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SS_厄神さまの怪獣特撮撮影(Skeb)

先日Skebで書いたものをこちらでも公開します。

Skebでも公開済なので全体公開です。


初めてお金をいただいて書いたものです。

依頼者とは付き合いが長いので、その人の好みに応えられるようにしました。


東方Projectより、鍵山雛。

友人の河城にとりの頼みで特撮撮影の怪獣役に。

ただし一筋縄ではいかないようです。

(約8,500字)


R-18描写があるのでご注意ください。


※無断転載禁止


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「……相変わらず、何を考えているか分からないわ。」


真っ暗な部屋のなかでひとり、鍵山雛は一糸纏わぬ姿で小さくため息をついていた。

何故このようなことになったのか、話は数十分前にさかのぼる。


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『今日は私の発明したもので遊んでもらいたいんだ。』


雛の友人、河城にとりは楽しそうに声をかける。

このやりとりは今に始まったことではない。

昔からときどき行われていることだ。


『今回のお題は、特撮における仮想と現実のいいところ取り!

 そもそも特撮っていうのは特殊撮影の略で、いろいろなものを指すんだけど、

 今回は怪獣映画に焦点を当てているよ。

 怪獣映画はその名の通り、怪獣が出てくる映画で、

 伊吹鬼みたいな大きな生物が出てくるんだ。

 でも普通は大きくなることはできないから、大体2つの方法で撮影するんだよね。

 1つは怪獣の着ぐるみと小さな建物や地形を用意して、

 怪獣を相対的に大きく見せる、現実空間で撮影する方法。

 もう1つは特別な機器を用意してひとつの仮想空間を用意して、

 そこで怪獣や街を配置する、仮想空間で撮影する方法。

 それぞれには利点と欠点があって……』


にとりの熱心な語りを雛は静かに聞き続ける。

実際のところ、何を言っているかはさほど理解できていない。

にとりが楽しそうに語っている様子そのものを楽しんでいる。


『……ということなんだけど、いいかな?』


「えぇ、いいわよ。」


『ありがとう!

 何すればいいかは都度お願いするから、よろしく!

 じゃあ早速、あそこに入ってから服脱いで、

 部屋に置いてあるものを被っておいてね?』


「あそこの部屋に入って……えっ。」


難しい話は分かっていないが、

怪獣映画撮影の環境を用意したから怪獣役になってほしい

というのは理解できている。

しかし何故服を脱ぐ必要が?

理由は分からないが、今までの長い語りの中で説明していたかもしれない。

とりあえず始まれば何か分かるだろう。


指示された部屋に入り、服も履物も全て脱いでいく雛。

ぽつんとひとり、何もなさそうな真っ暗な部屋にたたずむ。


「……相変わらず、何を考えているか分からないわ。」


小さくため息をつきながらも、置いてあった被りものを身につける。

視界を覆うものがついており、少し頭が重くなるが、さほど気にならない。


静かににとりの指示を待つのだった。



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『始めるよ!

 明るくなるから気をつけてね?』


どこからともなくにとりの声が聞こえると同時に

少しずつ雛の視界が明るくなっていく。


足元には多数の小さな民家が建ち並び、少し遠くには高層ビルが多数集まっている。

空から見下ろしている、というよりは世界が小さくなっているような景色である。


「……あら、服を着ているわ?」


雛が自身の身体を見たときに気づく。

普段の服を身に纏っている。

脱いだ意味は……?


『うん、問題なく見えているようだね。

 歩きにくいと思うけど、早速歩いてみて?』


何か事情があるのだろう。

雛の疑問は軽く流されてしまったが、彼女は深く考えないことにした。


言われたとおり、雛は一歩前に足を進めてみる。

すぐに違和感を覚えた。

体が重い、というより機敏に体を動かせない。

水の中に居る感覚に近いが、それとも少し違うようだ。


踏み下ろした瞬間の感触も違う。

明らかに小さな地響きと重い音が周囲に広がっている。


『いいねぇ!

 身長約100メートルの雛、一歩の重量感も文句なし!

 踏みつけられた民家は簡単にぺちゃんこだね!』


「ぺちゃんこ?」


にとりの言葉に思わず改めて足元を見る雛。

ブーツで踏みつけたところには間違いなく民家があった様子が見てとれる。

踏みつけたことで地面が沈み、

踏み下ろしたすぐ周辺の建物も傾いたり崩れたりしている。


そういえば、踏みつけた瞬間にほんの少しだけ何を踏んだ感触が

あったようななかったような。


『あれ、あんまり踏みつぶした感触はなかった?

 一応そこも対応したつもりなんだけど……?』


「体の動かしにくさが先に気になっちゃったから、気づかなかっただけかも?」


『そこはもちろん、こだわっているよ?

 普段どおりに体が動いたら箱庭に居るのと変わらないからね。

 大きくなったときの身体の動きは想像でしかないけど……

 とりあえずもう少し試してみて?』


雛は小さく頷く。

1歩、2歩、3歩……ゆっくりと住宅地を踏み荒らしていく。

踏み下ろされる度に起こる地響きと重い音。

踏みつけられた民家は全く抵抗できずに一瞬でその形を失っていく。


にとりはその様子を見て満足気だ。

一方の雛も、簡単に潰れるのを見ながら怪獣ごっこの楽しさを感じ始めている。

ただ、同時に物足りなさも感じているようだ。


「身体を動かす時の違和感には少し慣れてきたけど、

 やっぱり履物のせいで感触が分かりにくいかもしれないわ?」


『それなら履物脱いで試してもらっていい?

 うーん、履物で感触が分かりにくくなるのはよくないかな?

 いやでもそっちの方が現実に近い気がするし……ぶつぶつ……』


にとりの独り言をよそに、雛はブーツと黒ニーソを脱いでいく。

脱いだブーツは適当に立てて置いておき、ニーソもブーツにかけておく。


裸足となってそびえ立った雛は改めて住宅地に足を踏み下ろす。

ブーツのときよりは地響きや重い音が若干小さくなったものの、

大した問題ではない。


一方で、雛にとっては大きな変化があった。

やはり素足の方が踏みつけた感覚がしっかりと伝わってきたのだ。


踏みつけた瞬間、ほんの一瞬だけ抵抗してくる建物。

直後に崩れ去って瓦礫と化していき、

チクっとするようなくすぐったいような感触を雛に与える。

そのまま足跡として押しつぶされた直後にもザラつく残骸は刺激を感じさせる。

快感が漏れてしまったかのように、小さな声が思わず出てしまう。


「っっ……感触、伝わってきたわ。」


『それならよかった!

 やっぱり感触が伝わると楽しいよね。』


にとりの発言に頷きつつ、その後も住宅地を軽く歩き回る雛。

あっという間に住宅地は足跡だらけの廃墟と化していく。


立てて置いてあったブーツも地響きにより倒れてしまえば

不運にもいくつかの民家がブーツの自重だけで潰されてしまっていた。




『……よし、だいぶ慣れてきたみたいだね!

 じゃあ次は大きな建物のある地区に向かって!』


「えぇ、分かったわ?

 まだもう少し民家が残っているけど……?」


『いいのいいの。

 全部潰そうとすると作業になって面白くなくなっちゃうからね?』


指示された通り、雛は高層ビルの建ち並ぶ地区へと歩みを進めていく。

この大きさなら道に従わずともまっすぐ目的地へ向かうことができる。


ふと足元を見ると、道には小さなものが雛から離れて動いていることに気づく。

小さな点のようなもの。小さな箱のようなものなどなど……

大きな脅威から逃げるのは自然な考え方だと思いつつ、

細かいところまで凝っていることに感心する雛であった。


移動するだけで民家を踏みつぶし、道路に足跡を刻んで封鎖していく。

そして川に架かった橋を使うことなく軽く跨いでしまえば、

高層ビルの建ち並ぶ地区へとあっさり侵入してしまった。




『ここで遊んでもらう前に、雛にはお迎えが居るよ?』


いざ高層ビルへと近づこうとした矢先、にとりから声がかかる。

雛の一歩先には十数両の戦車が待ち構えていた。

いわゆる防衛ラインである。


『怪獣は人類の脅威だから敵として扱われがちなんだよね。

 だから、怪獣から街を守るために……怪獣に攻撃するんだ!』


「えっ、ちょっ……」


にとりの号令とともに戦車たちが一斉に砲撃を開始する。

よく見ると戦車以外にも一部の建物の屋上に砲台が設置されて攻撃してきている。


突然の出来事に思わずうろたえる雛。

身構えることもできず、ただ砲撃を体で受け止めることに。

さすがに100メートルの高さのところまでは届かないのか、

戦車や砲台は雛のお腹や脚に向けて砲撃を行っている。


「……あ、あら?

 痛いわけではないのね?」


『それはもちろん。

 怪獣がこれで痛がって退散したら撮影にならないからね。

 むしろ人類は無力である、というのを示すためのお約束だよ。』


服にも素肌にも一切傷を残せない程のちっぽけな攻撃。

これでも必死の抵抗らしい。

敵わないと分かっているのなら逃げればいいのに。

でも大切なものを守るためには体を張って守りたい、っていう気持ちも分かるわね。


むしろ微笑ましく攻撃を受け止めている雛。

しばらく攻撃が続いたものの、だんだんと勢いが弱まっていった。

弾切れなどだろう。


『せっかく雛が黙って受け止めてあげていたのに、全然ダメだね?

 雛も攻撃されっぱなしだとイヤでしょう?』


「白々しいんだから……

 でもまあ、攻撃されたのだから、反撃されても文句は言えないわよね?」


戦車に歩み寄ると、雛は戦車を容赦なく踏みつぶす。

さすがに民家よりは装甲が硬いものの、それでも潰れてしまうことには変わりない。


力強い踏みつけにより小さく浮き上がった戦車たちは後退を始める。

が、雛がそれを逃がすはずもない。

ある戦車は容赦なく蹴飛ばされる。

装甲により重量があるとはいえ、雛にとっては小さな石のようなものである。

蹴飛ばされた戦車は建物を貫通し、別の建物に突き刺さり、爆発炎上してしまう。

戦車が貫通して抉られた建物はバランスを失いそのまま崩れ去っていく。

別の戦車は足で薙ぎ払われて数両まとめて吹き飛ばされる。

こちらも建物に突き刺さり建物の瓦礫に埋もれ、

あっという間に鉄くずと化してしまう。


あとは砲台の置いてある建物を上から一気に踏み抜いたり

手を振り下ろして叩き潰したり。

ものの数十秒で防衛ラインが壊滅してしまった。


『あーあ、追い払うどころか時間稼ぎにもならなかったね。

 でもおかげで、雛のかっこよさがしっかり表現できていたよ!』


「こんなことでいいなら構わないわ?

 それじゃあ、このまま……?」


『うん、大きな建物のあるところでいっぱい動き回って!』




防衛ラインを突破すると、数歩進むだけで高層ビルや大型施設が雛をお迎えする。

身長約100メートルの雛と同じ、それ以上のビルもちらほらと見える。


「こんな大きな建物、幻想郷では見かけないわね。

 新鮮で楽しいかも?」


まずは足元にあった百貨店に足を踏み下ろす。

今までと同じように屋上から地上まで簡単に踏み抜いてしまう。

ただし今までの建物と異なるのは、一歩では建物の一部しか崩壊していないという点である。


そこで雛はそのまま足を前に、蹴飛ばすように動かしてみる。

建物内に突如降ってきた足が今度は前に勢いよく動き始めると

無事だった部分を一気に抉り取っていき、

そのまま建物の外に大量の瓦礫がばら撒かれていく。

ばら撒かれた瓦礫は隣の建物にぶつかって穴だらけにしていたり

道路に散らばって封鎖していたりと二次被害を起こしている。


百貨店の方は外壁だけでなんとか崩れない状態であったが、

蹴飛ばした後に何気なく戻された足により外壁の一部が踏み抜かれてしまう。

それと同時に自身の重さを支えきれなくなった外壁が

道路に向かって一枚板のまま倒れてしまった。

周囲には砂埃が舞い上がる。

外壁に埋もれたものも少なくないようだ。


「次は、こっちかしら?」


『駅だね!

 賢い侵略者なら優先して壊す施設だけど、怪獣映画だとあまり狙われないかも?』


百貨店を瓦礫に変えると、今度はすぐ近くの駅に踏み入れる。

雛にとっては何気ない一歩であったが、

駅の建物の一部はもちろん、停車中の電車も簡単に踏みつぶされていた。

さらに、当然のことではあるが、

線路に足跡が刻まれたことによりその路線は使い物にならなくなってしまった。


それだけでも充分な被害が出ているが、雛はさらにダメ押しでもう一歩踏み入れる。

雛にとっては建物の原型が残っていると壊したという実感がわかないらしい。

駅の上で一歩、また一歩と、足踏みをするようにダメ押しに次ぐダメ押しを行えば、あっという間に駅の原型はなくなってしまった。

当然、そこに停まっていた電車もひとつ残らず潰されてしまった。


「ふう、建物が大きいと意外と体動かすのね。

 こっちの方なんて特に……」


次に狙いを定めたのは駅(だったもの)の前にある高層ビル群。

雛の身長とほぼ同じ高さのものが両手で数える必要があるほどには建ち並んでいる。


さすがに足だけだと壊すのは難しそうだ。

そう判断した雛は、手始めに腕を振り下ろしてみる。

表面のガラスは粉砕し地上に降り注ぎ、

腕を振り下ろされたところが簡単に抉り取られていく。

斜めに腕が振り下ろされたことにより建物も斜めに抉られ、

上層階は支えを失い地上へと落ちていく。

数階分の建物が丸ごと地上に落ちるのだから、

その時の轟音と衝撃はすさまじいものだ。


もっとも、破壊した本人は一切気にする様子もない。

次はとビルに抱きついて、腕を使ってビルを抉っていく。

ミシミシとビルは悲鳴のような軋み音をあげながら抵抗していたが、

それも数秒耐えられたかどうか。

そのままビルはへし折られ、

今度は中層階より上の部分が雛に降り注ぎながら地上へと落ちていった。

もちろん雛に瓦礫が降り注いだところで枯葉を浴びる程度であり

大したものではなかったが、

足元の方はあっという間に瓦礫だらけとなっており大惨事となっていった。


そしてとどめに残った部分は根元を蹴飛ばして崩しにかかる。

力強く動かされた足により、下層部は一気に抉り取られてしまい、

そのまま重力に従うままにビルは傾いてなぎ倒されてしまった。


「怪獣ってなかなか大変ねぇ。

 でもたしかに気分はすっきりしそう?」


すぐ近くの別の高層ビルに狙いを定めると、

今度は少し勢いをつけて体当たりを試みる。

全身を使ってのしかかるようにぶつかれば、

ビルの一面の上から下まで、一気に抉り取られていく。

そのままビルは雛の全身に押されるがままになぎ倒されてしまった。

直後、のしかかる勢いだった雛は倒れるように地上にぶつかり、

今までにない地響きが一帯に広がっていった。

周囲の建物のガラスは粉々になり、建物には無数のヒビが入り、

すぐ近くの建物はあまりの衝撃に崩れ去ってしまった。


ゆっくりと起き上がり立ちあがる雛。

まだまだ高層ビルは残っており、遊びがいがありそう。


そう考えていた矢先、にとりが叫んだ。


『やっぱり高層ビルに埋もれる怪獣は映えない!』


「わっ……どうしたの、急に?」


『怪獣が肩身狭そうに建物の中に居るのって窮屈そうで、なんだかもったいない!』


全身を使えば高層ビルでも簡単に壊せる、

という意味では怪獣としての力強さは表現できる。

ただ、怪獣より大きな建物ばかりだと見た目として大きさが表現できない、

という主張らしい。


『ということで、雛には大きくなってもらうよ。

 いいね?』


「別に構わないけど……?」


雛が返事をするやいなや、雛の身体が大きくなり始める。

身長がすぐ近くにある建物を追い越していき、

地上にあるものがだんだんと小さく……

と、雛は気づいた。


「ちょっと、服が大きくなっていないわ!?」


『うん、仕様だよ?』


「し、しよう? ひゃぁっ!?」


雛が悲鳴を上げた瞬間、雛の服は破れて地上に散っていった。

そして裸のまま巨大化が進み、身長約1000メートルにまで巨大化してしまった。




『始める前に服脱いだでしょう?

 本物の服は無事だし、新鮮な体験ができたでしょう?』


「貴女ねぇ……」


たしかに気になることはあった。

裸になった準備したはずなのに、いざ始めると服を着ていた。

だったら最初から服を着ておけばよかったはずでは、と。


『まあまあ。

 だって、大きくなるために服脱いで~ってお願いしたら、脱ぐ?』


「それは……うーん、たしかに。」


雛にはいろいろと思うところはあったが、

本物の服を破ることは避けたいという彼女なりの配慮だろうということで

前向きに受け止めることにした。

そもそも怪獣ごっこという新鮮な遊びをしているのだから、

これもその一環ということにしよう。


『それにしても、やっぱり雛は綺麗だよね。

 怪獣ごっこじゃなくて、女神ごっこ、って感じ!』


「厄神(やくじん)なのだから当然でしょう?

 妖怪に近いといえばその通りだけど……」


『それなら、雛には女神ごっこって言えばよかったね。

 人間のために神の鉄槌を下す感じで?』


「だから女神ならごっこじゃないのだけど……

 でもたしかに、普段はこういうことしないものね。」


女神という人間と比較すれば上位の存在。

人間が虫などの下等と考えている存在に裸を見られても恥ずかしくないという感覚。

それに近いものを女神が持っているとするなら、それもまた自然なのかもしれない。

そんなことを雛なりに考えて納得していた。


『やっぱり周りの建物より大きいのはいいよね!

 せっかくなら踏み潰す以外でやってみようか。

 座ってみたり四つん這いになってみたり?』


「えぇ、分かったわ?」


まずは街にお尻をついて座ってみる。

約1000メートルに巨大化したこともあり、

座ったところはお尻の形に地面が少し沈み込んでいる。

そして脚を前に投げ出してみると、

雛の脚の高さだけでもビルの高さに負けていないことが分かる。


『そのまま脚を閉じたら、その一帯が一気に更地になりそうだね?』


にとりの発言に小さく頷くと、ゆっくりと脚を閉じていく。

2つの脚により建物たちが容赦なくなぎ倒されていく。

その様子は、脚に挟まれた場所に存在するもの全てに対して

同様に平等に最期の瞬間が間もなく訪れることを無慈悲に突き付けることに繋がる。


そのまま脚が閉じられると、雛の目の前数百メートルに広がっていた街の一帯は

脚により全て削り取られて更地と化していた。

一方の雛はというと、

大量の建物が瓦礫と化して太ももの内側を刺激することに快感を覚える程度だった。


「っと、次は四つん這いよね?」


快感を抑えつつ、お尻をあげてから四つん這いになると、

まだ手をつけていない地区へと進み始める。

四つん這いの姿勢でも腕の長さだけで200メートルを超えるため、

軽々と胴体が街の空を覆う状態となる。

そしてそのまま手のひらを街に叩きつけてしまえば、

そこにあった建物たちは踏み潰されるのと同様に

簡単にぺちゃんこになってしまった。

違いがあるとすれば、街に刻まれるのが足跡ではなく手形である、

ということだろうか。

そのまま前進するだけで雛は両手と膝で街を潰していく。


『せっかくなら、雛の綺麗でたわわなお胸でも潰してほしいなー?』


「も、もうっ……仕方ないわね。」


にとりからのお願いに少し顔を赤らめながらも、

四つん這いのまま胸の下に手を付けていない地区が来るように移動する。

そして両腕の支えをパッと離すと、空を覆っている胸がゆっくりと落ちてきて、

ずずぅんと地響きを起こしながら一帯を潰してしまった。

手や脚とは違い、力強く叩きつけられたわけではない胸。

しかし柔らかくもしっかりと重みのあるそれは、

人類にとっては鉄槌でしかなかった。


そして雛はそれに快感を得てしまっていた。

なかなか味わえない刺激、

身体を動かしてすり潰すことでさらにその刺激を得られてしまう。


「ん……これでいいの?」


『うん、とっても素敵だよ!』


ましてや見ている者から手放しに褒められている。

快感を得られて褒められてしまっては、高まってしまうのも仕方ない。




『雛にいっぱい動いてもらったから、こっちもいろいろと成果を得られたよ、

 ありがとう。』


「ふう、私も思ったより楽しめたわよ。」


『それならよかった。

 終わるときには少し離れたところで光ってるアレを押してね。

 でもせっかくだからもう少し遊んでいってもいいよ?

 私は席を外すからご自由に?』


少し気持ちを落ち着かせつつ、

雛が街のはずれを見ると星のような何かが光っているのを確認できた。

あれのことだろう。


「もう少し、ねぇ……どうしましょうか。

 どのくらい遊んでいいの?」


……返事がない。

もう席を外してしまったようだ。


「今ならにとりにも見られていない。

 でもあまり待たせるのもよくないわよね。」


どうしようかと悩んでいると、小さく体が震えた。

裸になったことにより軽い冷えと快感による興奮とが原因らしい。


「……用を足したくなっちゃったけど、遊んでいいのよね?」


四つん這いのまま、まだ手をつけていない地区へ不意に体を向ける。

この地区は住宅地よりは建物が多いものの、高層ビルはほぼ無いようだ。


「これも新鮮な体験のひとつ、やっちゃいましょう……」


ふるるっと小さく体が震えると同時に、黄色い水が放出され始める。

一度出し始めてしまえば最後、

抑えることはできず音を立てながら局所的な大豪雨が降り注ぎ始める。


バケツをひっくり返したような雨、という表現をすることはあるが

それが生ぬるいほどの勢いで降り注ぐことにより、あっという間に冠水していく。

さらには地上にあったものは全て押し流されて行き、

直撃していない地区にもどんどんなだれ込んでいく。


厄神のそれは聖水か、あるいは穢れた水か。

地上を池に変えてしまうだけでなく、

土壌に染み込めば水がなくなった後も相当な影響を残し続けるだろう。


突如発生した大豪雨は数十秒ほどで止んだ。

しかし雛の眼下に広がる地区は

あっという間に黄色い水に飲み込まれてしまっていた。

建物が沈むほどの被害ではなかったが、

移動が困難になるほどの冠水はしている状態だ。

放水量は推計7万トン以上、

半径300メートルの範囲を25センチ浸水させられるほどの量である。

もちろん、水は低いところへと向かうため、浸水自体はすぐに解消されるだろう。

その代わり被害範囲は広がるばかりである。

その様子を見下ろす雛は不思議な征服感を覚えたという。



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遊びが終了するとともに、にとりが用意した遊び場は全てなかったことになる。

しかし彼女たちの記憶にはしっかりと残っている。


いや、記憶だけではない。

にとりは雛の一連の行動を様々なカメラで撮影していたのだ。

特撮のため、と言っていたのだから当然といえば当然だが。


雛の最後の内緒の行為も撮影されていたかどうかは、謎のままの方が良いだろう。

撮影されていたところで、雛が感じたあの高まりは忘れられないのだから。



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おしまい。




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