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<憑依>ボディレス社会③~生き方~(完)

自分の身体を持たないー。

それが当たり前になった未来の世界ー。


そんな中、現在は”絵梨花”という名前の身体で生きる彼は、

この時代に自分の身体で生きようとする

”違法生存者”の純恋と出会うー。


純恋のことを匿ううちに、彼自身も自分の身体で生きることに

理解を示すようになっていくもののー?


☆前回はこちら↓☆

<憑依>ボディレス社会②~考えの違い~

2XXX年ー 人類は自分の身体を持たず、作られた人間の身体に憑依することで、 永遠にも近い生を手に入れていたー。 そんな社会で、現在は”絵梨花”として生きている彼はー、 ”違法生存者”である純恋と出会うー。 ”肉体と魂の分離”を拒み、ボディレスが当たり前になったその時代で、 自分の身体で生きる純恋と出会った彼は...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”現在、逃亡中の入れ替わり生存者の相原 純恋さんに

 違法生存者取締委員会は懸賞金をかけることを発表しましたー。

 有力な目撃情報には基本金として100万円ー

 確保に至った場合は1000万円の懸賞金が支払われますー”


違法生存者の純恋は、昨日のニュースを思い出すー。


「ーーーー…」

暗い表情を浮かべる純恋ー。


もしー

もしもー

”絵梨花”に裏切られたらどうしようー。

そんな風に思ってしまうー。


違法生存者取締委員会から逃げている自分を匿ってくれた”絵梨花”ー。

しかし、彼女がその気になれば純恋を

引き渡すことは可能だー。


しかも、純恋を引き渡せば”絵梨花”は1000万円の

大金を手に入れることができるー。


「ーーーどうしたの?」

そんなことを考えていると、朝の支度を終えた”絵梨花”が

自分の部屋から出て来るー。


「ーーーあ…い、いえー」

純恋は目を逸らすー。


「ーーーー」

”絵梨花”は、純恋の元気がない理由をすぐに悟ると、

改めて「わたしは、裏切ったりしないよー」と、

そう微笑むー。


「ーーー絵梨花さんー」

純恋が、不安そうにそう言葉を口にすると、

”絵梨花”は続けたー。


「わたしも、最初、純恋さんと出会って、

 ”何で自分の身体で生きようとするんだろう”とかーー


 ううんー

 本音を言えば”馬鹿なんじゃないの?”ってー

 そう思ってて、全く理解できなかったけどー…」


”絵梨花”は、少し苦笑いしながら、そんな本音を口にすると、

「でもねー」と、言葉を続けたー。


「でも、今なら分かる気がするー。

 自分の身体を大切にする気持ちもー。

 

 ”わたし”の本体は冷凍されちゃってるしー、

 もう自分の身体で生きることはできないけどー、

 ”そういう選択”もあるんだなぁって」


”絵梨花”は笑いながら言うと、

純恋は「絵梨花さんー」と、目に涙を浮かべながら言葉を口にしたー。


「ーーーもちろん、今の”ボディレス”な社会だと

 色々便利だけどー、

 ”自分の身体への愛着”なんて考えたこともなかったしー

 こういう世界になって、色々失ったものも

 きっとあるんだよねー」


”絵梨花”は、そう言いながら

純恋のような生き方も一つの選択肢だし、

自分の身体で生きようとしただけで、

違法生存者とか言われて、捕まったらどうなるか分からないような

扱いを受けるなんておかしいと思うー、と、

そう言葉を口にしたー。


「本当にー…本当に、ありがとうございますー」

純恋は、”絵梨花”が嘘を言っているようには見えずー、

心の底から感謝の言葉を口にしたー。


「ーーふふーどういたしましてー

 それとーー

 最初は”違法生存者”とか言って、変な目で見たりして、ごめんねー」


”絵梨花”はそう言葉を口にすると、

涙を流す純恋の頭を優しく撫でながら、

「ーここにいれば大丈夫だからーー安心して」と、

それだけ言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー」

”絵梨花”の身体になってから少し”視力”が低下したように

感じていた”誠也”ー。


彼にとって”絵梨花”の身体は一時的に使う”入れ物”に過ぎないー。

この世界では”人間の身体”はいくらでも生産されるー。

生物学的には完全に人間だが、

”憑依するため”だけに作られた”中身のない”抜け殻ー。

本体を冷凍保存された状態の霊体たちが、その”作り物の身体”に

憑依することでこの社会は成り立っているー。


こうすることで、”病気”も”事故”も何も恐れなくても良い社会が

実現したー。

本体が死なない限り、霊体は消えないー。

本体は安全な巨大施設で”冷凍”されているため、本体が死ぬことはあり得ないー。


”ボディレス社会”はー、今や人類にとって

当たり前の社会ー。


そしてー

以前、親友の”拓真”は

”ボディレス社会にはもう一つの目的もあるんだよなー”などと言っていたー。


それが”何”なのかは分からないけれど、

以前は”ボディレス管理センター”でバイトをしていた”拓真”は

何かを知っているだろうー。


とにかく、今の時代は便利だー。


けれどー、”自分の身体”で生きたいと願う人を

犯罪者呼ばわりするのは間違っていると、

”絵梨花”はそんな風に思い始めていたー。


「ーーーー」

”絵梨花”の身体は、少し最初から視力が低めだったー。


それが、憑依して少し時間が経ち、

より視力の低下が進んだような気がするー。


いつもの”誠也”だったら、すぐに”絵梨花”の身体は破棄して

また次の身体に憑依するー。


だがー。


”「ーーわたしは、いつまでも絵梨花さんでいてほしいですー」”

純恋に言われた、そんな言葉を思い出すー。


「ーーー…」

自分の手を見つめる”絵梨花”ー。


「ー自分の身体、かー」


捨てるのは簡単だー。

この身体を捨てれば、また次の身体に憑依すればいいー。

視力も、それで回復するー。


けれどー


「もう少しだけ、この身体で頑張ってみようかなー」

”絵梨花”はそう呟くと、静かに街を歩き出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー


純恋は、”絵梨花”の家で必死に家事をこなしていたー。

”外”に出れば違法生存者として逮捕されてしまうー。


そのため、働くことは難しいー。


ネットを使ってできる範囲内で仕事をしながら、

”絵梨花”の家のことを一生懸命やりながら

自分のような人間を守ろうとしてくれた”絵梨花”の気持ちに

応えようとしていたー。


がー

その時だったー


インターホンが鳴るー。


純恋が来客を確認すると、そこにはーー…

”違法生存者取締委員会”の男ー、菊田と、

取締委員会のメンバーが写っていたー


”な、なんでー…!?”

純恋は青ざめるー。


”ここにいるんだろ?違法生存者ー”

菊田の声が響き渡るー。


慌てて音を立てないようにして、

息をひそめる純恋ー。


がー


”居留守を使っても無駄だ”という声と共に

扉が破壊される音が聞こえて来るー。


純恋はガクガクと震えながら

中に入ってきた菊田の方を見つめたー。


「見つけたぞー。違法生存者ー」

”菊田”は、そう言うと笑みを浮かべるー。


周囲にいる男女数名も、

”違法生存者取締委員会”のメンバーだー。


「ー社会の秩序を乱すは重罪ー。

 貴様を逮捕するー」

菊田はそう言うと”逮捕状”を手に、それを純恋に見せつけたー


純恋は目から涙をこぼしながら

「どうしてー…」と、呟くー。


「ーー残念だったなー

 お前がここにいると”通報”があったー。

 お前は信じてた人間に、裏切られたんだー」

違法生存者取締委員会の菊田は笑うー。


「ーーそ、そんなー…」

純恋は悟ったー。


やっぱり、”絵梨花”に裏切られたのだとー。


「ーそっかー。そうだよねー…

 1000万だもんねー…

 わたしみたいな生き方ー、

 誰にも理解してもらえるはずなんてー」

純恋は、涙を流しながらボソッとそう呟くー。


抵抗する気力すら失い、そのまま連行されそうになる純恋ー。


だがー、

その時だったー


「ーやめて!」

聞き覚えのある声が玄関から響いたー。


「ーーーえ…」

純恋が驚くー。

違法生存者取締委員会のメンバーも、同様に驚くー。


そこにいたのはー”絵梨花”だったー。


「ーその子を、連れて行かないでくださいー」

絵梨花がそう言うと、

違法生存者取締委員会の菊田は笑みを浮かべるー。


「これはこれはー

 先日、お伺いした時はどうして嘘をついたのですー?

 おかげでー、あなたも裁かなくてはいけなくなったー」

菊田がそう言うと、”絵梨花”は、

「純恋さんは、自分の身体で生きたいだけなんです!」と、

そう言い放つー。


が、菊田は首を横に振るー。


「今は”ボディレス社会”ー

 そんな勝手は許されないー。

 本体を冷凍し、我々は作られた人体で生きるー」


菊田はそう言いながら、

”おかげで、死をも恐れずに我々は生きることができるようになった”

とー、両手を広げながら、自分の身体を自慢げに示すー。


当然、この菊田という男も”作られた身体”に憑依しているー。


「ーーー…でも…だからって、

 自分の身体で生きたい人たちを違法生存者なんて呼んで、

 そんな風に捕まえる必要はないですよ!!」


”絵梨花”がそう叫ぶと、

菊田は「仕方がないー」とため息をつきながら

「こいつも”違法”だー」と、笑みを浮かべるー。


しかしー

”絵梨花”は、純恋を捕まえている違法生存者取締委員会のメンバーを

突き飛ばすと「逃げて!」と、そう叫んだー。


自由になった純恋は「ど、どうしてー?」と、驚くー。


「ーー…純恋さんの情報を売ったのはわたしじゃないよー」

”絵梨花”は言うー。


純恋の居場所を違法生存者取締委員会に通報したのはー

”沙羅(さら)”という女だったー。

”絵梨花”も、純恋も知らない相手だー。


が、”絵梨花”は気づいたー。


きっと、親友の”拓真”が通報したのだとー。

絵梨花と純恋以外に、純恋がここにいるのを知っていたのは

拓真だけー。


拓真は数日前に”新しい身体”へと乗り換えていて、

恐らく”沙羅”というのは”拓真”だった人物の

新しい身体ー…つまりこの世界で言う”体名”だー。


親友と言えども、”1000万”の懸賞金を前に

”拓真”は”絵梨花”を裏切ったのだろうー。


「ーー逃げて!!!

 わたしが”拓真”を信じて、純恋さんのことを話したせいだから!

 

 責任はわたしにもあるの!

 だから逃げて!」


”絵梨花”が、菊田たちと戦いながらそう言い放つー。


玄関先まで何とか逃げた純恋は

振り返りながら「え、絵梨花さんー!」と、叫ぶと、

”絵梨花”は少しだけ笑ったー。


「ーわたしは大丈夫ー。

 ”身体”乗り換えればいいだけだからー」

とー。


「ーー!!」

純恋は少しだけ寂しそうな表情を浮かべるー。


「ーーごめんねー。”ずっと絵梨花さんでいてほしい”って

 約束は、守れそうにないやー」


”絵梨花”は、それだけ言うと、

純恋に逃げるように改めて叫ぶー。


純恋は「本当にーありがとうございますーー」と、

涙目で頭を下げると、そのまま玄関から飛び出して逃げていくー。


「ーー貴様ー…!」

菊田が怒りの表情を浮かべるー。


がー、”絵梨花”は、純恋が逃げる時間を十分に稼いだことを確信すると、

”ちゃんと、逃げてね”と、

心の中で言葉を口にしながら、

そのまま”絵梨花”の身体を捨てて、違法生存者取締委員会たちから

逃亡したー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーふぅー」


”絵梨花”の身体を捨てて、

新たな身体、”愛唯(めい)”に乗り換えた”誠也”ー。


「ーーこの身体も、なかなかいい感じねー ふふー」

”愛唯”は、静かに笑みを浮かべると、

「まずはー」と、そう言葉を口にするー。


純恋はちゃんと逃げられただろうかー。

安否の確認と、できれば合流もしたいー。


いや、その前に、親友の”拓真”に裏切った理由を

聞くべきだろうかー。


そんなことを思いながら”愛唯”は

歩き出すー。


がーーー

その時だったー。


突然、”愛唯”は、

その場に膝をつくーーー


「ーーーーぁ…」

身体を震わせながら、”愛唯”はーー

そのまま動きを止めるー。


”ーーーぇ……”

”愛唯”に憑依している”誠也”はー、

遠のいていく意識の中

”な、にが、起きーーー…”と、

呟こうとしたものの、それが言葉になることはなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


以前、親友の”拓真”が言っていた

”ボディレス社会にはもう一つの目的”ー


それはーーー


「ーーー川島 誠也を”廃棄”しましたー」

可愛らしい雰囲気の女がそう言葉を口にするー。

もちろん、この身体も”憑依”で得た身体だー。


「ーそうか。ご苦労ー」

男がそう言葉を口にするー。

この身体も当然、本人のものではないー。


その二人の視線の先には、

”冷凍”された人間の身体が大量に並んでいる

”保管庫”が見えるー。


この世界では、10歳を迎えた人々は

肉体と精神を切り離されて肉体は冷凍され、

霊体は、人工的に作り出された人間の身体に憑依ー、

身体を次々と乗り換えながら生きていくー。

霊体は、”本体”が死なない限り消えず、

本体を安全な施設で冷凍保存することにより、

人々は実質上の永遠に近い生を得ることができるー。


しかしーーー


「ーーーー反逆者には、死を」

たった今、冷凍された”誠也”の本体をドリルのような装置で

”粉砕”した可愛らしい雰囲気の女が笑みを浮かべるー。


”ボディレス社会”にはもう一つの目的があるー。


それは”人々の管理”ー。


社会にとって”都合の悪い人間”は、

いつでも排除できるー、

そんな”管理”が目的のひとつ。


冷凍保存された”本体”を粉砕してしまえばー、

その人間の霊体は消滅ー、

つまり、死を迎えるー。


このボディレス社会はー

”社会にとって都合の悪い人間をいつでも排除できる”

そんな、社会ー。


”違法生存者”を庇った誠也の本体は今日、

こうして”廃棄”され、”絵梨花”から”愛唯”という名の身体に憑依した

誠也は、何も分からぬままこの世から消えてしまったのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー”絵梨花”さんー…」

誠也…”絵梨花”のおかげで逃げることができた純恋は

悲しそうな表情を浮かべるー。


”絵梨花”は逃げきれただろうかー。


そんなことを思うー。


「ーーきっと、大丈夫だよねー。

 また、違う身体に憑依して、生きてるよねー?」

純恋は、そう願うかのように、もうこの世にいない彼のことを

想う言葉を口にすると、

身を隠しながら、そのままどこかへと姿を消したー。


おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ボディレス社会の最終回でした~!☆

体調不良を恐れなくてもいい世界…!

でも、ちょっと怖いところもありますネ~…!


この後、”絵梨花”と純恋と裏切った”拓真”は、

純恋の居場所を通報したことで、報奨金を手に入れて

楽しく過ごしている…そんな設定デス~…!


お読み下さりありがとうございました~!☆

<憑依>ボディレス社会③~生き方~(完)

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