「ーーーあ~~~……」
藤村 洋平(ふじむら ようへい)は、ため息をつきながら、
手に怪我をした状態で、汚れた制服を見つめるー。
少しだけ舌打ちをすると、
自転車を引きずりながら、彼はそのまま自分の家へと向かっていくー。
ちょうど、今は学校の下校中ー。
汚れた制服を少しだけ払いながら面倒臭そうにため息をついてー、
ようやく家の前にやってくると、洋平は自転車を置いて、
そのまま玄関の扉を開けたー。
玄関の扉を開けると、そこには小綺麗な雰囲気の、
けれども心配性なのが顔に滲み出てしまっているような、
そんな雰囲気の母親・藤村 詩織(ふじむら しおり)の姿があったー。
「ーあ、洋平ー。おかえりなさー…」
そこまで言いかけて、母・詩織は顔色を変えるー。
それもそのはずー
腕を怪我して、制服も汚れたままー。
そんな息子を見て、詩織は「ち、ちょっと、洋平ー」と、
戸惑いの声を上げるー。
「ど、どうしたの?」
母・詩織がそう言うと、洋平は「大丈夫だからー」とだけ言葉を口に
しながら、そのまま自分の部屋に向かっていくー。
「ーだ、大丈夫ってー…
だ、誰かにいじめられたの?」
「ちがうってー」
「ーー誰かにやられたんじゃないの!?」
「ちがうよー」
心配性の母・詩織の言葉にうんざりした様子を見せる洋平ー。
「ーーー」
詩織は、息子である洋平の怪我を今一度見つめると、
”一番不安に思っていること”を口にしたー。
「ーーだ、誰かと喧嘩でもしたのー?」
とー。
「ーーーうるさいなぁ!」
詩織の言葉に、洋平はそう声を上げると、
「ー大丈夫だって言ってんだろ」と、だけ呟きながら
そのまま自分の部屋に向かってしまったー。
「ーーちょ、ちょっと洋平ー!」
洋平のあとを追いかけるも、洋平は部屋の扉を閉めて
鍵をかけてしまい、中に入れなくなってしまうー。
「ちょっと洋平!
何かあったなら、お母さんにもちゃんと話して!」
詩織はそう言いながら、何度も何度も洋平の部屋をノックするー。
がー、洋平は「うるさいなぁ!静かにしてくれよ!」と、
部屋の中からそんな返事を返してくるー。
「ーーわ、わかったー。わかったけどー
でも…何かあったなら、何でも話、聞くからねー?
洋平は一人じゃないからね?」
何度も何度もそう言葉を口にするもー、
やがて、洋平からの返事がないことに諦めがついたのか、
詩織は洋平の部屋がある2階から降りて、1階に戻ってきてため息をついたー。
「はぁ~~~……上手く行かないわ…」
詩織は大きくため息をつくと、イスに座って
棚の上に飾られている写真を見つめるー。
そこには、現在単身赴任で長期、家を留守にしている
夫・藤村 雅人(ふじむら まさと)と、三人で写っている
写真が飾られているー。
「ーーー…わたし、どうすればいいんだろうねー」
詩織は今一度ため息をつくー。
詩織は、心配性な性格故に、最近は息子の洋平から
煙たがられてしまっているー。
詩織としては洋平と親子で上手くやっていきたいのだけれどもー、
なかなか、上手く行かずにすれ違う日々が続いているー。
特に、夫である雅人が単身赴任で家を留守にする期間が
長くなるようになってからは、
”父親がいない時間が多い分、わたしが頑張らなくちゃ”と、
余計に空回りしている状態ー。
詩織は、今は亡き自分の母親と父親の写真が飾られている仏壇の
前に行くと、大きくため息をついたー。
「ーねぇ、お父さん、お母さんー
こういう時、どうしたらいいのかなー?」
両親の仏壇の前で、そう言葉を口にする詩織ー。
元々は実家にあったものだったが、数年前に母親も亡くなった際、
こちらに持ってきたものだー。
「ーーーーーーー」
当然、二人からの返事はないー。
”ーー洋平と、仲良くできますようにー”
詩織は、そんなことを願うように、仏壇に向かって手を合わせると、
”神頼みしてるようじゃ、ダメねー”と、
自虐的に首を振りながら立ち上がるー。
息子の洋平と、もっと仲良くしたいー。
最近は、お互いに会話を交わすことも難しくなっているぐらいに
すれ違ってしまっている現状ー。
どうにか、”せめて普通に話せるぐらいに”、またなれればー…
そんな風に思いながら、詩織は台所の方に向かうと、
晩御飯の支度をするのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その翌日ー。
「ーーーーーーーーー洋平ー」
母・詩織が目を覚まして、半分寝ぼけた状態のまま
洗面台までやってくると、”洋平”が目の前にいたことに驚くー。
「ーーーふふー、どうしたの、そんな驚いたような顔してー?」
洋平に声をかける詩織ー。
最近は、目と目を見て話す機会も減っていて、
改めて洋平の姿をしっかりと凝視するとー、
洋平も、随分大きくなった、と、しみじみと思わせられるー。
「ーーー…洋平も、ちゃ~んと成長してー
顔つきもどんどん大人っぽくなってきてー」
詩織は、鏡の前でそう言葉を口にすると、
ふと、”いつかは、巣立っていく”ことを思い浮かべて
寂しそうな表情を浮かべるー。
がー、その時だったー
「ーーな、なにやってんだ!?
っていうかコレ、どういうことだよ!?」
そう叫びながら、姿を現したのはーーーーー
”自分自身”だったーーーー
「ーーーきゃああああああああああああああっ!?!?!?」
悲鳴を上げる詩織ーーー
がーー、今まで寝ぼけていて気付かなかったものの、
”悲鳴”は、自分の声ではなく、”洋平”の声で発されたー。
「ーーお、お、おいっ!
お、俺の声で変な悲鳴を出すなし!!!」
”もう一人の詩織”が、そう声を出すーーー
すると、鏡の前に立っていた”詩織”は、ようやく
もう一度鏡の方を見つめると
「ーーえ……わ、わたしがーーー洋平に?」と、
鏡の中の自分を見つめながら、自分の方を指差したー。
「ーーな、な、なんなんだよホントにこれ!?」
”詩織”の姿をした息子の洋平が声を上げるー。
髪がボサボサで、服も乱れているのを見る限りー、
”朝、目が覚めたら母親になっていた”と言う状況に
相当混乱したことが伺えるー。
「ーーな…なにってー…
え……お、お母さんにも分からない…」
”洋平”になってしまった詩織は困惑したような表情を浮かべると、
今一度、鏡で”今の自分”ー…
”洋平になった詩織”を見つめると、「ーと、とにかく一回落ち着いて」と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
母・詩織と息子の洋平は、
入れ替わってしまったー。
そのことを理解した二人は、ため息をつきながら
話し合いを続けていたー。
「ーーじゃあ、母さんは何もしてないってことかー」
詩織(洋平)は、そう言葉を口にするー。
「ーそ、そうに決まってるでしょー。
わたしにこんなことできる力があると思うー?」
洋平(詩織)が焦った様子で言うと、
詩織(洋平)は「たしかにー」と、そう頷くー。
どうやら、昨日、寝た後に”何か”が起きたようで、
二人の身体は入れ替わってしまったようだー。
「ーーーーーーーごめんね」
ボソッと呟く洋平(詩織)ー
「え?」
詩織(洋平)は、少し不思議そうにすると、
不愉快そうに、「こんな時でも、人の心配かよー」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーごめん。こんなことになってー。」
洋平(詩織)が、改めて謝罪の言葉を口にすると、
「ー別にいいよ。母さんが悪いんじゃないんだし」と、
詩織(洋平)はそんな風に言葉を口にしたー。
てっきり”母さんのせいだろ!”とか”ふざけんなよ!”とか、
そんなことを言われると思っていた洋平(詩織)は
少しだけ意外そうにしていると、
「なんだよー?」と、詩織(洋平)は少し不満そうに
言葉を発したー。
「ーーううんー…
でも、洋平、明日また学校でしょ?
早く元に戻らないとねー」
洋平(詩織)がそう言うと、詩織(洋平)は頷くー。
”こんなにまともに話したのは久しぶり”だろうかー。
洋平(詩織)は、そんなことを思いながら
ふと、自分の手を見つめるー。
随分と、立派になったー。
小さい頃、よく手を繋いでいたあの頃とはもう違うしー、
中学を卒業した時とも違うー。
大きな、立派な手ーーー
「ーーー…立派になったねー」
そう言いながら、洋平(詩織)が”自分の手”を触っていると、
「な、なにやってんだよー。キモいなー」と、
詩織(洋平)は不満そうにそう言葉を口にしたー。
色々と話し合いを続けーー、
”元に戻れそうな方法”も試してみるー。
しかしー、結局のところ元に戻ることが出来ず、
そのまま夜を迎えてしまうー。
「ーーー大丈夫ー?どこか調子わるいところない?」
洋平(詩織)が、詩織になった洋平のことを、
何度も何度も心配するー。
「あ~もう、うるさいなぁーー…
大丈夫だって言ってんだろ」
詩織(洋平)がうんざりした様子で言葉を口にすると、
「ーずっとこのままじゃいられないしー
お母さんが、洋平になったままじゃ学校も困るでしょ?」と、
なおも心配した様子で洋平(詩織)が言うー。
確かに、このままの状況では”学校”には困るー。
まさか、母・詩織の身体で制服を着て学校に行くわけにもいかないー。
詩織(洋平)が表情を歪めていると、
「ーが、学校はいざとなったらお母さんが洋平のフリして行くから」と、
そんな言葉を口にするー。
「ーはぁ!?余計なことしなくていいしー!」
詩織(洋平)がそう言うと、
「ー俺は絶対、母さんの代わりなんてしないからな!」と、
”パート”には行かないとそう言い張るー。
「ーお母さんのことはいいからー。
でも、元に戻れなかったら洋平は困るでしょ?」
なおも、洋平(詩織)はそう言うと、
”普段の癖”なのか、髪がないのに”髪を触る”ような仕草を
空中でしながら、洋平(詩織)は戸惑ったような表情を
浮かべるー。
「ーーー…ーーーーーー」
不満そうな詩織(洋平)ー。
洋平(詩織)は「と、とにかく今日はもう遅いから順番に
お風呂も済ませましょ」と、そう言葉を口にするー。
「ーはぁ?入れ替わったままお風呂入るのかよー?
キモっ」
詩織(洋平)が表情を歪めるー。
”身体”は同じー、”顔”も同じなのに
中身が若くなっただけで、なんとなく表情が
エネルギーに満ち溢れているような、そんな感じさえ覚えるー。
「ーーー…だって、入らなきゃー、
色々困るでしょー?
まさか臭いまま学校に行くわけにもいかないだろうしー」
洋平(詩織)の言葉に、詩織(洋平)は渋々頷くと、
仕方がなくお風呂に入ることは承諾したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー」
鏡で身体を流しながら”息子の身体”でお風呂に入った
洋平(詩織)はドキドキしながら、
首を横に振るー。
”洋平ったらー、随分と成長したわね~…”
そんなことを思う洋平(詩織)ー
昔、お風呂に一緒に入っていた頃を思い出すー。
もう、遠い昔の記憶だー。
いつの間にか、立派になった洋平の姿を改めてみて
息子の成長を感じながらうっとりとする洋平(詩織)ー
「ーーーーーー」
鏡を見つめながら、ふと洋平が小さい頃のことを
思い出しながら、”小さい頃のようなセリフ”を吐こうとする
洋平(詩織)ー
がーーー
”遅くね?俺の身体でそんなゆっくり風呂入らなくていいだろ?”
詩織(洋平)の声が聞こえてきてハッとすると、
慌てて「い、今出るわね!」と、そう言葉を口にしたー。
洋平(詩織)がお風呂を出てー、
続けて詩織(洋平)がお風呂に入るー。
一瞬、”女”の身体にドキッとしてしまったものの、
すぐに”いやいやいやいやいやいや、もうおばさんだしー”と、
首を横に振りながら、
さらに”しかも母さんだし”と首が取れそうなほどに
横に振ると、
「あ~あ、せめて入れ替わるんだったら、松原(まつばら)さんが
良かったなぁ~」と、
クラスの可愛い子の名前を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー~~~~~~~~」
下着のつけ方やら、何やら、色々分からないまま、
仕方がなく、洋平(詩織)に色々助けてもらう
詩織(洋平)ー
「うふふー昔を思い出すわねー」
洋平(詩織)がそう言うと、
「俺の身体でそういうセリフを吐くなよ!」と、
不満そうに言いながら、詩織(洋平)は目を逸らすー。
「ーーー…明日の朝になれば、元に戻ってるかもしれないからー
とりあえず、今日はこのまま寝てみましょ」
洋平(詩織)の言葉に、
詩織(洋平)は「ーーは~~~…」と、ため息をつきながら、
渋々と頷くー。
やがて、二人は”自分の部屋”にそれぞれ向かい、
”入れ替わってしまう”という大変な1日を終えたー。
そしてーーー
翌朝ー。
「ーーーーーない!!!」
「ーーーーーある!!!!」
股間のあたりと胸を触りながら、
そう声を上げた詩織(洋平)は、
「はい終了~~!」と、元に戻ってないことを嘆きながら
自暴自棄に再びベッドに倒れ込んだー。
「ーーーあ~あ…なんなんだよこのウザい状況ー」
不満そうにそう呟く詩織(洋平)ー。
まだまだ、二人の苦難とその先に待つ
不思議な入れ替わりは始まったばかりだったー…。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
家庭内での入れ替わりのお話ですネ~!☆
漆黒特典で、飛龍様(※名前公表許可を頂いています~!)より、
リクエスト頂いたもの(※実施は不定期デス)をベースにした
お話デス~!
頂いた原文は、ネタバレにもなるので、
最終回を書き終えたあとに、あとがきで皆様にも
ご紹介しますネ~!(※原文も公表許可を頂いています~!☆
勝手に出しちゃったりはしないのデス~笑)
今日もお読み下さりありがとうございました!★
無名
2024-05-19 10:19:56 +0000 UTC飛龍
2024-05-19 04:07:47 +0000 UTC