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【全体公開版】触手村の守り神

「レニグラ様、ようこそいらっしゃいました。何もないところですが、ごゆっくりしてください」

「お会いできて光栄です。失礼ですが、なんとお呼びすれば?」

「親しい人はアルと呼びます。どうぞお好きなようにお呼びください」


 広い部屋で、温和な笑みを浮かべた虎がもてなしてくれた。豪華というわけではないが、辺境にある村だということを考えたら、十分立派だと言える。鍛冶屋も備えているらしいし、田舎というには設備もそろっている印象を受けた。

 村長の家というのは議会も兼ねていることが多いし、大きさは大事だ。木造の温かみは石造りの首都よりもずっと肌になじむ。食堂には特産品である織物がいくつか飾られており、それが異国情緒を思わせた。

 最近は魔物除けのために城壁を作る町も増えてきたが、この村はまだ柵だけが防波堤なので、危なくなったらすぐに逃げようと決めている。自警団もいるみたいだが、あまり期待はできないな。


 おれは勧められるままテーブルに座り、出された食事を食べながら相槌を打つ。一応国直属の研究機関からの派遣ということで、それ相応のもてなしがもらえるのはありがたい話だ。

 未開の地だと門前払いも珍しくないから、安心があるというだけでだいぶ違う。


 もちろん、本当に安心かはまだ不明だが。


「それで、この村についての調査がしたいということですが、何か問題でもありましたか?」

「いえ、そういうわけではなく、ただ、魔物の生息図を作るためにここら辺の森などを調べさせてほしいのです。後ついでに地図ですね。最近この村の織物が首都でも人気になってきていて、商人たちからも地図を作るようにせっつかれてます」

「ああ、なるほど。確かにここには学者先生がいらっしゃったこともありませんし、地図も大した精度じゃないですからね。地図も道も整備されて、うちの織物で貿易がはかどるなら願ってもないことです」


 嬉しそうに顔をほころばせる虎は、村長というにはまだ年若いように見える。たくましく骨太な体は、長というよりかは騎士のほうが似合ってるな。

 そして、それは向こうも同じ意見のようだ。

 

「それにしても、先生は学者でいらっしゃるのにたくましいですね。護衛もつけていないようですし、腕に覚えがあるのですか?」

「なにせ危ない場所の調査をする下っ端ですので。学者なんて肩書だけで、実際は冒険者みたいなものですよ」


 初対面の人に必ず言われる慣用句だ。受け流し方も慣れている。


 学者然とした服装でもごまかしきれないほどに隆起した肉体に、にらみ顔が通常運転のいかつい熊。それがおれだ。国からもらえる身分証明書がなければ、誰もおれが学者だなんて信じてくれない。たまにそれがあっても疑われる。


 本当は護衛も欲しいと言ったのに村の周囲を探索するだけだからと却下された。こんな辺境にかける予算なんてないらしい。ふざけんな。


「ただ、もしよろしければ自警団から何人かお借りしてもよろしいでしょうか。なにせ知らない土地ですし、できる限りの対策は立てておきたいのです。もちろん、費用はお支払いしますよ」


 うちの本部がな。必要経費ということでがんがん請求を回してやろう。


 お金が入ると聞いて、虎の顔が明るくなる。


「それならぜひお使いください。これで広場などの修繕ができます」


 やはり、若いだけあって素直だ。確かにここに来る時に見た公共施設は、どれも経年劣化が進んでいた。

 だが、それよりも魔物や野盗対策になる防壁を作る方が先なんじゃないかな。どれだけ整えても、あいつらはすべてを破壊する。


「それならご心配なく。うちは触手様がおりますので」


 さらっと出てきた単語に、反応が遅れてしまった。なんだって?

 おれが理解できていないと悟ったのか、虎は申し訳なさそうに口角を上げ、続きを話してくれた。


「……ああ、失礼しました。触手様はうちの村の守り神なんです。触手様がいてくださるので、うちには魔物も野盗も入ってこれません」

「そんなこと、おれに言っていいんですか。異端信仰だなんて、国に知られるとめんどくさいと思いますけど」


 国が基礎とする宗教と違うというのは、それだけで外聞が悪い。別にうちは宗教国家じゃないし、辺境の異端信仰は珍しいものでもない。戦争で土地が減ったり増えたりする時代だ、こんな田舎まで改宗の目が届くわけもない。


 だが、せっかく首都で織物産業が認められているというのに、そんな噂を今立てる必要が全く分からない。


 なんて聞いてみれば、虎は頷き返してくる。やはり若いためか、ことの重大さをわかっていないようにも見えた。


「どうせ遅かれ早かればれちゃうんですよね。だったら、この機会に協力者を増やしたほうがいいと思いまして」

「協力者なんて、おれにメリットがあるか?」


 警戒するあまり敬語が消えてしまうが、相手は気にしていないようだ。むしろ、これで話しやすくなったとばかりに肩の力を抜いてくる。


「あると思うよ。ごめん、まだ敬語って慣れなくてさ」

「ならお互い様だ。おれも堅苦しいのは好きじゃねえ。んで、おれに何の得がある」

「すぐに断らないあたり、君も俗物だよね」

「別におれは国に忠誠を誓ってるわけじゃなくて、ただ研究したいだけだからな」

「……ちょっとおもしろくなってきちゃったかも」

「部屋の外に待機させてるやつをどかしたら、もっと話ができるぜ」

「しかもばれてるし」

「これでもフィールドワークがメインの学者なんでね」


 辺境の異端信仰が珍しくない昨今、身を守るすべを持つことは大事だ。幾度となく面倒事に巻き込まれた経験から、ここもやばいとすぐにわかった。


「本当はさ」虎が牙をむいて笑う。「君を触手で快楽漬けにして脳みそぐちゃぐちゃにして味方に引き入れようと思ったんだけど」

「怖いことを言うな」

「それだと首都に戻した後こっちでコントロールできないから不安だったんだよね。いったん目こぼしさせるためだけにずっと管理するのもめんどいじゃん」


 しかも、知性をとろかせば学者としての能力に影響が出てばれる可能性も上がると考えれば、まあ得策とは言えねえよな。

 だからといって、初対面のおれに交渉を持ち掛ける大胆さは、正直嫌いじゃない。


 この虎が見た目以上に頭が切れて胆力もあると分かれば、こちらも興味がわく。


 いったい、触手様とはなんだ。


「うーん、目がきらきらしている。本当に学者なんだね」

「……っう、いや、まあ、もともと魔物の生態とかが研究メインだからな。おそらくその触手様ってのも魔物だろうし、だったらどんな魔物で、なんで人と共生してるのか、超気になるじゃねえか!!」

「想像以上の食いつきなんだけど……」

「触手の快楽ってことはあれだろ、淫毒を使って獲物の体液をすするタイプの魔物だ。その毒のサンプルとかもらっていいか? いいよな! なんだったらおれに浴びせてくれてもいいぞ! これでもいろんな魔物の体液の味を研究するために免疫系統も鍛えてるからな!」

「この人面白いな?!」


 なんて言われたが、学者なんてみんなそうだろ。首都研究所なんておれ以上の変人がごろごろいるわ。あそこは天才と変人は紙一重を地でいく連中のたまり場だ。

 おれの圧に気おされたのか、すごんでいた虎から一気に力が抜けた。


「この村の雄食べ放題とかお金とかで手をうってくれないかなって思ってたけど、ひょっとして触手様を調べさせてあげるって言えばそれだけで黙っててくれる?」

「おう! もし対象が興味深かったらおれが金を出してもいい! これでも首都研究所魔物科の教授だからな!」

「思ったより偉いなこの人……だから変人なんだ……」

「いや、おれはあいつらに比べたらまだ常識人だ」


 ちなみにおれ以外の教授もみんな同じことを言う。鏡を見てから言えと毎回思っている。


 辺境の地だしレアな魔物いないかなと思ってたら、人と共生する魔物を調べられるとは何たる僥倖。そんな魔物を駆逐する趣味なんてないので、しゃべっていいと言われても黙っているつもりだ。


「こちらとしてもうれしいけどさ、それでいいんだ」

「おれの仕事は魔物分布図と地図の作成だ。あとは趣味だからな。ちょっと触手相手に犯されてドはまりしてもまあいいだろ」

「しかも犯されること前提。忌避感とかはない?」

「まったく。魔物の精子を取るためにおれのケツを使ったことあるぞ」

「あはははははっ! なにそれ! 外の世界ってこんなのばかりなの! おもしろっ!」


 大柄の虎が腹を抱えて笑い転げてしまった。先ほどからの反応もそうだが、意外に天真爛漫な性格をしているようだ。


「じゃあ契約成立だね。父さん、そういうことだから出てきていいよ」


 父さんと呼んだ。なら、外で待機していたのは前村長ということか。

 それにしては、人の気配じゃなかったんだが……。


 はて、と首をかしげているおれが目をやれば、ドアがきしんだ音を立てて開いていく。

 隙間が大きくなるにつれ、現れるのは触手。廊下いっぱいに敷き詰められた触手が、うねうねと動いているではないか。

 まるでドア一枚隔てて異世界とつながってしまったかのような、光のない奈落だ。混沌と触手が敷き詰められ、とてもじゃないが人が通れる隙間などない。


 神は神でも邪神だなこりゃ。あまりの衝撃におれはそんなことを思った。


 触手の一本が虎の方へと向かい、しゅるりと回り込む。その先端で頬をくすぐれば、虎がむずがゆそうにすり寄った。


「命拾いしたね。もし断ってたら壊れるまでしつけてあげたのに」


 常人であれば確実に目をそむけたくなる光景。

 だが、おれはあまりの興奮に服を脱ぎ捨てて飛び込んでいく。


「は? え?」


 突然の奇行に、目を点にする虎。理解できなかったのは触手も同じようで、びくんと驚いたように震えた。


 いやだって、すごくね? 触手の海だぞ。しかも人になついてる種!

 おれは一度でいいから安全に触手の海で溺れてみたかったんだ!


 黒く短い毛皮はちょっと硬いが、触手ならいいだろ。剛腕に少し膨れた腹を持つから体重も結構あるけど、触手ならいいだろ。

 触手ならいいだろ!


 おれは心の底から、全身全霊の喜びを浮かべて飛び込んだ。

 

「触手村さいこーーーーっ!」


****


「なるほど、なるほどなるほど、つまり貴方はこの虎を拾って育て、息子のいうことを聞いてこの村を掌握したと……すげぇ、知能もあって意思疎通もできて情もある触手だ。いらない触手を一本サンプルにもらっていいか?」


 全身が粘液でべとべとになったおれは興奮に任せていろいろ聞きまくった。

 マンコからは汁が漏れ続けているが、どうせ触手の淫毒まみれだから関係ない。しかもこの淫毒は甘くておいしいときた。毒耐性があるおれからしたら常飲したいくらいだ。研究者は糖分が命だからな。


 触手による凌辱も最高に気持ちよくて、三日三晩責められたら狂っていただろう。だが、二日くらいなら溺れてもいいな。研究の息抜きに最適だ。なんてメモを取っていると、のぞき込んできた触手が固まった。そんな変なことは書いてないと思うんだが。

 そういえば、魔物科には教授が数人いるが、そのうち淫売といえばおれのことを指す。なぜだ。魔物の性行動を調べるのも仕事だろうが。一番効率がいい方法はおれの体を使うこと。何も間違ってないだろ。おれは人よりちょっとセックスが好きなだけ。


 虎の息子は村長としての仕事があるとかで、ここにはいない。触手で村を掌握したとしても、仕事は真面目にしているようだ。

 淫毒まみれでふやけたおれをみて、笑いながら行ってしまった。後であいつにも話を聞かねえと。人と魔物の共生例だ。めっちゃいい事例。論文がはかどる。最高。


 ぶにぶにとした触手をつまむと、針のようなものが飛び出してきた。淫毒を注入する用だろうか。


 と聞けば、ペンを持った触手はたどたどしい筆跡で説明してくれる。どうやらおっぱいが出る体に改造する毒が分泌されるらしい。


「それっておれにも効くかな。なあなあ、打ってみてくれよ」


 筋肉と脂肪で膨らませた胸をずいっと突き出すと、触手がきょどる。なぜ。変化の過程を詳細に記録するには、自分で体験するのが一番。これ以上の効率はない。


 恐る恐るといった感じでおれのでか乳首にちくっと刺さる。まだ体が火照ってるせいで、微弱な痛みが気持ちいい。


「あんっ❤……これはどのくらいで効果が出るんだ?」

『即効せい あり』

「ふうむ、その割にはあまり変化が感じられないな。毒耐性のせいかもな。あーあ、おれから母乳が出れば、魔物の赤ん坊も育てやすいんだがなぁ」

『本気で 言って いるのか?』

「ん? 本気だが?」


 おれが魔物の性などを調べるのは、希少種保護のためという側面もある。そういう希少種の子はすでに親がいない場合も多く、食べられるものを探すのが一苦労なんだ。

 その点ミルクなら、口に合う可能性も高い。なにせ、魔物が栄養補給のために作らせるミルクだ。下手なものを与えるよりずっとまし。


「でも、出ねえか。こういう時は毒耐性が恨めしいぜ。毎日打ったら出ねえかな。これ、許容量いくつくらいだ?」

『そこまで 知らん』

「じゃあそれも込みで実験するか。とにかく今日打った量を記録して、滞在中は毎日打つ。それで経過を観察しよう。よろしくな」

『ばか なのか?』

「なんで?」


 未知に挑むんだ、危険はつきものだろうが。それも新種の魔物に対してと考えれば、このくらいのリスクは許容範囲内。

 

 触手についての情報を書き連ねながら、質問を重ねていく。まさか触手と意思疎通ができるなんて。まじ最高。


「そういえば、なんでわざわざ村を掌握しようと思ったんだ? 見たところ、貴方はかなり高位の魔物のようだし、そんなことをしなくても餌には困らないはずだが」

『息子が そのほうが 安心して 食事ができるからって』

「ちなみに、反対した?」

『した 危ないから』

「……それって息子がって意味だよな。こんな高位の魔物にとっちゃここら辺なんて取るに足らないだろうし。うわ、まじで情がある。え、なにこれ。魔物と人の家族っておとぎ話の世界じゃん。生きててよかった……っ!」

『真面目に 聞け』


 なんて書いてからぽこんと殴られた。おれの扱い、すでに雑じゃない?


「これは不快なら答えなくてもいいんだが、息子を食べようと思ったことはあるか?」

『ない』

「ほう。だからあいつはあんなになついてるのか」

『いや 食べてくれないからって すねてる』

「はー……なるほどなるほど、食べられたい息子に、食べたくない親か。いいね、情だ。だから息子は親のために狩場を用意したと。だんだん二人の関係性が見えてきたな。最高。ここに来てよかった。天国」

『頭 大丈夫 か?』

「なぜ?!」


 情報を整理しただけなのにこの言われよう。いや、研究所でも助手にいつも言われてるけど。まじで解せない。おれが何をしたって言うんだ。


「父さんはね、普通魔物に村を掌握させたら怒ったりするものだろうに、なんで喜んでるんだよって言いたいんじゃないかな」


 帰ってきた虎が楽しそうに会話に入ってきた。触手はそうだと言わんばかりに上下に揺れている。


「とはいってもな、これもある種の共生だ。人を食らわないと生きていけない魔物にしては、かなり穏やかなほうだと思うぞ」


 少なくとも生贄とかないし。おれが他に見た異端宗教では毎日人が死んでいる村とかあったし、まだやさしい方だ。

 人が支配しているからましとか、口が裂けても言えない。魔物の研究をしているおれはそれをよく知っている。人は時に魔物よりも醜悪だ。


「村人全員触手に犯されてるのに?」

「そうしないと触手が生きていけないだろ」


 そもそも、辺境の異端信仰は珍しくもない。異端宗教が宗派を広げるために村を滅ぼしたとかもあるし、そもそも国の成り立ち自体が戦争の歴史だ。たかだか村が触手に支配されてるくらい、そのコミュニティの成り立ちを聞いてもそこまで驚くことじゃねえ。

 とりあえず今この村は平和で産業もできつつあって発展しようとしている。指導者である虎が優秀なんだろう。だから、別にいいんじゃねえかな。


 おれの意見を聞いた虎と触手はぽかんと口を開けている。触手に口はないけどたぶんそう。


「変な人だよね、本当に」

「ならその変な人からいくつか質問があるんだけどいいか?」

「いいよ。今日の仕事は終わったし」

「え、もうそんな時間?」

「そりゃ、父さんに絞られてから質問攻めにしてたらこんな時間でしょうが。泊るところあるの?」

「……ない」

「はあー、じゃあうちの空き部屋使いなよ。食事もいるよね」

「助かる。お前が作るのか?」

「簡単なものなら作れるよ。これでも社会的な知識はあるんだよ。常識も、君以上にね」

「さらっと罵倒するなよ」


 なんですでにおれの扱いってこんなに雑なんだろう。

 っま、いいか。とにかく貴重な共生ケースを取材させてもらわねえと!


「あと、食堂に行く前にお風呂入ってよね」

「わかってるって。さっき打ったミルクを出す毒も気になるし、風呂で乳首でもいじってみるか」


 毒は同じだがミルクの味などは個人差があるのだろうか。触手に育てられた虎ならその違いも分かるだろう。もしおれから出るようになれば、真っ先に味見してもらわないと。


「いいよ別に。その時はたっぷり絞ってあげる」

「頼むぞ。そのあと他のミルクの飲み比べして、サンプルとって、帰ってから成分分析して……淫毒の成分から他の搾精魔物との違いを比べて……類似種からカテゴライズして……あっはぁ❤絶対発見者におれの名前が載るなこれはぁ! 学名どうしよっかなぁ!」

「自分の世界に入るの早いなぁ。学者ってみんなこんな変人なのかな」

『こんな 大人に なるんじゃないぞ』

「なろうと思ってもなれないと思うよ。後おれはもう大人だからね父さん」


 粘液まみれで跳ね回るおれに触手が早く風呂に行けとせかすのだが、おれはこの素晴らしい村での情報をどうするかで頭がいっぱいで気づかない。

 なんかおれの尻を叩いている気もするけど、まあ気のせいだろ。痛いのもちょっと好きだからさ、おれ。


 明日からのフィールドワークがまじで楽しみすぎる。


****


「――――というのが今日の収穫だ」

『いや、先生の性行為のあれこれとか一切合切不要なんで黙っててもらっていいですか?』


 あてがわれた部屋についたおれは、就寝準備もほどほどに研究室にいる助手へ連絡をつないだ。到着初日ということもあって、報告することがある。


 連絡用の魔石から浮かび上がるホログラムの向こうでは、竜の助手が心底侮蔑の視線を投げてきた。表情こそ常に不機嫌そうだが、内面はとてもいいやつなんだ。ちなみに、おれもこわもてなので二人並ぶとギャングと間違われることが多い。


 そんな竜の眉間のしわをほぐすためにも、おれは冗談でもプレゼントしよう。こいつはずっと真面目すぎるから、怒鳴られてばかりなんだわ。


「いや、こんな時間まで待っててくれたかわいい助手にな、今日のオナネタでもあげようという粋な計らいだよ」

『今すぐ触手にむさぼられて死んで来い』

「そしたら泣くくせに」

『…………はぁ。こんなくずだってわかってたらこの研究室に来なかった』


 懐かしいなぁ。おれの論文を読んで『先生みたいな研究者になりたいです!』ってやってきたあの頃。まさかこんな死んだ目をした竜になってしまうなんて。


『誰かさんが心労ばかり増やしますからね』

「でも今回はおれのせいじゃねえし」

『わかってますよ。だからこうして今まで待機してたじゃないですか。で、首尾は?』

「ほいこれ」


 先ほど触手にもらった一部をビンに詰めたものを見せびらかす。これだけで論文が書けるレベルの情報量が詰まっているのだ。大切にしないといけない。


「これだけあれば十分だ。結果は追って報告する」

『ええ、わかりました。向こうは早くもせっついてきてますから、急いでください。あいつらの相手、めんどくさいんですよ』

「今日ついたばかりだってのにな。人気者の宿命だな」

『あんたが上からにらまれてるせいだっての。もうちょっと敵を作らないムーブを心がけてくださいって何度言いました?』

「あふれる才能がな。隠し切れないんだ。おれは優秀だから」

『いっぺん死んでくれ』


 かわいい助手を心配させるほど状況はあんまりよくない。んだけど、まあこんなのいつも通りだし。

 へらへらしたおれをにらんでいた助手だが、根負けしたようにため息でごまかした。おれに何を言っても無駄だってもう知ってるからな。


『はあ、まあいいですけど。私としてはこんな仕事じゃなくて、先生と一緒にその触手に会ってみたかったですよ』

「まじですごいから。あの知性と情。これぞあるべき共存って感じ」

『犯されて共生もくそもないと思いますけど』

「それは人それぞれかなぁ。おれは全然ありだし」

『帰ったらレポート見せてくださいよ。そんな面白そうな発見、なんで見れないんだよ……』


 とかぶつくさ言いながら通信は切られた。

 いち魔物学者として気持ちは痛いほどわかる。あの触手に会えないだけで世の魔物学者は人生を損していると断言できる。帰ったらたくさん思い出話を語ってあげよう。エロマシマシで。


 それじゃあ、これでここからが本来の仕事だ。

 持ってきたカバンを開けば、無数のビンが詰まっている。中には色鮮やかな液体が詰まっており、そこからいくつかピックアップした。

 やっぱり最初は手に入りやすく使いやすいものから試したほうがいいよな。


 おれとしては、こんなのは研究室に帰ってからしたいのだが、上から圧がかかってるからしょうがねえ。かといって、こんな素晴らしい場所を研究もせずに帰るとかありえない。


 だから、あの触手にばれないように、細心の注意を払って行おう。

 へたすりゃ殺されるからな。はー、やだやだ、こんなことするために来たんじゃねえってのに。

 でも上からの依頼は絶対。首都研究所の教授とか言っても、結局は国家公務員なんだ。げに悲しきは宮仕えの性ってやつ。


 さーて、うだうだ言ってないで、探すとしますか。


 ――――あの触手に効く毒を。


****


 今日は絶好のフィールドワーク日和! 太陽が気持ちいいぜ!

 まずは周辺の魔物の分布図を作って、そのあと村に戻って取材だ!

 だが、元は森の洞窟にいたらしい触手から大体の情報はもらっているし、分布図は一日で終わるだろう。おそらくあの触手がここら辺の頂点だろうから、それ以外の魔物はたかが知れている。それに、聞いた感じ珍しい魔物もいなさそうだし、ぱぱっと終わらせちまおう。


「お、あんたが話にあった学者様かい。確かに腕っぷしも強そうだな」


 村長が用意してくれた護衛として、自警団のサメがやってきた。鍛え上げられた肉体は鋼のようで、二頭筋なんかキレッキレで汗がたまれば湖になりそうだ。

 しかし触手のせいだろう、ミルクの出そうなほど膨らんだ胸がたくましさをスケベにしている。勃起していないにもかかわらずピンとそそり立った乳首がすさまじくエッチで、思わずしゃぶりそうになっちまった。それに加えて、腹がいびつにでかいんだ。

 多分、触手の子供だろうな。臨月のような丸々した腹に鎧は入らないのか、ほとんど全裸みたいな恰好をしている。ビキニパンツのみの自警団って斬新だな。


「さすがに、それで自警団が務まるのか?」

「まあ自警団っつっても仕事はほとんどねえよ。触手様がいればこの村は魔物も野盗も全く来ねえからな」

「それでも、せめて何か着ればいいのに。この村の特産である織物は、刃物も通さないほどに頑丈だろ」


 鎧の下に着る鎖帷子代わりにも使われるほどに頑丈な布なのだ。その謎はすべての商人や職人が知りたがっている。本来なら織物生産する場所も見学させてもらうべきなんだろうけど、目先の研究のほうが大事だからあと回しだ。


「必要がないからな。触手様がいれば、大体が解決する」

「なるほどな。それでも、訓練は欠かさずしてるようだが」


 サメの手には新鮮なマメがいくつもできている。剣を振ることが日常になったものの手だ。


「まあなぁ。何があるかわからねえし、なにより、触手様はたくましい雄を好むんだ❤」


 そこでとろけるサメの相貌。近づけはわかるが、このサメ、雄臭がすごい。直前まで盛ってたに違いない。


「仕事前に一発しとかねえと、一日持たねえんだ。あんたには触手様のことばらしてもいいって聞いてるから教えとくが、もし気持ちよくなりたかったらいつでも相手してやるぞ❤❤」

「そうか、ありがとう」


 まあ滞在中は触手の調査に忙しいから、人とセックスする暇があるかどうかは知らん。けどせっかく誘ってくれたしな、息抜きにセックスするくらいありだろ。

 さらに、あいつは触手によってミルクも出るようにされてるから、それを調べる意味でもセックスしていいな。人体への影響を検査するという意味でも、乗っておいてもいい。


 顔をサメおっぱいに埋めれば、雄臭さに混じって甘い匂いがする。触手から嗅いだものと同系統。おそらくこれがミルクの匂いだ。いいな、おれもミルク出してぇ。


「お゛っん❤❤なんだ、もうセックスするのか❤❤❤」

「そうしたいが、まずは仕事を終わらせてからだな。そのミルクもぜひ飲ませてくれ」

「ああいいぞ❤じゃあ準備はしねえとな❤❤❤」


 サメが中腰になって力み始めた。まるでトイレでもしているような動作だが、村のど真ん中で何してんだ?


「ふんん゛ん゛っ❤❤❤おっほおぉおぉ❤」


 明らかに快楽を感じている声を出し、ビキニの前面を勃起で盛り上げていく。そのちんぽはもう汁まみれで、シミを広げていった。


 力んでいるせいか、乳首からミルクがだらだら零れていく。それが甘い匂いでおれを誘うから、ついしゃぶってしまった。


「はむ❤」

「い゛っ❤❤❤今は、だべだぁ❤」

「うーーんま❤❤甘くて最高❤やっぱミルクはしぼりたてだよな❤❤」


 ブジュールルルルル❤❤❤とか音を立ててデカ乳首をしゃぶると、サメの足腰に震えが走る。がくがくとハムストリングスが抗議するが、うますぎて口が止まらねんだ❤


 自由な乳首も硬くそそり立っていて、つまんでみると強い弾力で迎えてくれた。ここまで育った肉突起は並大抵のことじゃ痛みを感じない。実体験で知っている。

 試しにつぶす勢いで力を込めても、嬉しそうな声が返ってくるだけ。そのまま指の腹で転がせば、面白いくらいおっぱいがけいれんした。


「ふおおぉおぉおぉ゛❤❤❤乳首❤やば❤❤❤」

「んまっ❤んまっ❤じゅるるっ❤❤❤」


 口の中は美味で満たされ、飲んでも飲んでもなくならない。セックスしてきたくせに、もうこんなにミルクを貯めてきたのか。


「ちがっ❤これは、子どものために、ずっど❤だめでだのぉおぉ❤❤❤」

「こども?❤」


 ならおれは子どものご飯を横取りした悪い大人だな❤舌先で乳首をはじけばそれだけでびゅるっと漏らすよわよわ乳首で、よくここまで貯めたものだ。

 でも、そんな雑魚乳首だから、サメはしゃぶってないほうのおっぱいを持ち上げて懇願する。こっちにも刺激が欲しいと、発情おっぱいは限界みたいだ。


「こっちも❤しゃぶっで❤❤」

「子どものご飯はいいのか?❤」

「こんなのすぐ溜まるし❤人に絞られるの久しぶりで、気持ちよくなっちまったんだよ❤❤」

「しょーがねえな❤❤」


 とか言いながらノリノリでおれはもう片方に食らいつく。腹はちゃぷちゃぷになってきているが、やめられない中毒性がある。


 ジュウウウ❤と吸い上げれば、特濃ミルクの甘みが脳を殴りつける。すぐさま口全部を満杯にする量が出されて、口角からちょっと垂れてきた。

 永遠に飲んでられそうだ。うま❤うま❤


 屈強なサメは村の中ということも忘れてあえぎ狂っているが、誰も何も言わない。

 こんなことが日常になっている村なんだろう。触手との共生によって、彼らの普通は壊されている。


 なんか、それはそれで興奮するな❤

 つい吸引する口やつねる手が強くなれば、筋肉の塊はオホ声をあげてのけぞった。

 天を見ながら、マンコから今まで以上に汚い音が炸裂する。


「おっ❤おっ❤ふぎいぃぃいぃ❤❤❤うまれ゛っ、りゅうぅ❤❤❤」


 腹を抑えながら喘ぎ、ついに何かが生まれた。


 粘液が破裂するような汚しい音は村中に響いただろう。祝音を受けて、それはサメからはいずり出る。排泄行為でアクメを止められず、目玉をひっくり返した巨体はのけぞりながらいき続けていた。


 でかいだけのサメちんぽから白濁とした祝砲を上げて、サメは歓喜に叫んだ。


「ふおおぉおぉおっほおおおぉぉぉん❤❤❤❤❤」


 尻から出てきたのは触手だ。こいつは触手を産んだのだ。


 射精するサメを支えるように、触手がまとわりつく。そして、ザーメンを逃さないようにちんぽにも絡みつき、先端に開いた口から呑み込んだ。

 確かにこれは子どもだ。ちんぽをしゃぶるさまは赤子にしか見えない。


 1本の触手がサメの尻穴から伸び、粘液まみれの体で青を汚している。人として完全に終わっている光景。それでも、サメはうっとりとした表情のまま、射精の余韻に浸っていた。


「はぁ❤はぁ❤待たせたな、さあ行こうぜ❤❤」

「ああ……」


 人前で射精したサメは、なんてことないようにおれを促した。まだ膨らみを残している腹を愛おしそうに撫でれば、触手がその手に絡みつく。まるでおねだりをしているようだ。そしてその考えは正しいのだと、サメの言葉によって知る。


「おっぱいは帰ってからな❤今は仕事しねえと❤」

「触手を宿しているのか?」

「ああそうだ。触手様の子を宿せるのは村でも多くない。おれみたいにたくましくて体力がある雄じゃねえと、すぐ弱っちまう。まあ、最近は触手様のために鍛えてる雄も増えてきたけど、その中でもおれは初期からの母体だ❤」


 誇らしげに語るサメを見て、おれはめちゃ興奮した。

 え、なにあれ、まじもんの共生じゃん。しかも子育てみたいにしつけもしてる。

 うらやましいっ! おれも腹の中で触手を育成してみたい!


「ほー、話に聞いてたけど本当に変な奴だな。普通こんなの見たらい気味悪く思うだろうが」

「いや! いや! すごいな! 人に寄生する魔物は数多くいるが、共生となると多くはないんだ! しかも、その触手は君の言葉を理解し、尊重している! その大きさで立派な知的生命体というわけだ! これが驚かずにはいられようか!」

「じゃあこれが終わったらおれのマンコを味わってみるか❤この子もおれのザーメンやミルクばかりで飽きるころだろうからな❤❤」

「この村では乱交はメジャースポーツなのか」

「言い方。いやまあいいけど。乱交というか、触手を宿してるやつにザーメンを注ぐのは義務みたいなもんだ。やっぱり赤ちゃんにはたくさんご飯をあげないと」


 なんてにかっと笑うが、雄臭さがすごい。甘い匂いにあてられてセックスしてくなってきた。

 いかん、我慢だ我慢。おれの使命は仕事を終わらせて、魔物の研究をすること。セックスにうつつを抜かしている場合ではない。

 ……が、それはそれとして誘われてるんだし一回くらいはいいだろ。現地民との交流は円滑な研究のために必須だ。


 そうしておれらは村を出て、森へと入っていく。


 入ってすぐ、なんでこのサメがわざわざ触手を出したのかわかった。

 魔物が寄ってこないんだ。

 このあたりの主である触手に恐れをなして、魔物が近寄らない。匂いを嗅げば、どんな魔物もすぐ逃げて行ってしまう。それはそれでちょっと寂しいが、まあ全部見たことある魔物だしいいだろう。


 それに加えて、肌を保護する役割もある。最初はほぼ全裸で森に入るなんてどういうつもりだと思ったが、触手の粘液は頑丈で葉や枝がこすれたくらいじゃ傷一つつかない。そのうえ触手が第三の手ように枝などを払ってくれるから鎧を着るよりずっと便利だ。

 まじでほしいな。お願いしたらおれも宿せねえかな。


「そういや、ここら辺に黒い狼の魔物はいるか?」

「いや、そういうのは見たことねえな。探してるのか?」

「まあな。でもいなきゃいいんだ。他に、変わった魔物とかいたりするか?」

 

 分布図を作りながらも、おれはサメにいろんなことを聞いた。


 最初は触手を退治しようとしてやられてしまったこと。

 そのあと快楽漬けにあい、もう触手なしの生活ができないこと。

 触手様が来てから村が平和になったこと。


「それと触手様は温泉を作ってくれてな。この村の名物にならないかって村長が考えてるんだ」

「温泉を作った?」

「そう、あの淫毒成分を最大限まで薄めたものを魔法であっためたやつ。性力増強はもちろん、普通に体にいいんだわ。入った後ぽかぽかしてさぁ、おれも訓練終わりに行くぞ。成分だけ取り出すこともできるし、温泉街として有名になったら温泉の素みたいなやつにして売ろうって言ってたな」

「なにそれ入りたい」

「って言うと思ったんで、この先だ。一応今は試験的に森の奥に作ってある」

「最高」


 持つべきものはよき魔物の理解者。魔物成分の温泉とか聖地じゃん。

 でもなんでわざわざ森の奥? って思ったけど、そんなのは見た瞬間にわかった。


 そこでは雄たちが喘ぎ狂いながら温泉に浸かっていたからだ。


【続きは来月の支援者限定公開となります】


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