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SS_神罰代行サービスとの出会い(前編)

今回はオリジナル作品です。

思ったより長編になるので前編後編で分けます。

後編は今月中に出せるようには頑張りますが、

来月になったらごめんなさい。


私の書く作品のなかではかなり前置きが長いです。

世界観を重視する人やあまりこの性癖に浸かっていない人は楽しめる……

かもしれません?


それでは本題。

どこにでも居そうな普通の女の人のところに、とあるはがきが届きました。

その内容はなかなか怪しいものでしたが……?

(約8,500字)


※無断転載禁止


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「んーっ……2時間も多く寝ちゃった。

 まあ今日から三連休だし、いいんだけど。」



10月のとある土曜日。

私が社会人になって半年と少しが経った。

分かってはいたけど、やっぱり学生時代の方が楽しかったと思う。


平日は職場まで片道1時間かけて移動して、仕事に振り回される。

休日は平日の疲れを癒すだけであっという間になんとなく終わってしまう。

先月は半期末だからと普段以上に忙しかった。

たしかにアルバイトよりはお金が稼げるけど、思ったより大した額ではない。

まあ、そもそも一番行きたい会社ではなかったから仕方ないんだろうけど。


とはいえ今日から三連休。

少しくらいは充実した時間が送れるはず。

朝ご飯の準備をしつつポストの中を確認する。

そこには1枚のはがきが入っていた。


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2日間限定!

このはがきを受け取った人限定!

あなたのもやもや、私たちRPGが代わりに解消しましょう!


モノを破壊することでストレス発散するアクティビティをご存じですか?

最近流行り始めているので実は近くにそういう施設があるかもしれません。


ですが、ひとりでは解消できない日頃の不満もありますよね?

学校、会社、社会、などなど……

こんなものはさすがに破壊できない、そうお考えでしょう。


なんと、その不満を私たちが代わりにすっきり解消します!

あなたは観て楽しむだけ!

さらにはなんと犯罪にはなりません!


興味を持ちましたら営業時間内に以下の場所まで!

ご説明、ご相談無料です!

営業時間は9時~18時です。


Regal Punishment Group

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はがきに描かれていた地図を見ると、家から徒歩3分ほどの場所にあるらしい。

行こうと思えばすぐに行けるけど……



「……いやいや、さすがにいくらなんでも怪しすぎ。

 犯罪にはなりません、って何?

 しかもここってたしか空き地じゃなかったっけ?」



どうせよくある詐欺やら悪徳業者のそれだろう。

あとでまとめて捨てよう。

私ははがきをポストに戻して部屋に戻り、朝食を食べ始めた。


それからは雑誌を読んだり、ゲームで遊んだり、テレビはないから動画を観たり……

朝の小さな楽しみのひとつのココアを今朝切らしてしまったけど、

外に出るのも面倒だ。

結局、なんとなく普段どおりの休日を過ごした。


あと2日休みがあるという心の余裕と、

なんとなくで休みを1日消費した虚無感とが

私の中で混ざり合っていた。


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三連休2日目、日曜日。

昨日はたくさんダラダラして体力気力どちらも少しは回復した。

明日も休み。

つまり、何かするなら今日が1番だ。


朝ご飯の準備をしつつポストの中を確認する。

そこには1枚のはがきが入っていた。

もちろん昨日のあのはがきだ。



「……まあ、どうせ今日は外に出るつもりだし。

 すぐそこだから買い物行く前に目の前通ってみようかな。」



はがきを手に取り、いつも使っているトートバッグに入れてから

朝ご飯を食べ始める。

今日はいろいろ買い物して、ついでにカフェでランチして、

せっかく外に出るなら買い物の前に映画を観ようかな。

考えるだけで元気が出てきたかも。


朝ご飯を食べ終わって、早速お出かけの準備をすませて……

いざ、出発。


そして歩くこと3分。



「……あれ、いつの間にか建物できてる。」



例のはがきに載っていた地図の場所に着いた。

少し前まで空き地だったと記憶していたけど、そこには小ぢんまりと建物があった。

RPGという名前が小さく書いてある、会社名?

なんとなく、街の不動産屋さんみたいな見た目かも。


帰りに寄ると買い物後で荷物が多くなる。

時間もあるし、怪しければさっさと出てしまえばいい。

私ははがきを手に持ち、その建物に入った。



『いらっしゃいませ。

 あっ、そのはがきをお持ちということは……こちらへどうぞ。』



少し小柄な女性のスタッフさんだ。

私はスタッフさんの指示通り、入り口近くの席に腰掛ける。

待ち用の席らしい。


それにしても、内装は綺麗だ。

やっぱり最近できた建物なのかも。



『本日はご来店ありがとうございます。

 準備いたしますので、少々お待ちください。』



そう言いながらスタッフさんはホットココアを私の目の前に置くと、

準備のために店の奥へと入っていった。


ココアは昨日切らしていたから今朝は飲めていない。

これはちょうどいい、いただきます。


ゆっくりと口に含み、軽く口の中で転がして、飲み下す。



「あっ、おいしい……」



思わず声を漏らしてしまった。

私が普段飲んでいるものより少し上品な香りや甘味、深みがある。


作り方の問題?

それとも商品の問題?

もしかしたらもう少し高いものを買うといいのかな?


そのままぐいっと半分以上を飲み干してしまった。



『お待たせいたしました。

 本日担当いたします佐藤です、よろしくお願いします。

 早速ですが、こちらへどうぞ。』



私は小さく会釈を返す。

佐藤さん、ありきたりな名字だ。

まあそんなことはどうでもいいのだけど。


ココア入りのカップを持ちながら私は個室へと案内される。

思ったより豪華な待遇で驚きつつ、改めて腰掛ける。

今度は1人用のソファーだ。



『それでは、たまっている不満やもやもやを話していただいても?』


「えっと、そうですね……」



私は小さく頷くと、思いついた順に不満を話し始めた。


仕事ばかりの日々で疲れ切っていること。

大して給料も高くないこと。

そもそもやりたかった仕事ではないこと。

さらに言えば働かないと生活できないような社会が悪いこと。

他にも……


気がつけば、15分くらいは話し続けたかもしれない。



「……あっ、すみません。

 いっぱい変なこと言ってしまって……」


『いえいえ、問題ありませんよ。

 それだけたくさん我慢していた、というのをご自覚できたのかなと?』



私は小さく頷いた。


我慢していた。

たしかにそうかもしれない。


もちろん他の人も同じような悩みを少なからず持っているはず。

だからといって私がそう思っていることが悪い理由にはならない。

皆も我慢しているんだよ、という言葉にはむしろ腹が立つ。


なんだか考えるだけでイライラしてしまった。

落ち着くために残りのココアを飲み干す。

冷めてしまったけど充分美味しい。



『そして、貴女にうってつけのサービスを今回ご提供できます。

 その前に……ココア、お口にあいましたか?』


「えっと、はい。

 美味しかったです。」


『それならよかったです。

 今朝お飲みになれなかったようなので、お出しした甲斐がありました。』



私は思わず佐藤さんの顔を見た。

どうしてそのことを知っているの……?



『ここからは、特にご内密に。

 すぐには信じてもらえないかとは思いますが、

 私たちは簡単に言えば神の使いのようなものでして。

 そのはがきも、実は貴女にしか届いていません。

 そして私たちは貴女が本日いらっしゃることも最初から分かっていました。

 もちろん、いつも飲んでいらっしゃるココアが昨日切れることも、です。』



神の使いのようなもの……

急に怪しい言葉が出てきた。

でも、今朝ココアが飲めなかったことは一切話していないのに

それを知っているのは気になる。


仮にそうだとして、なぜ私が選ばれたんだろう?



『貴女を選んだ理由、ですか。

 私が選んだわけではないのですが、まさに神の気まぐれでしょう。

 運がよかった、とも言えます。

 ただ、貴女のような不満を多く抱えている人を

 優先的に救いたいという想いがあったのかもしれません。』



何も言っていないのに私が選ばれた理由を説明されてしまった。

心を読まれている……?


それにしても、不満を多く抱えている人を優先的に救いたい……

もしかしたら私は相当ラッキーなのかも?



『さてと、少し話を反らしてしまいましたが……戻しますね。

 今回ご提供するサービスというのは、神罰代行サービス、です。

 今回の場合ですと、会社と社会への不満ですので、

 貴女の職場のある黄兵沐市(きべもくし)に神罰を行います。

 そうすることで職場はなくなり、さらには現在の社会構造も大きく変わります。』


「神罰って……神の裁き、ってことですか?

 たくさんの人をアレしちゃうとか街を破壊するとか……?」


『はい、その通りです。

 怪獣映画を想像していただければ、ある程度それっぽいかなと?

 ……犯罪にならないのか、ですよね?

 そこは問題ありません。

 なぜなら私たちは神のお使いのようなもの、

 つまり法に縛られない存在ですから。』



たしかに私が小さいときには

学校が怪獣とか宇宙人に襲われてなくなってしまえば~と想像したことはある。

それを実際にやってしまおうという話らしい。


なんだかとんでもない話になってきた。



『貴女がご依頼したということは、もちろんしっかりとお隠しします。

 つまり、神罰を指示した人として貴女が罪に問われることは絶対にありません。

 さらには今回貴女が特別に選ばれたということでお代も不要です。』



うーん……正直、まだ信用できない。

たしかに私の心や行動を読まれているみたいだけど、

そもそも神罰なんてことが出来るのかな?



『ちなみに神罰の様子はこちらのタブレットで視聴できます。

 私たちがしっかりと行っているか監視する際にお使いください。

 本日依頼されますと今夜配信されますので、ご自宅でご覧になってください。

 明日以降にご返却いただきますね。』


「なるほど……?」



わざわざ配信までしてくれるんだ。


でも配信ってなんだろう?

怪獣映画なら特撮か3Dしかないはず。

となると……?



「もしかして……そういう設定で動画を撮影する、とか?」


『えっ……

 ま、まあ、そうですね。

 そういうことでも差し支えないかと……?』



佐藤さんは思わず苦笑いを浮かべた。


なるほど、そういうことか。

私がタブレットでは配信という名目で動画を観ることで、

生中継のような感覚で楽しむことができる。

もちろん、小さな街を用意して撮影するところを配信っていうのもありそう。


実際に怪獣が存在したら、という設定もたしかに面白い。

人間に縛られることのない怪獣という存在が

街をめちゃくちゃにするというのはある意味で罪にならない破壊行動なのかも。



『と、とにかく……

 黄兵沐市は数百万人規模の都市ですからね。

 普段は絶対に見られない光景や、

 会社や社会などの個人では太刀打ちできない巨大な存在を

 倒すというカタルシス……

 是非ともお楽しみいただけるかなと?』


「なるほど……

 では、お願いしてもいいですか?」


『かしこまりました、ありがとうございます。

 それではこちらをお持ち帰りになってお楽しみください。

 今夜はご視聴よろしくお願いしますね?』



私は視聴用タブレットを受け取り、建物を出た。


無料でここまで出来るのはすごい。

もしかして今後なにか新しいサービスの提供を考えているのかな?


その後は、映画鑑賞やランチ、買い物などをひととおり済ませて、夕方に帰宅。

夕食を食べてお風呂に入る。

わりと充実した1日を送ったけど、今夜はもうひとつのお楽しみがある。

なんだかんだタブレットを受け取ってから楽しみにしていた動画配信だ。


そして、タブレットに通知が届く。

いよいよ動画配信が始まる。


------


「あれ?

 怪獣じゃなくて女の人なんだ。」



私は少し驚いた。

怪獣映画を想像してと言われていたから怪獣が出てくるのかと思っていたけど、

映っていたのは女の人だった。

悪魔の翼やツノ、尻尾がついている。

仮装かな?


どしぃぃぃぃん……

どすぅぅぅぅん……


足音を響かせながら悪魔の仮装の女の人は歩き始める。

足元には小さな家が建ち並んでいるけど、

簡単に踏みつぶされてぺちゃんこになっていく。

怪獣サイズよりも大きいような……?


悪魔の人の足の爪の高さが二階建ての家の屋根に届いているくらいだから……

悪魔の人の身長は大体500メートルくらい?



「いやいや、体長500メートルの怪獣って居るの?

 怪獣って高層ビルくらいの高さくらいのイメージだけど……」



想像以上の大きさでそこでもちょっと驚いているところでカメラが切り替わる。

上空から悪魔の人を後ろから映したアングルだ。

ライトアップされている海沿いの大都市の方へ向かっている。


この建物の並びは見覚えがある。

黄兵沐市だ。


ゆっくりと歩いているように見えるけど、

1分くらいであっという間に黄兵沐市の中心部にたどり着いてしまった。



「それにしても、本当に大きい。

 その辺のビルなら簡単に跨げそう。」



横から悪魔の人を映しているカメラに切り替わる。

その辺のビルなら膝にも届かず、

ちらほらとある大きなビルも簡単に跨げる程度の小ささだ。

それにしても黄兵沐市らしい街並みに見える、再現度がすごい。


すると悪魔の人はゆっくりと足を上げて……


ずがぁぁぁぁん!!


中心部へと容赦なく踏み入れ始めた。

とてつもない音とともに建物が踏み抜かれて崩れ去っていく。

壊れ方もとてもリアルだ。



「街の再現度が高いとこだわりがある、って感じよね。

 見慣れたところだからよく分かってちょっと面白いかも?」



悪魔の人はどんどん街に踏み入れていく。

建ち並ぶビルたちを踏みつぶしていったり、蹴散らして崩したり。


警報音が鳴り響くビル街を

それより数倍大きな悪魔の人が足で蹴散らしていく。


2、3分ほど悪魔の人が街を歩き回ったところでカメラが切り替わる。

そこもまた見慣れた建物だった。



「あっ、私の職場のあるビル。」



どしぃぃぃぃん!


その数秒後、悪魔の人によりひと踏みで壊されてしまった。

平日になると1時間かけて行かないといけない場所。

そしてたくさんの仕事をして疲れ果てる場所。

そこが今、一瞬で無くなってしまった。


たぶん誰も敵わないような、

本当に神の使いのような悪魔の人が職場を破壊してくれた。

平日の苦しみから解放してくれた。

私の代わりに、私のために。

不思議と、爽快だった。


と、そのときスマホに通知が飛んでくる。

この通知音はチャットアプリやメールではない。



「今いいところなのに……」



ため息をつきながらスマホを確認する。

この通知は……緊急速報?



---<【緊急警報】黄兵沐市にて正体不明の巨大生命体出現中。>---

---<【緊急警報】近隣住人は至急避難を開始してください。>---



「えっ、なにこれ?

 そういう演出?」



タブレットの画面を確認すると、悪魔の人は今度は黄兵沐駅のすぐ近くに居る。

この街で1番大きな駅だ。

駅の建物も周辺の景色も私が知っているものとほぼ変わらない。

むしろ本物のようだ。


まさか……

神の使いは本当にそんなことができるの?

急いでスマホのニュースサイトを確認してみる。



「もしかして、これって……」



そのまさかだった。

ニュースサイトのトップで緊急速報が行われている。


そこでは黄兵沐市の中心部が見渡せるカメラの映像が流れていて、

大きな悪魔の人が映っている。


つまりこれは特撮ではなく、現実の生中継。


ずがぁぁぁぁん!

ばきばきばきばき……


突然、タブレットの方から大きな音が聞こえた。

見てみると、悪魔の人が黄兵沐駅を踏み荒らして粉々にしている映像が流れていた。



「わぁ……

 なんだか、とんでもないことになっちゃってる……?」



もしかしたら私はとんでもないお願いをしてしまったのかもしれない。

実際に神罰が行われている。

会社も街も悪魔の人がめちゃくちゃにしている。


正直、本当なのか演出なのかまだ分からない。

分からないというより、本当のことだと受け入れられていない。



「分からない、けど……」



だけど、ひとつだけ確実なことがある。

悪魔の人が街を破壊する様子を見ていると、とてもドキドキする。


私の不満を私の代わりに晴らしてくれる。

今も私のためにつまらない社会を破壊してくれている。


そしてなにより、これで社会が大きく変わるなら、いいのかもしれない。



「……神罰をお願いしたのは私だもんね。

 だったら、思いっきりやっちゃえ……!」



私はタブレットの画面を夢中で見つめる。

カメラは悪魔の人の後ろから街を見下ろすようなアングルだ。

向こう側にあるのは新黄兵沐駅。

高速鉄道用の駅で、その周辺もわりと栄えている。


そして悪魔の人はさっき踏み荒らした黄兵沐駅だった場所に仁王立ちになっていて、

両手の人差し指の先に悪魔の人の拳くらいの大きさの光の球を作っている。


すると、左手側の光の弾を新黄兵沐駅のある地区へと飛ばした。


ドガァァァァァァンン!!


球が地面についた瞬間、大きな光のドームが一帯を包み込み、

同時に巨大な爆発音が響き渡った。


ビイィィッ!

ズドドドドドドッッ!!


光のドームがまだ消えていない状態にも関わらず、

悪魔の人は右手の光の球から光線を足元に向けて放ち始めた。


悪魔の人の足元、つまり黄兵沐市の街並みは

光線が当たると一瞬で粉々に破壊される。

光線の通った跡は瓦礫だらけになって、

燃え続けているところばかりになっていった。



「すごい威力……

 神罰というか、本当に神の裁きみたい。」



そんな光線を悪魔の人は30秒くらい容赦なく撃ち続けた。

光線が止まったときには黄兵沐市の半分ほどが焼け野原となってしまっていた。


左手の光の球により大爆発が起きていた新黄兵沐駅のまわりは

瓦礫もない焼け焦げたクレーターのようになってしまっていた。


神罰された黄兵沐市をしっかりと見せてくれた配信はここで終わった。



「……まだちょっと本当かどうか分かっていないかも。」



配信が終わるとすぐに私はベッドに寝転がった。

この10分ちょっとでとんでもないものを見せつけられた。


怪獣よりも大きな悪魔の人が出てきて、

黄兵沐市がめちゃくちゃになって……


常識では考えられないことが続いてちょっと疲れてしまった。


ミシミシッ……


と、小さくガラスが軋む音がした。

もしかしたら幽霊?

思わず非常識なことを考えてしまったけど、すぐに冷静になった。



「……今の、もしかして空振?」



空振。

火山の噴火などで大きな爆発が起きたときに空気の衝撃波が遠くまで届く現象。

だいたい音と同じ速さで衝撃波が届く、だったはず。


もし新黄兵沐駅あたりで大爆発が起きたのなら、

その1分半後くらいに届く。

……配信のタイミングとあっている。



「やっぱり、本当に神罰しちゃったんだ。

 私が、お願いしたから……」



正直に言う。

このとき私は、興奮してしまった。

私のために神さまの使いの人たちが神罰してくれたことに。

私の意思が社会を動かすほどの大きなものであることに。


これを全能感っていうのかな。

そのまま気持ちが高ぶってしまって、

寝るまでに2時間くらいかかった気がする。


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三連休3日目、月曜日。

夕方、私はまた佐藤さんに会いに行った。

タブレットを返すためだ。



『昨日はいかがでしたか?』


「正直、本当にこうなるとは思っていなくて驚いています。

 興奮もしちゃいましたが……えっと。」



私は佐藤さんに考えていることを話した。


今朝目覚めて、改めてニュースを調べた。

やっぱり神罰は本当に起きていたと改めて理解した。

黄兵沐市はとてつもない被害を受けていて、

今でも火事になっている地域が少なくない。


死者や行方不明者は100万人以上、

黄兵沐駅と新黄兵沐駅が破壊されたことで電車も動けない状態で

その影響を受けている人はその数倍居るらしい。


正体不明の巨大生命体もあの後消えてしまったようで、

神が降臨して現代社会を裁きに来ただとか、

巨大化技術が密かに防衛軍で開発されていてその実験されただとか、

実は魔法が実在していて、魔法がないと思い込む魔法をかけられているだとか、

いろいろと言われているらしい。

私の名前はまったく出そうにない。


これらのことを私のお願いひとつでできてしまった。

これが神の気分なのかと興奮してしまった。


ここまでは、よかった。


昼過ぎ、会社からメールが届いた。

内容を簡単にまとめると、

黄兵沐の職場が全壊したから私は別の職場を借りて働くことになった。

準備があるから次の出社は来週の月曜日からとなったけど、

片道1時間半とちょっとで行けるからと手当は来週からの通勤費のみ。

……とのこと。


他にも、近くのスーパーやコンビニでは

神罰で混乱した人たちが買占めをしていったみたいで、

棚が空っぽになっていた。


しかも噂では、

黄兵沐市復興のために復興税を検討しているらしい。

このままだとじわじわと財布の中身が寂しくなっていってしまう。


社会が変わればもっと幸せになれるとなんとなく思っていた。

要するに、私の想像力が足りていなかったのだろう。

もしかしたら、方法が間違っていたのかもしれない。



「てっきりそういう設定で動画を作成するのかと思って

 軽い気持ちでお願いしましたけど……

 いざ本当にこういうことを起こしても案外うまくいかないんですね。」


『あぁ、そういうことでも差し支えないと言った件ですね。

 今からでも可能ですよ?』


「ええと、昨日のようなものを動画でほしいわけではなくて……」


『はい、分かっていますよ。

 昨晩の神罰を現実ではなくて動画撮影ということにする。

 つまり、現実では起きなかったことにすることが可能です。』



思わず私は顔を上げて佐藤さんを見た。

現実では起きなかったことにする、ということは……まさか。



『昨晩の神罰は起きなかった。

 そういう過去に書き換えることができるということです。』


「そんな、ゲームのリセットみたいなことが……?」


『できますよ?

 私たちは神のお使いのようなものですから?』


「お願いします!」



私はすぐに頭を下げた。

私自身は別に神のお使いのような力を持っているわけではない。

お願いを聞いてもらっただけで、それは私の力ではない。

調子に乗っていたのだ。


こんな取り返しのつかないことをしたのにリセットができる。

私はなんてラッキーなんだろう。

これからはもっと……



『かしこまりました。

 ただ、リセットには手数料が必要でして。

 お代は不要なのですが、貴女のお手伝いが必要になりますが……?』


「お手伝い、ですか?

 もちろんできる限り頑張ります。」


『頑張るというほどでもないのですが……

 執行者をやっていただきます。

 あっ、1度だけで問題ありませんよ?』



……えっ?

私が、執行者になる……?


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つづく。


~2022.12.29 追記~

後編公開しました。

https://th-chara-gts.fanbox.cc/posts/5010448

Comments

ありがとうございますー。 運よく(?)罰が与えられる場所に居られるといいですね?

ナーヴ

神罰とてもよき... 間近で眺めたい...(神罰与えて欲しい...)

八雲橙


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