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狙われた純真~プロローグ~

「あのっ…これ…」  とある駅のホーム。  女子高生が自分より少し年上の男性に声をかけた。 「じ、自分ですか…?」  一瞬驚いたような顔をする男性。  手入れされていない伸び放題のぼさぼさの髪に黒縁眼鏡を掛けた男性はお世辞にも清潔感があるとは言えない容姿をしている。 「そうです。ポケットから落ちましたよ。定期入れみたいだったから、これがないと大変なことになるんじゃないですか?」  男性に定期入れを渡す女子高生。  黒髪のポニーテールにシャツをきっちりと着こなした姿は清潔感に溢れ、真面目そうな印象を与える。  特徴的な奥二重の目に整った鼻筋からして中々の美少女である。  定期入れを落とした男性とは対照的な雰囲気と容姿だった。 「あの……あり……ありがとう…」  挙動不審な様子で女子高生から定期入れを受け取る男性。  その様子から明らかに女性との接し方に慣れていないことがわかる。 「どういたしまして…学生証が定期入れに入っていたんですけど、東仙大学の学生さんなんですか?」  挙動不審な男性の態度を気にもしない様子で気さくに話しかけて来る女子高生。  今までそんなことをされたことが無かったのだろう。  目を合わせず、軽く頷く男性。 「そうなんですか。ということは化学系の研究してるんですよね。すごいな。」  屈託のない笑顔で話しかけてくる女子高生。 「私、清南女子高の青山友佳理(あおやまゆかり)って言います。」  簡単な自己紹介をした後、ぺこりと頭を下げる友佳理。  この男性のような挙動不審な人間にもきちんと自己紹介をするあたり、元々しっかりしている性格なのだろう。 「あっ…僕は…」  それにつられて何か話しかけようとする男性。 「あっ…ごめんなさい。実は乗る電車のホームが別の場所なんですよ…もうすぐ電車来ちゃうし失礼します!」  そう言うと別のホームに続く階段に向かって走り出す友佳理。  その走り去る後ろ姿を男性は暫く目で追っていた。 「青山…友佳理ちゃん…か…」  先ほど聞いた友佳理の名前を呟く男性。  思えばあんな可愛い娘に話しかけられることは今までなかった。  昔から実験や化学ばかりしてきて女子との会話はおろか、同性の友人もおらず、物心ついた時から女子には「キモイ」だの「陰険」と言われ続けてきた彼にとって女の子に優しくされたのは初めてのことだった。 (友佳理ちゃん、すごく可愛い…また話してみたい…)  男性の心の中でまた友佳理と会いたいという気持ちがどんどん強くなっていく。  でも自分のようなコミュニケーション障害とさえない容姿の男が振り向いてもらえるはずがない。 「どうすれば…」  まともに女子と目を合わせることすらかなわない自分にはどうすることも出来ないという諦めの気持ちもある。  それでも友佳理の顔が浮かび続けて頭から離れない。 (そうだ…この方法なら友佳理ちゃんと2人きりになれる…)  男性はふと思い浮かんだ考えににんまりと笑みを浮かべた。

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