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お豆
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 大阪に住む女子高生風間飛鳥は、持ち前の正義感により揉め事を見つけては強引に乱入し、達人の域の武術によって喧嘩を収める仲裁屋として地元では知られていた。  更に、世界最強の格闘家を決める「THE KING OF IRON FIST TOURNAMENT」にも出場したことで、最近では彼女の目の届く所で面倒事を起こそうという街の不良は殆ど居ないまでになっていた。  そんな飛鳥の元に、ある日相談事が持ち込まれた。  話を聞くと、どうやら近頃若い女性が暴漢に襲われる事件が立て続けに起きているらしく、その犯人を捕まえて欲しいとのことだった。  警察も動いているが、犯人は凄まじく腕が立つようで、捕まえようとした警官も一瞬で昏倒させられてしまったらしい。  当然飛鳥は自分の街にそのような犯罪者がいることに憤慨し、暴漢を捕まえるため立ち上がるのだった。 ◆ 「やっと見つけたで、犯人!」  深夜近く、廃墟ビルの裏路地で、快活な少女の声が響いた。  その声に反応し、暗がりの奥の影が2つこちらを向く。 「た、助けて!」  影のうちの一人が、懇願に叫んだ。  声からして、年若い少女だろう。 「任せとき、すぐ助けたる!」  風間飛鳥は、その叫びを受け止めるようハッキリと答えた。  その声には、確固たる自信と悪への怒り、そして興奮が入り混じっていた。   ここ最近女性が連続して暴行されているという事件、その犯人を遂に見つけたのだ。 「アンタが女の子襲いまくってるっていうドアホか。よくウチのおる街で、そんなことしてくれたなあ。さっさとその子離しぃ!」  飛鳥が、影に向かって怒声を放つ。  それを受け、しかし犯人と思われる人影は逃げるでも、こちらに向かってくるでもなく、女性を掴んだまま動かなかった。 「離せ……言うとるやろッ!」  叫ぶと同時、飛鳥は一気に距離を詰めた。  そして、勢いそのままに飛び蹴りを放つ。  犯人はその蹴りをすんでの所で躱したが、犯人と女性を分断するように飛鳥が2人の間に割り込んだ。  ズシャァと砂埃を上げ着地し、女性を庇うように犯人の前に立ち塞がる。 「はよ逃げえ!」 「――ぁ……ありがとうございますっ!」  女性は乱れた服を押さえ、急いでこの場から逃げ出した。  女性が逃げたのを横目に確認してから、飛鳥は正面の犯人に向き直った。 「残念やったな、あんたは逃さへんで」  拳を掌に打ち付け、逃走経路を遮るように立ち塞がる。  近づいたことで、犯人の身なりもハッキリとしてきた。  見たところ、年齢40〜50代の男性だ。  身長は女性である飛鳥より少し高い程度。太めの体型で腹も出ているが、その分十分な筋量も備えていそうだった。  獲物を逃されたというのに不敵にニヤつき、こちらを観察している。  彼は飛鳥の全身を舐めるように睨め回すと、ぐふぐふと漏らすように笑いだした。 「なんだなんだ、急に誰か来たかと思ったら、すげえ上玉が転がり込んできたなぁ。こりゃあ今日はツイてるツイてる」 「なに言うとんやおっさん? アンタはウチが捕まえるんやから、運はとっくに尽きとるわ!」 「へぇ、嬢ちゃんが俺を捕まえるって? そんなカワイイ顔して、そんなこと出来るのかい?」 「ウチを誰や思てんねん、風間流の風間飛鳥やで! カワイイとか褒めたって、手加減はせんからな!」  飛鳥はビシッと男を指差し、声を張り上げて名乗った。  その名を聞き、男の目の色が変わる。 「……へぇ、風間飛鳥……聞いたことあるなぁ。この辺で喧嘩があると出しゃばってきて無理やり仲裁してくるって有名な女かい。それがこんなかわいい女の子だったなんてねえ」 「分かったら無駄な抵抗はせんと、大人しい捕まっとき。痛い目見たくなかったらな」  しかし、飛鳥のことを知ってなお、男は観念する気は無いようだった。 「おじさんも力には自信あるからねぇ、いくらお嬢ちゃんが強くても、所詮は女は女。本当に強い男には敵わないってことを教えてあげるよ」  女性をナメるような発言に、飛鳥の眉間に皺が寄る。  男は「それに……」と続けて不快な笑みを零した。 「お嬢ちゃん、すごくエロい身体してるし、是非おじさんの相手もして欲しいねぇ」 「ど、どこ見とんねん!」  男のいやらしい視線に気づき、飛鳥はバッと自分の胸を隠した。  だが、すぐにそんなことをしている場合ではないと思い直し、拳を握り込んで、ぎゅうと力を込めた。 「アンタみたいな女の敵は、ウチがシバいたる!」 「いいよ、シバけるならシバいてみても。でももしおじさんと闘って負けたら……そうだなぁ、一日デートでもして貰おうかな?」 「はぁ? デートぉ?」  女性を襲っている変態という話にしては随分と大人しい要求に思えたが、その要求を言葉通り受け取るのも危険だろう。  実際のところ、負ければ何をされるかは分かったものではない。  だが。 「ハッ、ええで、ウチが負けたらデートでもなんでもしたる! その代わり、おっさんが負けたら大人しい捕まるんやで!」  飛鳥は臆すことなく男との勝負を受けた。  武道家として、女として、こんな人でなしの男に臆すことはプライドが許さなかったのだ。  かくして、飛鳥と男は暗い路地裏で対峙した。

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