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登場キャラ【九条凛】 あらすじ:目を覚ますと真っ白い謎の空間に閉じ込められていたリトと凛。そこは『お題をクリアしないと出られない部屋』で、二人は仕方なく出されたお題に従うことにする。だが、そこにもう一人の参加者が現れる……。                                                                                                                          ーーーー。  ーーーーーー。  ーーーーーーーー。 「…………あれ?」  ふと目を覚ますと、リトは見知らぬ空間に立っていた。  学校の教室より少し狭いくらいの、一面真っ白の壁で囲まれた空間で、部屋の中央には天蓋付きのベッドが置かれている。  壁の側面に窓は無く、外の様子は伺えない。いや、それどころか外との出入りをする扉のような物すら見当たらない。 「……どこだ、ここ?」  リトは不安を覚えながら、辺りをキョロキョロと見回す。  いきなり見覚えの無い場所で目を覚まして、出口も無いときたのだ。不安になるのは当然だろう。  だが、その不安が恐怖に変わるよりも前に、新たな異変が起こった。  ーー突然リトの側に、シュンッと人影が現れたのだ。 「おわあっ!? な、なんだ……!?」  思わず飛び退いて、人影と距離を取るリト。  しかし、現れた人影の正体を見て、彼はすぐに落ち着きを取り戻した。それが、リトの見知った人物だったからだ。 「……え? 九条……先輩……?」 「君は……結城リト?」  そう、突然部屋に現れたのは、長い黒髪ポニーテールに、意思の強さが現れた切れ長の眼。凜々しい顔立ちのクールな雰囲気の少女。リトの通う彩南高校の3年生、九条凜であった。  彼女は天条院沙姫というお嬢様の付き人で、出会ってしばらくはララ達に対抗意識を燃やす沙姫と共に、色々と諍いがあったのだが、以前あったとある事件の後は、リトとも親しい間柄になっている。  一人で困惑している所に年上の女性である凜が現れ、少し安堵するリトだったが、凜もまた突然の出来事に戸惑っている様子だった。 「なんだここは……? どうして君がいる?」 「いや、俺も分かんないんですよ。気づいたらここにいて……」 「そう、なのか……? 私はてっきり、またお前の所の子達が何かやったのかと思ったが」 「あ……まぁ、それはあり得ますけど……」  先ほど凜が突如現れたのは、手品などでなければ地球上の科学ではあり得ない挙動だった。  ララの発明品などの、異星人の技術だというのは妥当な推理だろう。 「えーっと、ララ、いるのかー? それか、モモー? いたら返事してくれー!」  部屋中に聞こえるよう呼びかけてみるが、返事は無い。  これではどうしようもないと、リトと凜は顔を見合わせた。  しかし、返事は無かったが、リトの呼びかけがきっかけなのか、部屋の壁の一部が、突然黒く変色した。 「ん?」 「なんだ……?」  黒く染まった壁。だがそれは、よく見るとプロジェクションマッピングのように、そこへ映像が投影されているのだと分かった。  黒い映像画面に二人が注目していると、その画面にパッと文字が表示された。    ――『お題をクリアしないと出られない部屋』――    画面には、大きくその文字だけが映し出された。 「……え?」 「……は?」  その文言を読み、リトと凜は揃って間の抜けた声を発する。 「お題をクリアしないと……」 「出られない部屋……?」  表情された言葉を復唱し、二人は同じように首を捻った。 「なんだそれは……。いや、言葉の意味は分かるが……」  凜は溜息を吐いて呟く。  リトもまた、おかしな状況になってしまったことに頭を掻く。  やはり、誰かの悪戯なのだろうか。それも、宇宙人の誰か。  恐らくララかモモ辺りの仕業だとは思うが、もしかすると悪い宇宙人に捕まったという可能性も捨てきれない。  どちらにせよ、この部屋に閉じ込められてしまったというのは確かなようだった。  そうしていると、画面に表示された文字が切り替わった。  ――『あなた達はこの部屋から出ることは出来ません。もし出たければ、これから出されるお題をクリアしていってください。お題は5つあります。制限時間はありません』――  どうやらルール説明らしい。まるでアトラクションのようだが、実際に訳も分からないまま監禁されているリト達からすると、それを楽しんで読む余裕などはなかった。  制限時間が無いということは、このままではいつまでも監禁され続けるという可能性が高い。 「なんか、ホントにお題ってのに従わないと出られないっぽいですね」 「誰だこんなことをしたのは……ふざけているな。まったく……で、お題とはなんだ」  凜が尋ねると、画面に追加の文章が表示された。  ――『第一のお題は、【二人で10分間抱き合う】です』―― 「なっ……!?」 「は……っ!?」  その表示された文章を読んだ瞬間、二人は揃って固まった。  そして、数秒間その言葉を頭の中で反芻してから、凜が慌てて声を荒げる。 「お、おいっ! なんだそれは!? なぜ、そんなことを……!」  が、言ってから言葉を詰まらせ、隣のリトを見る。 「あ……別に、嫌という訳では無くてだな……。その、なぜそんなことを強制させるのか、意味が分からないということで……」 「い、いや、俺も意味不明だと思いますよ。そんなことさせて、なんの得があるだよって。まぁ、ふざけてるだけにも思えますけど」 「うむ……。犯人の思惑は分からないが、私達で遊んでいるのは間違いないな」  自分たちを監禁している相手にどういう意図があるのかはまるで想像が付かなかったが、分かっているのはお題をクリア出来れば外に出られるというルールだけだ。  ならば、素直にお題に従うしか選択肢は無いのだが……。 「……で、するのか?」 「へ……?」  凜がそう尋ね、リトは思わず気の抜けた返事を返した。何を? とは聞くまでもなく、お題のことだろう。  意識しないようにはしていたが、密室に男女二人きり、それも凜のような美人と一緒となれば、健全な男子ならば誰でも浮ついてしまうシチュエーションだ。  その上、二人で抱き合えなんていう命令を受けては、リトでなくとも赤面してしまうだろう。 「えっと……そうしないと出られないっていうなら、仕方ないですけど……。でも、先輩はいいんですか?」 「わ、私か……? 私も、その……別に構わないが。し、仕方ないことだしなっ? うん。10分程度なのだし……」  リトと凜は、互いに視線を逸らして、しどろもどろに言葉を交わす。  凜の方も、年上とはいえ年頃の乙女なのだ。親しい男子と二人きりで、ドキドキしているのが伝わってきた。  そういった、初々しい男女の反応でも眺めるのが目的なのだろうか? だとすればあまり良い趣味とは言えない。 「だから、まぁ……してみるか? ほら、こっちに来い……」 「は、はい……」  リトは躊躇いながら、凜の方に向き直る。  やはり、改めて見ると凄まじい美人だ。リトの周りには美少女が多いが、その中でも凜はクールで大人びた印象があり、同年代や年下とはまた違った魅力を帯びていた。  その凜が顔を赤らめて自分を見つめる姿に、リトは思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう。  お題で命じられたのは、ただしばらく抱き合うだけだ。その程度ならば大したことは無いし、それ以上何かするつもりもない。  だが、彼女の鍛えられ引き締まった身体や、それでいて女性らしい膨らみにも富んだ胸元や、美しい顔をゼロ距離で感じ、理性を保てる自信はない。……いや、勿論暴走するつもりも無いが。  とにかくここから脱出するためにはお題をクリアするしかないと、リトは意を決して凜の方へ近づいた。  だが――。  ピコンッ、と、不意にお題を映した画面から音が鳴り、二人はハッとそちらを向いた。  ――『お題はベッドの上で行うように』――  画面には端的にそう記されていた。  その場で二人が抱き合ったとしても、クリアにはならないということだろう。 「ベ、ベッドの上でか……!? それは、なんというか……マズイと思うのだが……」  ベッドで上で若い男女が抱き合っているなど、絵面的には、明らかにこれからそういうことを行うという場面にしか見えないだろう。  それを意識し、二人はまた躊躇し、動きを止めた。 「くっ……そのためにベッドが用意されていたのか」 「……でも、しないと出られないですよ」 「わ、分かっている……っ。場所なんて、どこだろうと関係ない。問題は、気持ちの方だ……」  ふー……と息を吐き、凜は気持ちを落ち着けている。リトもそれに倣い、細く息を吐く。  大丈夫。凜は理知的な女性だし、自分が冷静になれば間違いは起こらないと、そう自分に言い聞かせる。  そうして、リトと凜はベッドの方へ向かおうとしたのだが……。  再び画面の映像が変化し、別の文章が追加された。  ――『お題を行うのは、三人の内男女一人ずつです』―― 「は……? 三人……?」 「どういうことだ? ここにいるのは、私と君の二人だけじゃ……」  そこまで言った所で、凜は言葉を噤んだ。  理由は単純。その三人目が、今部屋に現れたからだ。  先ほどの凜と同様に、一瞬にして現れた人影。  だが、そのシルエットは、凜とは似ても似つかない丸く太い物だった。 「おや、ここは……?」  丸々と太った体型に、クワガタのように尖った髪型とサングラスで隠した目元。  その人物は、見間違いようもなく、リトと凜の通う彩南高校の校長だった。 「校長……先生?」  新たに現れた人物を、リト達は困惑の表情で見つめる。  なぜ校長が……。まぁそれを言うならば、なぜ自分達が選ばれたのかも不明瞭なのだが、それにしても意外な人物だった。 「んん? 君たちは……結城くんに、九条凜さんじゃないですか」 「校長先生、これはその……なんと言うか……」  凜が校長に現状説明をしようとするが、どう言えばいいのか迷っている。  校長もまた、いきなり謎の空間に飛ばされて、何がなんだか分からないでいる。――はずなのだが。 「ふむ? ふむふむ……」  校長はお題が表示された画面と二人を交互に見つめ、なにやら納得したように頷いた。 「ふ~む、なるほど……。どうやら私達はこの部屋に閉じ込められたんですな。そして、お題通りにしなければここから出られない、と」  理解が早い。それはいいのだが、問題はお題の内容だ。  お題は三人の内二人、男女で行えということは、凜とリト、あるいは凜と校長のコンビになって行えという意味になる。 「なるほど分かりました。そういうことならば、私も脱出に協力しますぞ!」 「いえ、あの校長先生……お題は我々で行いますので、校長先生は休んでいて貰えば……」  謎のヤル気を見せる校長に、凜が言う。  脱出のためならば命令に従うのは仕方ないと納得していたが、あの校長が相手では、流石に凜も躊躇いがあるようだった。 「大丈夫です! あそこに書いてある、10分間抱き合うというのがクリア条件なんでしょう? そういうことならわしにお任せください! 女の子と抱き合うのなら大得意ですぞ!」 「いつも一方的に抱きつこうとして、ヤミとかに殴られてるだけだろアンタは……」  思わずリトも突っ込みを入れてしまう。  校長にとっては、謎の空間に閉じ込められたことよりも、女の子に抱きつけることの方が大事らしい。 「流石にこの校長には任せられないな……。やっぱり、俺がやります。それでいいですか、先輩?」 「あ、あぁ……。そうだな、私も……結城なら安心だから……」  校長を置いて、リトと凜はベッドの方へ行こうとする。  だが、校長は納得していないようで、リトを呼び止めた。 「待ちなさい結城くん! わしだって九条さんをぎゅ~ってして、すりすり~ってして、むちゅ~ってしたいんですぞ!」 「そ、そんなことまでは書いていないだろう!」 「なんだよむちゅ~って……」  いったいこの校長の頭の中ではどういう想像が拡がっているのか……。  呆れるリトだったが、その時また壁に映し出された映像の方から、ピコンッと文章の追加を示す音が鳴った。  ――『お題を実行する男性はくじによって決まります。くじに当たりと書いてあった方が実行者です』―― 「くじ……? そんなもんどこに……。……あっ」  リトが周囲を見回すと、いつの間にか近くに机が一つ出現して、その上に小さな箱が乗っていた。  どうやら、その箱の中にくじが入っているらしい。 「マジかよ……」 「おおおおっ! このくじで当たりを引けば、わしが九条さんと……ムフッ、ムフフフッ!」  校長はくじを引く前から鼻を鳴らし、当たった後のことを妄想して笑っている。  その様の気味悪さに、凜は嫌そうに顔を引き攣らせていた。 「私の意思は無視か……。だが、どうせ言う通りにしないと出さないんだろう? ならば、致し方なしか……」 「いいんですか、先輩?」 「まぁ正直あの校長と10分も密着するなんて嫌だが、しばらく我慢すればいいだけだ。……それに、結城が勝てば問題無い」 「いや、そうかもしれませんけど……」  リトが勝てば問題ないと言ってくれるのは嬉しいが、相手はあの校長だ。  明らかにセクハラする気満々の男に、凜の身体を任せることなんて出来ない。  勝ち負けというのはおかしいかもしれないが、なんとしても勝たなければいけないとリトは思った。  そうして、リトは校長と共にくじを引くことになった。  机を挟み相対するリトと校長。 「楽しみですな~。天条院さんの身体も良いですが、そのお付きの九条さんも良い身体してると前々から思ってたんですよ! その身体を触り放題なんて、これは凄い役得ですぞ!」 「まだ当たってないだろ……。ていうか、生徒相手に何言ってんだよ」  やはり、こんな男に凜の身体を触らせるわけにはいかない。  リトは、意を決して机の上に置かれた箱の中に手を入れた。  そして、箱の中に2つ入っていたくじの内、片方を選んで取り出す。次いで校長も同じようにして残ったくじを引く。  たった2つしかないくじなので、一人が引けば結果は分かるのだが、そこは一応確認の意味も込めて二人で同時に引くことにした。  二つ折りにされ、ホッチキスで止められた紙のくじ。人を密室空間に飛ばす技術に比べ、随分とアナログだが、だからこそ不正は見られない。  それを、リトと校長は同時に開く。 「どれどれ~……」 「…………」  校長はわくわくしながら、リトは内心ドキドキしながら、くじを開いた。  そして……。 「…………っ」 「……ぬおおおおおおお!!」  リトはすっと息を吸い。校長は紙を持ち上げて吠えるように声を発した。 「ど、どうなんだ……!?」  その姿を心配そうに見つめる凜の前で、リトがぐっと拳を握った。  それと同時、校長が膝から崩れ落ちる。 「……ヨシッ!」 「な、なぜええええええええええ!!!」  ガッツポーズを取るリトと、絶望の雄叫びを上げる校長。それだけで、くじの結果は一目瞭然だった。 「当たりました、先輩!」  言って、リトが赤い文字で「当たり」と書かれた紙を凜に見せる。  それを見て、凜はホッと胸を撫で下ろす。 「お、おぉ……そうか。よかった……」 「うううぅぅぅ~~……九条さんとラブラブちゅっちゅしたかった……」  安堵する凜とリトを他所に、校長はサングラスの下から涙まで流し、しくしくと下を向いていた。  校長には悪いが、そのまま大人しくしていて貰おう。リトは校長を置いて、凜の元へ向かった。 「ありがとう、結城リト。君のおかげで、アレに身体を弄ばれずにすんだ」 「はは……。どういたしまして?」  アレとは随分な言い草だが、厳格な性格の凜からすると、不埒な狼藉ばかり働いている校長はやはり嫌悪の対象であるようだった。  まぁ……リトが言えたことでは無いのだが、リトの方は一応嫌われていないようだ。 「ふぅ……じゃあ、行こうか?」 「え、あ……ハイ」  結局先程と同じ状況に逆戻りし、二人はお題に従うべくベッドへ向かった。  天蓋付きの、真っ白で高級そうなベッド。  その柔らかいマットレスの上に、凜は靴を脱いですっと腰を下ろした。  そのまま横になれば、すぐにでも眠ってしまえそうな心地良さを感じさせるそのベッドに、リトも靴を脱いで上がる。  そして二人は、ベッドの上で正座になって向き合った。

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