SS_春告精の足音
Added 2023-03-23 12:06:43 +0000 UTCそろそろ冬が終わって春ですね。
ということで、今回はリリーホワイトです。
東方妖々夢の4面中ボスキャラですね。
といってもスペルカード等は無く、ひたすら弾をバラまく感じでした。
まあ幻想郷の妖精さんはパワーバランス的には最下層なので仕方ないところも。
余談ですが、リリーブラックとの関係性が正しく言える人は
ちょっとだけ自慢できる……かもしれません。
それでは本題。
東方Projectより、リリーホワイト。
自然の少ない場所にも春らしさが届くように、踏んで耕します。
そこが人間の街であるとも知らずに。
(約6,000字)
※無断転載禁止
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「春ですよ~♪」
リリーホワイト。
春を告げる妖精、春告精である。
空にはさほど雲も無く、青色が広がっている。
桜が咲き始めるこの時期の昼間ともなれば、寒さも和らいで過ごしやすい。
「……あれ?
このあたりはほとんど春らしさがなくて、石のようなものばかりですね?」
上空をふよふよと飛びながら地上を見下ろす彼女。
そこには四方を山で囲まれた平地と、そこに広がる都市があった。
駅のある中心部には10階建て級のビルが建ち並んでおり、
30階建てを超えるものもいくつかある。
そこを少し離れると今度は民家やマンションが建ち並ぶ住宅街が広がっている。
他にも大型ショッピングモールがあったり、工業地区があったり。
山を越えるのが面倒な立地のためか、
大都市というほどの規模ではないものの、ひととおり施設が揃っている。
「せっかくですし、このあたりにも春が届くようにしてあげましょうか。」
そう言うと、彼女は高度を下げて街へと下りていく。
ずずぅぅぅぅんん……
彼女の着地と同時に揺れと音が広がっていく。
両足は住宅街にようしゃなく下ろされ、
そこにあった民家たちは一瞬でつぶされてしまった。
彼女の靴底の厚さだけで2階建ての民家の高さをも超えている。
今の彼女の身長は約750メートルなのだ。
春という環境が彼女を大きくしているのかどうか、真実は定かではない。
「うーん、石が生えているところの地面も石のようになっているみたいです?
これだと植物が生えにくいのでよくないですー……」
膝に手を当てて街を見下ろす彼女。
彼女が巨大であるという事実以外にも、大切なことが2つある。
ここを人間の街であるということに彼女は気づいていないこと、
そして、そもそも彼女が巨大になっている自覚がないのだ。
今の彼女にとっては人間の大きさは約3ミリ。
気づかないのも仕方ないのかもしれない。
「ただ、踏んじゃえば簡単に粉々になるみたいですね。
泥のかたまりが乾いたものより少しだけ硬いかもしれません?」
彼女は片足を上げて足跡を見ながらつぶやく。
民家という名の生えている石たちはひと踏みで簡単につぶされて
茶色い土が露わになっている。
それを見た彼女は上げた足を別の地区へとかざす。
「このままどんどん踏んでいけば植物が生える土地になりそうですね。
やっちゃいますよー。」
ずしぃぃぃぃんん!!
どしぃぃぃぃんん!!
ここが人間の街であると知らない彼女は
この土地を植物が生える土地に変えるために住宅地をどんどん踏み荒らし始める。
平屋だろうと、2階建てだろうと、3階建てだろうと、
彼女のひと踏みによって数十軒がまとめて踏みつぶされていく。
舗装された道路も簡単に粉々になり、
アスファルトの下の土が露わになってしまう。
「こうやってよく観ていると、
黒や茶色以外にも、色とりどりの石が多いのでちょっと不思議ですね?」
歩みを一切止めることなく、民家やマンションを踏みつぶし続ける彼女。
建物の屋根や外壁を見てそう言っているらしい。
彼女の住む世界の民家の殆どは木の板だったりかやぶき屋根だったり、
分かりやすく言えば、ひと昔前の日本の人里にある建物である。
この建物や街並みは彼女にとっては馴染みがないのだ。
だからこそ、足元にあるものを街と認識することができていない。
巨大な妖精の襲撃に逃げ惑う住人たちが居ようとも、
その姿に気づくことなく、建物や道路をどんどん破壊していく。
襲う対象が狙って襲ってくるのは絶望的だが、
かといって狙っていないのに巻き込まれるというのも
絶望的なことには変わりないのだ。
「うん、この辺はこのくらいでよさそうです。
他の場所もどんどんやっていかないと、
思ったより時間がかかっちゃいそうですね?」
彼女が踏み荒らし始めて数分。
比較的丁寧に彼女は踏み荒らしていたようで、
彼女の足元の住宅街のほとんどは踏みつぶされて足跡だらけになっていた。
これなら植物が生えて春らしさのある土地に変わるだろう。
そう判断した彼女は別の地区へと進み始める。
次に向かったのは同じく郊外であるが、大型ショッピングセンターのある地区。
周辺には民家がちらほらと道路沿いに建っている程度の閑静な土地である。
その分、ショッピングセンターの敷地は広く、
駐車場も1000台以上の車が停められるほどだ。
「こっちの石は幅がありますね?
踏んだらどうなるんでしょう?」
道路沿いの民家たちも見つけ次第踏みつぶしながら
ショッピングセンターに近づく彼女。
ずしぃぃぃぃんん!!
駐車場に容赦なく踏み入れられた彼女の左足で
踏みつけられたところは陥没し、周辺にもヒビが一気に広がっていった。
停まっていた車たちも踏みつぶされたり吹き飛ばされたり。
100台以上が巻き込まれてしまった様子。
しかし彼女はそんなことに気にもかけず、
興味津々でショッピングセンターの建物に右足をかざす。
「そーれっ!」
ずがぁぁぁぁんん!!
小さく笑みを浮かべたまま勢いよく足を下ろせば、
ショッピングモールの建物の一部を簡単に踏み抜いてしまった。
同時に、壁には無数のヒビが広がったりガラスが一気に粉々に割れたり。
さすがに全壊ということにはならなかったが、
そこに居た人間たちが恐怖するには充分すぎる衝撃だ。
「おー、こうなるんですね?
中身が空洞といいますか、箱を踏み抜いた感じ……
これはこれで、なかなか面白いです!」
どがぁぁぁぁんん!!
がしゃぁぁぁぁんん!!
踏み抜いた感触に楽しさを感じてしまった彼女。
左足、右足、また左足。
2歩、3歩、4歩と彼女が足を下ろしていけば、
ショッピングセンターの建物の殆どが踏み抜かれてしまい、
外壁や踏まれなかったところも支えを失い、自身の重みで崩れ去ってしまった。
「こうやって石を踏んで崩していくのも楽しいかもしれません?
植物が生えやすい土地にするためにも、もっともっとやっちゃいましょう!」
建物があったところを足で薙ぎ払って瓦礫を散らばらせていき、
駐車場も何度も踏みつけて粉々にしていったところで
彼女は次の地区へと向かう。
植物が生えやすい土地に変えるという彼女なりの正義と
街を踏み荒らす楽しさの両方が彼女を動かしていく。
次の地区は工場の建ち並ぶ地区。
倉庫のような建物が多く、煙突が立っているところもちらほらとある。
他にもガスタンクや張り巡らされているパイプなど。
今日もしっかりと稼働しているようだ。
「なんだか煙が上がっているところもありますし、
こっちの石は今までのとちょっと違いそうですね?
よく分からないですけど、やっちゃいましょう!」
どしぃぃぃぃんん!!
ずしぃぃぃぃんん!!
もはや遊び感覚で建物を踏み荒らしていく彼女。
工場の建物や施設、倉庫や重機など、
そこにある全てをまとめて踏みつぶして粉々にしていく。
「踏み心地はあんまり今までと変わらない気がしますね?
ちょっと期待外れかもしれません……」
ある程度頑丈な造りになっている建物も少なくないかもしれないが、
彼女の圧倒的な大きさの前には大した差ではないようだ。
少し不満そうにしながらも引き続き踏み荒らして楽しんでいる彼女。
と、そのとき。
どごぉぉぉぉんん!!
彼女が踏みつけた瞬間、周囲に大きな爆発音が響き渡った。
ガスタンクを踏みつぶしたのだ。
「んっ、なんだか大きな音がした気がします?」
踏みつけた足を上げて首を傾げながら確認する彼女。
そこにあったのは真っ黒に焦げた地面と粉々になった外壁だったものだけであった。
残念ながら、彼女にとってはプチプチをつぶした程度の感触さえなかったようだ。
「地面が焦げていますね?
何か爆発したみたいですけど……そういう石もあるみたいです?
これはちょっと面白いかもしれません。」
そう言うと再び工場地区を踏み荒らし始める彼女。
倉庫を踏み抜いていったり、煙突を蹴り飛ばしてみたり。
この地区にはさほど人が集まっていないため
そういう意味では人間たちにとって救いかもしれないが、
被害総額は相当のものになっている様子。
復興などを考えるなら相当な痛手となりそうだ。
一方の彼女はというと、
どうやらガスタンク以上の刺激は無かったようで、
数分でこの地区をほぼ全滅させてしまった。
あちこちで煙が上がっていたり火事になっていたり、
大惨事になっているにも関わらず、彼女はあまり興味がない様子。
「んー、せっかく石を崩していくならもう少し楽しくやりたいですね。
大きくて細長い石が生えているところは最後のお楽しみにするとして、
何かいい方法があるといいのですけど……」
この都市でまだ無事な地区は中心部ともうひとつの住宅街程度。
それ以外は主に田畑しか残っていないため
彼女に興味を持たれないのも無理はない。
中心部を後回しにすると決めた彼女は
この都市のもうひとつの住宅街に向かっていく。
もうひとつの住宅街も最初のところと特に大きな差はなく、
民家やマンションが建ち並ぶ地区である。
さきほど彼女が踏みつぶしたショッピングセンターが遠いのもあり、
代わりに大きな商店街があるという違いはあるようだ。
もっとも、先にできたのは商店街の方ではあるが。
「……そういえば、この辺の石たちって砂利みたいな小ささですよね。
裸足になってみると楽しいのでしょうか?」
歩くこと数十秒。
あっという間に住宅街に着いた彼女。
ふと建ち並ぶ民家たちを見てそうつぶやく。
思い立ったがなんとやら。
おもむろに靴を脱いでいき、靴下も脱いでいく彼女。
「何度も踏みつけていたので、足がちょっと蒸れちゃっていますね……
すーすーしちゃいます。」
ずぅぅん……
脱いだ靴や靴下を田畑の広がる地区にそっと置く彼女。
人間にとっては片方の靴単体でちょっとした施設のような大きさである。
そして彼女は住宅街の民家たちに向けて足をかざす。
靴を脱いだところで大きさが大して変わるわけでもない。
むしろ動く足指が存在感を出しているかもしれない。
ずしぃぃぃぃん!!
直後、かざされていた足で踏みつける彼女。
裸足であっても建物は簡単につぶされて、道路も粉々になって陥没してしまった。
靴があろうとなかろうと、人間たちの運命は変わらないのである。
いや、むしろ靴がなくなったことで悪化したといえるかもしれない。
「くすぐったくて、気持ちよくて……
これはとってもいいですね!」
どしぃぃぃぃんん!!
ずしぃぃぃぃんん!!
彼女は目を輝かせながら何度も何度も踏み荒らし始めたのだ。
足裏に直接伝わる刺激がよほど心地よかったらしい。
今まで以上に力強く、小走りするかのように素早く何度も足を下ろしていく。
それだけ住宅街とそこに居る人間たちが襲われるペースが早まったのだ。
最初の住宅街では靴跡がいくつも刻まれたが、
この住宅街には足跡がいくつも刻まれていく。
「これだけ気持ちいいのでしたら、
最初から脱いじゃえばよかったかもしれませんね?」
笑顔のままひたすら住宅街を踏み荒らし続ける彼女。
建物たちをひとまとめに踏みつぶしてしまうのはもちろん、
マンションを踏みつけて寸断してみたり、
足の指先で民家たちを挟みつぶしてみたり。
素足になったことで足裏に刺激が伝わるようになったこともあり、
今までよりも確実に、そして速いペースで住宅街を襲っていく。
「んー、もうほとんど終わっちゃいましたね?
こっちの方が最初のところより狭かったのでしょうか?」
彼女が数分ほど夢中で踏み荒らし続けた結果、
もうひとつの住宅街もしっかりと壊滅してしまった。
足裏にはべったりと建物の瓦礫や土がこびりついている状態だ。
ちなみに広さや規模でいえば、2つの住宅街は大体同じである。
つまりそれだけ刺激が快感だったのだろう。
「それじゃあ最後は……
謎の大きな細長い石の多いところです!」
楽しそうに足音響かせながら住宅街から中心地まで移動する彼女。
彼女がこの都市にやってきてから今までの間に
中心地に居た人間たちは他の都市に逃げることができたのだろうか。
電車や自動車、方法はいくつかあるはずだが。
そんな人間たちの運命など一切気にもかけず、
あっという間に中心地に彼女はたどり着いた。
そもそも、相変わらず人間の街だと気づいていないようだ。
高層ビルが駅周辺に集中して建ち並んでいる。
それでも彼女のスネの高さに届くものは残念ながらひとつもない。
建物が小さいのではない、彼女が大きすぎるのだ。
「やっぱり、こんな細長い石もあるなんて変わっていますね。
じゃあ早速……」
そう言うと彼女は、
高層ビルの屋上よりも高いところまで右足を持ち上げる。
そして。
ずがしゃぁぁぁぁんん!!
ひとおもいに踏みつぶしてしまった。
屋上から1階、さらには地下まで彼女の足によって一気に圧縮されていき、
そのまま足跡の一部として踏み固められてしまった。
人間たちが何か月もかけて建造した建物はあっという間に壊されてしまったのだ。
「とっても気持ちいいです!
それなら、こういうのもよさそうですね?」
ずがががががっ!!
今度は足を横に動かしてビルたちをなぎ倒し始めた。
道路の車たちを巻き込みながらスライドされる足によって
ビルたちは根元近くから抉り取られてしまい、
そのままひとつ残らず崩れ去ってしまった。
「やっぱりここを最後にとっておいてよかったです!
全部やっちゃいますー!」
どがぁぁぁぁんん!!
ガラガラガラガラ……
全力で中心地を襲う彼女の勢いはとてつもないものだった。
ある高層ビルはどんどん踏みつぶされ蹴散らされていき、
道路には大量の瓦礫がなだれこんでいった。
別の高層ビルは足の指に挟まれて簡単にへし折られいき、
そのまま彼女が足を軽く振れば、
へし折られた上層部が宙を舞って地面に叩きつけられた。
高層ビルに隠れて建っていた駅も
彼女が気づくことなく踏み抜かれていき、高架ごと跡形もなくなぎ倒されていった。
建物が崩れ、中心地が跡形もなく破壊されていく音は
彼女が無邪気に笑う声でかき消されていた。
「……ふう。
細長くて大きな石、なくなっちゃいました。」
大規模の都市ではなかったこともあり、
彼女が襲い始めて2分ほどで中心地は終焉を迎えた。
地上には土煙が舞い上がり続け、
どこに何の建物が存在したか一切分からない程になっていた。
「でもこのままだとちょっと石が大きすぎるかもしれないので……」
どすぅぅぅぅんん……
お尻をついて座る彼女。
そのまま両足を前に出すと、ビルだった瓦礫を足でかき集め始める。
「こうやってすりつぶしておけば、
砂みたいになって植物が生えやすい場所になると思いますー。」
そのまま両足裏を上下に動かし始める。
瓦礫たちは挟まれつぶされていき、どんどん細かくなっていく。
建物の瓦礫なのか、乗り物の残骸なのか、道路のアスファルトなのか。
数分前まで何だったのかに一切関わらず、すべては砂へと変わっていった。
「よし、これでこのあたりにも植物が生えるようになるはずですね。
石を崩していくのもとっても楽しかったです!
ただ、帰る前にどこかで足を洗った方がいいかもしれませんね?」
笑顔でゆっくりと立ち上がる彼女。
そのまま靴と靴下を取りに行き、手に持ったままゆっくりと空に舞い上がる。
そして山の向こうへと彼女は消えていった。
この土地に再度都市が作られるのか。
あるいは放置されて自然に還るのか。
そもそも彼女がまたここにやって来るのか。
それはまだ誰にも分からない。
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おしまい。