全国大会目前。ボロボロ、ガタガタ。なんとか、ギリギリ、這々の体で。 それでもこのチームはあと一勝というところまでやってきた。 「だけどなあ、さすがにあそこには勝てないよ」 宿舎の廊下を歩きながら、坊主頭のひとりがこぼす。 「今回はあいつらが強豪校ばかり当たってくれたからうちが残ったようなもんだよな」 「過去試合みたけどやばいって」 「全員もうプロみたいなもんだよな」 カントクだってそんなこと知っているはずだよな、いまさらなんだってんだよ。そんなことをブツブツいいながら坊主頭たちはミーティングルームに入っていった。 そのカントクはじつはちょっとした有名人だった。あとすこしで全国大会が狙える、でもどうしても勝ち切れない。そんな学校に招かれて、数々のチームを檜舞台に送り込んできた「優勝請負人」として。しかしその手法は謎だった。一夜のミーティングで選手の雰囲気をガラリと変える、そんな伝説だけが独り歩きしていた。 「お前ら、明日負けると思っているだろう?」 坊主頭たちを前にカントクが苦笑いする。 そりゃそうですよー、誰かが呟く。 だよなー、とカントクも頷く。 「だから、やる気が出るボーナスを用意した。これをみろ」 手にした大型のタブレットの画面を選手たちに向けた。 映し出されていたのは彼らの試合中の、彼らの学校の応援席。 チアガールの一人が大写しになる。 短いスカートから覗くスラリとした長い脚。 腕を上げると上着からのぞく細いウエスト。 対比として胸の大きさが妙に強調される。 揺れるポニーテールと愛くるしい笑顔。 「芸能科の1年な。お前らもちろん知ってるよな?」 そりゃもちろん、坊主頭の中から声が漏れる。 「アイドル養成中だってさ」 「あれだけかわいけりゃな」 「グループじゃなくてソロって話もあるぞ」 「本格デビューしたらもう学校にもこないだろうなあ」 同じ生徒だというのに半ば別の世界の人の話をするように坊主頭たちからため息が漏れる。 彼らの間でささやきが一巡するのを待って監督が言葉をつなげる。 「明日勝ったらな、抱かせてやる」 え? ええっ?? カントクは何を言っているんだ? 坊主頭たちは顔を見合わせ、しかし次の言葉を待つ。 期待を込めて。 「邪魔の入らない場所を用意する。俺がこいつを呼び出す。口止めも俺が考えておく。お前たちは一晩好きなようにこの娘とセックスするだけだ」 ただし、明日の試合に勝ったらだ。ニヤリとカントクが笑った。 宿舎のホテルのミーティングルームの下の階にいた宿泊客たちは、突然の地鳴りのような揺れに驚いた。おいおい、明日試合だってのに派手な前祝いかい? 大丈夫かよ? ● 「全国大会出場おめでとうございます! ものすごい猛攻でしたね!」 ヒーローインタビューに答える坊主頭たちを、カントクは満足そうに見つめていた。 打てば全員安打に投げれば完封、文字通りの全員野球での圧勝。強豪で鳴らす相手チームが手も足も出なかった。 (まったく、あの年のガキはまるでサルだな) だが、サルも使いようだ。さて、準備をはじめるか。このあとの手順を考えていたカントクの傍らに、すっと小柄な影が近寄った。 「こんにちは、ごぶさたしています」 若い女の声。ちらと横を見たカントクは、ああ、と声を漏らした。かつてここと同じように全国大会に送り出したチームのマネージャーだったか。可愛い娘だったから、その後スカウトされてどっかの事務所に入ったと聞いたことがある。 「うまくやってるみたいじゃねえか、いまスポーツ番組のコーナー持ってるんだろ?」 インタビューに答える選手に目を向けたままぼそっと答えた。 「ええ、おかげさまで。やっぱりここも例のミーティングでヤル気にさせたんですか?」 傍らに目を向けると、可愛い顔に似合わない冷たい目でこちらを睨む女。 くくく、そうだったな。俺たちに犯されながらもこいつはこうやって睨んできやがった。スカウトされた後ものすごい勢いで売れっ子になっていったのも、なにか吹っ切れたようにいろいろ身体を張った営業のおかげとかなんとか、そんな話も伝え聞く。 「さあてな、そいつはあんたのほうがよく知っているんじゃないのかい?」 小さな声で、あんたの身体が、と付け加えてカントクはグラウンドから立ち去った。その背中に突き刺さるような女の視線を感じながら。 ● ひとりの少女を複数の男たちで・・・シリーズ。事前、最中、事後の複数シーンを1枚の中に詰め込む。