XaiJu
ナーヴ
ナーヴ

fanbox


SS_御阿礼の大きくて小さな旅

毎度のごとく東方Projectのキャラですが、

今回は原作ゲームでは登場しないキャラです。


ご存じの方も少なくないかと思いますが、

東方Projectには原作ゲーム以外にも

音楽CD(いわゆる秘封)や書籍(儚月抄、三月精など)があります。


その中から設定本みたいな本、東方求聞史紀や求聞口授の主役?キャラです。

旧作曲のサントラである幺樂団の歴史のジャケットのキャラでもあります。


それでは本題。

東方Projectより、稗田阿求。

友人の本居小鈴から変わった本を紹介してもらいます。

ひ弱な阿求でもいろいろな意味で楽しめるそうです。

(約4,500字)


※無断転載禁止


------------


「本当かは分からないけど、ここが幻想郷の外の世界……

 これはなかなか、面白そう?」



彼女の目の前に広がっているのは、人口数万人規模の地方のとある都市。

それを街はずれから眺める彼女は見慣れない景色に小さく胸を高鳴らせている。

身長が普段の約100倍、約150メートルの大きさの状態で。


話は数時間前にさかのぼる。


------


『ねえ、阿求。

 貸してあげるから今夜はこれ使ってみてよ。』


「使うって……ただの本みたいだけど?」



阿求の住む人里にある貸本屋。

そこに居るのは、彼女の友達の本居小鈴。

そんな彼女から1冊の本を手渡されたのだ。


本を開いて中を確認すると、どうやら見知らぬ土地の地図のようだ。

幻想郷の外の世界の地図なのか、あるいは想像上の地図なのか。

場所によっては景観の写真もあわせて掲載されている。



『たしかに、普通に読むだけだとただの本だよ。

 だけど、この本を上手く使うと……なんと旅行を楽しめるの!』


「写真を観て行ったつもりになる、ってことかしら?

 さすがに無理があるんじゃ……」


『違う違う。

 寝る前に行きたい場所をこの本から探しておいて、

 枕の下にこの本を置いて、その場所を想像しながら寝ればいいのよ。』


「あぁ、夢に出てくるってこと?」


『うーん、似ているけど違うのよね。

 まあ百聞は一見に如かず、驚くと思うわ?』



寝るときに枕の下にこの本を置いて寝るだけならたしかに簡単だ。

とりあえず今夜試してみよう。


阿求はその本を借りることにした。



『そういえば。

 阿求は動き回るの大変だと思うから、場所と一緒に怪獣を想像しておくといいよ?

 そうすれば移動も楽になると思うわ?』


「えっと……よく分からないけど、分かったわ。」



やってみれば分かるでしょう。

むしろ下手に聞いて知ってしまうと楽しみが減るかもしれない。


自宅に帰った彼女は言われたとおり、

行きたい場所を決め、枕の下に本を置き、

その場所と怪獣をぼんやりと想像しながら眠りについた。


そして、現在に至る。


------


箱庭のような小ささの街並みを見渡すと、

いよいよ彼女は動き始める。



「たしかに幻想郷よりずっと栄えている街のようだけど、

 小さければ移動距離が短いから楽だわ。

 じゃあ早速見て回りましょうか……っと。」



ズシィィィィン……


何気ない彼女の1歩によって、

足元の住宅街の民家が数軒ほど踏みつぶされてしまった。

怪獣のような大きさなのだから無理もないだろう。


しかし彼女は小さな違和感を覚えた。



「んっ……?

 眠ったときに裸足だったから今も裸足なのはいいとして、

 夢の世界にしては踏み心地がしっかりしている……?」



夢の世界だろうから踏みつぶしても構わないだろうと

軽い気持ちで踏み込んだ彼女だったが、

まるで霜柱を踏みつけたような感触が足裏に返ってきたのだ。


足音も、大きく重い音が響き渡っており、

箱庭というよりは本当に自身が大きくなっているかのような錯覚。


もしかして夢ではなく、本当に大きくなって地図が示す場所に転移した?



「……えぇ、きっとこれは夢の世界よね。

 小鈴もやったことあるみたいだし、問題ないでしょう。

 さあ、旅行ということで、どんどん見てまわりましょうか。」



そもそも巨大化していることが普通はあり得ないはず。

むしろ非日常な場所を非日常な大きさで楽しまないのは損をしてしまいそうだ。


意を決した彼女は改めて住宅街を歩き始める。


ドシィィィィン! ズドォォォォン!


ただ歩くというより、少しだけ踏みつける勢いで住宅街を踏み荒らしていく。

足元の民家たちは一瞬で瓦礫と化して、

周囲の民家も地響きでヒビが入ったり倒壊したり。


人間のなかでもひ弱な彼女でも

大きくなればこの程度のことはとても簡単なことになる。

まるで大妖怪の力を突然手に入れてしまったかのように。



「それにしても、外の世界はすごいわね。

 特にあの細長い建物……今の私の身長くらいありそう?」



もはや住宅街程度では満足できなくなってしまった彼女は

大きな建物の多い街の中心地へ目を向けると、そのままそちらへと向かい始める。

もはや旅行ではなく、侵攻である。


道に従うつもりなど一切ない彼女が歩くだけで、

足元の建物や車を踏みつぶしたり蹴散らしたり、

舗装された道路は踏み砕きながら住人が通れなくなるほどの足跡を刻んだり。


と、進路上に見えてきたのは大型商業施設。

高さこそ彼女のすねの高さに届くかどうかというほどだが、

敷地の広さは相当なものだ。



「高い建物もあるけど、こういった広い敷地いっぱいに建つものもあるのね。

 幻想郷では見ない建物だからなかなか新鮮。

 具体的な広さは……えいっ、えいっ!」



ズドォォォォン! ドゴォォォォン!

ズガァァァァン! ズシャァァァッ!



施設の上に足をかざすと、そのまま容赦なく足を踏み下ろす。

屋上の駐車場から内部の数階分のフロアまで一気に踏み抜いてしまう。


こういうのを踏みつける感触……

新鮮で征服感があって、楽しいかも?


彼女はどこか興奮を覚えながら、何度も施設を踏みつけていく。

そして、7回8回ほど踏みつけたところで

内部も外壁も崩壊していき、建物の原型がなくなってしまった。



「ふう。

 この大きさでも何度も踏みつける必要があるくらいに広かったわね。

 実際にやってみると実感があって理解が深まるわ?」



施設を歩いて広さを実感するのではなく、踏みつけて広さを実感する。

この大きさに早くも慣れつつあるようだ。


大型商業施設をしっかり壊滅させたところで改めて街の中心地へと向かい始める。


中心地に近づくほど道路の車線数は増えて広くなり、

通り沿いの建物も高い階層のものが増え始める。

そしてそこを多くの自動車たちが行き交う。


そんな地区に、建物より大きな彼女が侵入する。



「んん、思ったより歩きにくいわね。

 こんなに窮屈だとは思っていなかったわ……?」



ドゴォォォォン! ガシャァァァァン……


通り沿いの建物は彼女の膝より高い建物も少なくない。

彼女にとっては藪をかき分けるように歩いている感覚に近いようだ。

かといって、大通りを通ろうとしたところで、通りの幅は足の幅より少し広い程度。

結局、歩き方を相当工夫しない限りは通り沿いの建物に足が当たってしまう。


もちろん、今の彼女はそのような配慮をするつもりが一切ないため、

通り沿いの建物を踏みつけながら脚でなぎ倒すように歩いていく。


彼女の通ったところはほぼ全ての建物が倒壊しており、

通りに大量の瓦礫が溢れて道を塞いでいるが、

ある意味で窮屈さが解消されている状態ともいえるかもしれない。



「さてと、このあたりがこの街でもっとも大きな建物のある地区ね。

 本当に私の身長に届くくらいの大きさで驚かされるわ……」



街の中心地に到着した彼女。

彼女の周囲には腰付近まで届く高さのビルが建ち並び、

一部は胸元に届く高さのものもある。

最も高いものになると口元に屋上があるほどの高さだ。


これほど大きな建物の大きさを体で実感するためには……



「さすがに思い切った動きが必要よね。

 こう、えーいっ!」



ズガァァァァン! ガラガラガラ……


彼女は足を振り上げて高層ビルの下層部にキックをお見舞いする。

あまり慣れない動きなのか、やや力の感じられない蹴りではあった。

それでも威力は充分で、ガラスの割れる音やコンクリートが壊れる音が響き渡り、

彼女の足が当たったところは簡単に抉れてしまい、そこから建物が折れてしまった。

抉れた階層より上の部分は支えを失い、そのまま地上へと降り注いで粉々に。

彼女の蹴り一発で高層ビルが無残な姿になり果ててしまった。



「こんなに大きいものを壊せるなんて、まるで大妖怪になったみたい。

 こういうのも、楽しいかも?」


静かに興奮を覚えて小さく体を震わせながら、

今度は腕を振り下ろして拳を叩きつける。


ドゴォォォォン! バキバキバキッ!


彼女の鉄槌は屋上を叩き割るだけでなく、

瓦割りのように上層階をどんどん割っていく。

拳の勢いは最後まで……とはいかなかったものの、

真ん中付近まではしっかりと叩き割ってしまった。



「叩いたり蹴ったりしても痛くないし、ケガもしなさそう?

 じゃあ、一番大きな建物は……んんっ!」



ドドドド…… ズガシャァァァァン!!


この街の一番大きな高層ビルに向けて走り出し、

勢いのままに全身で体当たりしたのだ。


高層ビルの横から体重数万トンの女の子が体当たりするということを

考えられたつくりであるはずもなく、

彼女の身体で押し倒されるがままにビルは傾き、

周囲の建物も巻き込みながらなぎ倒され、

そのまま体当たりした彼女の身体で押しつぶされてしまった。



「はふ、全身を使ってみるのもなかなか新鮮でいいかも?

 ただ、さすがにちょっと疲れちゃうわね……」



ゆっくりと立ち上がる彼女。

服についた瓦礫の破片などを軽く払いながらも息が上がっている様子。


巨大化によりひ弱さはある程度カバーできているものの、

やはり動き回るとすぐに体力が切れてしまうようだ。

街を襲う楽しみに目覚めてしまったが、身体が追いつかない状態だ。


周囲には高層ビルがまだそれなりに残っている。



「もっともっと大きくなれば、まとめて楽に壊せちゃうのかしら……?」



さらなる大きな姿を想像する彼女。

その瞬間、彼女の身体が淡く光始める。


ズゴゴゴゴゴゴ……


周囲の建物をなぎ倒しながら彼女の身体は巨大化していく。

街の建物を足元に置き去りにし、頭が雲を突き抜けていき……



「……わぁ。

 想像するだけで大きくなれるなんて、すごい世界ね?」



巨大化が止まったときには、彼女の身長は約15000メートルとなっていた。

先ほどまでの100倍、普段の1万倍だ。


彼女が足元を覗きこめば、

今まで居た街を片足だけで覆いつくせるほどの小ささとなっている。

つまり、残っている地区を1歩で全て終わらせられるということだ。



「これなら、ちゃんと街を残さず全部楽しむことができるわね。

 こうやって……えいっ。」



ズドォォォォォォンン!!


右足を軽く上げて、そのままゆっくりと街に足を踏み下ろす。

先ほどまで遊んでいた街全てを

長さ約2キロ以上、幅約1キロの右足が一瞬でまとめてつぶしてしまった。


住宅街も中心地も、彼女が寄らなかった地区も、

たったひと踏みで全滅したのである。



「これはこれで、征服感がすごいわね。

 大妖怪ごっこ~とか小鈴ならやりそうだわ?」



グリグリグリ…… ズシャァァァァッ……


踏みつけたところを踏みにじり、

建物の瓦礫ひとつ残さないほどに足裏ですりつぶしていく。

街だったものは全て、彼女の足の裏にこびりついたり

足跡として踏み固められたりしてしまった。



「ふう。

 思ったより疲れちゃったから、このくらいでいいかしら。

 思っていたのとは違ったけど……でも新鮮で楽しかったわ。」


程よい疲労感とともに充実感に浸る彼女。

ひ弱な体質であるが故にその大きな身体の虜となってしまったようだ。


彼女が次に気が付いたとき、彼女はいつもの布団の中で朝を迎えるだろう。

今度は小鈴と2人で来てみたいかも。

そんなことを考えるほどに、元には戻れない興奮を覚えてしまいながら。


------


おしまい。


More Creators