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ねじゅみ
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【Skeb】ライオン獣化実験


 玲央は、青いピッチを駆け回るチームメイトたちの姿を恨めしそうに眺めていた。特に、ボールを蹴る音に交じり風に乗って聞こえてくる〝アイツ〟の掛け声が耳にするたびに下唇を噛んだ。

 ついこの前まで焼け付くような日差しがじりじりと照り付けていたのに、今はもう涼やかな風が頬を擦る。一人ぽつんとベンチで座っていると、ほんのりとした肌寒ささえ感じるほどだ。芝生の上で練習しているチームメイトたちは、遠目から見てもわかるくらい汗だくだった。

 そのことがなおさら、目の前に敷かれた一本の白線のこちらと向こう側との世界の違いと疎外感とを玲央に与えた。

 走ることすらできないのに、わざわざユニフォームに着替えて練習を見学するためだけに座らされている自分を情けなく思い、「さっさと家に帰って布団の中で不貞寝したいなぁ」と真っ青で抜けるような空を呆然と見上げた。


 一週間前のことだ。

 全国大会出場を賭けた県大会の決勝戦で、玲央はゴール前で相手チームのキーパーと激しく接触した。相手は何ともなかったようだったが、その後、玲央だけが足の激痛でその場から動けなくなってしまった。

 担架で運ばれ、病院で下された診断は軽度と中度の境目くらいの「靭帯損傷」だった。病院の去り際に母親から決勝戦の結果を知らされた。玲央の積み上げたゴールのおかげで試合には勝ち、チームはサッカーU-12全国大会の切符を手に入れていたそうだ。

 しかし当然、玲央は全国大会には出られない。

 それどころか、大事を取って小学校卒業までは運動もサッカーもできなと聞かされた。「無理をすると一生まともに歩けなくなる」という脅し文句付きだった。


「こんな怪我くらい……!」

 沸々とこみ上げてくる心のモヤモヤが爆発し、右足の装具を拳で小突いた。その瞬間、当然のように激痛が走る。

「いっ! つってぇ……」

 玲央が一人で身をよじって悶えていると、〝アイツ〟がベンチ脇に立っていた。

 巧汰だ。

 いつの間にか休憩タイムに入っていたようだった。巧汰は汗で光る鼻の頭をユニフォームの首回りで拭きながら、

「全国までに治んねぇの? 足。」

と、玲央に話しかけてきた。

 それに気づいたチームメイトたちの間に緊張が走る。

 二人は小学校入学当初から今までずっと仲が悪かった。同じポジションを争っていた健全なライバル関係などではなく、単純明快に筋金入りの〝犬猿の仲〟だったからだ。

 玲央は才能に見合った高慢な態度で周囲を見下しているし、巧汰は巧汰で向上心が空回りした嫉妬で嫌味ったらしい。四年か五年の頭くらいまで、しょっちゅう取っ組み合いの喧嘩をしていた。最近になってようやく距離を置く知恵が付いたのか、お互いに完全無視を決め込んでいたのだ。

 玲央は自分を煽っているとも取れるその言葉に、カッとなって巧汰の胸に掴みかかりそうになった……が、足が痛くなるのでやめた。普段なら喧嘩を売るように「チッ」と舌打ちしてわざとらしく足を踏み鳴らして距離を取るのだが、それも足が痛いのでやめることにした。

「治るわけねぇだろ、そんなもん……」

 玲央が怒りを押し殺すような震える小声で返事をした。玲央の態度から、ここでたちまち喧嘩になるようなことはなさそうだと悟ったチームメイトたちは、見て見ぬふりをしつつ、そっと二人から離れていく。

「それ、医者がヤブなんじゃね?」

「……」

 玲央はこのまま巧汰と話を続けようか無視しようかと葛藤したが、数日間の鬱憤でつい会話を続けてしまう。玲央自身、吐き出したいこともあった。

「そうに決まってる。こんな怪我なんか大会までに治りそうだし、痛かったら痛み止め貰えばいいだけじゃん」

 玲央は右足の装具を、今度は指先でそっと軽く突いた。

「だよなぁ……」

 巧汰は玲央の言葉に同調した。おそらく、玲央の記憶の中では初めての出来事だったかもしれない。そしてしばらく間を開けてから、巧汰が改まった態度で驚くような言葉を続ける。

「あのさぁ。俺、玲央にスタメンで出てもらいたいんだよね。全国」

「はあっ?」

 玲央は混乱して声が裏返る。

 巧汰は今まで、ベンチ入りはするものの、ずっと玲央の休憩専用リザーブ要員だったからだ。当然不服であっただろうし、自尊心も傷付けられただろう。彼が嫉妬と不満だらけだったのは周知のことだった。

 玲央にしてみれば、FWの取り合いで突っかかってきたヘタクソの口から出る言葉ではなかったのだ。

 巧汰は、玲央の予想を上回る驚きっぷりに思わずぷっと噴き出した。

「いや、あのさ。良い意味で言ってんじゃないから。俺はお前のこと嫌いだし、お前もそうだろ? 俺が欲しいのは、全国ベスト4くらいに入れる強豪クラブチームでプレイしてましたっていう『実績』だけなんだよ。そのためにも、玲央がいなきゃって思ってるだけ」

 サッカーに関してだけは向上心しか持っていなかった玲央は、彼の考え方にますます混乱した。

 しかし、巧汰の計算高い腐った性根と不真面目さに腹立たしさを感じつつも、それが犬猿の仲と言われる巧汰なりの自分への励ましの言葉のように思えた。

「そんなだからずっと控えなんだよ、お前……」

 玲央がボソッと吐き捨てると同時に、練習再開の号令が掛かる。巧汰は玲央に軽く手を上げて、芝生の中央へ走っていった。



『今練習終わった。迎えに来て』

 玲央は母親にメッセージを送った。普段ならチームメイトと一緒に自転車で通っているのに、いちいち家族を呼ばなければならないのが面倒だし照れ臭い。

 球技場外のエントランスにある階段に座って家族の迎えを待つ。みんなはもう全員帰ってしまい、コーチもさっき車で出て行ってしまった。暇つぶしにスマホのゲームアプリをタップした直後、背後から玲央を呼ぶ巧汰の声がした。

「おぅ……。帰ったんじゃねーの?」

 玲央は一瞥だけしてすぐにスマホに視線を戻す。巧汰は玲央の隣に腰を落としてきた。鬱陶しく思ったが、何も言わずにゲームを始める玲央。

「あのよぉ、玲央。これ、人に聞かれちゃマズイ話だからお前が一人になるのを待ってたんだけどさぁ」

「……」

「俺の父さんの知り合いに、世界的に有名なすっげースポーツ医が居るんだよ。そんでさぁ……なあ、聞いてる?」

「……おぅ」

「そんで、お前の怪我のこと話したら、ジンタイナントカなんかすぐ治せるから診てくれるってよ。『タダ』で。どうする?」

 玲央は一瞬ゲームをしている手が止まった。が、

「……別に。いらねぇよそんなん」

と小声で返した。

「そっか!」

 巧汰はさっと立ち上がって尻の汚れをパンパンと叩き落とす。

「お前が俺のことを『キッショ』って思うのは別に構わねぇよ? でもさぁ……。あーあっ。お前は夢の全国大会に出られて上位を目指せる、俺はそんなお前に寄生虫して、強豪チームのメンバーだったって経歴付けて私立中学の推薦ゲット。みんなが得する良いことずくめの提案だったんだけどなぁ。じゃあなー。さっきの話、全部ナシで」

 巧汰は玲央に背を向けたまま手を振った。

 スマホからゲームオーバーのBGMが流れた。玲央の手は巧汰の話の途中から止まっていた。玲央は膝の痛みを堪えながら立ち上がって言った。

「俺、どうすればいいんだ?」

 巧汰は振り返ることなく、口元をニヤリと緩ませた――。



 巧汰から玲央に伝えられた計画と条件は以下の通りだ。

『診察と治療の実施はシルバーウィーク』

『治療の間は家に帰れない』

『世界的な有名スポーツ専門医の闇営業になるから、家族や知り合いにこのことを話してはいけない。バレるとヤバイ』

『スマホは置いてきて、置き手紙も禁止』

『家族は心配するだろうが、巧汰の父が上手くやってくれる』

『連休初日の夜中にこっそり家を抜け出して神社の裏参道で待ち合わせする。巧汰の家の車が迎えに来る』

 怪しさしかない提案だったが、サッカー馬鹿の小学生のオツム、しかも、目の前には「全国大会出場のための怪我の完治」という美味しい餌が釣り下がっているときたら、玲央が疑念を抱くことはなかった。


 高級車の後部座席には、玲央と巧汰が越し掛けていた。

 運転手は巧汰の父親ではなく、巧汰の家が雇っている秘書だった。玲央は、巧汰の家が政治家や官僚、大企業の偉い人だらけだったのを思い出した。だから、巧汰が言うように世界的なスポーツ専門医とも知り合いだということに疑いを持たなかった。相変わらず、いけ好かない嫌味な奴だとも思った。

 玲央と巧汰は、これまでのわだかまりをほぐすように長い時間話をしていた。

 車窓から外を見ると、車は高速や大きな国道を通らずに裏道ばかりを選ぶように走っている。そしていつの間にか街明かりは消え、真っ暗な山道を進んでいるようだった。

 かれこれ三時間近く車に揺られ、さすがに不安に感じ始めた頃、突然目の前に大きな病院のような、工場のような建物が現れた。ゲートには巧汰の苗字が付いた有名製薬企業の研究所と書かれている。

 それを見た瞬間、玲央はその会社のテレビCMを見るたびに嫌な気分になっていたことをふと思い出した。


 車から降ろされると、それまで一緒に語り合っていたのが嘘のように、あっさりと巧汰と別れた。

「それじゃあ、玲央の怪我が治って〝生まれ変わったら〟会いに来るよ」

 玲央は不可解な巧汰の言葉に疑問も持たず、施設の中に通される。白衣を着た男から「今夜はもう遅いから診察は朝から始めよう」と言われ、治療準備に必要だという注射を一本打たれて寝かされた。


 翌朝、玲央は夢精していた。

 驚く玲央だったが、これが二回目だ。自慰行為はしたことがないが、十二歳なりの性知識は持っている。それに、これが恥ずかしいことだということも何となく理解しているようだった。慌ててトイレに駆け込み、性器周辺とパンツに既に染み込んでしまった精液をトイレットペーパーで拭き取る。

 トイレから出たとき、自分の違和感に気付く。頭がぼんやりしているのもあるが、

装具無しで普通に歩いていたのだ。怪我の痛みもわずかに感じる程度になっている。昨晩の注射の効果だろうか。

 それともう一つ。

 ついでに小便も済ませたはずなのに、朝勃ちが収まらない。普段ならこれですぐに縮こまる。でも股の間の少年のペニスは、先端は半分包皮を纏いながらも、痛いくらいに血管を浮かび上がらせて勃起し続けていた。

 部屋に戻ると医者のような人に連れられて、朝食を取る。変な味がするシリアルだった。その後、医務室のような、手術室のような……実験室のような部屋に連れていかれる。そこで玲央は全裸にされて身体検査を受けた。そして、昨日と同じ注射をされて部屋に戻った。

 部屋で一人になると、玲央の中の違和感が膨らんでいく。

 玲央には白衣の男たちが医師のようには見えなかった。そしてここも、さっきの部屋も、医療施設と言うより何か実験施設に近いもののように思えた。

 白い天井の一点を見つめながら考え事をする。無意識に玲央はもぞもぞと自分のペニスを握っていた。日常でもよくあることだったが、何故か今日はその手を止められない。

「んっ……、はぁはぁ、んんっ!!」

 息が上がる。

 と同時にしびれる様な感覚が脳天をぶち抜くと、右手に生温かい感触が伝わってきた。玲央は初めてオナニーをしたのだ。とても気持ちが良かった。しかし一度の

射精では満足できず、数回射精を繰り返してから再び眠りに就いた。


 夕方になって、また男たちがやってきて玲央を実験室に寝かせて体のチェックをした。そして、例の注射だ。

「あのぅ……。俺の足は診ないんですか?」

 思い切って尋ねてみるが、男たちは曖昧な愛想笑いで玲央の言葉を誤魔化している。遠くの男から「健康で良い実験体が手に入った」というような言葉が一瞬聞こえたが、何か知らない専門用語の聞き違いだろうと思い、服を着て再び部屋に戻る。

 朝だけかと思っていた変な味がするシリアルが夕食にも出された。そしてその翌日も続けて、三食すべてがこのシリアルだった。


 四日目になった。

 朝と夕方に身体検査と注射。不味い薬のようなシリアルを三食与えられ、部屋では自分ではもう止められないオナニーをするだけの日が続いた。一向に足の治療の話が出てこない。明日で連休が終わって学校が始まるので、そろそろ迎えが来るはずだ。

 しかし、不思議なことに足の痛みはもう全く無くなっていた。自分が怪我をしていたことすら忘れるほどだった。個室内に設置されているシャワーブースの鏡を見ると、自分の体が妙に筋肉質になっているのに気付いた。勘違いなどではない。友人同士でふざけ合って筋肉を見せつけ合っていたときの、わざと力んだときのような体つきだった。

 玲央はここが製薬会社であったことを思い出す。

「手術などではなく、怪我の治りを早め、体の機能を上昇させるような投薬で体を治していたのだ」と考えた。

 しかし、翌日になっても、翌々日になっても迎えは来なかった。

 足はもう治っているはずだ。白衣の男たちに食いついて質問しても、相変わらず誤魔化された。

 もう学校は始まっている。業を煮やした玲央は、ついに語気を荒げて男に食って掛かった。だがすでに、玲央は自身の異様な行為にも気付けずにいた。

 こうしている間もずっとオナニーをし続けていたのだ。それをおかしいとも恥ずかしいとも感じることなくだ。

 玲央の足には溢れ出した精液が糸をひくように垂れ流れていて、彼が歩いた床には点々と固形状になり黄色味がかった濃い精液が落ちている。


「調整強化はもういい頃合いだろう。次の段階に移る。連れていけ」

 突然、さっきまでのらりくらりとした態度だった白衣の男が語気を荒げる。

 目の前にいた男がそう言った直後、首筋にチクリとした痛みが走った。次の瞬間、玲央は膝を落とす。意識はあるが体が動かない。麻酔なの……か?

「やめ……ろ、なに……すんだ……よ……」

 必死に叫んだつもりだったが、喉からは呂律の廻らないかすれた言葉が虚しく吐き出された。

 玲央は脇を抱えられ、実験室の奥にある手術台の上にうつ伏せで拘束された。

「なに……を……」

 男たちは玲央の言葉を一切無視し続けて作業を始めた。白衣の一人が玲央の背骨に沿って位置を決めてマジックのようなもので印をつけていく。そして、天井からそこを目指して鋭い何かが降りてくるのが見えた。キーンと高いモーター音が玲央の耳に入る。

 ドリルだ――。

 首の後ろにその先端が触れる。

「うごごごごっ、あああっ!!」

 玲央は泡を飛ばしながら悲鳴を上げる。しかし、麻酔と今までの投薬による肉体強化の影響で、重篤なダメージは受けていないようだった。

 ドリルは三センチほど玲央の肉体に潜り込むとすぐに肉から引き出され、次の印を目指す。

 ズボッ、ガリッ、ゴゴゴッ……。

 体に穴をあけられる振動が骨に伝わって玲央の脳に響く。

「ぎゃああああっ!」

 玲央の大きな悲鳴は四回響いた。

 背中は溢れた血と血飛沫で赤黒く染まり、ヒクヒクと体を痙攣させている。続けて開けられた穴に何かの弁がインプラントされていく。白衣の男たちはそれを「遺伝子改造注入弁」だと言っていたが、玲央にそれを聞き取る余裕はなかった。

 見悶える玲央を気遣う素振りも見せず、彼らは作業を続けた。

 インプラントされた弁に、ケーブルが挿し込まれる。

「うぐっ!」

 一つ接続されるたびに、玲央は唸る。ケーブルから伝わる電気信号と脊髄の神経が接続され、玲央の体のコントロールは完全に乗っ取られた。拘束具が解かれ、ケーブルに繋がったまま隣にある巨大なガラスのケージに投げ込まれるように移動させられた。

「遺伝子改造液、注入を開始」

 ケーブルから玲央の体に、煮えたぎるような感覚の緑色に光る液体が注入された。

「ひっぎゃあああっ!!」

 それはドリルで体に穴をあけられた以上の苦痛を玲央に与えた。体の内部から破壊されるような衝撃がケーブルから玲央の体全体に広がっていく。意思とは無関係にビクンビクンと体を大きくを痙攣させた。


 玲央は意識を失った。


 しかし、しばらくして全身の激しい痛みと苦しみに意識を取り戻す。そしてまた、激痛に意識を失う……。それを何十回、何百回と繰り返す。

 次第に苦痛に慣れてきたのだろうか、玲央は意識を保ったまま気が付く回数が増えてきた。相変わらず体の内部から骨が、筋肉が、組織が軋むような痛みが襲い続ける。

 玲央が朧な視線で体を見ると、自分の手には鋭い爪があった。また次に目覚めた瞬間には獣のような体毛が全身を覆い始める様子が。そして別の瞬間には手の感触から顔面の形が変形しているのを感じた。

 玲央は既に時の流れを感じられなくなっていた。もう何日も、いや、もしかしたら何十日も、変化していく肉体の苦痛を与えられ続けたのかもしれない。


 また、玲央が目を覚ました。

 強化ガラスの向こうに、見知った顔があった。

 玲央は全身の血液が逆流するような怒りにカッと目を見開く。

「ごうだああああーーーっ!! おでを……だまじだなぁああっ!!!」

 地の底から響くような玲央の叫びに瞬き一つせず、目の前の巧汰は玲央の知ったあの嫌味な笑みを浮かべていた。

「ははは。お前すっかり変わっちまったなぁ。父さんがさあ、人体実験に健康で頑丈な若い成長期の人間を欲しがってたんだよ。最初は無戸籍のガキでも使うかって話してたんだけど、そんなあのとき、玲央の怪我の話をしたらトントン拍子でお前に決まっちゃってさあ」

 玲央はびくともしない強化ガラスを引っ掻き、殴った。

「あ、そうそう。今日はお前に『お礼』を言いにきたんだったわ」

 そう言うと、白い紙切れをガラス越しに押し当てた。

「全国大会、俺たちは四強入りだったんだぜ。お前が地区大会で勝ってくれたおかげなんだぞ。んでさ、俺、サッカー名門の青海学園中等部からスカウトがきて、中学推薦もらっちゃったよ。これ、入学通知。ありがとな、玲央。あはははっ!!」

「ごうだああああっ! ごろず、おまえ、ぜったいゴロスゥ!!」

「うるせぇな、腰振ってろよケダモノ。全身精子だらけでキッショいこと言うなよカス! そんだけだから、じゃあなっ!」

 巧汰は踵を返すと、玲央の顔も見ずに手を振った。玲央がよく知る仕草だった。

 巧汰は扉を出てあと、再び顔だけをこちらに覗かせた。

「気が向いたらまた見に来るわ。次はお前の体、どんなカタチになってんだろうなぁ」

 冷たい建物に響く巧汰の笑い声が遠ざかっていった。



 その後、約束通り数年おきに巧汰は玲央に会いに来た。

 U-15大会の準優勝のメダルを見せびらかしたり、またその数年後には高校サッカーの優勝メダルを見せたり、プロからスカウトが来たことも話した。

 だがその頃には、玲央の脳は委縮し始めて巧汰の言葉が通じているのかも怪しかった。ライオン七割、玲央少年の面影が三割の逞しい筋肉ダルマ獣人と化したそれは、野太い唸り声を上げながら擬牝台に腰を振って射精する完全なケダモノになっていた。

 動物の力を取り込んだ強化人間を製造するという、企業の実験自体は成功だったようだ。玲央はその貴重な資料として観察・研究材料となっていた。今度は知能を失わせずに人体を強化する問題を解決する目標が新たに掲げられていた。


 巧汰は玲央の悔しがる惨めな姿が見られなくて残念に思った。ガラスケージに額を付けて、言葉が通じなくなった「親友」に話しかける。

「安心しろ。親父の会社を継いだら、お前は俺のペットとして死ぬまで面倒をみてやるよ」

 ケージの中のケダモノは研究用の精液採取に没頭し、その言葉に少しの反応も示さなかった。


(了)

【背景・効果ナシ差分】

【玲央くん改造前】





いつもご支援いただきありがとうございます!

以上、Skebのご依頼でした。

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