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【全体公開版】会議はアヘりされどアヘアヘ

「父上」


 不安そうな声に足を止めて、竜は振り向いた。見送りには不釣り合いな声音は、竜の幸先に暗雲が立ち込めていることを匂わせる。


 年老いたとはいえ鱗の朱色は依然鮮烈であり、先王の崩御から国を任されて20年余り、その威光は民に愛されてきた。竜という種族柄か同年代より若々しく映る相貌に、鍛え上げられた体躯、いまだ前線で指揮をとるその雄姿から『タラガズの沈まぬ太陽』と称される現国王ケイレスは息子を安心させるように微笑んだ。


「オズ、そう心配するな。なにも戦いにいくというわけではない。あの帝国に対するため、『四季同盟』で会議をするだけだ。何度もしていることじゃないか」


 優しい顔を彩るは軍服を模した深緑の正装。細部は意匠こらされた仕上がりでありながら、決して剣筋の邪魔をしないもの。戦いに行くとき、彼はいつもこの服を好んでいた。


 王宮が誇る絢爛な部屋で親子は向かい合い、視線が交差する。

 これからを思えば、年若い竜の憂いは当然のことだった。


「わかってはいますが、しかし……もし戦いになってしまえば、誉れ高い父上が先陣を切る可能性は大いにあり得ます。どうか、ご自身を大事にしてください。父上の肩にはまだ民が乗っていることを、ゆめゆめお忘れなきよう」


 彩度の高い竜の赤はオズルドがいまだ若輩であることを示しており、鮮やかな尻尾が力なく垂れさがっている。父譲りの頑強な肉体もどこか心細そうだった。


 常夏の国タラカズは国土こそ広大とは言えないが、海に面した外地と豊かな内地を持つため農林水産業で他国をリードしてきた。常春の国と常秋の国の狭間に位置するがゆえに、過ごしやすい場所を選ぶことができ、貴族たちのリゾート地として観光も強い。

 『四季同盟』の中で最も豊かといわれる国を治めるには、それだけの力がいる。そして、ケイレスの力量は四季の王の中でも頂点に近い。


 それを理解していても、オズルドの顔色は晴れない。

 

 部屋の外ではすでに従者が待機しているため、扉が開いてしまえばオズルドはそのような顔をさらすことはできなくなる。王子として期待されている態度というものを、彼は理解していた。


 だから、逞しい父の腕が今だけはと愛しい息子を抱き寄せるのだ。


「オズ」低く、優しい声で呼んで。「確かに私の肩には民が乗っていよう。しかし、背中には守るべき国があるのだ。私が民に見せるべきは背中だけでいい。あとはお前が引き継ぐのだ」

「まだ、早いです……お、おれは、お父様のようにできる自信がありません」


 しがみつくように回された太い腕は幼子のよう。甘えるときにお父様と呼ぶ癖は大きくなっても抜けてはいなかった。父離れさせるにはちょうどいい機会だとケイレスは内心で考える。

 偉大なる父王を敬愛するオズルドは少し依存癖がある。反抗期らしい反抗期もなかった息子は可愛いものの、やはりそろそろ独り立ちしてもいい年齢だ。

 

 息子の額にキスをして、そっと手放す。

 ここからは王としての時間だ。


「自信など私にもないさ。だからこそ常に正しいのかを反芻して生きてきた。だが、それを見せてはいけないよ。民が不安がる」


 踵を返し、背中を見せる。息子の成長を信じて。


「私がいない間、自分で考えるのだ。お前ならできる」

「……わかりました。では、帰ってきたらお父様の目からおれがどのように見えたのかを教えてください」

「少し厳しいことを言うようだが、評価は私がするのではない。民がするのだ。お前がする政治は、私のためであってはならない」

「……」


 背後から突き刺さる視線が震えたことを感じ取り、王は足を止めた。

 わかっていても、つい甘やかしてしまう。ケイレスは子煩悩な他者を馬鹿にできぬと尻尾をくねらせた。


「……だが、それを分かったうえでなら、いくつか助言をしよう」

「はい! お待ちしております!」


 聞こえるくらいに大きな風きり音はオズルドの尻尾からなっているのだろう。

 こういうところがかわいいのだと、父はそっと顔をほころばせるのだった。


 これから向かう先を思えば、少しの息抜きにはなる。

 ケイレスは背中にあるものすべてのために、戦う決意を新たにするのだった。


****


 大陸のはしに位置する四季の国に対し、帝国が配下へと下るよう要請した。

 覇権という言葉が最もふさわしい大国から小国への要請は実質命令に等しく、断れば武力による制裁が待っていることは想像に難くない。

 どのように乗り切るべきか。各国の王は未曽有の事態に力を合わせることを決めた。


 そのための会議へ、ケイレスは赴くのだ。


 『四季同盟』に属する四国の中心には巨大な山がある。その山頂付近にある屋敷が、会合の場所だった。あまりに巨大なため移動は専用の魔法陣でしか行えず、ふもとから徒歩で向かうのは不可能と言われている。


 季節の分かれ目である山は四季の国にとって神聖な場所であり、基本的には王族しか立ち入ることは許されていない。

 だからこそ会合を行うには十分な場所であり、絶対の安全を約束された場所。


 ――――そう思われていたのだが。


「あへえぇえぇ~~~~❤❤❤❤」


 ネジのとんだ声がする。ケイレスはそれが自分の喉から出ていることを信じられなかった。


 雄々しい肉体は汗にまみれ、全裸だ。戦装束を脱ぎ去り、がに股の姿勢で腰をへこへこ振っている。強めに乳首をつねれば、膨大な快楽に鼻水が飛んだ。


「こりぇはいったぁい❤❤なぜ❤にゃぜえぇえぇ❤❤❤」


 快楽に邪魔される思考の中、ケイレスは疑問を解消できずに鳴いた。


 ここに入るには専用の魔法陣が必要であり、それは各国が厳重に管理しているはずだ。

 なのになぜ、ここに闖入者がいる。


「何故と言われても、別に道くらい新しく作ればいいだけでしょ。僕らの技術を使えば、こんな山、上ることなんて造作もないんだし。一回上ってしまえば、魔法陣を作っておしまい。ね、簡単でしょ?」


 円卓に腰掛ける声は竜をあざ笑うかのように答え、指先を動かした。

 それだけでケイレスの屈強な肉体は感じ、腰を突き出したままアクメを決める。


「んほおおぉぉおぉ❤❤なんだこの魔法はぁ❤❤❤」

「人を操る魔法だよ。気持ちよくして、僕らのことが大好きになる魔法。拷問よりずっと簡単で、幸せになれる魔法。いいでしょこれ、僕が作ったんだ」


 いくら帝国の魔法技術が進んでいるとはいえ、各王たちがこれほどまで簡単に後れを取ることなどありえない。やはり噂は本当だったのだと、ケイレスはほぞをかんだ。

 帝国皇帝最年少にして魔法の天才、エトエル=ヴァリランジー。ここ近年における帝国の大躍進の立役者でもあり、諸悪の根源。誰もが夢見る才能を、すべて私欲のために使う悪魔だった。


 少年から青年へ移る時期に見られるあどけなさや儚さを残したまま、様々な雄を食い散らかす。未だたてがみも生えそろわぬ黒獅子でありながら、その嗜虐性でいくつもの国を飲み込んできた。


「気に入ってもらえたようでうれしいよ。みんなもそうだよね?」


 黒獅子は指先をさまよわせると、白熊の前で止める。常冬の国を治める国王ポーリーも、ケイレスと同じくがに股チクニーで何度も射精していた。


 豊満な肉体は丸みを帯びた筋肉の塊で、白い毛皮にいくつもの裂傷を作った豪快な雄だった。『冬将軍』の名が示す通り、雪原での戦いではケイレスさえしのぐ猛者である。


 そんな彼は毛皮越しにでもわかるほど頬を真っ赤に染めて、エトエルをにらみつけた。ボリューム豊かな胸部をいじる手が止められずとも、意思はまだ健在だ。


「ふ、ふざけるなよ小僧っ! こんなことで、俺らが屈するとでも思ってんのかっ!」

「威勢がいい雄は好きだよ僕。ご褒美に、もっと乳首を気持ちよくしてあげよう。……はいどうぞ」

「てめぇ、何が――――のおぉおぉ❤❤ちくちくチクニー❤ちくちくび❤チクニー気持ちいぃ❤ちくちくチクニー❤❤❤❤」


 武骨な両指で乳首をしこしこ擦れば、白熊の顔が蕩けてのけぞってしまった。意味不明な単語を垂れ流したまま、太い白熊ちんぽからザーメンをダラダラ零す。


「ちくにぃいぃぃ❤❤ちくちくびぃっ❤乳首ぃ❤きもちいぃ❤❤乳首ちんぽ❤おほぉ❤ちんぽぉ❤ちくちくチクニー❤❤❤❤」


 よほど気持ちがいいのか、のけぞった姿勢のまま痙攣しながらチクニーし続けるポーリー。だが、どれだけ気持ちよくても口から出てくる単語の意味は説明できない。冬将軍と呼ばれる男がこんなことで屈するなど、ケイレスは思えなかった。


「貴様、ポーリーに何をしたっ!」

「乳首を気持ちよくして、あと言語をちょっといじっただけだよ。あの白熊は、どんな罵声を吐いてもエッチな言葉しか出てこなくなったんだ」

「なんと……」


 そんな一瞬で他人の言語を破壊することができるというのか。ケイレスはこの年若き皇帝の才能と、その悪辣さに寒気がした。


 白熊はガチムチな体をなすすべもなく操られ、チクニーマシーンへと貶められた。自分の意思で出来ることは何もなく、ただ与えられた快楽と言葉を吐き出すだけの畜生へと成り下がる。


「ちくちくチクニー❤乳首ぼっきぃい❤んほぉ❤乳首ぃ❤乳首いいぃぃぃ❤❤❤勃起乳首しーこしーこぉぉ❤❤❤しこしこしこぉぉ❤ちくびしこしこぉ❤❤」

「あはははっ❤何言ってるのかわからなくても怒ってるのだけは伝わるよ。他の子と遊んだらまたかまってあげるから、もうちょっとだけ待っててね。どれだけでも射精できるように金玉を強化してあげるから。それにしてもでかい金玉袋だよね」


 黒獅子がもっとも子沢山な白熊の金玉をほめそやすと、今度は虎と鹿に狙いを定めたようだった。


「常春の国王モキッシュと常秋の国王ニトフェア、対策会議の進行はどう?」


 敵対する王からの発言に鹿の王が気分を害した様子もなく、あっさりと答えた。


「ええ、いたって順調です。この新兵器があれば帝国など襲るるにたり、ぬむぅ❤❤」


 常秋の王ニトフェアは凶悪なバイブを突っ込むと白目をひっくり返してアクメを決めた。

 しっかりと筋肉のついた肉体は夏と冬の王に比べると見劣りするが、凹凸が目立つ芸術品のような体格は細くなど決してない。高く伸びる角は枯れてなお立ち誇る巨木を思わせ、『枯葉積もる文庫』の名を持つ智謀担当。

 そんな彼は赤らんだ顔でバイブの刺激に酔っていた。


「あはぁ❤このでっかいいぼいぼぉ❤こんなにすごいのでおマンコをごりごりされだら誰だって負けてしまいますねぇ❤❤❤」


 円卓の上でバイブにまたがり、自らの愛液で水たまりを作っていく鹿は状況の異常さにも気づかず、ぐっぽぐっぽとマンコを開発していく。最近跡継ぎが生まれたと嬉しそうにしていたちんぽは、雌の快楽に喘いで涙を流していた。


「ほら見てくださいケイレス❤❤この新兵器の前では、貴方のよわよわおマンコも形無しではありませんか❤❤っほぉ❤あだるあだる゛ぅうぅうぅぅ❤❤❤」

「ニトフェア……お前まで……」

「いくら賢くても認識を変えられちゃったらどうしようもないよね。あんまり好みじゃないかと思ったけど、実物を見たら案外いい雄だから連れて帰っちゃおうかな」


 黒い悪魔はなんてことない動作で傑物を俗物に変え、この場を姦淫で満たす。動けるものは誰もおらず、すべては黒獅子の掌の上。


 そんな中で、常春の国王モキッシュもまた、エトエルの毒牙にかかっていた。


「おおおぉおぉぉおん❤❤❤❤これすごぃ❤んごおぉっほおおぉおぉ❤❤❤わしのちんぽから汁が止まらんんんんっ❤❤」


 ニトフェアがバイブなら、モキッシュはスライムだった。股間部分を半透明の粘液にからめとられ、マンコから尿道まですべてを蹂躙されて喘いでいる。


 この場で最も経験豊富な虎は涎や鼻水を滂沱と垂らしながら、テーブルの上で狂ったように跳ね回る。年かさがいった毛皮からは艶が薄れているものの、剛腕はいまだ健在だ。ポーリーと腕相撲で競えるくらいの筋力を持っていたとしても、内部を攻められてはどうしようもなかった。


「うひいぃ❤ちんぽ勃起しておる❤わしの不能ちんぽがああぁ❤❤」

「安心して、これからは萎える暇もないほど気持ちよくしてあげるから。そうしたら跡継ぎだってまた作れるよ」

「んごぉ❤汁❤汁でるうぅうぅ❤❤いっぐのおぉおぉおぉ❤❤❤」


 聞こえているのかいないのか、モキッシュは湾曲にしなりながら射精を決める。


 大事な跡継ぎを病気で失った初老の王はその失意から不能を患っていた。跡継ぎに恵まれないと嘆く国民の声にどれだけの責任を感じていたか。そのすべてから解放された今、蕩けた笑みで射精の幸せを甘受する。


「ちんぽの中からごりっでぇ❤これされると❤ちんぽたつ❤勃起しゅる❤うおおぉん❤これで子がなせりゅうぅう❤❤」

「うんうん、良かったね。僕としても決して枯れない『万年桜の虎』は王様コレクションに欲しいから、後継ぎがいないと国の運営で困るんだよね」

「……王様コレクション?」


 その不穏な単語に眉をひそめることができたのはケイレスのみ。がに股チクニーで先走りをトロトロ垂らしていても、自分だけはと気概を保っている。


「そう王様コレクション! 僕が集めた王様たちを後宮に住まわせるの! 心も体も立派な王様たちが毎日ちんぽのことだけを考えて僕に奉仕する楽園に、君たちは選ばれたんだ! 地上の楽園へ招待するよ!」


 何が地上の楽園だ。ケイレスは吐き気すら覚えた。

 目の前の黒獅子はそれがとても素晴らしいアイデアだとでもいうように、嬉々として言葉をつなげていく。


「それに、君たちが来てくれるなら四季の国には最大の譲歩をしよう。君たちだって僕らに蹂躙された後、国民が奴隷みたいに働かされるのなんて嫌でしょ?」

「この悪魔が……!」

「そうかな、むしろ優しいと思うけど。君ら四人が身売りするだけで、四季の国はほぼ独立を保てるんだよ。僕らに逆らった国がどうなったか、知ってるからこんな会議を開いたくせに」


 帝国に逆らった国が焦土と化した話は枚挙にいとまがなく、戦って勝てる見込みはゼロに近かった。この魔法の天才は文明レベルを押し上げるだけでなく、兵器作成に関してもたぐいまれなる才を見せたのだから。


 エトエルは竜の傍までくると、そっと目をつむった。息子よりも小さな獅子に翻弄されていることを思えば、ケイレスは情けなさに涙が出そうだった。


「ほら、わかったらキスして。君の肩にある国民すべてを、僕が助けてあげるから」

「く……」

「『タラカズの沈まぬ太陽』、本当に噂通りのいい雄だった。君は僕の正室にしてあげてもいいよ。ま、正室だけでも三人いるんだけどね」


 竜が気づけば首から上の自由は戻っていた。あくまで自由意志で下れと、この獅子は言うのだ。


 ケイレスは脳裏に国土を、国民を、そして愛しの息子を思い浮かべ、逡巡する。

 この悪魔相手に命を握られている現状、逆らえばどうなるかわからない。そして、国民と自分のプライドを天秤にかければ悩むまでもなく民に比重がかかる。


「別にさ、僕は君のことを洗脳したり脳みそを壊したりしてもいいんだよ。でもさ、あまりにもいい雄だったからそのままほしくなっちゃって。ああ、ポーリーもいいよね。安心して、君の仲間は全員後宮に連れていくから」

「私一人の体で、本当に、民が助かるのだな……」

「約束するよ。僕の配下にある国で破壊されるかされないかの基準を教えてあげる。王様コレクションに入るにふさわしい雄がいるかどうかさ」

「それだけのことで……」


 それだけのことであの戦火をふりまいたというのか。

 

「まあやってることが大きいから、見せしめはいくつか必要なんだ。王様コレクションでそれをしちゃうと、自害されちゃったりするから困るんだよね」


 この獅子は本気だ。ケイレスは身の毛もよだつほどに純粋な狂気を感じ取り、退路がないことを知る。


 背中には守るべきものがある。

 だから、選ぶ答えは決まっていて――――


 そっと、悪魔に魂を売る誓いのキスをするのだった。


****


「父上」


 竜にとって愛しい息子の声が何よりの癒しだった。

 今は執務室に二人だけ。だからオズルドはふてくされたような顔を作ることができた。

 股間部に感じる熱をばれないように、ケイレスは柔らかく笑った。


「どうしたオズ、そんな浮かない顔をして」

「だって、父上が……」

「何度も言っただろう。私一人の体で民が助かるなら、こうするしかなかったのだと」

「ですが、あんまりです……父上を人質に取るなど。そうすれば、手厚い保証をするなんて……」


 オズルドの不満ももっともだ。民にとって一番大事な人を奪うことで、反抗の気力を奪い去る。そして、何かあれば首を送り付けると脅すことでコントロールすることが可能になった。

 いくら属国になるとはいえ認められないと、ファザコンの息子は嘆く。


「向こうに行けばどんな事をされるのか、想像するだけでおぞましいです。父上の体に傷一つでも付けたなら、おれは我慢できないでしょう……」


 ああ、この息子はあの帝王の性癖を知らない。単なる人質としてではなく、雌オナホとして欲しているのだということを。


 父として、王として守らなければならないプライドのために、ケイレスはそれを口に出すことはない。


「まだ出向くのは先の話だ。それに、常春の国はモキッシュの跡継ぎが生まれるまで待ってくれるという話じゃないか。思ったより人の心があるように感じる、そこまでひどいことにはならないさ」


 確実に尊厳などは破壊されることを承知の上で、息子を安心させるように父は笑った。

 不安にさせてはならないと、できることをしようと決めていた。


「オズ、お前ならできる。私がいなくなってからは、この国をしっかり支えていくんだ」

「おれにはむりでずぅ……」

「泣くでない。もういい年じゃないか。まったく、お前はいつまでたっても親離れができんな。ほら、おいで」


 立ち上がって息子を呼べば、大きな子どもは思いっきり抱き着いてくる。強い抱擁は少し痛かったが、ケイレスは耐えた。


 常冬の国王ポーリーの息子たちはみな父に似て豪快な性格で、ポーリー不在でも回していけるだろう。しかし、やんちゃが過ぎるため政権をめぐって争う懸念がある。


 常秋の国は跡継ぎがまだ幼く、常春の国は生まれてもいない。


 だからこそ、跡を継ぐことが決まっているオズルドには自立して、『四季同盟』を引っ張っていってほしかった。

 

「オズ」名前を呼ぶと喜ぶことを父は知っている。「お前は強く、賢く、優しい。いろんなものを見て、考えてしまうから、不安になるのだろう」


 いまだに頭を撫でると喜ぶことも、父は知っている。


「だからお前はよい王様になれる。民や臣下の声を聞き、考えることができる。後は、自信だけなのだ」


 鼻腔で感じる雄の匂い。愛しい息子なのだとわかっていても、熱が出てきてしまう。

 悟られてはならない。ケイレスは父親なのだ。


「それは自分で達成しなければ得られない。私では、それを与えられないんだ。オズ、歩きなさい。お前の歩いた道の後ろを、民たちは安心して歩くのだから」

「…………」

「それでも迷いや不安を感じたら、私のことを思い出すといい。オズ、愛しているよ。私はどこにいたってお前のことを愛している。お前が作る国は素晴らしいと信じている。胸を張りなさい。お前は私の、自慢の息子だ」

「ううぅ~……お父様ぁ……」

 

 泣きはらした目で父を見返す竜は年よりも相当幼く見える。だが、これからは彼が国を背負うのだ。こんな中途半端な形で明け渡すことに罪悪感を覚えるケイレスだったが、できる限りの準備は整えていかねばならない。


 おかげで最近は激務だった。帝国への対応だけでなく、王位の明け渡しまで行わなければならないから。元から体力が化け物並みに多いケイレスでさえ、疲労を覚えるほど。それを感じてオズルドは遠慮していたのだが、少し話せば顔から陰りが取れたように思える。


「すまないオズ。急なことでお前が不安に思うのは当然のことなのに。あまりフォローできていないふがいなさを許しておくれ」

「いいえ、いいえ! お父様は問題ありません。帝国からのあまりに急な申し出にも、十分な対応をされています! おれが、もっとしっかりしていれば……」

「いいんだ、ゆっくりでいい。私だって、最初は失敗ばかりだったさ。頼れる臣下もいる、焦ることはない」


 そしてケイレスは歩き出す。民と、息子のために。


「さて、そろそろ時間だ。私はまた会議にいかねばならない。あとのことは任せたよ」

「はい、いってらっしゃいませ!」


 憂鬱を悟られないように、興奮を悟られないように。

 逞しい竜王は貪られに赴くのだった。


****


「遅かったね、待ってたよ」


 出迎えの第一声は悪魔の声。ケイレスが目の前の獅子をにらみつけると、それはたのしそうに笑った。


「あはは、愛しの夫をそんな目で見ないでよ。ほら、可愛い僕の妻、君のエッチな体を見せて?」


 断るなどという選択肢があるはずもなく、ケイレスは戦装束を自らの意思でゆっくりと脱いでいく。


 そこに現れたのは、痴女さながらの服装で――――


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