「んんっ……んぐうっ……!!」 何度動かしても、ミチミチという革が軋む音しかしない。 手を後ろに回されているのでよくわからないけれど、両手首に何か革のリストバンドみたいなもので縛られているのは間違いない。 こんなことを繰り返してどのくらい経ったのかな? 朝起きたときにはこんなことになるなんて思わなかったよ。 学校に登校する途中、人気のない路地でいきなり後ろから口と鼻を塞がれて、何か薬を嗅がされたんだった。 そして気付いたらこんな倉庫の一室に監禁されちゃってた。 「むううっ……んおぉう……」 そして、私を苦しめているものは後ろ手縛りだけでなく、顔の下半分にピッタリと貼り付いたマスクだ。 革の酸っぱい臭いと口の中にこれでもかと詰め込まれたマスクの裏に付いたボールは、私の言葉と呼吸を厳しく制御している。 このマスクのせいで藻掻けば藻掻くほど酸素を失い、体力が奪われる無限ループに陥ってしまっている。 (なんで……なんで私がこんな目にあわなきゃいけないの?ただの女子高生なのに……) 喋れない私は心の中でそう呟く。 なぜ誘拐されたのか? なぜ自分なのか? 誰が誘拐したのか? 何もわからないまま誘拐され、監禁されて時間だけがただ過ぎていく虚しさ。 「んむう?」 目から何かが溢れ落ちた感触。 おそらく涙だろう。 「ううっ……んううっ……) (お願い……誰か……) 誰に伝わるでもない言葉をマスクの下から漏らす私。 自分の言葉にならない声を聞いた私はどうにもならない悲しさでいっぱいだった。