【全体公開版】淫乱探偵黄ヶ虎李光の不名誉事件録~丑の刻参りセックス~
Added 2021-04-25 09:10:09 +0000 UTC黄ヶ虎探偵事務所の主、黄ヶ虎 李光(きがとら りこう)は辟易していた。
あの『精子蟲毒事件』から一か月。新たに降ってわいた相棒は肉欲の限りを尽くしていたから。
彼の名は瑠璃島 瑪瑙(るりしま めのう)、元警察官で今は探偵事務所職員。
全身これ筋肉ですと言わんばかりの隆起した筋肉を、白と青のパステルカラーで彩る芸術品のような肉体美を持つサメの男。祖父が虎だそうで、その血からラウンド髭を生やした雄々しさの権化。
そんな彼は正義感の塊であり、誰彼構わず連れ込むような男ではないことは黄ヶ虎も承知している。愚直でまぶしい、黄ヶ虎がなくした理想求めたまま大人になったような、言ってしまえば猪突猛進型の単細胞。
だがあの事件以降、雄をたぶらかす神霊としての側面を手に入れてしまったため、事務所内はただれにただれきっていた。雄としての魅力が異常なほど高まったため、その気のない雄すら落とせてしまうほど。特に雄性の塊であるちんぽを見せようものなら、どんな雄でも魅了できてしまうほど。
「おっ♡すごぉ♡瑠璃島さんっ♡もっとついてくれよぉ♡」
抑える気もない甘い声は隣の部屋からも雄弁に聞こえてくる。加えて粘着質な音と肉を打ち付ける音まで聞こえてくるのだからたまったものではない。事務所で仕事をしていた黄ヶ虎は額に青筋を浮かべ、八つ当たりぎみにキーボードをたたく。
『精子蟲毒事件』を含めた様々な事件の調査報告書をまとめ直している最中にこんな声が聞こえては、集中できるわけもない。
「ぶもぉぉ♡♡瑠璃島さんしゅきぃ♡おれの雌マンコにもっとわからしぇてぇ♡雌ぅ♡雌でぇす♡おれのおマンコは瑠璃島さんの雌ぅ~~♡♡」
牛頭 鈴(ごとう りん)、雌であることを隠しもせず瑠璃島に好き好きアピールで犯されている黒牛の名前だ。彼もまた『精子蟲毒事件』の被害者で、雌である自覚を植え付けられ発情マンコを持て余す淫乱にされてしまった。
雌として覚醒したものが最高の雄である瑠璃島に惹かれるのは当然の理だが、瑠璃島とのセックス回数が多くなった結果、サメでしか満足できなくなってしまった。性欲を持て余しすぎては心身に支障が出かねない。
おかげでこうして頻繁に訪れては応接室をザーメンまみれにしていくのだ。
「……はぁ」
書いては消してを繰り返して、仕事が全く進まない。文章を浮かべようとも嬌声が割り入って、すべてを性欲で上書きしてしまう。
「くそっ」
悪態をつく虎だが、その股間でははちきれんばかりに肉棒が怒張している。
神霊に近づき、雄として最高峰になった瑠璃島のちんぽがどれだけ素晴らしいか、相棒であるこの虎は骨の髄まで理解させられていた。
萎えチンを見せつけられただけでも頭の中はちんぽでいっぱいになり、しゃぶりたくてたまらくなってしまう。まだ処女を守り続けているが、それも時間の問題なのではないだろうかと戦々恐々としている。
「ぶもおおぉおぉぉ~~~~♡♡♡♡瑠璃島さんのばきばき雄ちんぽさいっこおぉおぉっほおぉぉ~~♡♡マンコの奥が喜んでりゅぅ♡めずにな゛れで、うれじいぃ♡♡」
ああはなりたくない。その一心で黄ヶ虎は脳裏からサメのちんぽを追い払い眼前の仕事を向き合おうと努力する。
『協会』に申請はしてあるため、瑠璃島の神性を抑える算段は付いている。
あとは自分がどれだけ耐えられるか、なんて思いながら虎は忌々しそうに膨らむ股間を見つめた。簡易的な封印だけでは到底抑えきれず、今や瑠璃島は歩く雄吸引機と化している。
ちんぽを出そうものならすべての雄がかしずきマンコを濡らすだろう。そうなれば確実に処分対象だ。さすがにそれでは黄ヶ虎の寝覚めが悪い。
「いや、もういっそ処分してもらったほうが楽なんだがなぁ」
制御できない力は人の身に余る。ましてや呪術などに全く縁がない単細胞なら余計に。
相棒、と呼ばれた声が名残惜しくなっているのだろうか。柄でもないと鼻で笑って、虎は仕事に戻る。相棒なんて、不要だと思っていたのに。
それでも我慢の限界が来た黄ヶ虎が応接室に殴りこむまであと少し。
今の探偵事務所は、こんなことが日常になっていた。
****
「あぁ? 不審者だ?」
全く仕事を進ませられなかった名探偵は不機嫌を隠そうともしない声を出す。
不機嫌そうな顔がデフォルトで装備されているとはいえ、今は怒りも混ざっているため威圧感が倍量投与されていた。
シャツとスラックスというフォーマルな服装はいつもしっかりアイロンがかけられており、見た目のわりにまめだということを瑠璃島は知っている。それでも顔の圧がすごいため、やくざと間違われるだけなのではと思っていても言わない。
「ああ、なんでも大学におれみたいな雌が増えてきたんだと。あくまで噂なんだけどさ」
子供なら泣いてしまいそうな威圧感を受けても、牛はけろっとした顔で言い放つ。最高の雄である瑠璃島にべったりくっついている彼に、怖いものなどない。ラグビーで鍛えたむっちりした肢体を絡ませ、雄の匂いを堪能するのに忙しいのだ。
行為後にシャワーを浴びたサメと牛はつやつやと肌を輝かせており、虎のいら立ちがさらに募る。自分は仕事をしていたというのに、机を挟んだ向かい側でいちゃつかれてはしょうがないこと。
「なあ黄ヶ虎、また『筋肉嗜好会』(マッスルフィリア)の仕業じゃねえかこれ」
サメが険しい顔で宿敵の名前を出すが、虎には響かない。
『精子蟲毒事件』の主犯であり逞しい雄を食い物にする巨悪は、瑠璃島がなんとしても捕まえたい対象だ。サメの警察官時代の相方や、牛頭などが雌落ちして生活に支障をきたしている姿を間近で見ている手前、その怒りも一入だった。
一方黄ヶ虎はだから、とでも言いたげな態度でコーヒーをすするだけ。
シャツにできた乳袋を無自覚にたわませ、ブラックでストレスを胃に流し込む作業に夢中だ。
「そうだとしても、うちは弱小探偵事務所なんだ。依頼でもなければ動かんよ、何度言わせんだ」
「でも、被害が出てからじゃ遅いんだぞ」
「あーはいはい、嫌になるくらい真っすぐだなほんと。大体その手の事件はほとんど無関係だと相場が決まってんだ。ただ働きなんて御免だよおれは」
「黄ヶ虎……!」
正義感の強すぎる相棒は虎の発言を見過ごせなかったようで、机に身を乗り出して顔面を近づける。
精悍な顔になぜか虎の心臓が高鳴ってしまうが、シニカルな笑みでごまかした。
「んな見つめたって駄目なもんは駄目だ。それとも、今度はおれと一夜をご所望かケダモノ」
「ちげえって! 牛頭とやってるのだって、あいつを助けるためだ」
「……わかってるよ」
舌打ちして虎は顔をそらす。これじゃあ嫉妬じゃないか。
瑠璃島にとっては牛頭や宮影などといった被害者を犯すのは、彼らの性欲を発散させるためで、それ以上の意図がないことは明白だ。このサメは公明正大を地でいく性分で、警察官にはなるべくしてなったのだと、この一か月で黄ヶ虎は嫌というほど理解できた。
「…………」
後ろに置いていかれた牛頭が不満そうに何かをつぶやくが、二人の耳には入らない。この凸凹コンビは自分らが思っている以上に仲がいい。
ややあって瑠璃島が折れ、ソファに深く座りなおす。眉間にできたしわをほぐさんとすぐさま牛頭が体を寄せ、嬉しそうに頬を擦り付けた。
「わかったよ、雇い主には逆らわねえさ。でもな牛頭、何かあればすぐに相談するんだぞ」
「ああ分かったよ瑠璃島さん」
サメが抱き寄せながら見つめると、牛はうっとりとした視線を送る。
一見すれば仲睦まじいカップルだ。このサメはそれを素でやっているのだから恐れ入ると、虎はコーヒーをすすりながらジト目を向けた。
きっと警察官時代もこうやってもててきたに違いない。黄ヶ虎は他人の恋愛事情に口をはさむ性格をしていないが、いつか刺されるのではないかという心配は一応してやることにした。口に出すことはないが。
そしてこのまま牛頭が帰ってくれればようやっと仕事が進む。
なんて黄ヶ虎が胸をなでおろしていた時、来客を告げるベルの音がその期待を引き裂いた。
ジト目のままサメに目線で合図を送れば、空色の巨体が俊敏に動く。あの正義漢は困った依頼主を放っておけないからドアボーイには適任だ。
面倒事になる。虎はそう直感し、一気にカップの黒色を飲み干した。性欲とストレスを胃に押し込めるだけの作業は、あんまり効果を発揮しなかったようだ。
現れた黒い人物を見て、さらに大きなため息を。
巨大なシャチの雄は、瑠璃島の手を握りながらやってきたのだった。
「ああ、宮影(みやかげ)か。つうことは事件の依頼だな。おい、牛頭は返してこい、ここからは仕事の話だ」
「いやいや、大丈夫。むしろ彼がいてくれた方が都合がいい。たしか君は、〇〇大学の学生だったよね」
体のいかつさを中和することに成功した好例として、瑠璃島のお手本になっている男だ。やんわり牛頭をとどめる動作に、威圧感は見受けられない。
それでも少し前までは瑠璃島とタッグを組んで様々な事件を解決してきた敏腕刑事だ。猪突猛進の瑠璃島とは正反対の、よく気の回る優しい男。
『筋肉嗜好会』によって雄狂いに落とされたものの、こうして何とか職場復帰できている彼は、黄ヶ虎に事件を持ち込むパイプ役として活動している。
もっとも、その目的は固くサメを握りしめた手を見れば明らかだが。
「失礼します。瑠璃島も借りるよ」
「おう」
シャチが促せばあっさりと隣に座るサメ。しっかり手は握ったまま、しかも指を絡めた握り方で。
スーツ姿のシャチは牛頭のようにべったりくっつくことこそないが、目線だけですべてが通じ合っているようだ。表情を消していればこわもてと言われそうだが、小さな目を細める姿はほんわかしたお兄さんを思わせる。
「宮影、コーヒーでも入れるか」
「ああ、それじゃあ頼もうかな。それにしても、まさかお前にコーヒーを入れてもらう日が来るとは、署にいたときは全部おれの仕事だったのに」
「だってお前、おれのいれたコーヒーがまずいって言うじゃねえか」
「まずいよ。分量全部が適当なんだ、飲めたもんじゃない。それじゃ、どれだけ上達したか見せてくれよ」
「任せろ」
そして出来上がったコーヒーはまさしくさっきまで黄ヶ虎が飲んでいたもの。
宮影はそれを飲みながらゆっくり頷いた。
「いいじゃん。お前にしては上達した」
「へいへい、お褒めにあずかり光栄ですねっと……ミルクと砂糖一つだ」
「さんきゅ」
手慣れた動作で砂糖などを受け取って、シャチは白をつけたした。
阿吽の呼吸とでも言えばいいのか、二人は言葉こそ少ないが動作によどみはない。さすが長年タッグを組んでいただけはあると、黄ヶ虎は分析する。
そして、その反対で牛頭がむっとした表情をしていることに頭を抱えて。
「おれは一体、何を見せられているんだ……」
痴話げんかならよそでしてくれ、なんて虎は叫びだしたくなった。
このままでは怒りのあまり机をひっくり返しそうだったため、仕事の話を進めることにした。
「もしかしてお前からの依頼はあれか、最近こいつの大学に出る不審者の話か?」
「そこまで分かってるなら話は早い。ここ最近学校からの相談もあり見回りを強化していてね、そのかいあって不審者――学校内でホモセックスに勤しむやつらを何人か捕まえたよ」
「……嫌な予感がしてきた。またこんな事件かよ」
「そして動機を聞いていると、なぜか意見が一致していてね。『雌だからちんぽが欲しくなった。我慢できなくて襲った』っと」
「ん、つまりそれって逆レイプじゃねえか」
「その通り。ホモセックスに勤しんでたのは受けの方で、攻めの方はただの被害者さ。そしてこんな事件が立て続けに起こっている。……怪しくないか?」
「怪しいか怪しくないかで言えば、限りなく黒に近いグレーだ。ただ、こんな事件ばかりだなうちは」
「『精子蟲毒事件』でさらに名をあげたからね。こういう事件なら黄ヶ虎探偵事務所に、なんてもっぱらの噂だよ」
「……勘弁してくれ」
掌で目を覆いながら天井を向く虎は心底辟易したようにつぶやいたが、依頼を断ることはない。弱小探偵事務所は警察といい関係を築いていきたいのだ。
「んで、なんでこの話を牛頭にも聞かせたんだよ。警察が一般人を使っていいのか」
「さあ、おれは探偵に依頼をしに来ただけだから。それでも善意の一般人が情報をくれるのならもらったほうがいいと思うけど?」
「あーはいはい、とんだ食わせ物だ。っま、そういう姿勢は嫌いじゃねえが」
「でもないとこの直情型の相棒は務まらなくてね。君も覚えておくといいよ」
「善処する」
確かに曲がったことが嫌いなサメとタッグを組むのだ、こういう根回しが上手くなければやっていけないのだろう。
その苦労を思うと、虎の胃が痛くなりそうだった。
苦虫をかみつぶしたような顔でコーヒーを一口。空っぽだったことを思い出してサメをにらむと、当の本人はキョトンとした顔で見返してきた。
「なんだ、お代わりか。ちょっと待ってろ」
「ああ、黄ヶ虎さん。もう少し瑠璃島を借りてもいいかな。どうせ調査は明日からだろう? おれも早上がりしてきたし、これから暇なんだ」
「好きにしろ。おれはまだ仕事が残ってんだ」
「じゃあ終わったら混ざるかい? おれは別にそこまで狭量じゃないし」
なんて言いながら牛頭の方を見るものだから、黄ヶ虎は勘弁してくれとばかりに席を立つ。痴話げんかに巻き込まれるのはごめんだと、応接室を後にする。
案の定牛頭は宮影をにらみつけ、二人の間が熱せられ一触即発の雰囲気を醸し出す。
片や元相棒の女房シャチ。片や絶賛ご執心の彼女牛。
この二人がかち合うといつもこうなるのだと、黄ヶ虎はため息が出てしまう。
話を分かっていないのは瑠璃島だけ。いっそこのこと刺されてくれと、背中越しに呪詛を投げつけた。
「あ、おい、黄ヶ虎、お代わりはいいのかよ」
艶やかな黒と毛並みの良い黒に絡まれるサメから声をかけられても、黄ヶ虎は振り向かない。どうせズボンを下ろされ見てはいけないものが出ているのだと推理したから。
だから、こう言うだけにしておくのだった。
「楽しんだ分明日から働けよ。給料分は仕事してもらうからな」
****
日を改めていまだ真昼。太陽光が濃い影を落とす学びの園に、虎とサメはいた。
瑠璃島にいいところを見せようと意気込む牛頭が案内を買って出てくれたのは御の字だった。おかげで迷うことなく資料の場所を見つけることができたのだから。
宮影からもらった資料をめくりながら虎は口を開く。
「捕まったのはラグビー部が多め……ってお前なんかしてんじゃねえのか」
「し、してねえよ。おれは別に他人を貶めて喜ぶ趣味なんかまじでないね」
鼻息を荒く吹いた牛頭が当然のように切り返す。瑠璃島の隣をきっちり確保して、ちらちら横目で伺う仕草は乙女かよと、虎はつっこみたくなったがすんでのところで抑えている。
他人の恋路を茶化して馬に蹴られる趣味など彼にはない。
一応資料を読んだ黄ヶ虎が牛頭から呪術の痕跡を探したものの、なにも見つからなかったことを確認済だ。少なくとも牛頭に呪いの類がかかっていることはない。
ただ、偶然にしてはできすぎているのも事実。虎は頭の片隅に警戒だけは忘れずにおいておくことにした。
牛頭の案内で一行はラグビーサークルの部室に足を運ぶ。参考人にはお昼休みに集まってもらうように牛頭から声をかけてもらっている。
「ここだな」
率先して瑠璃島がドアを開けた。背後のために当然のように先陣を切る背中は広く逞しい。続いて牛頭と黄ヶ虎が足を踏み入れた。
「牛頭から聞いているとは思うが、おれらは警察の関係者だ。最近起こっていることについて教えてほしい」
巨躯ひしめく巣窟において、平然と言ってしまえるサメの胆力はさすがのもの。犯罪者相手に踏んだ場数が違うのだ。
聞き込みの基本などはしっかりできているため、黄ヶ虎は任せることにした。虎は視線をさまよわせ呪物がないかを調べることに専念するようだ。
ロッカーが並べられた部屋はお世辞にも清潔とはいいがたく、乱雑にいれられた道具などからガサツという印象が強い。男所帯の本拠地というイメージをそのまま体現したような部屋で、熊が真っ先に言葉を返してきた。
「聞いてますよ。あんたのことはそこの牛頭から耳にタコができるほどね。なるほどね、こりゃ、たしかに……」
分厚く樽のような体形の茶熊は瑠璃島の頭から足先までを丹念に見つめ、表情を緩めた。明らかに好感を抱くものの顔であり、警察という単語に対しての警戒心などみじんもない。
「あの人が伊里熊 入江(いりくま いりえ)、うちのキャプテンだよ」
「おい、伊里熊どうしちまったんだ。あんな大男になに見とれてやがんだ」
「今伊里熊先輩をゆすっているのが火獅 子隈(かし しぐま)先輩。副キャプテンさ」
「おーい、伊里熊ぁ! なんだってんだ。そりゃ確かにでかいが、そんなのは牛頭から聞いて……」
獅子が原因を突き止めようと瑠璃島に視線をやれば、熊と同じように動きが止まる。
そしてそれは二人だけではない。牛頭によって集められたラガーマンたち全員が、瑠璃島に視線を奪われてしまっていた。
(どういうことだ。確かに瑠璃島は雄を引き付ける神霊だが、最低限の封印はしてある。股間を出さずに雄を魅了できるような亀裂なんておれがいれるわけねえんだが……)
さすがに鈍感な瑠璃島とはいえ違和感くらいは察しているようで、虎の方へ困った視線を向ける。
「き、黄ヶ虎……なんかむず痒いんだが……おれなにかしたか?」
「後で封印の点検をするからお前は出てけ。これ以上セフレを増やされたらたまったもんじゃねえ。欲しいってなら止めねえが、応接室は貸さねえからな。そこらの草むらでも使ってろ」
「言い方ってもんがあるだろうがよ。おれだって増やしたくて増やしてるわけじゃねえの!」
シニカルな笑みで憤るサメを後ろに下げると、代わりに虎が前へ。彼は自身の肉体が現役のラガーマンたちに比べると見劣りするかもしれないが、実践的な筋肉は衰えていないと自負していた。
全く物怖じしない態度は尊大に映るかもしれないが、瑠璃島によって魅了されかけていた彼らにそこまでの気概はなかった。
「そんなわけで、あいつに変わっておれが話を聞かせてもらおうか。こんなうさんくさいおっさんで悪いが、ま、少しばかりつきあってくれや」
しっかりしたシャツにスラックス、しかも今日はサスペンダー付きだ。乳袋に引っ掛かった紐を手持無沙汰にいじり、もう片方の手でスマホを持ち上げる。
瑠璃島相手に緩んでいた空気が硬くなる気配を感じ、できるだけ温和を目指して虎が笑む。
「なに、録音しようってわけじゃねえさ。最近の探偵はメモも電子ってだけだ。んで、どうしてうちの瑠璃島を見つめてたんだ。あいつはいい奴だが愚直すぎておすすめはできねえが、そういうわけじゃねえよな?」
「いや、なんでか……」歯切れ悪く熊のキャプテンが言うには。「一目見た瞬間に、体が理解したというか……なんだ、なんていうんだ、これ……その……強そうだなと」
言葉を探しあぐねて周囲を見渡せば、全員が困惑を浮かべている。だが、そこにある確かな恋慕にも似た朱色を虎は見逃さない。
黄ヶ虎はフリックで高速入力をしつつ、思考を回す。
(ふむ、雌としての懸想。牛頭と似たような、か。こりゃ本格的に『筋肉嗜好会』が絡んできたか……。だがしかしこいつらには自覚がない。この自覚が芽生えた時に逆レイプ魔になるってか。んな術式があるかぁ?)
「逆レイプで捕まったやつはこのサークルからが一番多いよな。心当たりはあるか?」
「まったくない。そもそもあいつらは男が趣味なんて話は聞いてないし、彼女がいたことだってあります」
「つまり性癖を捻じ曲げられた可能性があるっと……あーやだやだ、まじで当たりかこれは」
めんどくさそうに頭をかいて、縞模様の毛皮を散らす。『筋肉嗜好会』が絡んでいるとなれば、確実に呪いがらみだからだ。
「確か……逆レイプが多発するようになったのは先週からか。まだ最近だな」
「正確には五日前にうちの部員がやらかしたようです……。今謹慎中だが、原因によってはおとがめなしの可能性もあるって言われたんです。だからその可能性があるなら掴みたいんだ、何でも聞いてください!」
熊の真摯な視線に全員が頷いて、希望たる探偵へと期待を投げる。
こういうときに任せろと胸を張って言えないのが黄ヶ虎だ。彼はただじろりと見返して口角を上げるだけ。
「真実はいつだって都合のいい物とは限らんが、解き明かすことはするさ。それが探偵なんでね。期待せずに待っててくれよ」
青臭い団結力に探偵ができることは多くない。呪いが原因であれば情状酌量の余地はあるが、それを彼らに伝えるほどお人よしでもない。呪いなんて、誰が信じるというのか。
「それじゃあ一つ、これは他愛ない話なんだが、最近おまじないとかはやってるか知らないか?」
「はぁ、おまじないですか……」
肉体派が集うこの部屋にふさわしくない質問だと判断したのか、対する熊の声は勢いのそがれたものになっていた。
「本題に入る前に軽い質問を挟んだほうが緊張がほぐれるってやつ。まあそれだけなんで、軽い気持ちで応えてくれ」
あくまで害のない肉食獣をアピールするが、とっとと本題に入ろうという魂胆が牛頭には透けて見えていた。とはいえ牛頭もそこまで空気が読めないわけではないので、おとなしく話の推移を見守るだけに徹している。
「まあいいですけど。そういえば、ちょっと前くらいに聞いたかな、なんでも午前二時くらいに幸水様(こうすいさま)のところで祈ると願いが叶うってやつ」
「幸水様?」
「うちの大学敷地内に小さな祠があって、そこにいるって噂されてる神様ですよ。人類学科の連中に言わせればいわれもわからない眉唾物みたいですけど。森の中に行くとすぐ見つかりますよ。一応手入れされた道で、農学部とかが管理する畑に続いてるはずなんで」
「午前二時ねぇ……。んで、そこで祈るだけでいいのか」
「あーっと、確かなんか衣装とかいろいろあったはずなんですけど、そこまで覚えてないです。あんまり興味もなかったし、そんな時間帯なんだってことだけですね覚えてたのは」
「ああ、そんくらいでいいさ。息抜きの質問だからな」
そこで熊は牛頭の方に視線を移し。
「牛頭は何か知ってるか?」
「そうっすね……時間は二時半、衣装はユニみたいなスポーツ系、他にもなんかあったみたいですけど、おれもそこまでですね」
その後いくつか話を聞いて、思考とメモをまとめていく。
別れ際に部員たちからよろしくお願いしますと頼まれた虎が、げっそりした顔で部室を後にする。これから牛頭も練習があるらしく、部屋を出たのは黄ヶ虎一人だけ。
そして話を聞いていた瑠璃島と合流。サメは明らかにやる気に満ちた顔をしていた。
「仲間想いのいい奴らじゃねえか。こりゃなんとしても解決してやらねえとな!」
「前も後ろも熱血しかいねえ暑苦しさよ。これだから体育会系は」
「んだよ。困ってる人がいたら助けるのが探偵だろ」
「わけねえだろ。いつまでも警察気分でいるんじゃねえ。毎回依頼人の満足いく結果になることなんざねえんだ。そこらへんもおいおい学習していけよ」
「それでも、おれは最善を尽くすぞ。それで駄目だったら慰めてやる。おれにできることはそれくらいしかねえからな」
「……ああそうかい。ならせいぜい頑張るんだな」
闘志が燃える目は太陽のように輝いていて、付き合いきれないとばかりに虎は歩き出す。いやになるくらいまぶしくて後ろを振り向けなかったが、足音はちゃんとついてきているようだった。
「お、おい、どこいくんだよ。あの祠にでも行こうってか」
「勘がいいじゃねえか。その通りだよ」
「場所は大丈夫か」
「ちゃんと聞いてある、そもそも校内見取り図くらい頭に入ってるだろ」
「じゃあ任せた」
「調査するなら頭に入れとけよ……」
その祠は確かに森の中にあり、年季の入った小さなものだった。
それでも大学内にあるためか手入れ自体は時折されているようで、風化しているという印象はあまりない。鳥居と共にひっそりとたたずむ空間は、そこだけが異世界のように静謐に切り取られていた。
辺りは木々が生い茂り、人気も少ない。大学から離れているせいか喧騒も遠く、環境音が自然一色に染まっている。それでもいくつもの足跡があることから、出入りはあるようだった。
「そいつが犯人か?」
祠を見ながらサメが問う。
「かもしれないってくらいだがな。こいつがどんな神様だか知らないが、大学の学者様方も把握してないくらいだ、あまり触らない方がいい」
「おれなら祠をぶっ潰してもいけるか?」
悪とみるや容赦のないサメは、拳を鳴らしながら牙をむく。ラガーマンたちの事情を知ったこともあり、感情移入が進んでいるようだ。
「やめとけ。どんな小さい神だろうと、神は神だ。神霊と神の戦いなんておぞけが走る。それに、これは祠が悪いわけじゃねえ。たぶん、呪い(まじない)の類だ」
「あー、あの二時になんちゃらってやつ。なんだそれ」
「聞いたことくらいあるだろ。『丑の刻参り』だ」
「丑……ああまあ、名前くらいは」
ほとんど何も知らないことが露呈したサメに向かって、説明してやることにする。
その間も、虎は祠の周りを念入りに捜査し続けていた。
「そもそも丑の刻は十二時辰(じゅうにじしん)っていう昔使われた一日の分け方だ。一日を十二支に当てはめて示すんだが、丑の刻っていうのが大体一時から三時だ」
「なるほどな、だから二時くらいなのか」
相槌を打ちながらもサメの目は祠周辺をくまなく調べている。警察で培った捜査技術は健在で、二人がかりだとあっという間に探索を終えることができた。
「ちなみに、ホラーの定型文でよく見る丑三つ時は丑の刻である二時間を四つに割った三つ目、つまり大体二時半くらいをさす。そもそも丑寅の方角は鬼門つって鬼が侵入してくる方位だと陰陽道で決まっててな、もとからあんまり縁起がいいもんじゃねえんだ」
「うん、うん……へー……」
「んで、肝心の『丑の刻参り』なんだが、これにはやり方が諸説ある。そもそも人を呪うものじゃなくて、神様に願いをするっていう深夜参りの参詣形式がもとになってるだけなんだ。親の病気を治したり、男の愛を得るとか、それこそただの願掛けってくらいにな。っつっても、一般的なイメージだと藁人形に五寸釘打ち付けるやつだろう」
「お、それくらいならおれも知ってるぞ」
めぼしい情報は特になし。スマホでいくつか撮影して終わりだ。
あとは休憩しようと虎が木によりかかれば、サメも隣に陣取ってくる。話を聞きいっているようで、そのまま虎は続けた。
「っま、本当なら打ち付ける前にも願文(がんもん)を書いたりなんやかんやすることはあるんだが。そうして衣装と化粧で装いを正してからわら人形に杭を打ち込むと、対象は呪われて死ぬってわけ」
「でも今回は死んでねえよな」
「蟲毒の時と一緒で、どうせろくでもない改変してるんだろうさ。んで、そうと決まれば夜に見張るか。時間帯がわかってるから今回は楽だな」
「おう! 犯人の尻尾を掴んでやろうぜ!」
にかっと笑うラウンド髭のサメは黄ヶ虎の推理をみじんも疑っていない。粗があるとは虎も思っていないが、せめて少しは考えてくれないかと眉間のしわを深くした。
「やっぱり黄ヶ虎 李光は名探偵だからな。その推理を間近で聞けるなんて、なんかこう、感動するな」
「……あー、そういやおれのファンだったなお前」
「まあな。だからお前のところで働けて嬉しいぞ」
「こっ恥ずかしいやつめ。なら愛するおれのためにちゃんと働いてほしいんだが」
「働いてるだろ。……役に立ってるかは微妙だが」
「自覚があるなら結構。二時から期待してるからな」
「うっす……」
目星が立った以上、本日はこれで解散の運びとなる。黄ヶ虎は深夜に張り込みをする予定から逆算して仮眠などのスケジュールを頭で組み立てながら、晩御飯の献立も並列思考で処理していく。
対して瑠璃島は戦闘になることを想定してウォーミングアップに走り込みなどを予定に組み込み、今度こそ役に立とうと決意を硬くしていた。頭脳面で力になれないなら、せめて肉体労働はこなして見せようと鼻息が荒い。
深夜まで一緒に過ごすという選択肢がないくらいにはまだ打ち解けていない二人だが、ここで黄ヶ虎があることを思い出し待ったをかける。
「瑠璃島」呼ばれて犬のように振り返るサメを見返して。「封印の確認するから、家に来い。晩飯くらいはおごってやる」
ラウンド髭の筋骨隆々サメはその言葉に目を光らせた満面の笑みで返す。強面で悩んでいるとは思えないほどすがすがしい笑みは、虎には絶対出せないもので。
「お、いいのか。ちなみに献立はなんだ?」
「適当にカレーでも作るさ。なにせ馬鹿みたいに食うやつがいるからな」
「じゃあ手伝――」
「わなくていい。お前は何もするな。ようやくコーヒーをまともにいれられるようになった程度で、おれのキッチンに入るな」
「はい……」
まともに料理などしたことがないサメを厨房に入れても邪魔になるだけなのは証明済みだった。服装の律義さからもわかる通り、この虎は意外にまめで、手料理もある程度はこなせるのだ。
ちなみにコーヒーのいれかたを教えたのも黄ヶ虎だ。教える過程で拳が五回ほど飛んだが、今では何とかましになっている。なぜコーヒーをいれるだけなのに汚泥のような砂利が生まれるのか、それは名探偵の頭脳をもってしてもわからないことだった。
「買い出しして帰るか。荷物持ちくらいはしろよ」
「わかってるって。せめてそのくらいはさせてくれ」
森の中に足音を響かせて帰路へ着く。
対決前の休息を得るために、彼らは大学を後にするのだった。
****
雄の淫乱化を受けて、どうせ変な呪いだろうと黄ヶ虎たちはたかをくくっていた。呪いの出元を抑えてしまえば解決する、そう思っていたのだ。
だが、深夜の森で繰り広げられていたことは、彼らの想像の斜め上をいっていたのだった。
肉のまぐわう音はそこかしこで響き、耳から犯されているような錯覚を覚えるほど。森林特有の清涼な空気はすでに汚染され、胃もたれするほどに濃い雄の臭気が煮詰まっていた。
「確かに何か改変してるだろうと思ったが、これほどとは……。頭湧いてるんじゃねえかな……」
黄ヶ虎が頭を押さえて苦悶を表現するのも無理はなく、隣にいる瑠璃島も状況は何も把握できていなかった。
一言で表すなら、乱交。
祠を中心とした濃厚ホモセックスが、いたるところで繰り広げられていたのだ。
「おぉ、っはぁ♡ホモセックスたまんね♡たまんね♡」
「ちんぽ♡ちんぽ♡もっとくれよぉ♡♡」
隆々とした肉体たちがぶつかり合い、甲高い声で喘ぐ。汗が月光に反射して輝かしい筋肉を誇示するが、それはすでに淫液によって汚されている。上半身にはそれぞれのユニフォームであろう色とりどりの衣服を身に着けており、雄の匂いを染み込ませていた。
十人、いやそれ以上がひしめきあい、終わることのない饗宴を続けている。二時前に黄ヶ虎たちがやって来た時にはすでに始まっていたことを考えれば、おそらく数時間は盛っているのだろう。
犯し犯されの退廃的な行為を、誰が呪いなどと見抜けるのだろうか。
その誰もが喜色を浮かべていることから、逆レイプという単語は当てはまらないだろう。つまりここの雄たちは集まるべくして集まった呪いの被害者たちということだ。
目をそむけたくなるような光景を観察すると、二人にも見知った顔が数名混じっていることに気づく。
それは昼時に知り合った獅子やクマといったラグビーサークルの雄たちだった。
「なあ黄ヶ虎、あの伊里熊ってやつ、昼は普通だったよな」
「何も知らない風だったが、おそらく呪いにやられたんだろ。本人に聞いてみればいいじゃねえか」
「えぇ……近づいて大丈夫なのか」
「わからん。だけどお前なら平気だろ。そもそもああいう魅了系の術が効かない体質だ、神霊さまさまだな」
「ったく、人使い荒いぜ。肉体は生身なんだってのによ」
などとしぶりながらではあるが、瑠璃島は恐る恐る近づいて聞いてみることにした。
伊里熊は樽のような豊満な肉体で背後から立ちバックされており、いきり立ったちんぽを揺らしながら涎や先走りを振りまいていた。こんな時でなければ頼もしい壁のような存在だったであろう肉体の分厚さも、こうなってしまえばただのはけ口だ。
「お゛っ♡♡ちんぽちんぽすげええっぇぇえええ♡♡」
「伊里熊、ちょっといいか。話を聞いてみたいんだがぁ……」
感電しているかのように顔を痙攣させてわめく熊に通じているのかも疑わしかったが、熊は壊れたように裂いた笑みで見返してきた。
「あっほおぉ♡瑠璃島さっん゛♡ちんぽ♡ちんぽくらさぁい♡♡♡♡一目見た時からぁ♡瑠璃島さんのちんぽぉ♡ほじくで♡ほじいいぃぃぃ♡♡口でも腋でもなんでもいいがら゛つがっで♡お願い♡処女マンオナホに調教ちんぽほじいぃ♡♡♡♡」
「あーまあ、それは今度な。お前っていつからホモセックス好きだったんだ?」
「今日♡♡ついさっぎいぃ♡急にホモセックスがしたくで♡おマンコ我慢できながっだがらぁ♡♡火獅が♡♡さそっでぐれたんだあぁ♡♡」
「火獅ってあの副キャプテンか。あいつはどこだ? ぱっと見いねえみたいだが……」
その問いは絶頂によってかき消された。伊里熊は急に眼球をひっくり返すと、狂ったような咆哮をあげて痙攣したのだ。のけぞった熊はでかい腹を強調するようにしなり、ちんぽから大量のザーメンをふきあげる。
「ぞおぉおぉぉお♡♡♡すっげすっげえぇ♡ちんぽ奥までぐっぽりしゅごおぉ♡おれは雌♡雌雌雌雌雌ぅ♡♡♡♡ちんぽ大好きな雌マンコ♡最高♡さいこおほおおぉおぉ♡♡♡」
「おーい……」
「ちんぽおぉおぉぉぉ♡♡♡♡ちんぽもっと♡はめてくれえええぇ♡♡処女マンオナホにザーメンマーキングほじいぃいぃぃ♡♡ちんぽちんぽちんぽぉ♡ちんぽぉおぉぉいっぐううぅぅぅうぅぅ♡♡♡♡♡」
「駄目そうだな……」
あきらめて周りを見渡せば、雄たちは誰もが伊里熊のように半狂乱でちんぽをむさぼっており、まともに話ができるようには見えなかった。
黄ヶ虎の下へすごすご引き返し、どうしたものかと視線で問うた。
「全員を止めないことには無理だろうな」
「術者がいるとかじゃねえの?」
「たぶんだが、これは全員術者だ」
「なんだそれ」
『丑の刻参り』とは身なりを整えた一人がわら人形に杭を打ち付けるような呪いではなかったのか、とそこまで考えて瑠璃島は気づいた。
「わら人形、杭……え、まさか」
「はぁ」名探偵は特大のため息をついて。「お前の想像通りだ。この『丑の刻参り』はわら人形を雄に、杭をちんぽに見立てて行われている。そしてちんぽが欲しいと願うことで、付近の雄たちが誘われてしまうってわけだ。雄役か雌役かは知らんが。あのユニフォームは装束の変わりなんだろうな……自分で言ってて何言ってんだかわからなくなってきた。狂ってやがる」
「こんなので成り立つのかよ……」
「信じたくはねえが……。五寸釘を打ち込むとき恨みつらみを吐くイメージはないか? 死ね死ね、とか言いながらさ。ちんぽを突き立てながらわめくあいつらと何が違うと思う。純粋な欲望によって言霊を紡ぐ行為に変わりはなく、それが恨みか快楽かの違いでしかないわけだ。まーじで狂ってやがる」
解析しながら虎の顔はげそりとしている。今すぐにでも今夜のことは忘れて帰って寝たい、なんて顔に書いてある。
「だが、これを放っておくとどんどん術者が増えて呪いが強力になっていくんだろう。感情が溢れれば神霊に近いお前もどうなるかわからん。雌が雌を呼び、さらに雌を増やしていく術式ってわけだ。狂っているが、よくできてやがる」
「えーとほら、こういうのって誰かに見られたら終わりとかないのか」
「ないな。そういう言い伝えもあるだろうが、この呪いはばれても問題ない。むしろ相手が呪われたと思って勝手にメンタルを崩すことを想定さえしているもんだ。この場合、呪われたから雄好きになるかもしれん……とはならねえだろうけど」
さてどうしたものかと頭をひねっても、いい解決策が浮かばない。いっそのこと全員を逮捕してしまえば呪いは中断できるだろうが、今日呪われた雄がやってきてはいたちごっこだ。そもそもこの『丑の刻参り』を最初に始めた犯人がこの中にいなければ、また同じことが起こってしまう。
うんうん頭をひねる黄ヶ虎に変わって、サメが握りこぶしに力を入れる。鋭い目はさらに威圧的に輝きを増して、退廃的な儀式に殴り込みをかけようとしていた。
「ようするに、全員気絶させればいいんだろ。それで術式をいったん止めさせれば、こいつらから話も聞ける」
「まあそうなんだが、さすがにこの人数は無理だぞ。いくらお前が強くても多勢に無勢だ。お前の股間がさらされたら、もうだれにも止められない」
「ならどうしろってんだよ。伊里熊みてえな奴が今後増えちまう前に、なんとかしないとじゃねえか!」
「わかってる。おれだって考えてんだ。お前はこういう時に名探偵を信じられないやつなのか」
「っう、それは卑怯じゃねえの?」
あこがれの探偵からこんなことを言われたら、さすがに黙るしかない。卑怯な手だと双方思っているが、これで状況は黄ヶ虎の手にゆだねられた。
「やっぱり、瑠璃島さんもきちまうか……え、ってかみんなどうして……?」
虎の黒い耳がピンと立って、声の主を補足した。二人して振り向けば、そこにいたのは黒い牛。夜に溶けていきそうな毛皮は伊里熊と同じユニフォームを着こみ、月明りの輪郭でそのガタイの良さを露わにしている。
牛頭は目の前の惨状と二人を見比べて、状況を飲み込めていないようだった。
反対に、黄ヶ虎の脳みそでは情報が組み立てられていく。ラガーマンを中心に広がっていく呪い。雌が雌を呼ぶ願い。そして現れたユニフォームを着た牛頭。
とある結論に達した黄ヶ虎は、いら立ちをあらわにしてこう叫んだ。
「術式を乗っ取られやがったなお前!」
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Comments
いつもありがとうございます!こんな丑の刻参りがあったらいいなと思って書きました! オカルト話なのでちょっとだけ接点を持たせてみました。もし出会ったら黄ヶ虎さんの胃に穴が開くことは間違いないですが、そうなったら面白そうですよね。
とりあえず
2021-04-26 11:41:23 +0000 UTCいつも楽しく読ませて頂いてます! こんなエッチな丑の刻参りがあっていいんですか…!? 幸水神社とか少しずつ他のお話とも世界が繋がってるのすきなのでありがたいです! 天くんと瑠璃島さんが出会ったらすごいことになりそうですね…
オア
2021-04-25 11:07:34 +0000 UTC