pixivやノクタ以外で単発で発表したもののリメイクなので、完全新作と言っても良いでしょう。
街灯が点々と続く路地を、スーツ姿の女が行く。ミディアムボブの、体型にはあまり起伏がないが、お尻は大きめ。名を|藍香《あいか》という。女は両腕を挙げ、軽く伸びをしながら、
「あ゛ー……本日もお疲れ様でした、と」
そう自分に言った。見るからに普通のOLで、事実その通り。
「まったく、あのハゲ」
たいしたミスでもないものを、上司にネチネチと責められたことを思い出す。陰鬱な気分。さっさと家に帰って風呂に入って、くだらないテレビを見ながら、ご飯にしたい。
マンションまで、あと五分も歩かないところだった。不意に背後から男の、
「――あと十メートル!」
と叫ぶ声が聞こえた。
藍香はビクリと肩を震わせ、振り返る。
「な、なにっ!?」
だが、そこにはなにも見当たらない。街灯が寿命間近なのか、チリチリと瞬いているだけ。もしかしたら電柱の影にでもいるのかもしれないし、家の中からだったのかもしれない。
ともかく藍香は薄気味悪くなって、歩を早めた。
「あと八メートル!」
さっきよりも近いところから、それは聞こえた。
藍香は悲鳴をあげ、走り出す。
「あと六メートル!」
「いやぁっ!」
マンションが見えてきた。恐怖と安堵の涙が後ろに流れていく。
「あと四メートル!」
マンションのオートロックを震える指で解除する。
「あと三メートル!」
幸いにもエレベーターは一階で止まっていた。乗り込んでも、やはり声の主の姿は見えない。閉のボタンを連打連打連打。動き始めると藍香はホッと胸を撫でおろした。
が、部屋のある階に降りたところで、
「あと二メートル!」
「ぃやああぁっ!」
廊下を全速力で駆け抜ける。部屋の鍵を乱暴に開け、
「あと一メートル!」
バタンと勢いよくドアを閉めた。
ドアノブを握りしめたまま、肩で息をする。心臓は破裂しそうなほどに早かった。
「な、なんなの……なんなのよぉ……」
涙声でそう呟き、藍香は膝から崩れ落ちる。
いたって普通のOLである彼女だ。こんな目に合う理由など、あるはずもない。
強いて言えば運が悪かった。それだけだろう。
落ち着いてきたあたりで、藍香ははたと我に返った。
「で、電話しなきゃ」警察に。
藍香は変質者に追われたということにして通報したが、警察の対応としては、巡回を増やすくらいのみ。実害が出ていない以上、しかたがないし、人影を見ていないから強くも言えず、藍香は「よろしくお願いします」とだけ小さく返して電話を切った。
変質者……本当に、そうだったのだろうか。にわかに霊的な発想が頭をよぎるが、しかし、藍香は頭を振って、その考えを追っ払う。本当に怖いのは、いもしないお化けなんかよりも、人間のほうに決まっている。
「……お風呂、入ろ」
背中が冷や汗でびっしょりだ。疲れもどっと押し寄せてきた。
浴槽に湯を張り、窮屈なスーツをようやく脱ぎ捨てる。いつもなら帰って来て、すぐにでも脱ぐのだが、つい忘れてしまっていた。落ち着いたつもりでいても、まだまだ気が気じゃないらしい。
たっぷりのお湯を、ざぱぁと押し退け、一気に肩まで浸かる。藍香は「はぁ」と息を漏らし、目を瞑る。ぷかぷかと浮くような気持ち。熱がじんわりと体を覆う。今度こそ本当に落ち着くような気持ちだった。
尻を、なにかに撫でられるまでは。
「ひぃっ!」藍香は風呂場から慌てて飛び出した。
びちょびちょの足で廊下を転びそうになるも、壁に手をつく。
ちらりと振り返って見れば、やはり、なにもいない。
気のせいだったのだろうか。
変なことがあって、ちょっとしたことでも敏感になってしまっているだけなのだろうか。
「なんなのよぉ!」泣きそうな声で言って、ひとまず、体を拭かなきゃと思った。
洗面台の下のタオルを取り出さんとして、藍香はしゃがむ。
「――あと零メートル!」
あの声が耳元で聞こえ、どんと突き飛ばされた。
「やあぁぁっ!」悲鳴をあげた、そのとき初めて声の正体を見た。
影のよう――と、まず思った。人の影。いやしかし、その黒い体をよく見れば無数の短毛に覆われている。頭から爪先まで。顔に目鼻口があるのかも怪しい。藍香の腰を押さえつける掌にも、びっしりと。
「いやっ! いやぁあぁぁっ!」
毛むくじゃらの腕を必死に叩き、脚をじたばたさせようとも、奴が怯むことはなかった。
ぞり、と。不意におマンコをたわしにでも撫でられたかのような感触。藍香の背筋を悪寒が走った。指ではない。足でもないだろう。となれば、それはきっと、奴の陰茎。男根。チンポ。それすらも毛に包まれているのだ。そして、それを擦りつけてくるということは、
「やだやだやだ! 誰か、助けてぇえぇぇっ!」
藍香は浴室に向かって腕を伸ばし、床を這わんとする。少しでも前へ。そこへ逃げ込み扉を上手く閉められれば、なんとかなるかもしれない。淡い希望に縋るべく、前へ。しかし彼女の腰を掴む奴の手は微動だにしないのだった。
ぞり、ぞり。毛棒が肉襞を擦り上げる。
ぞり、ぞり。チクチクとした刺激が、あそこを敏感にさせていく。
「いやっ! やめて! お願い……やめて……! 助けてよぉ!」
嫌悪感とは裏腹に、どういうわけか股間は淫らな熱が帯びていく。
クリトリスがムクリと包皮の中で疼く。それをまた、毛がチクリと刺す。
「やだ……やめ……やめて……!」
いくら抵抗しても無駄。その事実に藍香は次第に力を失っていった。
涙を流し、震える。次に訪れるであろう悲劇の予感に、唇をぐっと噛む。
ヒクつくおマンコに、毛棒の切っ先がぐいと押し付けられる。
「いや……やめて……」小さな拒絶の声。
それがいかに無意味なものか。わからせるかのように怪物は腰を深く突き刺した。
「あ゛っ!? い゛ぃいぃぃっ!」
わずかな湿り気を帯びていた膣が、こじあけられる。ミチミチという音が聞こえそうだった。
「こんなの、むっ、りぃぃぃ!」藍香は目を白黒させて呻き声をあげた。
奴が意に介すはずもなし。無数の細かな毛で肉襞を磨くようにピストンし始める。ぞりぞり、ぞりぞり。硬い毛が襞と襞の合間にさえ|這入《はい》り込む。藍香の知らない隅々までチクチク、と。その小さな痛みに反応して、膣内は蠢いた。
「はっ、あ゛ぐ! やめてっ! たすけてぇっ!」
無意味と思い知らされた後であっても、やはり、藍香はまだ諦めきれなかった。
手足を暴れさせ、大声で叫ぶ。
「たすけてっ! 助けてぇえっ! いやあぁぁぁっ! 誰かぁあぁぁっ!」
怖かった。それによって少しでも、快感を覚えそうになっている自分が。藍香が本当に逃げ出したかったのは、その事実からだった。叫び、暴れていれば、淫らな感覚を忘れられそうな気がした。
ずりっ、ぞりっ、――どびゅっどびゅるるっ!
突然、膣内で熱いものが爆ぜた。
「ひっ?」
ドクンドクンと脈打つ陰茎を卑肉で感じ、藍香はようやく射精を悟った。
「う、うそ……|射精《だ》され……? え……?」
得体の知れないナニカに、膣を、子宮を穢された。そのことに顔を青ざめる一方、体の内はうねり、まるで喜ぶかのよう。奴が硬いままの毛棒を、ぐずりと擦ればなおさらだった。
「いや! いやっ! やめて! 気持ちよくなんか、なりたくな」
ぞりんっ――入口まで引いた一物が再び奥を突く。
「い゛んっ♥」
藍香は、自分が漏らした甘い声にハッとし、口元を手で覆う。
毛の影はさっきまでの緩やかな、あるいは探るようなピストンとは打って変わって激しい。それでいて、ただガンガン突くばかりではない。明らかに体の反応を見て調整を加えている。愛液と精液に塗れた毛棒は、そのチクチク感がややなめらかとなり、こそばゆい。精液にも、なにか媚薬めいた効果があるのかもしれない。
「んっ♥ ん゛っ♥ ふっ♥ うっ♥ んっんっ♥」
気持ちいい。藍香は脳裏に浮かんだ一語を振り払うように首を横に振る。
しかし毛棒の一突き一突きが、何度だって、その言葉を蘇らせる。
ずりゅ、ぞりゅ、ぐちゅん。尻たぶが波打つ。
「ふっ♥ んっんっんっ♥ んぁっ♥」
その尻、そして淫穴の周辺に細かな毛が刺さる。
外はチクチク、内はムズムズ。異なる刺激に藍香は悶えた。
「ん゛っ♥ んっ♥ はぁっ♥ んっんっ♥ やぁ♥ イキたく、ない♥」
心とは裏腹に肉体は少しずつ、確実に悦楽の階段を上っていく。膣道の蠢きはより活発に、クリトリスはすっかり包皮から剥けるほどに勃起している。控えめな胸に実る乳首も、ツンと|勃《た》ち、床の上をコリコリと転がる。
「はっ♥ あんっ♥ んっあっ♥」
噛み締めていた唇が次第に緩んでいく。屈辱に耐えるようだった瞳も、それとはまた別種の色が宿り始めていた。奴の腰を振る速さが更に増す。これまでに探り当て、育てあげた藍香の性感帯を、ここぞとばかりに狙う。
「あっ♥」
ひとたび高い声で鳴かされてしまえば、もう口を閉じることはできなかった。
「あっ♥ やっ♥ あっ♥ あんっ♥ はっ♥ あっあっあっ♥」
影が圧し掛かって、背中がチクチクした。上がりかけていた尻を、ぐっと押し下げられる。乳首が潰れそう。毛チンポが膣の天井をぞりぞり抉り、子宮をコツコツ小突く。藍香は、イヤイヤと首を振りながら、拳をぎゅっと握りしめた。
「もっ、もう、許して♥ イキたくない♥ イカせないでぇ♥ あっあっ♥ やだ、やだっ♥ イクっ♥ あっあっあっ♥ イッちゃう♥ イッちゃう♥ イッちゃう♥ いやっ♥ いやっあっ♥」
ささやかな、最後の抵抗として唇を噛んだ。
次の瞬間、頭の奥で光が瞬いた。
「ん゛んん゛んん――っ♥」
腰が跳ねあがらんとするも、上から押さえつけられていては、小刻みに震えるのみ。するとまるで、自ら膣を淫棒に擦りつけるかのようで、快楽の大きな波の上に、更に細波立つ気持ちだった。それだけでも身も心も溺れてしまいそうだというのに。水面から息継ぎのために顔を出したところを、毛棒が突く。何度も何度も。沈め沈めと言うように。
「あ゛っ♥ あっ♥ イッてる♥ イッてるからぁ♥ イッてっ、えっ♥ い゛っ♥ あ゛ぁっ♥」
ぞりんぞりんと、淫肉を磨かれ、最奥をぐりぐり押し潰される。
藍香は絶頂の渦の底へ堕ちていくのを感じた。歪んだ口角から涎が垂れた。
「い゛っ♥ い゛ひっ♥ ひっひっ♥ い゛ひぃいぃぃんっ♥」
――びゅくっびゅるるるっ! 子宮に熱い粘液が浴びせかけられる。
それでまた藍香はイッた。
「……はぁっ♥ はぁっ♥ はっ♥ あ……♥ はぁ♥」
背中の重みが去っていく。終わったのだと、藍香はぼうっとする頭で思った。
が、膝裏から抱えあげられ、違うと悟る。奴はそのまま毛チンポがおマンコから抜けそうな際の辺りまで藍香を持ち上げる。穴と棒の隙間から白濁液ならぬ黒濁液が、どろりと垂れた。
そして――ぶちゅんっ! 子宮をチンポに叩きつける。
「お゛っひぃぃいぃぃっ♥」
奴は藍香の体を折り畳むようにして抱え込むと、控えめな胸の頂点をブラシ手で磨きつつ、淫穴を下から突き上げるのだった。
「お゛っ♥ お゛っ♥ お゛ふっ♥ お゛っ♥ お゛っ♥ お゛っ♥」
オットセイのような、みっともない嬌声をあげさせられる藍香。
その目が、開いたままの浴室のドアの先にある、鏡を捉えた。
(あぁ、わたし、もう……)
そこに映る自分の姿は、さながら等身大のオナホ。異形専用の肉穴。
よく見れば腹には、うっすらと奴の陰茎が深くを突いたとき、その影が浮かぶ。そして涙と涎で汚れた|表情《かお》は、見るからにそれを悦んでいた。
(もう、普通には戻れないんだ♥ このまま、きっと一生……♥)
震える膣を毛チンポが駆け上がり、きゅんきゅん疼く子宮を叩く。
「お゛ほっ♥ お゛ほほぉぉおぉぉっ♥」
ビンビンに硬くなった乳首をブラッシングされる。チクチク感がもどかしい。早く乳首でもイケる体になりたい、そう育てて欲しいと思った。
「お゛っ♥ お゛っ♥ お゛ひぇっ♥ お゛ひっ♥ あ゛っあっあっあっ♥ あ゛い゛ぃぃいぃっ♥」
藍香の尿道からピュッと、おしっこが飛び出す。皮切りにチョロチョロと垂れ流し始めても、奴のピストンは止まらない。突かれるたびに、おしっこは、その放物線の形を歪める。それがどこか滑稽だった。
「あ゛ひっ♥ あ゛へへぇっ♥」
この先、体の全てを使って、この怪物に奉仕させられるようになるのだろう。
お尻の穴や、もしかしたら尿道だって。
そんな終わった未来に思いを馳せ、藍香は身震いした。
「あ゛あ゛ぁぁ゛あぁぁあ゛ぁ♥ イ゛っくぅうぅぅぅぅっ♥」
◆
その女は、いたって普通のOLだ。今日も今日とて仕事に疲れた自分を労うべく、ビールとおつまみの入った買い物袋を片手に帰路を急ぐ。
その通り道に、そのマンションがある。つい先日、|鈴木《すずき》藍香という名前のOLが行方不明になったという。
(どうしちゃったんだろ。歳も近いし、近所だし、ちょっと気にしちゃうよねぇ。仕事が嫌になったのか、男関係か)
そう思いながら、彼女はマンションを通り過ぎるのだった。
「あと十メートル!」
(了)