま、意志の力だけで舌を引きはがして僕は問う。
「もしかして、リンは……男が好きなの?」
言ってしまった。僕はこれで関係に亀裂が入ったらいやだなと思いながら、リンをうかがうと。
屈強な虎は、膝から崩れ落ちたではないか。
「はぁ~~~~~~」
そして大音量のため息。四つん這いになったリンは床に向けて重い感情を叩きつけていく。
「はぁ~~~~~~まじか~~~~~」
「なんだ、どうしたんだ……」
その意図がさっぱりわからないまま硬直する僕に構うことなく、幼馴染は肺からすべての空気を嘆息として吐き出した。
「いや、まさかとは思ってたけど、そっか~~~~」
僕の憧れの幼馴染は耳も尻尾をしおれさせて、心底残念だと表現する。
広い背中が今はなんとも頼りない。汗シミがついたシャツがまるで泣いているようだった。
「そこからか~~~~~~~~~~」
「いや、どこからだよ」
あまりに意味が分からなかったから、思わずつっこんでしまった。
****
「おれ、ホモだから」
とリンはあっさり言ってのけた。こちらが拍子抜けしてしまうほど、その顔には何のてらいもなかった。
なぜか過去最大に落ち込んだリンをなだめた後、リビングで座りながら話を聞いている。もう露出の続きをする雰囲気でもなくなったから、胸にわだかまっていた興奮も綺麗に溶けてくれた。
「そっか」
「そんだけかよ。もっと他に言うことあるんじゃねえの?」
「いや、ないけど。別にリンはリンだし、露出狂に比べたら犯罪でも何でもないんだしさ」
「お前はおれをありのまま受け入れすぎなんだよなぁ。ありがたい話ではあるんだが……」
この年になるまで幼馴染の僕が知らなかったということは、隠したかったのかもしれない。
なんて思っていたけど、現実はドラマチックになることはなく、あっさりと終わってしまった。リンが気にしていなくてよかったと、胸をなでおろすばかりだ。
だけれども、当の本人はなぜか不満げに口をとがらせていて、言い足りないとばかりに喉を震わせる。
「でもさ、普通気づかねえか。お前相手にあんだけ見せびらかしてんだからさ」
「露出狂って、見てくれるなら誰でもいいもんだと思ってたから……」
「うっわまじかよ。おれ、お前専用ってあれだけ言ってたのに……」
「ん、なんだって?」
「なんでもねえよぉー!」
やけになって言い返すリンはふてくされているようで、でかい体に愛嬌が生まれている。頬杖ついてむすっとした虎からは、先ほどの淫靡な影などみじんも感じられなかった。
だが、そんなにまずいことを言った記憶もなく、どうしたものかと頭をひねってしまう。
「あのさ、リン。僕はリンがどんな性癖を持っていたとしても、軽蔑なんかしないから」
「わかってるよ。お前はそういうやつだ」
「リンは僕にとって、大事な幼馴染だから。世界で一番大切な人だと思ってるよ」
「そういうとこ! ほんっとお前そういうとこだからな!」
「……?」
真っ赤になったリンに怒鳴られたけど、意味が分からない。僕はただ、正直に伝えただけなのに。
「んじゃあ逆に聞くけど、スズはホモか?」
「違うけど」
「さっきおれのストリップにあれだけ興奮しといてかぁ?」
「あれは……」
にやにやした視線にからかわれてしまったけど、リンがいつも通りになってくれてホッとした。この幼馴染には、やはり笑顔がよく似合う。
「リンだからだよ」なので、うれしくなって誉め言葉も饒舌になろうというものだ。「リンは全部が、最高にかっこいいんだ。その鍛え上げた体はどんな人よりも逞しくて、見てるだけでほれぼれする。顔だって精悍で、小さいころから誰よりも凛々しいと思ってるくらいだ。リンはかっこいいよ。最高だよ」
「……おれが道を踏みはずしたのって絶対お前のせいなんだよなぁ。こんなこと小さいころから毎日言われたら誰だって本気にしちゃうじゃん」
「??????」
「なんでって顔をするなー!」
僕は本当のことしか言っていないはずなのだが、なぜかリンは余計に拗ねてしまった。
いらだちを紛らわせるように溶かしたプロテインを一気にあおり、またもため息を吐いた。コップを握ったままうなだれる縞模様に、普段の快活さは見当たらない。
「まさか、小学生のころからずっとアピールしててまだ気づいてねえとは思わなかったなあ……まあでもようやくおれに興奮してくれるようになったから……あとちょっとだとは思うんだが……」
なにやらぶつくさ言っているが、その言葉は不明瞭で聞き取れない。
やはり、ホモばれしたのがショックだったのだろうか。僕にも隠していたくらいなのだ。少々無遠慮が過ぎたのかもしれない。
愛する幼馴染を慰めるのは自分の仕事だと自負している。僕は甲斐甲斐しくリンの背中を撫でながら、安心させるように微笑んでみせた。
「リン、心配しないで。僕は何があっても、リンの味方だから」
「それはどうも。お前さ、おれのこと好きか?」
「もちろん。世界で一番好きだよ」
「……違うんだよなぁ」
「何がだよ」
どうやら求めていた答えではなかったようだ。僕らはほとんどを共有しているという自信があったのだが、今はこの幼馴染のことがよくわからなかった。
そんな自分にとても腹が立つ。僕はリンの役に立ちたいのに、どうしていいのか見当もつかない。その糸口をつかむために、僕は言葉を紡ぐ。こういう場合は率直に聞いてみるに限ると、長年の付き合いでよく知っていた。
「リンはどうしたいんだ。彼氏が欲しいとか? もしそうなら僕にもできることがあると思うけど」
「え、それって……?!」
虎の顔面に喜色が咲き、黄色が鮮やかに色づいた。リンの笑顔はヒマワリのようで、部屋がワントーン明るくなった気さえする。だから僕はリンの笑顔が好きなのだ。
この話題で間違いないことを確信し、さらに踏み込んだ。
「もちろん手伝うよ。僕にできることはそんなに多くないけど、言ってくれれば事前に家を空けるとかするからさ。遊びすぎもよくないけど、僕はリンを応援するよ!」
「はぁ~~~~~~」
「なんでだよ」
一瞬にして曇天となってヒマワリが陰った。表情の切り替わりが豊かな幼馴染ではあるけど、今夜は特に顕著だ。
情緒が不安定なのは体調が悪いせいなのかもしれない。まだシャワーも浴びていない。夏場とはいえ、風邪でも引いた可能性がある。
なんて頭を悩ませていると、リンが勢いよく立ち上がって僕の手を引いた。頭に疑問符が浮かぶが、リンにかなうわけもない。おとなしく寝室までついていくと、リンは僕を置いてベッドに近寄った。
「スズ」
振り返るリンの顔は真剣で、造形美に見ほれてしまいそうになる。肌にひっついたシャツからは雄の色香が強く漂って、いやでも先ほど通話で見た映像が脳裏にちらつく。
収まったと思った欲望が股間に詰まっていくのを感じる。我慢したくても、目の前の虎がそれを許さない。
「決めた。ここまでやってだめなら、少しばかり強引にやってやる」
「なんの話だよ」
「スズはさっきのおれを見て興奮したよな。おれもまだ収まらねえんだ。だから――」
欲望を混ぜ込んだ顔でリンはうっとりと目を潤ませた。これから何が始まるのかなんて、明白で、僕は逃げたい衝動に駆られる。
だけど、足は動かなくて。視線は目の前の雄々しい虎に吸い寄せられてしまう。
雄臭いホットパンツを脱ぎ捨てれば、いきり立ったちんぽと紐のような下着が顔を出す。布面積などないも同然な下着がちんぽを抑える役割なんて果たせるわけもなく、竿の根元で角度の調節くらいにしか役立っていない。
さらけ出されたことで、リンの匂いがきつくなる。僕を酩酊させる、好きなはずの匂い。
乳首を浮かべたシャツには腹筋すら浮かびあがって、リンの屈強さを視覚の暴力で叩きつけてくる。いたるところがごつごつして、膨れ上がった筋肉の塊。
そんな幼馴染は、言う。僕を発情させながら、自分も発情しながら。
肉塔の先端からこぼれる先走りのように、甘くとろけた言葉を。
「おれが、お前をホモにしてやるよ」
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